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番外編 後日談
21. 高位貴族の後継者
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ハルマの町を出発してから北上していく。久しぶりに本格的に鍛冶をやったんだが、なかなかいい感じに出来て良かったよ。ミスリルならなんとか扱えるようにもなっていたからね。
王都のハルストニアにやって来たんだが、やっぱり顔を出すとしたらルイアニアさんのところかなあ?ラクマニアさんはすでに亡くなっていて、今は長男のハルトニアさんが後を継いでいると聞いているけど、ハルトニアさんよりはルイアニアさんの方がいいだろうな。
ルイアニアさんからはもしハルストニアに来ることがあればこれを見せればいいと言われて渡された紋章があるからね。これを使ってみれば何とかなると思うんだけど・・・。
いったん宿を予約してから記憶を頼りに屋敷に向かう。入口には門番が立っており、受付のようなところもあった。受付に書かれている案内を見るとここで間違いなさそうだ。
「すみません、ルイアニア様の面会希望ですが、受付はここでよろしいのでしょうか?」
「はい、こちらで大丈夫です。どなたかからの紹介状があればここに出してください。ここに連絡先を書いていただければ後で面会の可否と日程についてご連絡させていただきます。ただ面会希望者が多いですので、面会できる可能性はかなり低いとお考えください。」
「えっと、ルイアニア様から訪問の際はこれを見せるように言われていたのですが、大丈夫でしょうか?」
「!!! これは・・・。しょ、少々お待ちください。」
受付の女性が席を外し、少しすると男性を連れてきた。
「すみませんがこちらの部屋によろしいでしょうか?」
横にある少し狭い部屋に案内される。
「申し訳ありませんが、この紋章はどこで手に入れられたのでしょうか?」
「ルイアニア様本人からいただきました。たぶん本人確認の機能が付いていると思いますので確認をしてください。」
「ご、ご存知でしたか。」
「ええ、ジョニーファン様が開発されたものだったと思いますが、高位貴族の方達の間では使用されていてもおかしくないかと思っていますので・・・。」
このあと紋章に魔力を込めると紋章が青く光ったので、確認は出来たようだ。
「主人は在宅ではないですので、後ほどご連絡させていただきますがよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です。突然の訪問申し訳ありません。」
「いえ、こういうときのためにある紋章ですのでお気になさらずに。」
町を見て回ってから宿に戻ると、待っている人がいると言われる。どうやらルイアニアさんからの使いのようで、すぐに屋敷に招待してくれるようだ。特に準備することもないのでそのまま移動することにした。
門を抜けて屋敷の前に到着すると玄関のところに若い男女が立っていた。ルイアニアさん達にしては若すぎるけど・・・どこか似ているような気がする。
「「こんにちは。」」
二人がそろって挨拶をしてきた。
「こんにちは。・・・あれ?もしかして・・・ソラニアくんとクリスティファちゃん?」
周りにいた使用人からすごい顔でにらまれたんだが、二人は優しい顔で答えてくれた。
「「はい!!」」
「お久しぶりです。お二人は変わっていないんですね。こちらにどうぞ。両親もお待ちかねです。」
二人に案内されて部屋に入るとルイアニアさんと奥さんのタスマールさんが立っていた。さすがに大分年を取られているが、年齢の割には十分若いのだろう。使用人達は一人を残して下がっていった。
「ルイアニア様、タスマール様、お久しぶりです。突然の訪問にも関わらず対応いただいてありがとうございます。」
「いやいや、お二人が来たというのにおちおち仕事もしていられないよ。ほんとに当時のままだね。驚いたよ。」
「その割には対応が早くて驚いています。もしかしてどこかで情報を聞いていましたか?」
「いや、そういうわけではないんだがね。亡くなった父とも話していたんだが、クリストフ王爵から夢の話しを聞いていたものでね。もしあの紋章を持っている者が来たら本人に間違いないだろうと思っていたんだよ。
子供達ももしこのような時が来たらすぐに教えてくれと頼まれていたんだ。ちょうど王都に滞在していたから最初に出迎えてもらったんだ。」
