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本当の別れ
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ガチャ――
勢いよく「ハァハァ」と息を荒げてハレアは魔道具店の中に入ってきた。
「忘れ物か?」
カミュレスは突然戻ってきたハレアに驚きを隠せない。
「ううん。ちょっと気になって……」
息が整わず、肩が上下したままカミュレスを見つめた。
「何?なんか欲しい商品でもあった?ここは貴族向けのものなんかないから、逆に目新しいか?」
まっすぐ見つめるハレアのその目線から、カミュレスは思わず目を離してしまった。
「な、なんでもいいぜ。もう、お前とは今日限りで会わないだろうからな、餞別だ」
「いらない。そうじゃなくて……、さっき私の魔力の話聞いてから様子がおかしかったから……」
そう言いながらカミュレスの元へとゆっくり近づいた。その言葉を聞いて彼は下を向き、先ほどまでの勢いとは違い、黙ってしまう。
ハレアは椅子に座るカミュレスに目線を合わせるようにしゃがみ、強く握りしめている彼の拳を両手で包み込んだ。
「また私何か余計なことしちゃったのかな?カミュはいつも私のこと世間知らずのお嬢様だって怒るから……」
ハレアは下を向いたカミュレスの顔を覗き込もうとした。
その瞬間、ハレアの手に一粒の涙が落ちてきた。
「ちがっ……違くて……、俺……自分の実力で研究員に選ばれたと思ってたのが……ハレアの魔力のおかげだって知って……、情けなくて……うっ……、結局ハレアと離れたら役立たずで辞めさせられるし、もう……、ほんと……」
カミュレスは方を震わせ、涙が止まらなくなった。
「情けなくないよ!今だってこうしてちゃんと働いてるじゃない!」
「俺……、研究員として一人前になって帝都に配属されたら……ハレアを迎えに行こうって……」
「私を?」
「平民上りでも……、一流の魔術研究員なら伯爵家と釣り合うと思って……」
「えっ?」
「そしたら、ハレアもう結婚してるし!しかも魔術師団長とか……もう勝てる要素ないじゃないか……」
「えっ、カミュもしかして、私のこと……」
「好きだよ!好きだから!」
カミュレスは顔を上げ、ぐちゃぐちゃの顔でハレアの瞳を見た。
「ご、ごめんなさい、私……知らなくて……」
ハレアは急に恥ずかしくなりカミュレスから目線を外した。それと同時に握っていた彼の手も離した。
「知らないのはハレアだけだよ……。チル嬢もこの間一緒にいたコレットさんも知ってる」
「コレットさんも!?」
彼は小さく頷いた。
(カミュが私のことが好き?あんなに意地悪なこと言っておいて?まあ、それはそれで気を遣わなくて楽だったけど……。どうしよう、もうカミュの顔をまともに見れない。私今絶対変な顔してる)
今度はハレアがしゃがんだまま下を向いてしまった。
一度離してしまった手はカミュレスによって、掬われた。ハレアの両手の指を優しく手に取った。彼女の手はところどころカミュレスの涙で濡れていた。それを拭うように指で撫でた。
彼の目にはもう涙は滲んでいなかった。
「ごめんな……。こんなこと、結婚してから言われたって困るだけだよな」
「そんなこと……」
「ハレア?俺からの結婚祝いもらってくれる?」
カミュレスはそう言いながらハレアの両手を握ったままゆっくりと椅子から立ち上がった。ハレアもその手に身を任せるように立ち上がった。
「この店での一番の売れ筋なんだか分かる?」
ハレアは首を振った。
「俺、土魔術が得意なんだよ。それで色んな造形物作れてさ……これ」
そう言ってカミュレスは手のひらサイズの猫の置物をハレアの手に乗せた。
「これカミュレスが作ったの?」
「うん、ここにあるのは全部。ちょっとしたおまじないが込められてるんだよ」
カミュレスはハレアの手から猫の置物を取った。
「くれるんじゃないの?」
「これじゃなくて、今作るから」
カミュレスは店の奥から粘土を持ってきた。
「ハレアだったらすぐぶっ壊しちゃうかもだけど、小さい魔石も埋め込むね。俺の魔力を入れとくよ」
「壊さないよ!」
「どうだか」
カミュレスはいつも通りの少し意地悪な笑顔を浮かべた。彼が1センチほどの小さな黒い魔石を両手で包むと鮮やかな金色に変わった。
