【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

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13. 異世界57日目 パーティーを組んでみる

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13. 異世界57日目 パーティーを組んでみる
 いつも通りに目を覚ますが、30日の今日はのみの市のようなものが行われるらしいので今日は一日掘り出し物探しをするつもりだ。ジェニファーさんはこの日は一日宿の手伝いをするみたい。

 市は1時頃から始まっているようなので朝食を食べてからさっそく出かけることにした。いい掘り出し物でもあればいいなあ。


 町の中央広場を中心にいろいろなものを売る店が出ていた。小さなテントのようなものが立てられてそこでいろいろなものが売られている。出されているのはいつもは車が通るところなんだけど、今日は車は入ってこられないみたい。
 売られているのは日用雑貨だけでなく武器、防具、魔道具、家具、絵画などの美術品など多岐にわたっている。ただ聞いた話だと偽物も多く、ただのガラクタが売られていることもあるので気をつけないといけないようだ。
 鑑定スキルがあるから変なものはわかるから大丈夫だろう。手に持たなくて鑑定できればいいんだけど、触らないといけないのが厳しいところだ。


 いい武器とか役に立つ魔道具とかあれば使ってもいいし、最悪売ってもうけが出ればラッキーだ。ただ転売するにしても売り先のルートがなあ。あ、カサス商会だったら少々数があっても買い取ってもらえるかな?まあそんなにいっぱい掘り出し物が見つかるとも思えないので、もし見つかったらそのときに考えよう。


 武器や魔道具を中心に見ていくが、ほとんどが修復不可能なくらい壊れていたり、値段相応のものだったり、普通の汎用品だったりなので買いたいと思うものはない。一見よさそうに見えるものも調べてみたらただの張りぼてだったりするしね。

 かなりの店があるので、いろいろと話を聞いたりしながら見て回る。おなかがすいてきたんだが、店はどこも混んでいたので屋台で焼き鳥のようなものを買って食べることにした。なかなかおいしい。
 「そういえばこれって鳥じゃないから普通は串焼きって言うんだったな。」とか父がよく話していたローカルなことを思い出してしまった。

 店の中には半分ギャンブルのようなところもあった。10ドールと100ドールの魔獣石が30ドールと300ドールで販売されているんだけど、中身は10~90ドールと100~900ドールの価値があるというものだ。
 もちろん本当に販売価格以上の価値があるものが混ざっているのか不明だけど、選んだ後でお客はその場で追加合成して結果がわかるというものなのであまりに外ればかりだとすぐにばれてしまいそうだ。まあお客がサクラの可能性であるといえないこともないけどね。
 見ていると、時々当たりを引く人もいるみたいだけど、やはり外れの方がダントツで多い。30個の中からなのでどれだけあたりがあるのかもわからないからねえ。
 これって鑑定で価値がわかるようになったら百発百中だなあ。ただ触るのが禁止だから見るだけで鑑定できるようにならないとだめだけどね。

 いろいろと見て回って結局買ったものは剣だけだった。やっぱり基礎的な知識が不足しているので見た目でどれが良さそうなのか分からないし、手に取って鑑定しないといけないので思った以上に時間がかかってしまったことが大きい。
 まあそれ以前に見るだけでも楽しいため、見ていくだけでも時間をとられてしまったこともある。本格的に転売をするならこんなことじゃだめなんだけどね。


 今回買った剣は傘立てのようなところにまとめて売られていたんだけど、ざっと鑑定しながら見ていると一つ気になるものがあった。手入れがされてないので結構ボロボロのようにも見えるんだけど、鑑定結果がこんな感じだった。

名称:鉄の剣(低)
詳細:鉄を鍛えて製作された剣。錆びているため真価を発揮できない。
品質:低(高)
耐久性:低(高)
効果:並
効力:強度向上

 持ってみると今使っている剣と大きな差がなく、若干軽い感じのものだ。価格はどれでも1000ドールと投げ売り価格になっていた。
 今使っている鉄の剣でも4000ドールで買ったものなのに、売ってもこの値段くらいにはなると思うので十分買う価値はありそうなので購入することにした。


