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第11話 追放の夜
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夜の王宮は、昼間の華やかさが嘘のように静まり返っていた。
煌びやかなシャンデリアの下で開かれていた宴の喧騒はもうなく、残っているのはどこか冷ややかな沈黙だけだった。
セシリアは呼び出され、皇太子アルベルトの執務室の前にいた。
背後には、セシリアを見張るようにして控える近衛の騎士たち。そこには、かつて彼女を守ると誓ってくれたレオンハルトの姿もあった。だが彼の瞳は悲痛に曇り、声をかけることさえためらわれる状態だ。
(きっとあのことだわ……)
先日の一件がセシリアに深くのしかかる。いつかは聞かれるだろうと身構えていたが、いざその時が来てみると、不安でならない。
心臓が高鳴り、吐く息は冷たい。扉が開かれ、中へ進むように促される。
執務机に座るアルベルトからは、いつもの穏やかさを完全に失われていた。
背筋を伸ばし、蒼い瞳には硬い決意が宿っている。
「……セシリア。今宵、君に告げねばならぬことがある」
その声は氷の刃のように冷たく、セシリアの胸を貫いた。
「王国は、真実の聖女を必要としている。だが――どうやら君は、その役目を果たせていないようだ」
「……そんな、私は……!」
言い返そうとするが、喉が震えて声にならない。
セシリアの脳裏には、少年を救えなかった日の光景が再びよみがえる。冷たい視線、広がるざわめき、そしてリディアの「奇跡」……。
アルベルトは一枚の書状を机に置いた。
それは「王宮からの退去命令書」だった。
「明朝までに荷をまとめ、王宮を去れ。君はもう聖女ではない」
「っ……!」
世界が音を失った。
これまで守り続けた祈りも、人々のために尽くした日々も、一瞬で無に帰す。
涙が零れそうになるのを必死で堪える。ここで泣けば、弱さを証明するだけだと分かっていたから。
セシリアは深く頭を垂れた。
「……かしこまりました」
その声はかすれていたが、確かな決意も宿っていた。
部屋を後にしようとしたとき、リディアとルシアが廊下の影に立っているのを見た。
リディアは勝ち誇ったように微笑み、ルシアは冷ややかな眼差しを向ける。
(ああ……そういうこと……最初から全部、仕組まれていた……)
だが、今のセシリアには抗う力も、暴く術もない。
背筋を伸ばし、夜風の吹き込む回廊を歩き出す。
ひとりになった瞬間、抑え込んでいた涙が頬を伝った。
(神よ……これはあなたが私に与えた試練なのでしょうか?)
答えのない祈りが夜空に溶けていく。
そして、セシリアの新たな運命――追放の旅路が、静かに始まろうとしていた。
煌びやかなシャンデリアの下で開かれていた宴の喧騒はもうなく、残っているのはどこか冷ややかな沈黙だけだった。
セシリアは呼び出され、皇太子アルベルトの執務室の前にいた。
背後には、セシリアを見張るようにして控える近衛の騎士たち。そこには、かつて彼女を守ると誓ってくれたレオンハルトの姿もあった。だが彼の瞳は悲痛に曇り、声をかけることさえためらわれる状態だ。
(きっとあのことだわ……)
先日の一件がセシリアに深くのしかかる。いつかは聞かれるだろうと身構えていたが、いざその時が来てみると、不安でならない。
心臓が高鳴り、吐く息は冷たい。扉が開かれ、中へ進むように促される。
執務机に座るアルベルトからは、いつもの穏やかさを完全に失われていた。
背筋を伸ばし、蒼い瞳には硬い決意が宿っている。
「……セシリア。今宵、君に告げねばならぬことがある」
その声は氷の刃のように冷たく、セシリアの胸を貫いた。
「王国は、真実の聖女を必要としている。だが――どうやら君は、その役目を果たせていないようだ」
「……そんな、私は……!」
言い返そうとするが、喉が震えて声にならない。
セシリアの脳裏には、少年を救えなかった日の光景が再びよみがえる。冷たい視線、広がるざわめき、そしてリディアの「奇跡」……。
アルベルトは一枚の書状を机に置いた。
それは「王宮からの退去命令書」だった。
「明朝までに荷をまとめ、王宮を去れ。君はもう聖女ではない」
「っ……!」
世界が音を失った。
これまで守り続けた祈りも、人々のために尽くした日々も、一瞬で無に帰す。
涙が零れそうになるのを必死で堪える。ここで泣けば、弱さを証明するだけだと分かっていたから。
セシリアは深く頭を垂れた。
「……かしこまりました」
その声はかすれていたが、確かな決意も宿っていた。
部屋を後にしようとしたとき、リディアとルシアが廊下の影に立っているのを見た。
リディアは勝ち誇ったように微笑み、ルシアは冷ややかな眼差しを向ける。
(ああ……そういうこと……最初から全部、仕組まれていた……)
だが、今のセシリアには抗う力も、暴く術もない。
背筋を伸ばし、夜風の吹き込む回廊を歩き出す。
ひとりになった瞬間、抑え込んでいた涙が頬を伝った。
(神よ……これはあなたが私に与えた試練なのでしょうか?)
答えのない祈りが夜空に溶けていく。
そして、セシリアの新たな運命――追放の旅路が、静かに始まろうとしていた。
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