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絆が軛
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佐助は、次女初を背負い茶々と手を繋いで、乳飲み子を抱えたお市と、織田の本陣へと向かっていた
『あー、誰か早く見付けてくれんかな
早いとこ、十造の応援に行か無くちゃ』
「止まれ、誰か、本陣である」
「お市様そして、三人の姫君を無事お連れ致しました」
佐助は番兵に、そう告げて、帰ろうとした
「佐助、行っちゃうの、やだ、やだ、やだ
折角友達が、出きると思うたのに」
茶々が声をかけてくる
「うん、戻らなくちゃ、そうだ、これあげるよ」
佐助は、楓にもらった、ビードロ玉を茶々に渡した
「これはなに、綺麗」
「うん、ビードロ玉って言うらしい、あげるよ
これ持ってると、絶対良いこと有るから失くすなよ
茶々、きっと又、会えるよ、ね」
持っていても、絶対に失くす気がしていたので、其くらいなら、茶々の方が大事にしてくれそうだった
「では、お市様これにて」
「佐助ご苦労でありました、十造にもそう伝えてほしい」
疲れ切ったお市が、青白い顔で礼を言った
茶々がじっと、佐助を見つめていた
佐助は、ぺこりと頭を下げて、十造達の居る方へと戻って行った
「おーい佐助、終わったぞ、帰ろう、引き揚げじゃ
腹は減ってないか、どうじゃ」
「えー終わったの、此れからだと思うたのに」
「丁度引き揚げ時よ、これ以上居ても、目の毒、耳の毒よ、お前には見せられぬ事ばかり」
この後は、女達の悲鳴やら、叫び声、男達の下卑た笑い声、打ち取った首の自慢合戦が始まろう
我等には、関わりの無いこと
引き揚げるに越したことはない
「じゃあ、帰ろうよ、十造、俺、もう良いや」
楓が佐助の肩に、そっと手をかけ、軽く揺すった
「佐助、お前が元気を見せぬから、楓が心配しておるぞ」
「うん、わかってるさ、楓ねーちゃん大丈夫だよ、何でもないよ」
「佐助これからどうする、甲賀の儂らの家に寄って行かぬか」
「え~行きたいなあ、うわ~行きてぇ、でもさ、越後の動きが怪しいんだってどうすっかな」
「構わぬ、一日位お前の足なら取り戻せように
大好きな楓ねーちゃんの、料理を食って帰れ」
「しょうがねーや、そこまで言うなら、、、」
楓がすかさず頭を叩いた
「いでっ」
「はっはっはっ、そう言う時の楓は、儂らの三倍勘が働くぞ
どうする、佐助」
「行くよ、行きます、でも腹減った」
やっと、佐助の調子が良くなって来た
「ねえ、この道はどっちに行くの、分かりにくい道ばかりだ」
「当たり前ではないか、来たことも無いくせしおって、先頭に立つお前が悪かろうに、馬鹿たれ」
楓は、楽しそうに笑っていた
佐助は、兎に角、じっとしては居らぬ奴であった
「へー、十造の家は信濃みたいなとこだね、あ、外に風呂がある、入っていいの、自分でやるから入らせて」
見るもの、聞くもの佐助は珍しくて、しょうがない、そして、楓の拵えた飯を平らげ、誰よりも先に寝てしまった
そして、朝は鳥達よりも早く起き、外へ探険に出かけたのだ
楓が布団の中で、声を出して笑っていた
十造も、起きて囲炉裏の前に来た
楓が囲炉裏の灰に、火箸で書いた、家の中で、鶏を飼っているようだと
二人で大笑いして居ると、佐助が帰って来た
「楓姉ちゃん、魚取って来たから焼いて、塩焼きが旨いよ」
また二人で笑いあう
「佐助、お前と居ると楽しいぞ、楓もそう言うとるわ」
「俺ここが、結構気に行ったから、また来るよ、来てもいい」
「楓、佐助、ここが、気に入った、又、来る」
楓が佐助の、肩や頭をぽんぽんと叩き出した
三人で佐助が取って来た魚を、おかずにして朝めしを食ってから
「十造また来るよ、楓姉ちゃんもね
弁当ありがとう
