「君を愛することはない」からの溺愛展開ってデフォルト設定だと思ってたんですが違いますか?

つかさ文研

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第二隊長

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「言ってくれれば良かったのに!あの時のSクラスの人だったのね!髪が長くなりすぎてて気付かなかった!」
 ハレアは気持ちが高ぶって、嬉しさが顔から溢れ出ている。
「ハレアはもう忘れてると思って……」
 リールは顔を隠すように横を向き、ハレアから目線をずらした。
「忘れるわけないわ!リールさんだったのね!あの時名前を聞きそびれていたから……」
「リールでいいよ。同じ年……だし……」
「そうね、リール」
 長い前髪で相変わらず表情は見えないが、ハレアは少しだけリールとの距離が近づいた気がした。
 ただ、そんな和やかな時間はすぐ終わりを告げる。

 廊下からタッタッタッタッという誰かが走ってこちらに近づいてくる音がした。そして、勢いよくリールの部屋のドアが開き、廊下からの光が一気に入ってきた。
 光に照らされた白銀の長い髪。約一時間前に黄色い液体の中に入れた髪の毛と同じだ。
「リール!」
 キルシュはそう言いながらノックもせずにズカズカと部屋に上がり込んできた。
「ちょっ!キルシュさん、眩しっ……」
 リールは腕で自分の目を覆った。ハレアも突然の光に目をギュッと瞑った。
「とりあえず、メッセージは読んだ。こちらとしてもかなり厄介なことになっている……」
 キルシュはハレアとリールに一つの手紙を差し出した。
 火の鳥の紋章が入っている手紙、皇族家からのものだ。
「第三皇子の誕生日パーティーへの招待状だ。夫婦で参加しろと書かれてある」
「えっ……」
 ハレアの顔が少し濁った。
「流石にたかが一代伯爵家である僕が断れるわけもない。君には一緒に参加してもらうことになる」
「それはいいのですが……、私ダンス踊れませんよ?」
 キルシュは目を丸くしてハレアを見た。そのあとに「はぁ……」とため息を一つした。
「どこまでもズレているな……。とりあえず、当日はルードを従者に、リールも一応ついて来てくれ」
「えっ、でも従者は一人っていう決まりじゃ……」
「ああ、リールは入れるから」
 特に何の説明もなく、キルシュはそうとだけ言い放つ。
「そもそもそういう時って魔術師団が護衛に入ってるんじゃないんですか?」
 リールは相変わらずの小さい声だ。
「今回は第二隊と第四隊が護衛に入る」
「ロンさんのいるところですね!」
「第二隊……」
 リールは少し曇った声色だ。
「そう、第二隊……。第二隊長は第二皇子でもあるチェルシー殿下だ」
「あっ、そういえばそうでしたね!」
 ハレアは二人とは違い、相変わらずの能天気な様子だ。
 
 魔術師団第二隊、戦争後に魔術師団と合併させられた元々魔術騎士団だ。魔術と剣術どちらの才にも秀でた集団である。そのトップを治めているのが第二皇子であるチェルシー殿下だ。側室との子のため、王妃の子である第一皇子と第三皇子の手前、皇帝の座に就くことは今のところなさそうな人である。
「チェルシー殿下自身、何を考えているか分からない人だから……」
「でも、一応旦那様の部下に当たる人なんですよね?仲はいいんじゃないんですか?」
「いや、どうもあの軽い感じが苦手で……」
(魔術騎士団で軽い?あまり想像ができない……)
 一般的に魔術騎士団といえば硬派な集団というイメージである。貴族とはいえ、皇族の方々と直接関わることのなかった伯爵令嬢のハレアには、第二皇子がどんな人なのか想像がつかなかった。
「とりあえず、第三皇子殿下にもチェルシー殿下にも彼女をあまり近づけない方向で」
「はい。兄さんにも伝えておきます……」
「えっ?私!?」
 察しの良くないハレアはなぜ彼らが警戒されているのか未だによく分かっていない。

「それにしても、時計塔からここまでは馬でも少し時間がかかるな。手紙のように体ごと転移させる魔具は作れないのか?」
 キルシュはリールに問いかけた。
「作ろうと思えば作れるけど、一回に使う魔力量が凄まじいから今のところは無理です。あと、体が一度バラバラになって転移先で再構築される形になるので、安全の保障はできないですね。その人自身の体が強靭な魔力で覆ってあることが大前提です。それに一回の転移に大体研究員数十名くらいの魔力量が入った魔石を全て消費することになります。せめて大量の魔力が入った魔石を生成できる人が……あっ……」
 リールはハレアを見た。
「えっ?」
 ハレアはキョトンとした。
「彼女には無理だ。魔力の制御が不十分だからな」
 冷たく言い放つキルシュにハレアは口を尖らせた。

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