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無邪気な笑顔
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キルシュは話したいことだけ話して足早に時計塔へと帰っていった。
その日の夜、ハレアは西の小屋にいた。詠唱魔術を行うためだ。ちょっとでも魔力を消費しておかないといけない。父からはもしものためにと、何個か壊す用の魔石はもらってはいるが、実家や魔術学校とは違い、帝都中心部に近いインハート家の屋敷ではハレアの魔力の光が漏れて周辺の人に見つかってしまう可能性があるからだ。
それに昼間、キルシュに魔力の制御が不十分だと言われたのが少し不服だったのだ。
魔石への魔力注入。ハレアは魔術学校時代の授業でもちろん行ったことがあるが、一定の魔力量を注入し続けなければならず、それが当時のハレアには難しかった。それに加えて、他の人なら失敗しても手にピリッと自分の魔力が跳ね返ってきて少し痛める程度だが、ハレアの場合は失敗が死に直結しかねない。一度失敗をして跳ね返った魔力は教室の窓へと当たり、パリンッと割れた。当たり所が良かっただけで、天井に当たっていたら上階の床が抜けていたし、人間に当たっていたらそれこそただの怪我では済まされない。それ以降、学校の教師から魔石への魔力注入を禁止させられていたのだ。
「魔力注入か……」
ハレアは父からもらったまだ魔力が注入されていない黒い魔石を手に取った。ちょっとだけ試してみようと思ったその時だった。「ギィィイイイ――」と小屋の古いドアが開いた。しかし、その先には誰もいなかった。
「……リールですか?」
ハレアは恐る恐る何もないドア先へと話しかけた。すると、スーッとリールの体が現れた。首にはチョーカーのような黒いものをつけている。
「ルードさんから聞きました。街に行った時も、父と兄と話し合った時もリールがいたこと。体を透過する魔具があること。すごいですね!」
小屋の中はランタンの光で満たされている。その光がハレアの少し困ったような苦笑いを照らした。
「ごめん。気持ち悪かったよね……」
「言ってくれれば全然一緒に行ったのに~!っては思ったけど……。あっ!約束!覚えてる?」
「約束?」
「うん!体が透明になる魔具作ったら教えてってやつ!それでしょ?」
ハレアの顔はすぐにいつもの無邪気な顔に変わった。
「うん。でも、これ一応魔術師団第一隊管理の魔具になるから本当は教えちゃいけないもので……」
「そうなのね!残念!それでかくれんぼしたら最強なのに!」
そう語るハレアを見てリールは長い前髪の奥で少しはにかんだ。
「あのさ……、僕がハレアの魔石に魔力注入がうまくできる魔具作るから……」
ボソボソと呟くリール。夜の静けさでそれはいつもより鮮明に聞こえた。
「ほんと!?」
ハレアは目をキラキラとさせ、リールの顔を見た。
リールは小さく頷いた。
「やったー!嬉しっ!」
ハレアは両手を挙げて喜びを体で表現している。その姿は人妻とは思えないほどに子供っぽかった。
「リールって天才なのね!」
ハレアは振り返りリールの両手を取って自分の手で包んだ。リールは動揺して「えっ……あっ……」としか言えなかった。
「あっ、じゃあ約束!」
ハレアは右手の小指をリールに向けた。
「うん。約束……」
リールは優しい声でそう言い、小指を絡めた。
「あーっ!そうだ!」
ハレアのその一言で繋いでいた小指はすぐにほどかれた。リールは突然の大きな声に「えっ?えっ?」と驚いている。
「私の部屋に魔術の本置いたの、リールでしょ?」
ハレアは眉間にしわを寄せ、口を尖らせている。リーの前髪の奥を覗き込むような視線は上目遣いになっていた。
「あっ……、ごめん……」
「もう!普通にノックして入ってよね~。あれ以外で私の部屋に入ったりはしてない?」
「う、うん……」
リールはハレアと目を合わせることができなかったが、長い髪のおかげで目線をずらしていることは分かっていない。
「ならいいけど……。これからはちゃんとノックしてね!友達なんだから!いつでも歓迎よ!」