 この鑑定結果が合っているのか知りたかったのですぐにドウダンの店に行って買った剣の手入れをお願いする。

「いい剣を手に入れたな。錆びているが、手入れすれば十分に使えるものになりそうだぞ。ちょっと見ただけだとわからないし、鑑定でも鉄の剣(低)としか出ないからな。」

「鑑定だとそのくらいしかわからないんですか?」

「あとは”鉄を鍛えて制作された剣”と説明が出るくらいだ。なので鑑定を持っていても見る目がないとほんとの価値はわからんことが多いな。」

「そうなんですね。」

 詳細の説明も最初の文章くらいしか表示されないと言うことか。

「ある程度知識があれば少なくとも今使っているおまえの剣よりはいいものだと言うことはわかるな。付与魔法はちょっと程度が落ちるが、まあそれでも十分なものだろう。」

「よかった~~。のみの市で良さそうな剣が投げ売りされていたので買ってみたんです。」

「そいつはラッキーだったな。今使っている剣なら2500ドールで引き取れるから研ぎ代として1000ドール差し引いて1500ドールで買い取りするがどうだ?」

「それではお願いします。引き取りは明日の朝一でもいいですか?」

「おお、大丈夫だぞ。何だったら1時間くらいもらえればやっといてあげるぞ。」

「それでは夕方にまた来ますね。」

 お金ももらえていい剣が手に入るとはかなりラッキーだったなあ。


 夕食を食べてからシャワーと洗濯を済ませる。このあと剣を引き取りに行き、かなりキレイに磨き上げられた剣を受け取った。鑑定してみると、鉄の剣(高)となっていた。状態によって効果は下がってしまうんだな。これはある意味ちゃんとした鑑定が使える自分にとってはラッキーかもしれない。


 のみの市は月に一回やっているみたいなので機会があればまた回ってみるのもいいかもしれない。それまでにもっと基礎的な知識を身につけておかないと時間ばかりとられてしまうな。触らずに鑑定できるようになったらもっと掘り出し物を見つけやすくなるんだけどね。

 今日はさすがに忙しかったようなのでジェニファーさんとの情報交換は中止となった。自分も一日歩き回っていたので思ったよりも疲れてしまったようだ。



 翌日はジェニファーさんが休みなので一緒に狩りに行く予定だ。朝食を終えてから準備をして、近郊の森に狩りへと出かけることにした。移動しながらそれぞれが持っているスキルについて話す。

 まずは自分のガイド本を見せて自分のスキルなどについて説明する。文字もいくつかわかるし、表記の順番が自分のものと同じようなのである程度理解はしてくれたようだ。
 そのあとお願いすると彼女のガイド本を見せてくれた。一応異世界人補正のせいか読むことはできたんだけど、書かれている文字が英語だった。読めても意味が分からない・・・。
 とりあえずガイド本の中のスキルについて説明を受けながら確認し、そのあと確認をとってから彼女の鑑定をさせてもらう。

 ガイド本に書かれているスキルはこんな感じ。

戦学-1、武学-2、防学-1
体術-2、片手剣-1、弓-2
演奏-3、歌唱-2、絵画-3、彫刻-1、舞踊-3、料理-2、裁縫-2
算学-2、自然科学-2、社会科学-4、生物学-2、植物学-2、地学-1、神学-2、医学-3、天文学-1、言語学-4
英語-5、スペイン語-4、ドイツ語-3、フランス語-3、中国語-2、日本語-2、ヤーマン語-5、ライハンドリア公用語-5
思考強化-1
商人-2
ガイド本-1

 そして鑑定結果はこんな感じだった。

名前:ジェニファー(ジェニファー・クーコ)
生年月日:998年12月15日
年齢:17歳
国籍:ヤーマン国
職業:冒険者(初階位)
賞罰:なし
資格:なし
クラス:神の祝福(物理耐性上昇、魔法耐性上昇)
婚姻:なし

