母の浮気に気づいた3世帯の娘の戦い

MisakiNonagase

文字の大きさ
5 / 16

第四章:瑠華(会社員25)の挑戦

しおりを挟む
土曜日の夜、新橋の高級フレンチレストランで、瑠華と文乃は向かい合っていた。文乃は少しおめかしをして、嬉しそうだった。

「瑠華がこんなにおごってくれるなんて。何か特別なことでもあるの?」

「お母さん」瑠華は深呼吸をした。「話したいことがあるんだ」

文乃の表情が少し曇った。「何?仕事で困ったことでもあるの?」

「違う。お母さんについてだ」

瑠華はスマホを取り出し、文乃と健太郎のメッセージのスクリーンショットを見せた。文乃の顔が一瞬で青ざめた。

「これ…どこで手に入れたの?」

「お母さんのスマホを見た。パスコードは誕生日だったから簡単に解除できた」

文乃はしばらく黙り込んだ。周りの客の笑い声やグラスの触れ合う音が、不自然に大きく聞こえた。

「どうして…そんなことしたの?」文乃の声は震えていた。

「どうしてって…お母さんが不倫してるからだよ!」瑠華は声を潜めて言ったが、その中には怒りが込められていた。「父さんは何も知らない。家族のために毎日働いてるのに」

文乃はうつむいた。「あなたにはわからない…」

「わからないって何が?」瑠華は冷静さを保とうと努力した。「お母さん、父さんと何か問題があったの?話し合ったの?」

「話し合っても…」文乃の声はかすれた。「あなたのお父さんは、私の話を聞いてくれない。ずっと前から。家にいても、テレビを見るか新聞を読むか。会話なんてほとんどない」

「それで不倫が許されると思う?」瑠華の目に涙が浮かんだ。「お母さん、家族を壊す気なの?」

「壊したくない…」文乃も泣き出した。「でも、健太郎さんと会っている時だけ、私は自分を取り戻せる気がするの。大切にされていると感じられる」

瑠華は胸が痛んだ。母の寂しさは理解できた。しかし、それでも許せなかった。

「お母さん、選択して。家族を選ぶか、その人を選ぶか」

文乃は長い間沈黙した。やがて、顔を上げて言った。

「会うのをやめる。約束する」

「本当に?」瑠華は疑いの目を向けた。

「本当よ。でも…一つだけお願いがある。あなたのお父さんには言わないで。私からちゃんと話すから」

瑠華は考えた。母の言葉には誠実さが感じられた。

「わかった。でも、もし約束を破ったら、父さんに全部話すから」

文乃はうなずき、ハンカチで涙を拭った。その夜、二人はほとんど話さずに食事を終えた。重苦しい空気が最後まで続いた。

家に帰るタクシーの中で、文乃が小さな声で言った。

「瑠華、ごめんなさい。そして…ありがとう」

瑠華は何も言えなかった。ただ、窓の外の街明かりをぼんやりと見つめていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

清掃員と僕の密やかな情状

MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。 青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。 肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。 44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

おめでとう。社会貢献指数が上がりました。

水井伸輔(Mizui Shinsuke)
SF
「正しく」生きれば、どこまでも優しいこの国。 17歳のシュウは、社会貢献指数を高め、平穏な未来を手に入れようとしていた。しかし、システムに疑問を抱く父のランクは最低の「D」。 国家機能維持条項が発令された夜、シュウの端末に現れたのは、父の全権利を支配するための「同意」ボタンだった。 支配か、追放か。指先ひとつで決まる、親子の、そして人間の尊厳の行方。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

処理中です...