「綺麗。カミュの髪の色みたいね」
「俺の髪のこと綺麗って思ってたんだ~」
カミュレスはニヤニヤとハレアを見た。
「ちがっ!この魔石が綺麗ってこと!」
ハレアとカミュレスは目を見合わせて二人で声を出して笑った。
「ハレアは好きな動物とか、形とかある?」
「う~ん、猫は好きだけど……」
「じゃあ、猫にしようか?」
「あっ、やっぱりウサギにしていい?さっきお茶を飲んだマグカップに描いてあったような!」
「うわっ!あれか!」
「うん!あれ可愛かったもの!」
「……あれ、俺が学校に入る前に初めて作ったやつ……」
「えっ!凄い!」
「凄くねーよ。めっちゃガタガタだし。まあ、いいや、ウサギな!」
カミュレスは粘土に金色の魔石を置き手をかざした。
そうすると水色のウサギが魔石を持っている、小さな置物が出来上がった。
「可愛い!」
「気に入ったんなら良かった。こんなんしか渡せないけど」
「ううん、すっごく嬉しい!大切にするね!」
「ありがとう。ハレアがこれからの人生、もっと幸せになるおまじないかけておいたから」
「ふふふ、意外とロマンチック!」
「はっ?俺は世間では色男で通ってんだからな!」
カミュレスがそう言い放ち、少しの沈黙が訪れた。二人はもう一生会えないことを知っているからだ。
「じゃあ、もう行けよ。外で待たせてんだろ?」
「うん……、元気でね!」
「ああ……」
ウサギの置物を両手に持ってハレアは店の扉へと歩き出した。
「ねえ、やっぱもう一個もらっていい?」
ハレアは扉の前で振り返った。
「は?ったく、どれだよ」
カミュレスは呆れた声を出しながらも少し口はほころんでいた。
「さっきのマグカップ!ちょうだい!」
「えっ!んあ~、分かったよ!今持ってくっから!」
カミュレスは店の奥からウサギのマグカップを持って、ハレアに渡した。
「じゃあ、これで本当に終わりだからな!」
「うん!ありがと!」
「後悔すんなよ!」
「何を?」
「こんな色男を選ばなかったことにだよ!」
カミュレスは自分で言った言葉に少し恥ずかしさを感じているのか耳が赤くなっていた。
ハレアは店のドアを開けた。出て行く直前、振り返りカミュレスを見て舌を「ベー」と出し、店を後にした。
「とんだじゃじゃ馬じゃねーかよ」
カミュレスはそう呟いて店の奥へと入っていった。
勢いよく「ハァハァ」と息を荒げてハレアは魔道具店の中に入ってきた。
「忘れ物か?」
カミュレスは突然戻ってきたハレアに驚きを隠せない。
「ううん。ちょっと気になって……」
息が整わず、肩が上下したままカミュレスを見つめた。
「何?なんか欲しい商品でもあった?ここは貴族向けのものなんかないから、逆に目新しいか?」
まっすぐ見つめるハレアのその目線から、カミュレスは思わず目を離してしまった。
「な、なんでもいいぜ。もう、お前とは今日限りで会わないだろうからな、餞別だ」
「いらない。そうじゃなくて……、さっき私の魔力の話聞いてから様子がおかしかったから……」
そう言いながらカミュレスの元へとゆっくり近づいた。その言葉を聞いて彼は下を向き、先ほどまでの勢いとは違い、黙ってしまう。
ハレアは椅子に座るカミュレスに目線を合わせるようにしゃがみ、強く握りしめている彼の拳を両手で包み込んだ。
「また私何か余計なことしちゃったのかな?カミュはいつも私のこと世間知らずのお嬢様だって怒るから……」
ハレアは下を向いたカミュレスの顔を覗き込もうとした。
その瞬間、ハレアの手に一粒の涙が落ちてきた。
「ちがっ……違くて……、俺……自分の実力で研究員に選ばれたと思ってたのが……ハレアの魔力のおかげだって知って……、情けなくて……うっ……、結局ハレアと離れたら役立たずで辞めさせられるし、もう……、ほんと……」
カミュレスは方を震わせ、涙が止まらなくなった。
「情けなくないよ!今だってこうしてちゃんと働いてるじゃない!」
「俺……、研究員として一人前になって帝都に配属されたら……ハレアを迎えに行こうって……」
「私を?」
「平民上りでも……、一流の魔術研究員なら伯爵家と釣り合うと思って……」
「えっ?」
「そしたら、ハレアもう結婚してるし!しかも魔術師団長とか……もう勝てる要素ないじゃないか……」
「えっ、カミュもしかして、私のこと……」
「好きだよ!好きだから!」
カミュレスは顔を上げ、ぐちゃぐちゃの顔でハレアの瞳を見た。
