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魔法少女リリルト・リリアス
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「遅い。何してたの……」
ハレアの部屋の前には白い布を被せた何かを抱えるリールが待っていた。その白い布がなければ闇に紛れてしまうのではないかと思うほど、真っ黒な見た目だ。そして声色からあまり機嫌がよくないことが伺える。
「リール、どうしたの?」
ハレアがそう言って近づくと、彼女の肩にかけている第五隊の隊服に目がいった。
「これ、もういらないです」
リールはそう言いながら隊服をハレアから剥ぎ取り、カイルに無造作に渡した。
「ちょっと!リール!すいません!隊服ありがとうございました!」
ハレアはカイルに深々とお辞儀をした。
「いえ……。ではお休みなさいませ」
カイルはハレアとリールに向かって小さくお辞儀をして去って行った。
「リール、カイルさんに失礼よ?」
ハレアの部屋の中に一旦リールを招き入れ、眉間にしわを寄せながら説教をした。
「だって……」
「だって?」
それ以降リールは下を向き、何も喋らなくなった。
「もう、いいよ。で?どうしたの?私を待ってたんでしょ?」
ハレアは少し呆れたように言った。
リールは小さく頷いた。
「これ……」
そう言いながら白い布をするりと外した。水色の星の形に、その真ん中には丸く透明なカプセルがあり、星の下には枝のようなものがついたものだ。
「えっ!?これ『魔法少女リリルト・リリアス』の杖じゃない!?」
ハレアは目をキラキラとさせながらリールに詰め寄った。リールは小さく頷いた。
「やっぱりそうだよね!?すごい!作ったの?リールもリリリリ読んでたの?」
「いや、この間初めて読んだ……。ハレアが昔好きだったって……」
「あれ?私そんな事言ったかな?」
「言ってたよ……」
「そっか~!」
「これ、あげる……」
リールはハレアと同じくらいの身長はありそうな杖を渡した。
「えっ、でもこれどうすれば……」
ハレアは受け取るもどうしていいのか分からない。子供時代に憧れていたものだが、大人になった今ではこれを持っている自分が少し気恥ずかしくなってしまう。
「これ、前に言ってた、魔力を魔石に移せるやつ」
「えっ?もうできたの?リールが作ったの?私のためにこの形にしたの?」
杖を持ったままリールに近寄り、質問攻めをするハレアに彼は困惑している。
「今はまだこのカプセルの中に入るサイズの魔石にしか魔力注入できないけど……」
直径十センチ程度の丸いカプセルの中に入るほどの魔石は、庶民の家庭でもよく使われているサイズのものだ。ハレアがいつも壊していたサイズより一回り小さいものになる。
「それでも十分だよ!試してみてもいい?」
「うん。でも、外ではやめた方がいいと思う。魔石の破壊にはならないけど、多分ハレアなら凄い光ると思うから……」
「そっか。光が漏れないところでやった方がいいのね!」
リールはまた小さく頷いた。
―――
「じゃあ、やるよ?」
ハレアの部屋のカーテンを閉め切り、それだけでは光が漏れてしまうかもしれないため、カーテンに掛布団を上からつるすように覆った。
カプセルの中にはハレアが父からもらった魔石の小さいものを選んで入れた。何個かカプセルの中に入れようとしたが、ロンダム家から送られてきたものの多くが握りこぶし程度の大きいものでカプセルには入らなかった。
ハレアは杖を両手で握り、魔石を壊す時と同じ要領で魔力を発散させた。すると、枝の部分から魔力が血管のように入っていき中央の魔石へと流れていった。魔石は水色に光り、石のボコボコとした表面で屈折し、部屋全体に光が飛び散った。
魔石の全体が水色になったその瞬間――
「痛っ!」
ハレアは杖を手から離してた。ビリビリと電流が走るようにハレアの腕に伝わってきたのだ。
「もしかしたら、魔力量が多すぎてハレアに戻ってきたのかも……。ごめん、もうちょっと大きい魔石が入ればそんなこともないと思うんだけど……」
リールはハレアに駆け寄って、彼女の手のひらを見た。少し赤く腫れているところが何か所かあった。
床に転がった杖の中の魔石は壊れずに水色を保っている。魔力注入が成功している証だ。
ハレアは駆け寄って床の杖を取った。
「凄い!成功してる!ありがと!リール!」
ハレアはリールに満面の笑顔を向けた。
「い、いや……約束だったから……」
リールは少しだけ嬉しそうにそう言った。
「あとはこれに入れる魔石よね……。いっそ、魔石を真っ二つにできればいいのに……」
ハレアは口を尖らせながら言った。
「無理だよ。魔石の加工は現状不可能だから……」
「そうだよね……」
「一日にこれくらいの大きさの魔石だったら何個くらい魔力注入できそう?」
「う~ん、十個くらいが限界かな?」