「すぐに分かってくれて良かったわ。」
「これで誰?とか言われていたらちょっと悲しかったよね。」
「お二人とも面影がありましたし、もしかしてと思ったんですよ。もう気安く呼ぶわけにもいかないですね。さっきはつい昔のまま呼んでしまいましたが・・・。おかげで他の人からかなりきつい視線を感じましたよ。」
「私達はまったくかまわないですけどね。ただ公式の席ではさすがにまずいかな・・・。」
挨拶が終わった後は、折角だからと一緒に食事を取ることになった。今日はこのまま泊まっていってくれと言われたのでそれに甘えることにした。
今回この時代にやってきたことについていろいろと問題が出そうなためにクリスさんと相談して隠していること、そのために連絡が出来なかったことなどについて謝ると、良い対応だったと同意してもらってほっとする。
ラクマニアさんと奥さんのスレンダさんは5年ほどに病で亡くなったらしい。他にも多くの人たちが亡くなったようだが、対応方法が見つかったときには二人はもう手遅れだったようだ。
後を継いだハルトニアさんは今は軍務大臣として活躍しているようだが、未だに騎士達の訓練に参加したりして周りを困らせているらしい。
ルイアニアさんは外交大臣としていろいろと飛び回っているようだ。以前よりも移動時間は短縮されたが、やはり数日というわけにも行かないので不在のことも多いのだが、今回はちょうどこっちにいるときで良かった。
ちなみにソラニアくんはすでに結婚していて息子と娘がいて、食事の時に紹介された。あくまで古い友人と言うことで紹介されて、見た目が若いということにしてもらった。
あとクリスティファさんもすでに結婚しているのだが、女性には珍しく、結婚後もそのまま働いているようだ。この国では結婚後も働き続けるのはかなり珍しいことではあるが、女性の地位向上のためにがんばっているようだ。
相手もそのあたりに理解のある人を選んだらしく、夫婦仲は円満みたい。まだ子供はいないようだけど、まだそろそろと考えていると言っている。
ルイドルフ家とは政敵でもあったハックツベルト家はピルファイア爵が同じ5年ほど前に隠居し、今はラザニアさんが後を継いで宰相として活躍しているらしい。今では政策について共闘することも多く、交流会も頻繁に行われているようだ。
ハクセンではかなり平民の登用が進んでおり、ヤーマンとまでは行かないが、かなり貴族と平民の溝も薄れてきているようだ。まあまだまだ改革の途中という話しだけどね。せっかくなのでいろいろと意見交換視することになった。
翌日にはハックツベルト家にも呼ばれてピルファイアさんとラザニアさんにも再会することになった。ピルファイアさんは政界から引退したせいかかなり穏やかな感じになっており、ひ孫をかわいがっていた。
やはりラクマニアさんが亡くなったのがちょっと衝撃だったらしく、ある程度の道筋が出来ていたこともあり、若い者達に道を譲ることにしたようだ。
~ルイアニアSide~
今日は懐かしい人がやって来た。もう20年以上経っているのだが、当時と変わらない雰囲気で話が出来た。子供達もかなり喜んでいるようだった。
アムダの英雄。
私達にとっては遠い人ではなく、ごくごく身近な二人だった。いろいろと伝記が書かれているが、かなり作られたような話も結構出ている。本人達が見たら苦笑するしかないだろう。
二人が亡くなったと聞いたが、ヤーマンでクリストフ王爵と話をしたときにもしかしてと思ってしまった。あの二人ならそんな不思議なことが起きてもおかしくないと思ってしまったのは私だけではなかっただろう。
いつか突然訪ねてくるのでは?という考えが払拭できず、彼らに渡した紋章のことについては家の者には話したおいた。そして本当にその報告を受けたときには驚いた。
昔のことや今の国のことについていろいろと話をした。驚いたことに今の現状を聞いて今後の対応についてもいろいろと意見を言ってくれたことだ。20年前にいろいろと意見を言ってくれていたのだが、現在の状況に合わせてさらに先の展開についての意見を言ってくるのだ。
彼らの知識の深さには正直驚きを禁じ得ない。どれだけの知識を持っているのだろう。
本当であれば彼らをこの国に引き込むべきなのだろう。しかし彼らと話しているとそれはやめておいた方がいいと思ってしまう。彼らには自由という言葉が似合うのだから。
~受付Side~