「ご、ごめんなさい、私……知らなくて……」
ハレアは急に恥ずかしくなりカミュレスから目線を外した。それと同時に握っていた彼の手も離した。
「知らないのはハレアだけだよ……。チル嬢もこの間一緒にいたコレットさんも知ってる」
「コレットさんも!?」
彼は小さく頷いた。
(カミュが私のことが好き?あんなに意地悪なこと言っておいて?まあ、それはそれで気を遣わなくて楽だったけど……。どうしよう、もうカミュの顔をまともに見れない。私今絶対変な顔してる)
今度はハレアがしゃがんだまま下を向いてしまった。
一度離してしまった手はカミュレスによって、掬われた。ハレアの両手の指を優しく手に取った。彼女の手はところどころカミュレスの涙で濡れていた。それを拭うように指で撫でた。
彼の目にはもう涙は滲んでいなかった。
「ごめんな……。こんなこと、結婚してから言われたって困るだけだよな」
「そんなこと……」
「ハレア?俺からの結婚祝いもらってくれる?」
カミュレスはそう言いながらハレアの両手を握ったままゆっくりと椅子から立ち上がった。ハレアもその手に身を任せるように立ち上がった。
「この店での一番の売れ筋なんだか分かる?」
ハレアは首を振った。
「俺、土魔術が得意なんだよ。それで色んな造形物作れてさ……これ」
そう言ってカミュレスは手のひらサイズの猫の置物をハレアの手に乗せた。
「これカミュレスが作ったの?」
「うん、ここにあるのは全部。ちょっとしたおまじないが込められてるんだよ」
カミュレスはハレアの手から猫の置物を取った。
「くれるんじゃないの?」
「これじゃなくて、今作るから」
カミュレスは店の奥から粘土を持ってきた。
「ハレアだったらすぐぶっ壊しちゃうかもだけど、小さい魔石も埋め込むね。俺の魔力を入れとくよ」
「壊さないよ!」
「どうだか」
カミュレスはいつも通りの少し意地悪な笑顔を浮かべた。彼が1センチほどの小さな黒い魔石を両手で包むと鮮やかな金色に変わった。
「綺麗。カミュの髪の色みたいね」
「俺の髪のこと綺麗って思ってたんだ~」
カミュレスはニヤニヤとハレアを見た。
「ちがっ!この魔石が綺麗ってこと!」
ハレアとカミュレスは目を見合わせて二人で声を出して笑った。
「ハレアは好きな動物とか、形とかある?」
「う~ん、猫は好きだけど……」
「じゃあ、猫にしようか?」
「あっ、やっぱりウサギにしていい?さっきお茶を飲んだマグカップに描いてあったような!」
「うわっ!あれか!」
「うん!あれ可愛かったもの!」
「……あれ、俺が学校に入る前に初めて作ったやつ……」
「えっ!凄い!」
「凄くねーよ。めっちゃガタガタだし。まあ、いいや、ウサギな!」
カミュレスは粘土に金色の魔石を置き手をかざした。
そうすると水色のウサギが魔石を持っている、小さな置物が出来上がった。
「可愛い!」
「気に入ったんなら良かった。こんなんしか渡せないけど」
「ううん、すっごく嬉しい!大切にするね!」
「ありがとう。ハレアがこれからの人生、もっと幸せになるおまじないかけておいたから」
「ふふふ、意外とロマンチック!」
「はっ?俺は世間では色男で通ってんだからな!」
カミュレスがそう言い放ち、少しの沈黙が訪れた。二人はもう一生会えないことを知っているからだ。
「じゃあ、もう行けよ。外で待たせてんだろ?」
「うん……、元気でね!」
「ああ……」
ウサギの置物を両手に持ってハレアは店の扉へと歩き出した。
「ねえ、やっぱもう一個もらっていい?」
ハレアは扉の前で振り返った。
「は?ったく、どれだよ」
カミュレスは呆れた声を出しながらも少し口はほころんでいた。
「さっきのマグカップ!ちょうだい!」
「えっ!んあ~、分かったよ!今持ってくっから!」
カミュレスは店の奥からウサギのマグカップを持って、ハレアに渡した。
「じゃあ、これで本当に終わりだからな!」
「うん!ありがと!」
「後悔すんなよ!」
「何を?」
「こんな色男を選ばなかったことにだよ!」
カミュレスは自分で言った言葉に少し恥ずかしさを感じているのか耳が赤くなっていた。
ハレアは店のドアを開けた。出て行く直前、振り返りカミュレスを見て舌を「ベー」と出し、店を後にした。
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