「は?」
魔石一個でも魔術研究員数人で魔力を入れるものを、一人で一日に十個もさばけると言うハレアに、改めて桁違いの魔力量を思い知らされたリールだった。
ハレアの部屋の前には白い布を被せた何かを抱えるリールが待っていた。その白い布がなければ闇に紛れてしまうのではないかと思うほど、真っ黒な見た目だ。そして声色からあまり機嫌がよくないことが伺える。
「リール、どうしたの?」
ハレアがそう言って近づくと、彼女の肩にかけている第五隊の隊服に目がいった。
「これ、もういらないです」
リールはそう言いながら隊服をハレアから剥ぎ取り、カイルに無造作に渡した。
「ちょっと!リール!すいません!隊服ありがとうございました!」
ハレアはカイルに深々とお辞儀をした。
「いえ……。ではお休みなさいませ」
カイルはハレアとリールに向かって小さくお辞儀をして去って行った。
「リール、カイルさんに失礼よ?」
ハレアの部屋の中に一旦リールを招き入れ、眉間にしわを寄せながら説教をした。
「だって……」
「だって?」
それ以降リールは下を向き、何も喋らなくなった。
「もう、いいよ。で?どうしたの?私を待ってたんでしょ?」
ハレアは少し呆れたように言った。
リールは小さく頷いた。
「これ……」
そう言いながら白い布をするりと外した。水色の星の形に、その真ん中には丸く透明なカプセルがあり、星の下には枝のようなものがついたものだ。
「えっ!?これ『魔法少女リリルト・リリアス』の杖じゃない!?」
ハレアは目をキラキラとさせながらリールに詰め寄った。リールは小さく頷いた。
「やっぱりそうだよね!?すごい!作ったの?リールもリリリリ読んでたの?」
「いや、この間初めて読んだ……。ハレアが昔好きだったって……」
「あれ?私そんな事言ったかな?」
「言ってたよ……」
「そっか~!」
「これ、あげる……」
リールはハレアと同じくらいの身長はありそうな杖を渡した。
「えっ、でもこれどうすれば……」
ハレアは受け取るもどうしていいのか分からない。子供時代に憧れていたものだが、大人になった今ではこれを持っている自分が少し気恥ずかしくなってしまう。
「これ、前に言ってた、魔力を魔石に移せるやつ」
「えっ?もうできたの?リールが作ったの?私のためにこの形にしたの?」
杖を持ったままリールに近寄り、質問攻めをするハレアに彼は困惑している。
「今はまだこのカプセルの中に入るサイズの魔石にしか魔力注入できないけど……」
直径十センチ程度の丸いカプセルの中に入るほどの魔石は、庶民の家庭でもよく使われているサイズのものだ。ハレアがいつも壊していたサイズより一回り小さいものになる。
「それでも十分だよ!試してみてもいい?」
「うん。でも、外ではやめた方がいいと思う。魔石の破壊にはならないけど、多分ハレアなら凄い光ると思うから……」
「そっか。光が漏れないところでやった方がいいのね!」
リールはまた小さく頷いた。
―――
「じゃあ、やるよ?」
ハレアの部屋のカーテンを閉め切り、それだけでは光が漏れてしまうかもしれないため、カーテンに掛布団を上からつるすように覆った。
カプセルの中にはハレアが父からもらった魔石の小さいものを選んで入れた。何個かカプセルの中に入れようとしたが、ロンダム家から送られてきたものの多くが握りこぶし程度の大きいものでカプセルには入らなかった。
ハレアは杖を両手で握り、魔石を壊す時と同じ要領で魔力を発散させた。すると、枝の部分から魔力が血管のように入っていき中央の魔石へと流れていった。魔石は水色に光り、石のボコボコとした表面で屈折し、部屋全体に光が飛び散った。
魔石の全体が水色になったその瞬間――
「痛っ!」
ハレアは杖を手から離してた。ビリビリと電流が走るようにハレアの腕に伝わってきたのだ。
「もしかしたら、魔力量が多すぎてハレアに戻ってきたのかも……。ごめん、もうちょっと大きい魔石が入ればそんなこともないと思うんだけど……」
リールはハレアに駆け寄って、彼女の手のひらを見た。少し赤く腫れているところが何か所かあった。
床に転がった杖の中の魔石は壊れずに水色を保っている。魔力注入が成功している証だ。
ハレアは駆け寄って床の杖を取った。
「凄い!成功してる!ありがと!リール!」
ハレアはリールに満面の笑顔を向けた。
「い、いや……約束だったから……」
リールは少しだけ嬉しそうにそう言った。
「あとはこれに入れる魔石よね……。いっそ、魔石を真っ二つにできればいいのに……」
ハレアは口を尖らせながら言った。
「無理だよ。魔石の加工は現状不可能だから……」
「そうだよね……」
「一日にこれくらいの大きさの魔石だったら何個くらい魔力注入できそう?」
「う~ん、十個くらいが限界かな?」
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