スキル:
体術、片手剣、短剣、弓、一般魔法、火魔法、風魔法、水魔法、土魔法、治癒魔法、回復魔法、演奏、歌唱、絵画、彫刻、舞踊、料理、裁縫、英語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、中国語、日本語、ヤーマン語、ライハンドリア公用語、思考強化、鑑定、商人、解体

知識スキル:
戦学、武学、防学、魔法学、魔素吸収、魔素放出、魔素操作、算学、自然科学、社会科学、生物学、植物学、地学、神学、医学、天文学、言語学、ガイド本

秘匿スキル:
アミナの祝福


 合気道やフェンシング、日本のアニメに影響されて弓道をやっていたみたいでこれらの戦闘系のスキルがあるみたい。こっちに来てから短剣について少し習い、魔法も覚えたようだ。

 勉強は数学や化学は苦手だったらしいけど、覚えている言語数が半端ない。あと一般教養と思われる舞踊とかが結構あるなあ。

 鑑定スキルを手に入れるためにいろいろと勉強はしたみたいだけど、話を聞くとまだ知識スキルが見えないようなのでレベル-1なのだろう。

 ガイド本の話をすると、同じように学校の教科書や本のデータは取り込んでくれていたみたいだけど、最初に読んだくらいだったせいでデータの追記がされていることには気がついていなかったみたい。ただ登録されている本の量がかなり多かったのは、大学との共用の図書館があったせいだろう。

 ジェニファーさんは風と水魔法をメインに戦っているらしく、基本的に接近戦は行わないスタイルなので、強い魔獣がいたら逃げているようだ。
 武器は転移の時にもらった短剣のみで防具の方は皮製のブーツと籠手、盾と胸当てをしていた。弓も考えたけど、魔法を覚えてしまったらあまり必要性がなかったため結局買わなかったらしい。



「そろそろ魔獣が出てきそうなエリアになったけど、とりあえずはそれぞれのやり方をお互いに見せるところから始めようか?」

「そうね。とりあえず実力がどのくらいなのかも知っておきたいわね。ってその前に魔獣を探さないといけないわね。」

「ちょっとまってて・・・」

 索敵を展開するが、残念ながら近くに魔獣はいないようだ。

「近くにはいないみたいだから移動しながら探そう。」

「え?イチって魔獣のいる場所が分かるの?」

「うん、索敵って言うスキルがあってそれを使うと魔獣のいる場所がある程度分かるんだ。ジェニファーさんはまだ使えない?」

「もう、ジェンでいいってば!!だけどそんな便利なスキルがあったのね。その辺りはあんまり見てなかったなあ。どんな感じでやればいいの?」

 あ、そういえばジェンというように言われていたんだっけ。なかなか慣れないよ・・・。

「ご、ごめん、じぇ、ジェン。
 えっと、要は魔素の気配を感じることなんだけど、魔素を薄く広げて超音波のように周りに飛ばして、その魔素が乱れるところが魔素を持った物があるという感じかな。魔獣は魔素の放出量が多いから認識しやすいけど、ある程度慣れてくると人間とか動物とかも分かるようになってくるよ。」

「う~ん・・・。分からないなあ・・・。」

 しばらくやり方を説明しながら魔獣を探すが、ジェンはなかなかイメージ通りに出来なくてうなりながら付いてきた。

「ッ!!静かに!!」

 索敵に魔獣が引っかかったので風向きを考えながら移動すると狼もどきを発見。2匹いるが問題ないだろう。

「まずは自分から行くよ。」

 ある程度近づくと向こうも気がついて襲いかかってきたので風弾で攻撃。2回の攻撃が当たった方は動きが鈍くなって時間差が出来た。もう一匹が近づいてきたところで土魔法で壁を造り、驚いて急ブレーキをかけたところで横に回り込んで首を切り落とす。剣の質が良くなったのか、前よりもあっさりと切り落とすことが出来た。このあともう一匹の首もはねる。