十造、ところでさ、久政って言う爺ちゃんは誰なの」
「そうか、知らないままに、話をして居ったのか、浅井長政の父親だわ、茶々達の、じいさんだ」
「へー、死を覚悟した人って、なんか、透き通った感じがしたな」
佐助は、十造と楓に見送られて、信濃へ帰って行った
十造が囲炉裏端に座って居ると、楓が隣に来て、十造の肩に頭を傾け、体を寄せた
楓の肩を抱いて、唇を寄せた
楓の、いや二人の気持ちは一緒だった
『あんな、子が居ったら楽しいだろうに』
浅井、朝倉が亡び、いよいよ、織田、徳川の力が、飛び抜けて来ていた
信長の反目に居たもの達は、その対応に迫られていた
そして、十造と楓は、言い争いをしていた
「何故じゃ、お前の言う通り、美肌の水を作る準備をしておるぞ
火薬の材料硝薬もな
何を言う、これはその原料ではないか
可笑しな奴よ、では聞くが、畑や田圃は、肥やしを撒くであろう、採れたものは、口に入れるわ、どうじゃ、汚ないか」
楓は、美肌の水の材料が、小便だと知り憤っていたのである
「たとえば、鈴蘭は、香りも良く、見た目も美しい、しかし、お前も知る通り、毒であろう
世の中には、その反対もあるのだ、第一、人の役にたっているであろうが
お前も、見たであろう、何の臭いもしない、粉ではないか」
楓が、身振り手振り筆談で言い返す
(では何故、楓だけが原料と言うか、小水を桶に溜めねば鳴らぬのですか
旦那様も溜めれば、倍に増えましょうに)
「儂のは、火薬よ、お前のは、美肌の水よ、文句があるか」
(一度、猫か犬のを混ぜてしんぜよう)
「お前のするのを、見て居るぞ、良いのか」
(見たければ、見せてあげましょうぞ)
「うぬぬぬ、言わせておけば、こうしてくれるわ」
十造は楓が、後ろを見た隙に尻を平手で叩いた
怒った楓が十造に、飛び掛かろうと構えた時に
「御免下さいまし、十造様は此方で宜しゅう御座いますか
真田の庄、才蔵様より、書状をお届けに参りました」
「ご苦労でござる、入られよ」
答えている十造の二の腕を楓が、つねりあげた
「御免下さいませ
確かにお渡し致しました、それがしは、此で失礼致します」
才蔵からの書状には、挨拶と佐助が世話になった礼、そして、仕事の誘いが書いてあった
楓に書状を渡し、十造は、囲炉裏の火を弄りながら、暫し考え込む
胡座をかいてじっと動かずにいると
横から足が、二本ぬーっと伸びてきた
「おーそうか、自分の夫に足を向けるか、この不埒者めが、成敗してくれるわ」
両足首を持って、開いてしまう、楓は、悲鳴を上げながら、抵抗していたが、十造がその間に、体ごと割り込んだ、楓が十造の首に、両手を回し顔を引き寄せる、十造も唇を寄せて、二人の一時が始まった
楓は十造の胸に、顔を乗せて、十造との激しかった余韻を過ごしていた
「のう楓、信濃に出掛ける前に、頼みたい作業が有るのだ
聞いてくれ、、、」
十造の話を楓は、十造の、胸に手を当てて聞いていた
「おお、出きそうか、それは良かった」
聞き終わった楓が、十造の胸に顔を埋めて、乳首をもてあそび出し、手で十造を刺激してきた
低い呻き声と共に、吐息を洩らす、十造を見て、楓は、嬉しそうに笑い、唇を求めて来た
十造は、恥じらって嫌がる楓を、無理矢理上に乗せて、動かせた
楓は、深い部分で十造を受入れ、悦びを増幅させて行った
七日後、十造と楓は、信濃上田付近で佐助と落ち合い、高野平城に来ていた
「佐助ここの守りは、何人位なのだ」
城といっても、砦に毛が生えた程度ではある
「多い時で八十人位、冬で三十人位だよ」
「そうか、で儂らの役目は最低、ここの守備兵を、足留めすれば良いのだな」
「うん、士気は結構高い方かな、三日後に足留めしてほしいってさ
後、応援は何人いるかって晴海が、、、」
「ふーん、取り敢えず、儂らだけでやろうわい」
「え~、たったの三人で、解ったよ、後でそう伝えるよ