私はルイドルフ家で受付や事務の担当をしている。受付は多くの訪問客のお顔を覚えて案内まで行わなければならないので最初のうちはかなり大変だった。ただ重要人物については写真入りのリストが作成されていたり、対応についてもきっちりとマニュアルが作られているのでかなり楽だったと思う。
ルイドルフ家はここハクセンにおいてはかなりの有力な貴族で平民だった私がよくここに採用されたと思っている。
私が生まれた頃から国の改革が進んだことで私は奨学金というシステムを受けて高等教育を受けることが出来た。うちの両親が子供の頃には考えられないことだったらしい。なんとかがんばって優秀な成績を収めたと言うこともあり、ルイドルフ家の採用が決まった。
国の改革が進んだと言ってもやはりまだ貴族の方々からの差別というものはなくなっていない。ここの就職が決まったときにも貴族出身の人たちからいろいろと嫌がらせを受けたりもしたものだ。
ここに勤めだして5年になるが、当初はかなり驚いたものだ。先輩達から聞いていたような差別がほとんど無かったからだ。ルイドルフ家が貴族と平民の格差をなくすための方針を取っているために率先してやっているのだろう。
そして一番驚いたことは結婚した女性がそのまま働いていることだった。普通は結婚すれば退職、もし残れたとしても子供が出来たら退職するのが普通のことだ。ここでは子供が出来た後でも1年以内であれば復職することが可能であり、そして実際に復職している人たちがかなりいたのである。
受付の業務を行うようになった最初の頃に言われていたことがあった。いくつかあるこれらのことはマニュアルにも記載されておらず、口頭での教育のみだ。ただおそらくその対応をすることはないだろうと先輩からは聞いていた。
しかし今日やって来た若い男女の二人から出された紋章を見て驚いた。つい取り乱してしまったのだけど、これは許してほしい。
すぐに上司に連絡を取り対応してもらったのだが、その後の行動を見ると間違いなかったのだろう。「最重要人物」ということで最優先で対応すべき相手。まさかそのような人が本当にやってくるとは驚いた。しかもその相手が私より年下と思われる二人だったとはさらに驚きだ。
そのあとしばらくこの屋敷に滞在されたのだが、同僚からの話でルイアニア様だけでなく、他の家族の方々、そしてハルトニア様までやってきて親しく話されていたらしい。どうも見た目と違って結構歳を召されているようなのだけど、いったどういう人物なんだろう?
~ラザニアSide~
ハクセンの貴族と平民の意識改革を進めてどのくらいたつのだろうか?意識改革が完全に終わったとは言わないが、かなり進んできていると思っている。
父の片腕としていろいろと政策を進め、今は宰相としてこの国のことを切り盛りしている。たしかに忙しいことではあるが、やりがいのあることだ。息子もすでに成人してだいぶ使えるようになってきた。
まだまだやらなければいけないことは多いが、着実に進んできているというのが実感できるのはいいことだ。賛同者も増えて、平民の登用も進んで才能を発揮してきている。もちろん貴族との軋轢も発生しているが、以前よりは大分良くなってきている。
父は引退してからはひ孫の相手に余念がない。私達には見せなかったくらい優しい顔を見せている。自分の子供の時はまだ大変な時期だったので、その反動が出たのだろうか?
小さな頃に一緒に遊んだドンカとメイラ夫妻はパン屋を経営していたのだが、あの二人から聞いたアイデアをいくつか教えるとたちまち町での人気店となった。その人気にあやかっていろいろと手を出そうとしていた貴族がいたが、裏からこっそり圧をかけておいた。
料理長にも相談し、家の仕入れ先の一つの候補に挙げて審査してもらったところ、無事に通過することが出来たときはうれしかった。もちろん私の意思が若干ながら働いたのは否めないが、味については保証できるだろう。うちの仕入れ先になれば他の貴族への牽制になるからな。
しばらくした頃に二人の店に訪問し、私の正体について話した。さすがにかなり驚いてしばらくはよそよそしくなっていたが、訪問しているうちに大分遠慮がなくなってきたように思う。私としても会ったときくらいは昔の知り合いと言うことで気を遣わずにくつろぎたいものだ。
ある日ルイアニアから連絡が来たのだが、内容がはっきりしないものだった。しかしこの内容を見ればあの二人しか思い浮かばない。
すぐに返事を書いて父と一緒に会うことになった。二人の姿には驚いたが、話す内容からも本人達で間違いないことを確信した。父があの二人と会っていなかったら、我が家はまた違う未来になっていたかもしれない。下手したらこの国自体が大きな変革に渦に巻き込まれていたかもしれないのだ。