「状況によって若干変わるけど、今のが自分の必勝法かな。風弾がうまく当たると近づく前に倒すことも出来るけどね。」

「すごいわね。先にやられるとちょっと私の戦いを見てもらうのが恥ずかしいわよ。」

「まあまあ・・・。それじゃあ次を探してみるよ。」

 しばらく歩いたところでまた狼もどきを発見。今回は1匹だけなのでジェンがやってみる。

 自分と同じ感じである程度近づいたが、自分よりも遠い位置から魔法を使うようだ。使っているのは土魔法みたいで持っていた石を使って攻撃するようだ。
 まずは水魔法で自分の前に水の盾を展開してから土魔法と風魔法で繰り返し攻撃している。水の盾で魔獣からの攻撃を受け止めている間に倒しきった。

「私のやり方はこんな感じね。実際には一緒に狩りをしている人に前衛をしてもらって私は補助をする感じね。
 一人の時は魔獣の数が多かったり、狼とかが出たら今のところ逃げているわ。魔法がうまく当たらなくて接近された場合は短剣で倒すことになるけど、水の盾で動きが鈍っているからまだ倒しやすいかな。」

「ジェンの今までのスタンスを考えても自分が前衛という感じかな?」

「まあそれは間違いないわね。」

「とりあえず離れたところから出来るだけ二人で魔法攻撃。ジェンには水の盾を作ってもらって自分は土魔法で魔獣を誘導。あとは状況を見て倒していく感じかな。
 このあたりの魔獣の強さを考えるとそれで十分対応できると思う。もし集団に襲われた場合も障壁をうまく使って個別に撃退していけばいいかな。まあ狼の大群がいたらさすがに逃げるけどね。」

「分かったわ。そのスタンスで行きましょう。」

 やはり二人で狩りをすると効率はよく、数匹の狼もなんとか倒すことができた。まあ魔法攻撃で近づく前に半分は足止めできるし、土魔法と水魔法で誘導できるから集団と言っても一斉に攻撃を受けるわけじゃないからね。

 お昼には用意してきたサンドイッチを食べて休憩を取るが、会話をしながら食べられるというのはいいものだ。いつもは黙々と食べるだけだからね。

 昼食の後も狩りを続け、今日は狼もどき6匹、狼12匹、大蟷螂を30匹くらいと並階位上位の大角兎を1匹仕留めることができた。
 大角兎は角兎と違って逃げるわけではなくこちらを見ると攻撃してきたんだが、突進力がすごくて焦ってしまった。なんとか避けることが出来たので良かったけど、当たっていたら危なかったかもしれない。最初の突撃を躱せたので、あとは魔法で攻撃して動きを鈍らせて剣でとどめを刺すことができた。

 解体についても分担して行ったので効率もよかった。ジェンは狩りをあまりしていないのに解体レベルにあまり差がないくらいだったのは、店で解体のお手伝いをしていたせいらしい。ただ、最初の頃はかなり抵抗もあって苦労したようだ。


 治癒魔法や回復魔法についてはやはり自分と同じような感じで、骨折くらいまでは治療できそうだという話をしている。回復についてはあまり試せていないようだけど、軽い毒や麻痺については治療できたらしい。

 こっちにきた頃に治癒魔法で他の冒険者の足のねんざを治療してあげたことがあったらしく、そのせいでパーティーへの勧誘が激しくなってしまったようだ。後で治癒士は冒険者にとっては生存率や収入に直結するのでかなり貴重な存在と言うことを知ったらしい。


 5時前に町に戻ってから素材の精算を済ませると、今日は3230ドールとかなりの稼ぎとなった。二人で分けても今までの最高記録である。まあ今回は狼や大角兎を倒せたのが大きかったな。ジェンは一日400ドールいけば上出来だったらしく、かなり喜んでいた。