で、何をするの」
「ふーむ、佐助お前今日から忙しくなるぞ、覚悟は良いか」
「今更なんだい、早く言ってくれよ」
「おう然らば、先ず生きておる、元気の良い、兜虫を無傷のまま三十程、これは、大きな雄が良い、其と、、、」
「ちょっ、十造本気なのかい、そりゃあ、直ぐに集まるけどさ」
「おう、本気よ続けるぞ、それは遅くとも、今日の夕刻までよ、儂らは火薬の準備がある
さあ、戻って各々作業を始めようではないか」
「楓、火薬はこのくらいに丸めて、少し押し潰すのだ
そう、そう、それで良いわ、今日は天気が良いわ外に出して乾かそう」
十造と楓は、用意された作業小屋で、今夜の準備をしていた
昼を過ぎた頃合いに佐助が戻って来た
「十造の注文通り、元気なでかい奴取って来たよ
楓姉ちゃんなんか無いの」
「おう、ご苦労、お前は何時も、腹を空かせておるの、まるで狼のようじゃわ」
楓はこうなる事は、わかっていたので、ちゃんと準備していた
佐助が飯を食いながら、十造に話しかけてくる
「ねえ、十造兜虫と違って、あっちの方は、かなり危ないよ、言われた様に、何時でも手配出きるけどさ」
粟の粒をぽろぽろ溢しながら、佐助が喋るので、楓が佐助の頭をひっぱたく
「いってぇ~、楓姉ちゃんも静海達と似て来たー、悲しいなー」
「わはははは、静海達は教えの為、楓は、躾の為よ、解らんか」
「良いけどね、この後はどうすんの
楓姉ちゃんお代わり」
楓は馬の様に食べる生き者が居ると、笑って佐助を見ていた
「時間はまだあるわ、食べてからにせい」
その日の夜、高野平城
佐助と楓が城の土塁近くの藪に潜んでいる
佐助はその間、十造が指示した事を思い返していた
「佐助お前は、楓と共に、爆発音がするまで待て、音に気が付いた奴らが、外に出て来たら、楓と動き出すのだ
そして、奴らの飯櫃の中やら、食器やらにこの粉を撒いてやれ、その頃には儂も落ち合う筈よ」
夜も更け、城の中は篝火が焚かれだした
城の回りは、山や森に囲まれている、辺りは真っ暗闇である、篝火だけが、唯一の光であった
突然爆発音が、闇の中に響いた、ズドドーン、パァーン
「来た、楓姉ちゃん、今だ」
楓も頷き、二人は城の周囲を囲む、土塁に近付く
十造は、佐助が昼間に採って来た、兜虫の腹に、鳥もちをつけ、その上に楓と作った火薬の団子を張り付けた、後はその兜虫を、空中にひょいと投げ上げるだけであった
兜虫は勝手に、城内の篝火に向かって、飛んで行き爆発するのだ
兵達が、わらわらと外へ出てきている、皆なにが何やら、解っては居なかった、パーン、ズダーン、まるで篝火が、破裂しているようだ、遠目にも、影が二つ土塁を、乗り越えたのが解った
「良し、行くとするか」
佐助と楓は、守備良く場内に潜入出来た
爆発は続いている、皆正体不明の、爆発に戸惑っている
二人に影が近付いて来た、十造であった
「ここまでは、順調よ、さあ、打ち合わせた通りに」
三人は丁度、晩飯を食っていた連中の、鍋やら、茶碗などへ白い粉を少しずつ、振り掛けて回った
佐助が打ち合わせの最後に聞いて来た
「ね、この粉何」
「おう、佐助も知っておる、蒟蒻よ」
「え~、蒟蒻ってあの食べる奴かい」
「おう、知る人ぞ知る、猛毒よ、きっちり、あく抜きしなければ、大変な事になるわい
口の中が兜虫の爆発よ、取り込みすぎると、命がないわ」
「ひえー、そんなにすげーの」
「おう、時々山に、自生したのがあるのよ、こやつは、野生なだけに、毒が強烈なのだ、それを採って来て、すりおろして、濾しながら、臭いを消し、水分を飛ばす
良いか佐助、決して吸いこむな、手に触れたならば、洗うのだ、心してかかれ、良いな」
「おっかねー、解ったよ、蒟蒻こえー」
「これは楓が作った薬よ、楓の言う事を聞かねば、お前も餌食よの」
「ひ~、おっかねー」