このあとルイアニア達を含めて何度か会合を持ったが、やはり二人の知識はすばらしいものだった。今後の改革の大きな助けになるのは間違いないだろう。
王都のハルストニアにやって来たんだが、やっぱり顔を出すとしたらルイアニアさんのところかなあ?ラクマニアさんはすでに亡くなっていて、今は長男のハルトニアさんが後を継いでいると聞いているけど、ハルトニアさんよりはルイアニアさんの方がいいだろうな。
ルイアニアさんからはもしハルストニアに来ることがあればこれを見せればいいと言われて渡された紋章があるからね。これを使ってみれば何とかなると思うんだけど・・・。
いったん宿を予約してから記憶を頼りに屋敷に向かう。入口には門番が立っており、受付のようなところもあった。受付に書かれている案内を見るとここで間違いなさそうだ。
「すみません、ルイアニア様の面会希望ですが、受付はここでよろしいのでしょうか?」
「はい、こちらで大丈夫です。どなたかからの紹介状があればここに出してください。ここに連絡先を書いていただければ後で面会の可否と日程についてご連絡させていただきます。ただ面会希望者が多いですので、面会できる可能性はかなり低いとお考えください。」
「えっと、ルイアニア様から訪問の際はこれを見せるように言われていたのですが、大丈夫でしょうか?」
「!!! これは・・・。しょ、少々お待ちください。」
受付の女性が席を外し、少しすると男性を連れてきた。
「すみませんがこちらの部屋によろしいでしょうか?」
横にある少し狭い部屋に案内される。
「申し訳ありませんが、この紋章はどこで手に入れられたのでしょうか?」
「ルイアニア様本人からいただきました。たぶん本人確認の機能が付いていると思いますので確認をしてください。」
「ご、ご存知でしたか。」
「ええ、ジョニーファン様が開発されたものだったと思いますが、高位貴族の方達の間では使用されていてもおかしくないかと思っていますので・・・。」
このあと紋章に魔力を込めると紋章が青く光ったので、確認は出来たようだ。
「主人は在宅ではないですので、後ほどご連絡させていただきますがよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です。突然の訪問申し訳ありません。」
「いえ、こういうときのためにある紋章ですのでお気になさらずに。」
町を見て回ってから宿に戻ると、待っている人がいると言われる。どうやらルイアニアさんからの使いのようで、すぐに屋敷に招待してくれるようだ。特に準備することもないのでそのまま移動することにした。
門を抜けて屋敷の前に到着すると玄関のところに若い男女が立っていた。ルイアニアさん達にしては若すぎるけど・・・どこか似ているような気がする。
「「こんにちは。」」
二人がそろって挨拶をしてきた。
「こんにちは。・・・あれ?もしかして・・・ソラニアくんとクリスティファちゃん?」
周りにいた使用人からすごい顔でにらまれたんだが、二人は優しい顔で答えてくれた。
「「はい!!」」
「お久しぶりです。お二人は変わっていないんですね。こちらにどうぞ。両親もお待ちかねです。」
二人に案内されて部屋に入るとルイアニアさんと奥さんのタスマールさんが立っていた。さすがに大分年を取られているが、年齢の割には十分若いのだろう。使用人達は一人を残して下がっていった。
「ルイアニア様、タスマール様、お久しぶりです。突然の訪問にも関わらず対応いただいてありがとうございます。」
「いやいや、お二人が来たというのにおちおち仕事もしていられないよ。ほんとに当時のままだね。驚いたよ。」
「その割には対応が早くて驚いています。もしかしてどこかで情報を聞いていましたか?」
「いや、そういうわけではないんだがね。亡くなった父とも話していたんだが、クリストフ王爵から夢の話しを聞いていたものでね。もしあの紋章を持っている者が来たら本人に間違いないだろうと思っていたんだよ。
子供達ももしこのような時が来たらすぐに教えてくれと頼まれていたんだ。ちょうど王都に滞在していたから最初に出迎えてもらったんだ。」
「すぐに分かってくれて良かったわ。」
「これで誰?とか言われていたらちょっと悲しかったよね。」
「お二人とも面影がありましたし、もしかしてと思ったんですよ。もう気安く呼ぶわけにもいかないですね。さっきはつい昔のまま呼んでしまいましたが・・・。おかげで他の人からかなりきつい視線を感じましたよ。」