 ジェンは用事があるというので、自分は少し店をのぞいてから戻ることにした。ちょっと脇道にそれたところで、おもむろに狭い通りに引きずり込まれた。

「??!」

 二人に両腕を押さえられて顔を地面に押さえつけられる。

「な、なんなんですか?」

「この間の忠告を忘れたのか?ジェニファーに変なちょっかいをかけるなと言ったはずだぜ!」

 はっきりとは分からないが、このあいだ因縁をつけてきた男みたいだ。

「一緒に狩りにいっただけだろ。なんで変なちょっかいになるんだ。」

「俺たちのパーティーと一緒に行くのは断っておきながらおまえと一緒に行ったというのが気にくわないんだよ。」

 両腕を押さえられたまま顔を引き上げられると顔を殴ってきた。二人に腕を押さえられているために動けないし、集中できないので魔法も使えない。

「あの女に目をつけたのは俺が最初なんだよ。なのに横からかっさらうなんてふざけるなよ。」

「何をしているんだ!!」

 反撃の糸口もなく殴られていると、表通りの方から声が上がった。

「いえ、こいつが俺の財布を盗んだのでちょっとお仕置きを・・・。」

「ちょっとお仕置きだと?」

 どうやら町を巡回している兵士が見つけてくれたらしい。

「財布を盗ったのかどうかはわからないが、町での争いを起こしたものは罰せられることは知っているよな?今回の件は上に報告しておく。身分証を出せ!」

 とりあえず助かったのか?顔は殴られていたいし、あちこちすりむいたりあざになったりしまっていたので治療をしたいところだが、状況確認もあるので怪我はこのままの方がいいだろう。


 いったん話を聞く必要があるということで兵士達の詰め所に連行されてしまう。まあ助かったからまだいいのかなあ?
 いきなり脇道に引きずり込まれて殴られたこと、原因は彼らが目をつけていたらしい人と一緒に狩りに行ったことを説明するが、一晩は牢屋の中で過ごして反省させられるようである。勘弁してほしい。

 牢屋は一人一人の個室になっているんだけど、1畳くらいの狭いところだ。小さな洗面台とトイレもあるんだけど、穴が開いているだけの簡易的なものなので蓋をしてもちょっと臭ってくるのが悲しいところだ。もちろんシャワーなんてものはないので浄化魔法をかけておく。
 診断はすでに受けて、簡単な薬などは塗られていたんだけど、治癒魔法を使って治療をしたので痛みがなくなったのは助かった。おそらくあのままだったら明日はあちこちが腫れ上がっていただろうし、そもそも眠れないだろう。

 食事はあまりおいしくないけど、ちゃんと食べることができたのは助かった。食事抜きはさすがにつらすぎるからね。それはまだよかったんだが、ベッドが硬い。何でこんなことになったんだか・・・。

 さすがに宿に帰っていないとジェンも心配するかもしれないので、兵士にお願いして宿には連絡してもらった。巡回の際に連絡してくれるようだったのでよかったよ。



 あまり眠れないまま牢屋の中で朝を迎える。食事があまりおいしくないことと、ベッドが硬かった以外はまだ待遇は悪くなかったのでよしとしよう。まあ文化レベルも結構高いので罪人扱いとはいえそこまでひどいことはないのかもしれない。もちろん国によるとは思うけどね。

 朝ご飯を食べた後、兵士がやって来て牢屋から出してくれた。付いてくるように言われたので後ろを歩いて行くと部屋の中に案内される。部屋の中にはジェンの姿があった。

「彼女が身元引き受けをしてくれるようだ。すでに手続きは済んでいるから帰っていいぞ。今回は暴行を受けた方だったので仕方が無いかもしれないが、暴力沙汰は起こさないようにな。」

「今後気をつけます。お世話になりました。」

 兵舎からでてやっとほっとする。

「ごめんなさい。私のことでトラブルに巻き込んでしまって・・・。」

 どうやら今回のことが自分につきまとっている人が相手だったことを聞いてかなり落ち込んでいるようだ。

「いや、気にしなくていいよ。怪我もそんなになかったからね。」

「でも・・・」

「大丈夫、大丈夫。もうこの話は終わり。あと、役場にも顔を出すように言われているので行ってみようよ。」

「うん・・・わかったわ。」

 まあ今回はジェンがらみで襲われたといってもジェンが悪いわけじゃないからね。これ以上引きずってもしょうが無い。



 役場に着くと部屋に案内されたんだが、部屋にはもう一人年配の男性が座っていた。

「はじめまして。ここの部署の管理をしているハレイアスといいます。」

 どうやら冒険者に係わる部署の上司っぽい。

「今回の件について少し説明をさせてもらいます。冒険者同士のいざこざについては関知しないというのが基本なのですが、今回の件については他の冒険者からも苦情が来ており、調査を進めていたところでした。
 ジェニファーさんへの過度なパーティーへの勧誘、他のパーティへの恐喝などが確認できました。そして今回はジュンイチさんへの暴行もあり、3人には処罰を行うこととなりました。」