三人の作業は終わり、引き揚げ時がきた
その時佐助が十造に
「十造、あそこで、一人腕組みしている奴、あいつが、ここの頭だよ
ついでに、消してしまおうか」
「いや、待て生捕りにする、佐助お前、真田紐の細いやつ、持って居るな
楓あいつを生捕りにするのだ、何か頭に被せる物が欲しい」
頷いた楓が姿を消し、佐助も十造に真田紐を渡して、逃げ道を探しに偵察に行った
三人での仕事は、二回目だったが、随分と呼吸が合ってきた
高野平城を預かる、居林武吉は、謎の爆発を検分していたが、これは、どうやら敵の、武田方の撹乱であろうと見当を付けた
部下達に其を告げ、居室に引き揚げようとした刹那、目の前がいきなり暗くなり、息が詰まり、声が出せない、何処かえと引き摺られて行く
真っ暗で、何かに首を絞められて、其に付いて行かねば、息が続かない
居林は、嫌がる犬の様に、無理矢理に、何かを乗り越えさせられる
十造は、佐助を本陣に走らせ、人質を連れて速足で進んで行く
楓は回りの気配を探りながら、殿を努めて付いて行く
佐助が、迎えに戻って来た
「もうすぐ味方の部隊が来るよ」
十造は、唇に人差し指を立て、佐助の言葉を遮った
自分達の人数や、構成を知られたくなかったのだ
未だ、暫く此処に居る事になるのなら、其は重要な事だ、戦場に、女と子供が居るのは、矢張目立つのだ、味方にも見られる必要は無かった
三人は、真田の兵達に、無言のまま、高野平城の守備隊の頭、居林武吉を引き渡して、引き揚げた
「佐助ご苦労、今日は、此れからどうするのだ
儂らの所で休むのか」
「ううん、才蔵に言われてるんだ、二人の邪魔すんなって、其に、楓姉ちゃん疲れてても、俺の面倒見てくれるから、やめとくよ」
佐助は結構大人なのだと感心する十造がいた
楓にその事を伝えると、楓は佐助の頭をくしゃくしゃに、しだした
可愛くてしょうがないのだ
「なんだよ、姉ちゃん、やめろよ、こうしてやる」
佐助は楓の鳩尾辺りに頭を、ぐりぐりと押し付ける
「ヒヤッ、くっくっくっ」
楓が止めろとばかりに佐助の頭を、両手で、ぺんぺんと叩き出した
「わははは、止めんか、もう帰ろうぞ、では佐助、明日また来よ、楓が何か拵えておるわ」
「うん、解ったよ」
「あーそれから、鳥よりも早く来ないでくれ、頼む」
「うん、多分上手く行き過ぎたから、仕事が増えて、明日は誰かと、一緒に来るんだと思うよ、又明日」
そう、仕事が捗り過ぎたのだ、作業小屋に着いて、明日は佐助が、飯をもっと食いそうだと伝えると、楓が笑いながら、火薬の費用以上に、食費が嵩むと言う
「なんと、正しく爆薬の様な奴よ
飯代を、さっ引かねばのう
割に合わんぞ楓
、そうは思わんか」
十造が冗談で言って居るので、楓も笑いながら、火薬なら文句は言わない筈だと言う、その晩は笑いながら床に着いた
翌朝、鳥よりも少しばかり遅く、佐助と才蔵がやって来た
「楓姉ちゃん、腹減ったー、なんかないの」
楓が、満願の笑顔で飯を準備しだした
「ほう、すっかり楓は、佐助の妻の様ではないか、羨ましいの、あはははは」
「才蔵、朝早くからの訪れは、佐助が飯を食う姿が見たくて来たのかな」
「おう、済まぬ、此度の、お主達の働きを、いたく喜んでくれるお方が居てのう、どうせなら今一つ、砦を落としてくれぬかとな、、、」
「ふん、佐助でさえ、昨日そうなると言うておったわ、時間が惜しい、話を先に進めてくれ」
「うむ、では申そう
昨日、高野平城の居林を拐ってくれたお陰で、奴は此方に寝返ってくれた、まあ、城兵達は、ぼこぼこに腫れ上っておるゆえ、戦どころではないがの
しかし、三十匹の兜虫と、お主達三人で
城をひとつ手に入れた手腕は、真田に衝撃をあたえたわ」
「で、どうしろと言うのだ」
「うむ、昨日の高野平城の先には、上野稲荷城というのが有るのだが、ここの西側辺りの兵を、動けなくして欲しいのだが
