偽りの聖女に断罪された本物の聖女、神と騎士に愛される

林 真帆

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第1章 聖女を巡る策謀

第6話 奇跡の証明

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 ざわめく廷臣たちの間を抜け、ひとりの近衛兵が引き出されてきた。
 青白い顔、荒い呼吸。胸を押さえ、時折苦しげに咳き込む。


「……この者は、数月前の戦で負傷して以来、熱が引かぬのです」
 
 ルシアが、芝居がかった口調で説明した。
 
 その視線には、試練を仕掛ける者の冷ややかな愉悦がにじんでいる。

 廷臣たちの目は一斉にセシリアへと注がれた。
 
 「本物か」「偽物か」――その判定を今まさに見届けようとするかのように。

 
 セシリアはゆっくりと歩み寄り、近衛兵の前に膝をついた。
 
 その姿に、兵士は驚き、かすれた声を漏らす。

「せ、聖女様……」

「大丈夫。恐れないで。私はただ祈るだけ……癒すのは神の御心です。神を信じて……」

 そう告げると、セシリアは両手を胸の前で組み、目を閉じた。
 
 広間の空気が張り詰め、誰ひとり声を上げなくなる。

 
 静寂の中、セシリアの唇が小さく動き、聖なる祈りが紡がれていく。
 
 やがて、その掌から淡い光が零れ出した。

 
 柔らかな光は、近衛兵の胸元へと染み込むように広がり――
 
 苦しげだった呼吸が次第に落ち着いていく。
 
 兵士の顔に血色が戻り、震える声で叫んだ。


「……痛みが……消えた! 体が、軽い……!」

 
 広間に驚きの声が走る。廷臣たちが目を見開き、口々にざわめいた。


「まさか……本物の奇跡だ……」

「神が、再びセシリア様を選ばれたのか……?」

 アルベルトの眉がわずかに動いた。
 
 その表情は読み取りにくく、驚愕とも警戒ともつかぬものだった。

 一方で、リディアの笑みは強ばっていた。
 
 必死に平静を装いながらも、その拳は袖の中で強く握りしめられている。

 
 ルシアは、すぐに笑みを取り戻し、セシリアに拍手を送った。


「さすがですわ、セシリア様」


 大広間は歓声と拍手に包まれた。
 
 兵士は信じられないといった顔で立ち上がり、感極まったように涙を流していた。


「セシリア様……! 本当に……ありがとうございます……!」

 その姿を目にした廷臣たちの態度も一変し、疑いの視線は感嘆と崇拝へと変わっていく。


「やはりセシリア様は本物だったのだ!」

「神の御業をこの目で見た……!」

 セシリアは安堵の微笑みを浮かべ、胸を撫で下ろした。
 
 ――だが、その影でルシアの紅い唇が、冷酷に歪んでいたことに気づく者はいなかった。
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