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カイルの好きなもの
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「じゃあ、おやすみ!また明日ね!」
ハレアはそう言ってチルの部屋を出た。少し赤く腫れた目のチルも「おやすみ~」と明るく挨拶をした。
「聞いていましたか?」
長い廊下を無言で歩くのが気まずくなり、ハレアがカイルに話しかけた。
「申し訳ございません。少々聞こえておりました」
カイルは立ち止まり、胸に手を置きハレアに向かって少し頭を下げた。
「いえいえ、私たちが大きな声で話していたのが悪かったので……」
ハレアは大きく手を振って、なだめた。
「チルはいつも明るく振舞っているだけでとても悩んでいるんだと痛感させられました。チルにあなたのような友人がいてよかった……」
カイルはそう言いながら少しだけ表情が柔らかくなった。本邸と別邸を繋ぐ外の渡り廊下に立ち止まっている二人は潮風のにおいに包まれた。夜でも隊服を着ているカイルだが、髪は昼間のようにカッチリとまとめられてはおらず、優しい風にふわりとなびいた。
「少し肌寒いですね」
カイルはそう言って、隊服の上着をハレアの肩にかけた。
「団長の奥様に風邪をひかせるわけにはいきませんので」
「あ、ありがとうございます」
ハレアはよく見る恋愛小説のシチュエーションに少し顔を赤らめた。
「海の方には行かれましたか?」
「いえ、まだ……。馬車から少しだけ見えました」
「でしたら、今度案内いたします」
「はい。ありがとうございます」
「ちなみに、団長がこちらに来られる予定などは聞いておりますか?」
「いえ、なにやら魔術師団の人事で揉めているとかで、お休みが取れなかったそうで……」
「あっ、そ、そうなんですね……」
カイルは少し動揺した様子で返答をした。
「カイルさんは魔術師団の第五隊でしたよね?第五隊というのは主に何をしている隊なのですか?すみません、団長の妻なのに勉強不足で……」
「いえ、そんなことはございません。第五隊というのは主に古代の魔術や魔具を研究や使用している隊です。現在では基本的に詠唱魔術を使いますが、昔は杖や本を使用して魔術を起こしたり、陣や古代語を紙や地面に書くことによって魔術を発動させていたんです。今ではそのほとんど廃れてしまいましたが、古代魔術でしか扱えないものもあるので……」
「そういえば、学校の歴史で習いました。詠唱魔術は書いたりしないで気軽に使えるから今のも残ってるって……」
「そうです。杖や本は持ち歩くのが面倒ですし、陣をいちいち書いたりするのは効率が悪い。そうして古代魔術は廃れていったんです」
「それを第五隊は使っているのですか?」
「はい。基本はそれらの保護を目的としたものです。実は古代魔術は今とは比にならないほど強大なものがあったとされています。それについて調べております。まだ謎ばかりですが。旧ルルドネア王国はかつて古代魔具に精通していました。これも古代魔具の一つです」
カイルは腰に下げている短剣のようなものに手を添えて語った。
「カイルさんは古代魔術がお好きなんですね」
「えっ?」
カイルは目を丸くして、ハレアの瞳を見た。
「だって、古代魔術のお話をするカイルさんはとても輝いていますもの」
カイルは自分を見上げ、柔らかに笑うハレアから目が離せなくなった。
「そうですね。私は古代魔術が好きなんですね」
そう自分自身に確かめるように優しく呟いた。カイルの表情がいつもの固いものから少し穏やかなものになった。
「もうそろそろ日付が変わります。お部屋へ急ぎましょう」
カイルはハレアと歩幅を合わせるようにゆっくりと歩き始めた。
ハレアはそう言ってチルの部屋を出た。少し赤く腫れた目のチルも「おやすみ~」と明るく挨拶をした。
「聞いていましたか?」
長い廊下を無言で歩くのが気まずくなり、ハレアがカイルに話しかけた。
「申し訳ございません。少々聞こえておりました」
カイルは立ち止まり、胸に手を置きハレアに向かって少し頭を下げた。
「いえいえ、私たちが大きな声で話していたのが悪かったので……」
ハレアは大きく手を振って、なだめた。
「チルはいつも明るく振舞っているだけでとても悩んでいるんだと痛感させられました。チルにあなたのような友人がいてよかった……」
カイルはそう言いながら少しだけ表情が柔らかくなった。本邸と別邸を繋ぐ外の渡り廊下に立ち止まっている二人は潮風のにおいに包まれた。夜でも隊服を着ているカイルだが、髪は昼間のようにカッチリとまとめられてはおらず、優しい風にふわりとなびいた。
「少し肌寒いですね」
カイルはそう言って、隊服の上着をハレアの肩にかけた。
「団長の奥様に風邪をひかせるわけにはいきませんので」
「あ、ありがとうございます」
ハレアはよく見る恋愛小説のシチュエーションに少し顔を赤らめた。
「海の方には行かれましたか?」
「いえ、まだ……。馬車から少しだけ見えました」
「でしたら、今度案内いたします」
「はい。ありがとうございます」
「ちなみに、団長がこちらに来られる予定などは聞いておりますか?」
「いえ、なにやら魔術師団の人事で揉めているとかで、お休みが取れなかったそうで……」
「あっ、そ、そうなんですね……」
カイルは少し動揺した様子で返答をした。
「カイルさんは魔術師団の第五隊でしたよね?第五隊というのは主に何をしている隊なのですか?すみません、団長の妻なのに勉強不足で……」
「いえ、そんなことはございません。第五隊というのは主に古代の魔術や魔具を研究や使用している隊です。現在では基本的に詠唱魔術を使いますが、昔は杖や本を使用して魔術を起こしたり、陣や古代語を紙や地面に書くことによって魔術を発動させていたんです。今ではそのほとんど廃れてしまいましたが、古代魔術でしか扱えないものもあるので……」
「そういえば、学校の歴史で習いました。詠唱魔術は書いたりしないで気軽に使えるから今のも残ってるって……」
「そうです。杖や本は持ち歩くのが面倒ですし、陣をいちいち書いたりするのは効率が悪い。そうして古代魔術は廃れていったんです」
「それを第五隊は使っているのですか?」
「はい。基本はそれらの保護を目的としたものです。実は古代魔術は今とは比にならないほど強大なものがあったとされています。それについて調べております。まだ謎ばかりですが。旧ルルドネア王国はかつて古代魔具に精通していました。これも古代魔具の一つです」
カイルは腰に下げている短剣のようなものに手を添えて語った。
「カイルさんは古代魔術がお好きなんですね」
「えっ?」
カイルは目を丸くして、ハレアの瞳を見た。
「だって、古代魔術のお話をするカイルさんはとても輝いていますもの」
カイルは自分を見上げ、柔らかに笑うハレアから目が離せなくなった。
「そうですね。私は古代魔術が好きなんですね」
そう自分自身に確かめるように優しく呟いた。カイルの表情がいつもの固いものから少し穏やかなものになった。
「もうそろそろ日付が変わります。お部屋へ急ぎましょう」
カイルはハレアと歩幅を合わせるようにゆっくりと歩き始めた。
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