 どうやらかなりの数の苦情が上がっていたみたいだ。基本的にはトラブルは各人で対応することが求められているはずなんだけど、それだけ悪質だったのかな?

「彼らは上階位でしたが、並階位への降格の上、数年間は上階位への昇格は見合わせになります。また労役をとして近くの鉱山で働いてもらうこととなります。
 今回の処分の内容は掲示板に張り出されるため、冒険者としても今後活動するのであれば労役が終わった後は他の町に行かざるを得ないでしょう。
 ただ労役と言ってもそれほど長期間の罰を与えることは出来ません。もちろんまた手出しした場合はさらに重い罰を受けることになりますが、逆恨みして手を出してくる可能性があります。
 労役が終わったときにまだこの町にいるようでしたらあなた方にも連絡をしますし、彼らにはしばらく見張りを付ける予定ですが、あなたたち二人も注意するようにしてください。」

 うーん、改心してくれればいいけど、可能性としては低いだろうなあ・・・。気をつけておかないといけないだろうね。

 ちなみに彼らは上階位までは順調に昇格していったが、良階位へはなかなか上がれなくて徐々に悪い方向に行ってしまった感じらしい。そういう話はたまにあるらしいので、自分たちも気をつけるように言われてしまった。

 ハレイアスさんは部屋を出て行ったが、そのあと受付のマーニさんから話があった。

「今回は怪我程度で済みましたが、今後もジェニファーさんと行動を共にするのであれば同じようなトラブルが起きるかもしれません。ですのでもしよろしければパーティー申請をしてはいかがでしょうか?
 今はジェニファーさんがパーティー登録していないことも勧誘が激しい理由の一つですからね。パーティーに所属したら無くなるとは言えませんが、少なくなると言うのは間違いないと思います。」

 ジェンを見るとうなずいてくれた。

「分かりました。それについてはすでに話をしていましたので申請しようと思います。」

「ああ、そうだったのですね。それではこちらの書類に記入をお願いします。今回の事もありますのですぐに処理を進めます。おそらく本日中には手続きが終わると思います。」

「ありがとうございます。」

 書類に二人の名前などを記載して、最後にパーティー名を書き込む。パーティー名は”アース”。もとの世界に戻ることを祈って二人で考えた名前だ。



 ジェンは午前中は休みをもらっていたようだったので一緒に早めの昼食をとることにした。とりあえずパーティーを組むことにしたんだけど、今後の方針を決めなければならない。本当なら昨日の時点で話を進める予定だったのに、トラブルのせいでその後の話ができていなかったからね。

「とりあえず昨日の狩りのことを考えると今の段階でもそこそこ稼げるんじゃ無いかと思っているんだ。もう少し様子を見ないといけないけどね。」

「そうね。昨日はできすぎかもしれないけど、それでも十分な日当は稼げそうな感じだったわね。毎日狩りに行くって言うわけでは無いと思うけど、冒険者だけでも十分に生活できるレベルかしら?」

「魔法や技術などのスキルなども鍛えていかないといけないし、装備も更新しないといけないから、その辺りも考えてやっていけるかを確認しよう。」

「そうね。それじゃあ今の宿の手伝いはちょっと厳しいわね。この後メイサンとルミナに話しておくわ。宿代とかが高くなるのは痛いけど、それはしょうが無いわね。」

 冒険者としてやっていくことになったけど、やはりゲームのような世界で冒険者として生きてみたいという気持ちがあるのは間違いないだろうな。
 しかしゲームと違ってやり直しはきかないので、まずはこの町を拠点にしてある程度実力をつけていくしかない。可能ならばメインのスキルレベルを3くらいまでは上げたいし、その他のスキルもできるだけ手に入れておきたい。