どうであろうか
何しろ此方も人数が多い訳ではないからの」
「となると、攻め時を教えて貰わんとの
其に、昼夜どちらかでも、儂らの攻めが違うて来る」
「うむ、夜戦はないわ、明日の午前で考えて欲しい、良いかな」
「解った、取り急ぎ、揃えて欲しい物が有るのだ
楓、何か書くものを取ってくれぬか
なんだ佐助、お前未だ飯を食っていたのか」
「え、いいから、ほっといてよ」
「なんだって楓、犬でさえ、飯の最中に構われると、噛みつくとな、お前それで、佐助を庇っておるつもりか
わはははは」
十造は、仕事に必要な品を書き出して、才蔵に渡した
「なんだと、十造こんな物で良いのか」
「そうだ、但し当日の現場と、此処での稽古用に、二揃え頼む」
「明日も三人で良いのか、必要ならば、静海でも儂でも、何人でも出せるが」
「いや、人が多いと味方も危ないのだ
儂らだけで良いわ
此処への資財はなるべく速く頼む」
「おう、早速手配いたす、これにて御免」
才蔵が出て行った後、十造は佐助に声をかけた
「佐助、お前の準備の出来が、此度の全てよ、紙袋や竹籠の用意は大丈夫か」
「任しといて、ちゃんと手伝いも、居るから、皆これで本当に、金に成るのか、疑ってるけどね」
「そうか、しっかり払うて、信じて貰え
良し行け、頼むぞ」
「楓、薬を準備するぞ、儂は蓬を刈り取って来るわい」
佐助が帰って来た
「十造、全部終わったよ、後は明日持って来るだけだよ
あれ、なんか面白そうな事やってる」
資財が届いたので、十造は早速組み立て出した
直径二尺、長さ半間の丸太の上に、厚さ一寸五分、長さ二間半の板が、直角に渡して有る
板の一方には、物を載せられる様に、大きな笊を取り付けてあった
「おお、佐助良いところに帰って来たの、お前台の上から、この板に、飛び降りるのだ
あれの重さは、こんなものか佐助」
佐助に重さを確めさせて、笊の上に、丸めた着物を載せた
「良し、佐助飛び降りるのだ」
佐助が板の一方へ飛び降りると、反動で笊の上に載せてあった、丸めた着物が、弧を描いて飛んでいった
「うわー、凄いね、あんなに遠く飛んでったよ
でも、十造どうやって、当たりを操作するのさ」
「二通りある、飛ぶ位置や、勢いを調節して重さをかえるのだ、そして、もうひとつ、丸太と板の位置をずらすのだ
やってみい」
「あ、凄いや、なんとなく、解って来たよ、十造」
「そうか、どのみち、此はお前の役だからして」
「楓は、石弓で兜首の狙撃、儂は全体の監視となろう
佐助、其に慣れたら、飯にして、帰って明日にそなえろ、良いな」
「うん、解ったよ
もう少し、もう少しやらせて」
翌朝三人は、受け持った、上野稲荷城の西側に待機して、城攻めの合図を待っていた
十造は高い木の上から、全体の景色を見ていた
楓と佐助は地上にいて、合図を待っている
ダダーン、ズダダーン、銃声が二発、楓にも解るように、佐助に手を振って合図を送る
楓が佐助の飛び乗る板の籠に、壺を載せた、中には、酒、酢、蜂蜜を混ぜて、煮詰めた物が入っている
佐助が、踏み台がわりの木から、板の上に飛び降りた、最初の壺が、城を目掛けて飛んでいった、偶然にも櫓の開口部へと吸い込まれて行った、二個目、三個目と場内へと落ちて行く、十造は佐助に本番開始を合図した、此処から、打ち合わせ通り、佐助一人の仕事になる、楓は、石弓での狙撃をするために、十造が居る隣の木へ登って来た
佐助の本格的な攻めが始まった、笊の上に、簡単な竹籠で覆われた、和紙の袋が置かれた、佐助が十造に、手を上げて合図をした、十造が頷いた
其は、城内目掛けて飛んでいった、何かポーンと呑気な音がしそうな、とても戦の光景では無かった
佐助は、ひとつ目が地上に落ちるのを見ないで、二発、三発と無くなるまで、都合十五回続けたのだった
作業が終わった佐助は、楓の手子をするためにも、木へ登って自分の仕事を確めた