ハレアのその無垢な笑顔にリールは「ズキンッ」と心が痛んだ。
その日の夜、ハレアは西の小屋にいた。詠唱魔術を行うためだ。ちょっとでも魔力を消費しておかないといけない。父からはもしものためにと、何個か壊す用の魔石はもらってはいるが、実家や魔術学校とは違い、帝都中心部に近いインハート家の屋敷ではハレアの魔力の光が漏れて周辺の人に見つかってしまう可能性があるからだ。
それに昼間、キルシュに魔力の制御が不十分だと言われたのが少し不服だったのだ。
魔石への魔力注入。ハレアは魔術学校時代の授業でもちろん行ったことがあるが、一定の魔力量を注入し続けなければならず、それが当時のハレアには難しかった。それに加えて、他の人なら失敗しても手にピリッと自分の魔力が跳ね返ってきて少し痛める程度だが、ハレアの場合は失敗が死に直結しかねない。一度失敗をして跳ね返った魔力は教室の窓へと当たり、パリンッと割れた。当たり所が良かっただけで、天井に当たっていたら上階の床が抜けていたし、人間に当たっていたらそれこそただの怪我では済まされない。それ以降、学校の教師から魔石への魔力注入を禁止させられていたのだ。
「魔力注入か……」
ハレアは父からもらったまだ魔力が注入されていない黒い魔石を手に取った。ちょっとだけ試してみようと思ったその時だった。「ギィィイイイ――」と小屋の古いドアが開いた。しかし、その先には誰もいなかった。
「……リールですか?」
ハレアは恐る恐る何もないドア先へと話しかけた。すると、スーッとリールの体が現れた。首にはチョーカーのような黒いものをつけている。
「ルードさんから聞きました。街に行った時も、父と兄と話し合った時もリールがいたこと。体を透過する魔具があること。すごいですね!」
小屋の中はランタンの光で満たされている。その光がハレアの少し困ったような苦笑いを照らした。
「ごめん。気持ち悪かったよね……」
「言ってくれれば全然一緒に行ったのに~!っては思ったけど……。あっ!約束!覚えてる?」
「約束?」
「うん!体が透明になる魔具作ったら教えてってやつ!それでしょ?」
ハレアの顔はすぐにいつもの無邪気な顔に変わった。
「うん。でも、これ一応魔術師団第一隊管理の魔具になるから本当は教えちゃいけないもので……」
「そうなのね!残念!それでかくれんぼしたら最強なのに!」
そう語るハレアを見てリールは長い前髪の奥で少しはにかんだ。
「あのさ……、僕がハレアの魔石に魔力注入がうまくできる魔具作るから……」
ボソボソと呟くリール。夜の静けさでそれはいつもより鮮明に聞こえた。
「ほんと!?」
ハレアは目をキラキラとさせ、リールの顔を見た。
リールは小さく頷いた。
「やったー!嬉しっ!」
ハレアは両手を挙げて喜びを体で表現している。その姿は人妻とは思えないほどに子供っぽかった。
「リールって天才なのね!」
ハレアは振り返りリールの両手を取って自分の手で包んだ。リールは動揺して「えっ……あっ……」としか言えなかった。
「あっ、じゃあ約束!」
ハレアは右手の小指をリールに向けた。
「うん。約束……」
リールは優しい声でそう言い、小指を絡めた。
「あーっ!そうだ!」
ハレアのその一言で繋いでいた小指はすぐにほどかれた。リールは突然の大きな声に「えっ?えっ?」と驚いている。
「私の部屋に魔術の本置いたの、リールでしょ?」
ハレアは眉間にしわを寄せ、口を尖らせている。リーの前髪の奥を覗き込むような視線は上目遣いになっていた。
「あっ……、ごめん……」
「もう!普通にノックして入ってよね~。あれ以外で私の部屋に入ったりはしてない?」
「う、うん……」
リールはハレアと目を合わせることができなかったが、長い髪のおかげで目線をずらしていることは分かっていない。
「ならいいけど……。これからはちゃんとノックしてね!友達なんだから!いつでも歓迎よ!」
ハレアのその無垢な笑顔にリールは「ズキンッ」と心が痛んだ。
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