 いろいろと買い物を済ませてジェンに話しを聞いたところ、宿のメイサンさんとルミナさんに冒険者業に本腰を入れるために宿の手伝いをやめたいことを話したようなんだが、引き留められてしまったらしい。
 どうやらジェンは日本のアニメとか文化に興味があったのでいわゆる”おもてなし”といわれるような日本的な接客対応をしていたらしく、かなり人気があったようだ。まあ見た目のこともあるんだろうけどね。それ以前に二人のジェンとの接し方を見るとかなり気に入っているようなんだよね。
 結局、宿代を半額にする代わりにできる範囲で手伝いをすることになったようだ。まあ生活費が安くなるので助かるけどね。


 このあと今後のパーティーのお金の話をする。

「自分はせっかく異世界に来たからといろいろ使ってしまって、ここに来るのにはあまりお金を使わずにすんだけど2万ドールくらいしかないんだ。」

「そうなの?何に使ったかは聞かないけど、私は3万ドールくらいね。」

 なんか含み笑いをされたような気がするが気のせいとしておこう。

「最初にもらった薬は中級薬をそれぞれ1本ずつ残して売ったんだけど、結構な値段だったので助かったよ。」

「そうなのね。私は初級治癒薬は全部使っちゃったな。中級薬は両方とも2本ずつあるし、初級回復薬も2本残っているわ。」

「治療魔法関係はある程度覚えているから中級薬を1本ずつ残してあとは売ってしまってもいいかもね。装備関係はしばらくは今のままでもいいけど、徐々に強化していかないといけないだろうね。
 のみの市が定期的に開催されているみたいなので掘り出し物を探すのもいいかもしれないね。ジェンももう少しで鑑定レベルも上がるだろうから探すのは楽になると思うよ。」

「そういえばこの間ののみの市で剣を買い換えたとか言っていたわね。」

「うん。結構大変だったけど、探してみる価値はあると思うんだ。」

「お金に関しては稼いだ分を3等分にして自分とジェンとパーティー資金に割り当てる感じでいいかな?装備の更新とかはパーティー資金から出す感じにするからもしかしたら割合は変えるかもしれないけどね。」

「その辺りは任せるわ。しばらくは基本的にパーティー資金として管理してもらって、個別に必要なときはそのときに相談という感じでいいんじゃないかな?もちろん小銭程度は持っておくけど、それ以外はいったんイチに預けるわ。」

「いいのか?まだ会って数日しかたっていないのにそこまで信頼してなにかあっても知らないぞ。」

「いいの。いままでいろいろな人に会ってきたけど、イチは信頼できる人と思ったから。これからもよろしくね。」

 何をもって信頼してくれたのかは分からないが、信頼に応えるように頑張るしかないか。

 全部のお金を合わせると5万ドールくらいになった。あとは魔獣石も合成しておくが、どこかでちゃんと換金しないといけないな。おそらく3000ドール分くらいにはなっているはずだ。とりあえずある程度のお金は貯金しておいた方がいいかな?

 さすがに昨日はあまり眠れなかったこともあり、夕食を食べた後、早々に眠りについた。


~魔獣紹介~
大角兎:
並階位上位の魔獣。森に穴を掘って生活しており、角兎よりも一回り大きく、角も倍くらいの太さとなる。草などは食べず、動物や魔獣を狩って食べる肉食となっているため、見つかるとこちらに突進してくる。耳が大きく、音に敏感なため、先に見つけるのは難しい。
獲物を見つけると一気に突進してくるが、その突進力を甘く見ない方がよい。角で刺されると革鎧も貫通してしまう場合がある。突撃力は高いが、小回りが利かないため、動きをよく見て避けてから対処すればよい。
素材としての買い取り対象は角と肉となる。角は薬の材料や工芸品に使用される。肉は角兎よりも高級とされるが、味の差はほとんど無い。


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