「私達はまったくかまわないですけどね。ただ公式の席ではさすがにまずいかな・・・。」
挨拶が終わった後は、折角だからと一緒に食事を取ることになった。今日はこのまま泊まっていってくれと言われたのでそれに甘えることにした。
今回この時代にやってきたことについていろいろと問題が出そうなためにクリスさんと相談して隠していること、そのために連絡が出来なかったことなどについて謝ると、良い対応だったと同意してもらってほっとする。
ラクマニアさんと奥さんのスレンダさんは5年ほどに病で亡くなったらしい。他にも多くの人たちが亡くなったようだが、対応方法が見つかったときには二人はもう手遅れだったようだ。
後を継いだハルトニアさんは今は軍務大臣として活躍しているようだが、未だに騎士達の訓練に参加したりして周りを困らせているらしい。
ルイアニアさんは外交大臣としていろいろと飛び回っているようだ。以前よりも移動時間は短縮されたが、やはり数日というわけにも行かないので不在のことも多いのだが、今回はちょうどこっちにいるときで良かった。
ちなみにソラニアくんはすでに結婚していて息子と娘がいて、食事の時に紹介された。あくまで古い友人と言うことで紹介されて、見た目が若いということにしてもらった。
あとクリスティファさんもすでに結婚しているのだが、女性には珍しく、結婚後もそのまま働いているようだ。この国では結婚後も働き続けるのはかなり珍しいことではあるが、女性の地位向上のためにがんばっているようだ。
相手もそのあたりに理解のある人を選んだらしく、夫婦仲は円満みたい。まだ子供はいないようだけど、まだそろそろと考えていると言っている。
ルイドルフ家とは政敵でもあったハックツベルト家はピルファイア爵が同じ5年ほど前に隠居し、今はラザニアさんが後を継いで宰相として活躍しているらしい。今では政策について共闘することも多く、交流会も頻繁に行われているようだ。
ハクセンではかなり平民の登用が進んでおり、ヤーマンとまでは行かないが、かなり貴族と平民の溝も薄れてきているようだ。まあまだまだ改革の途中という話しだけどね。せっかくなのでいろいろと意見交換視することになった。
翌日にはハックツベルト家にも呼ばれてピルファイアさんとラザニアさんにも再会することになった。ピルファイアさんは政界から引退したせいかかなり穏やかな感じになっており、ひ孫をかわいがっていた。
やはりラクマニアさんが亡くなったのがちょっと衝撃だったらしく、ある程度の道筋が出来ていたこともあり、若い者達に道を譲ることにしたようだ。
~ルイアニアSide~
今日は懐かしい人がやって来た。もう20年以上経っているのだが、当時と変わらない雰囲気で話が出来た。子供達もかなり喜んでいるようだった。
アムダの英雄。
私達にとっては遠い人ではなく、ごくごく身近な二人だった。いろいろと伝記が書かれているが、かなり作られたような話も結構出ている。本人達が見たら苦笑するしかないだろう。
二人が亡くなったと聞いたが、ヤーマンでクリストフ王爵と話をしたときにもしかしてと思ってしまった。あの二人ならそんな不思議なことが起きてもおかしくないと思ってしまったのは私だけではなかっただろう。
いつか突然訪ねてくるのでは?という考えが払拭できず、彼らに渡した紋章のことについては家の者には話したおいた。そして本当にその報告を受けたときには驚いた。
昔のことや今の国のことについていろいろと話をした。驚いたことに今の現状を聞いて今後の対応についてもいろいろと意見を言ってくれたことだ。20年前にいろいろと意見を言ってくれていたのだが、現在の状況に合わせてさらに先の展開についての意見を言ってくるのだ。
彼らの知識の深さには正直驚きを禁じ得ない。どれだけの知識を持っているのだろう。
本当であれば彼らをこの国に引き込むべきなのだろう。しかし彼らと話しているとそれはやめておいた方がいいと思ってしまう。彼らには自由という言葉が似合うのだから。
~受付Side~
私はルイドルフ家で受付や事務の担当をしている。受付は多くの訪問客のお顔を覚えて案内まで行わなければならないので最初のうちはかなり大変だった。ただ重要人物については写真入りのリストが作成されていたり、対応についてもきっちりとマニュアルが作られているのでかなり楽だったと思う。
