偽りの聖女に断罪された本物の聖女、神と騎士に愛される

林 真帆

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第1章 聖女を巡る策謀

第5話 再会の玉座

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 玉座の間は、緊張と静謐が混じり合った空気に包まれていた。
 
 高い天蓋の下、豪奢な玉座に腰掛ける皇太子アルベルト。その姿を目にした瞬間、セシリアの胸はきゅっと締め付けられる。


(……あの日、すべてを失った相手……)

 
 かつて婚約者であり、誰よりも信じていた人。だが同時に、追放を告げた冷酷な声もまた、忘れることはできない。

 
 レオンハルトが一歩前に進み、片膝をついて恭しく礼をした。


「アルベルト殿下。ご命令の通り、セシリア様をお連れいたしました」

 
 アルベルトの鋭い視線が、セシリアに注がれる。
 
 
 一瞬の沈黙の後、その口元に冷たい笑みが浮かんだ。


「単刀直入に言おう。噂は真か? 辺境の修道院で奇跡を起こす“聖女”がいると」

 
 廷臣たちがどよめく。セシリアは静かに頭を下げ、毅然とした声で答えた。


「私はただ、祈りを捧げただけです。私は依り代になったに過ぎません」

 
 その謙虚な言葉に、幾人かの廷臣が感嘆の息を漏らした。
 
 
 だがアルベルトの表情は揺れない。


「ならば、証を立てよ」

 
 その言葉に、セシリアの背筋が伸びる。
 
 
 試練――それが明白だった。

 
 広間の片隅で、ルシアが唇の端を吊り上げ、作り笑いを浮かべる。


「殿下、よろしければ……先日倒れた近衛の者をセシリア様に診ていただいたらどうでしょうか。病が癒えぬと申しておりましたわ」

 
 リディアもすかさず声を添える。


「ええ、それがよろしいかと。真に神の加護を持つ者ならば、病に苦しむ者を救えるはず」

 
 その視線は明らかにセシリアを追い詰めるものだった。
 
 
 廷臣たちの視線が一斉にセシリアへと集まる。

 セシリアは、胸の奥で小さく十字を切り、静かに目を閉じた。

(……恐れることはない。私はただ、神を信じるのみ――)

 
 再び目を開いたとき、その瞳には揺るぎない光が宿っていた。

「殿下の御前で祈りを捧げましょう。その者をお連れください」

 
 その答えに、廷臣たちはざわめき、アルベルトはわずかに瞳を細める。
 
 ――その場にいた誰もが、この再会が単なる過去の清算ではなく、王国の未来を左右する始まりであることを直感していた。
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