選り取り見取りされども愚鈍な日々よ

スイッチ

文字の大きさ
10 / 18
第壱章

第十話 ど変態紳士

しおりを挟む

「こっちから呼んどいてなんだけど今日は何する?」

「ああーそうだなあ。そうだ肝試ししようぜ!」

「遠慮するよ」

「なぁんでだよおおおお!あんまりだぁぁぁぁ!」

いつもの調子で隣が嘆く。隣が突飛な提案をし、僕がそれを断り隣が落胆する。これはもはやテンプレートと化してきている。


「しかーし!今回は掛橋隣かけはしとなる、推して参る!一歩たりとも引き下がりはせんぞ!」

「そもそも肝試しって夜にやるもんだろ。今からは何やるつもりなんだ?」

「そりゃー予習っしょ」

「予習?」

「そう!まずは貞子を観て気持ち高めようぞ!」

「いや、貞子は直接的過ぎる。ここは都市伝説で程よくボルテージを上げるのが無難だろう」

肝試しで幽霊と出くわすかもしれないというのに意気揚々と昼間にご対面など愚の骨頂。ここは都市伝説というビターなチョイスが正解であろう。


「いや待てよ。僕は肝試しするなど一言も言ってないぞ!」

「惜しぃー!あとちょっとで釣れたのになあ。でも何で行きたくないんだよ」

「だいたい、お…」

「男2人で行ってもしょうがないってか?」

「そ、そんなこと言ってないだろ!」

「全く、君は変態さんですね」

「そんな不名誉な称号付けられてたまるか!紳士と呼べ!紳士と!」

一部からは聖人君子、男の中の男、憧れの紳士と呼び声高い僕だ。ここで汚名を馳せるわけにはいかん。ちなみに一部とは勿論僕のことである。


「じゃあ変態紳士さんですね」

「合体させるな!何故かもっと猥褻になってしまったじゃないか!」

「分かりましたよ、ど変態紳士さん。女の子を連れて来れば良いんでしょう?」

「グレードアップ!?キャタピーだってそんな速度で進化しないぞ!」

このまま進めば数分後には僕の肩書は十八禁になってしまうやもしれない。自主規制音で会話が出来なくなる可能性がある。ここは一度隣の誘いに乗るべきか。


「だけど当てはあるのか?」

「お、やる気になったな。じゃ、ゆかりんを呼ぼうか」

隣の口から語られたのは知らない名前だった。

「ゆかりんって誰?アニメのキャラ?流石は隠れオタクの隣くん。ゆかりんはお前の嫁、乙」

「おいおい、違えよ!それに俺の嫁は牧瀬紅莉栖まきせくりすただ一人。異論は認めない。」

「おいおい、クリスティーナは皆の嫁だとこの前の議論で決まった筈だ」

「ぐぬぬ…それに関してはまた今度話し合おう。それはさておき、ゆかりんは俺達と同じクラスの由香里ちゃん。花宮由香里はなみやゆかりちゃんのことだ」

「ああ、花宮さんか。でも僕彼女とはそんなに話したことないけど」
というか挨拶程度しかしたことない。

「大丈夫大丈夫、俺が答真のこと話しといてやるよ」

「分かった。そこは隣に任せるよ。ただ夜に女の子一人を呼び出して連れ回すのもどうかと思うからもう一人呼んでくれないか」

この細やかな心遣い僕がか弱い女子であれば惚れてしまうだろう。


「流石はど変態紳士、女子の不安を取り除きつつ一人でも多くの女の子と触れ合いたい己の欲を満たす。離れ業だね」

「うるさい」

「まぁ安心してよ。俺らが花宮さんだけと遊びたくても彼女にくっついて離れない付き人がいるからね」

「そんな人が居たのか」

誰かは知らないがそんなコバンザメのような紹介をされたら可哀想ではないか。


「んじゃ時間まで録画しといたやりすぎの特番でも観ようぜ」

「オーキードーキー!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

痩せたがりの姫言(ひめごと)

エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。 姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。 だから「姫言」と書いてひめごと。 別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。 語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...