ルイドルフ家はここハクセンにおいてはかなりの有力な貴族で平民だった私がよくここに採用されたと思っている。
私が生まれた頃から国の改革が進んだことで私は奨学金というシステムを受けて高等教育を受けることが出来た。うちの両親が子供の頃には考えられないことだったらしい。なんとかがんばって優秀な成績を収めたと言うこともあり、ルイドルフ家の採用が決まった。
国の改革が進んだと言ってもやはりまだ貴族の方々からの差別というものはなくなっていない。ここの就職が決まったときにも貴族出身の人たちからいろいろと嫌がらせを受けたりもしたものだ。
ここに勤めだして5年になるが、当初はかなり驚いたものだ。先輩達から聞いていたような差別がほとんど無かったからだ。ルイドルフ家が貴族と平民の格差をなくすための方針を取っているために率先してやっているのだろう。
そして一番驚いたことは結婚した女性がそのまま働いていることだった。普通は結婚すれば退職、もし残れたとしても子供が出来たら退職するのが普通のことだ。ここでは子供が出来た後でも1年以内であれば復職することが可能であり、そして実際に復職している人たちがかなりいたのである。
受付の業務を行うようになった最初の頃に言われていたことがあった。いくつかあるこれらのことはマニュアルにも記載されておらず、口頭での教育のみだ。ただおそらくその対応をすることはないだろうと先輩からは聞いていた。
しかし今日やって来た若い男女の二人から出された紋章を見て驚いた。つい取り乱してしまったのだけど、これは許してほしい。
すぐに上司に連絡を取り対応してもらったのだが、その後の行動を見ると間違いなかったのだろう。「最重要人物」ということで最優先で対応すべき相手。まさかそのような人が本当にやってくるとは驚いた。しかもその相手が私より年下と思われる二人だったとはさらに驚きだ。
そのあとしばらくこの屋敷に滞在されたのだが、同僚からの話でルイアニア様だけでなく、他の家族の方々、そしてハルトニア様までやってきて親しく話されていたらしい。どうも見た目と違って結構歳を召されているようなのだけど、いったどういう人物なんだろう?
~ラザニアSide~
ハクセンの貴族と平民の意識改革を進めてどのくらいたつのだろうか?意識改革が完全に終わったとは言わないが、かなり進んできていると思っている。
父の片腕としていろいろと政策を進め、今は宰相としてこの国のことを切り盛りしている。たしかに忙しいことではあるが、やりがいのあることだ。息子もすでに成人してだいぶ使えるようになってきた。
まだまだやらなければいけないことは多いが、着実に進んできているというのが実感できるのはいいことだ。賛同者も増えて、平民の登用も進んで才能を発揮してきている。もちろん貴族との軋轢も発生しているが、以前よりは大分良くなってきている。
父は引退してからはひ孫の相手に余念がない。私達には見せなかったくらい優しい顔を見せている。自分の子供の時はまだ大変な時期だったので、その反動が出たのだろうか?
小さな頃に一緒に遊んだドンカとメイラ夫妻はパン屋を経営していたのだが、あの二人から聞いたアイデアをいくつか教えるとたちまち町での人気店となった。その人気にあやかっていろいろと手を出そうとしていた貴族がいたが、裏からこっそり圧をかけておいた。
料理長にも相談し、家の仕入れ先の一つの候補に挙げて審査してもらったところ、無事に通過することが出来たときはうれしかった。もちろん私の意思が若干ながら働いたのは否めないが、味については保証できるだろう。うちの仕入れ先になれば他の貴族への牽制になるからな。
しばらくした頃に二人の店に訪問し、私の正体について話した。さすがにかなり驚いてしばらくはよそよそしくなっていたが、訪問しているうちに大分遠慮がなくなってきたように思う。私としても会ったときくらいは昔の知り合いと言うことで気を遣わずにくつろぎたいものだ。
ある日ルイアニアから連絡が来たのだが、内容がはっきりしないものだった。しかしこの内容を見ればあの二人しか思い浮かばない。
すぐに返事を書いて父と一緒に会うことになった。二人の姿には驚いたが、話す内容からも本人達で間違いないことを確信した。父があの二人と会っていなかったら、我が家はまた違う未来になっていたかもしれない。下手したらこの国自体が大きな変革に渦に巻き込まれていたかもしれないのだ。
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