今日は晴れているのに、景色が霞んで見えた、違う、良く見ると何かが、沢山翔んでいる、佐助が地元の民を雇って、手に入れた、蜂、其も雀蜂が、戦の終わった場所の蝿よりも、飛び交っていたのだ
蜂の群れは怒り狂っていた、巣を壊されおまけに、護らなければならない蜂の子が、剥き出しになっている
そして、大好物の蜜蜂の臭いが充満していた、狂乱状態にならない訳がなかった
西側の城兵達は、最初は、何が始まったのか解らなかった
何処からか、何か飛んできて、酒臭い液を撒き散らす、そして、ブーンと言う音と共に、悲鳴があちらこちらから、聞えだした
雀蜂だ、山国の此処でも蜂の子は食う、中でも、黄色い雀蜂の子は、一番脂が乗っていて上手い、そして蜂の中でも、一番危険なことも知っていた、何より蜂の毒針も恐ろしいのだが、カチカチと牙を鳴らして噛みつかれた時の、激痛も恐ろしいのだ
刺された、噛みつかれた事がある者は、脂汗が出る、其は心の奥に刻まれた恐怖からだった
足軽など軽装の者から、被害が大きくなっている
既に部隊としての、まとまりは無かった
その間にも、蜂は益々、増えてきた
軽装の者達は、外へと逃げ出した、そうして、雲霞のごとく集り来る、蜂の攻撃に合っていた、既に動かなくなった者もいた
遂に鎧武者が外へと姿を現した
楓は、直ぐに仕留めると、次が来なくなると思い、わざと暫く泳がせた、頃合いを見て出入口の死角に来たところで、喉に向けて、石弓の矢を放った、狙い通りだ、登って来た佐助が次の的を教える、当てる、その繰り返しで、五、六人の鎧武者を屠った
この一連の仕事で、西側の制圧は終わった様なものであった
楓の手子も、用が無くなった佐助が、十造の居る木へと移って来た
銃声が三発鳴り響く
「良し合図だ、佐助、楓と石弓を代われ
儂らは、蜂を始末して来る」
十造と楓は、飛び交う蜂の群れに、蓬や除虫菊を焚いて、燻し始めた
するとあんなに、元気良く飛んでいた蜂の群れが、ぽとぽとと墜ちて来る、作業は、そんなに時を待たずに、終わりを迎えた
その時、建物の縁の下から、鎧武者が一人と、二人の足軽が出てきた
恐らくほとぼりが冷め、静かになったのを確めて、出てき来たのだろう
三人共に蜂に刺されて、
顔が腫れていた
鎧武者が、十造に斬りかかった、十造は、右足で地面の土をほじくりかえして、土を掬い上げ、鎧武者の顔に目潰しを見舞う、素早く懐に入り込み、脇差しを奪った、鎧武者の背後に回り、いきなりしゃがみ込み、鎧武者の股間に脇差しを突き立てた
背後に風を感じて、直ぐに横へ移った、槍が振り下ろされた、足軽二人が槍で突いて来る、いきなり一人が倒れこんだ、楓が盆の窪を突いたのだろう
最後の一人は、十造に向き合った途端、喉から、槍の穂先が飛び出した
楓が拾い上げた槍で、刺したのだった
佐助はそんな事になっている二人から、完全に目を離していた
佐助が木から降りてきて、十造のもとに来た
「馬鹿たれっ、誰が持場を離れろと言うたのか、仲間を死なせるつもりか、さっさと戻らぬか」
佐助から笑顔が消えていた
十造に対し、素直に返事をする
「はい」
佐助は、元の自分の持場へと戻って行った
楓は、十造の風を感じた、佐助が居たのだが、十造の合図は無かった、我等の仕事が終わったと思い、勝手に動いたのだ
仕事が終わり引き揚げる、帰り道は、三人して無言だった
佐助が悄気ていた、何時もの元気がまるでなかった
作業小屋の前まで来た時、楓は、佐助の肩を抱きながら、十造に、少し佐助に話しがあるから、先に小屋へ入って欲しいと伝えた
頷いた、十造はそうした、小屋へ入って火を焚べ、湯を沸かす、何気に炉端で、火を弄って居ると、佐助が入って来た
「ご免なさい、楓姉ちゃんから、四郎さんの事を聞かせて貰ったよ、話すのがあんなに苦手なのに、一生懸命話してくれた、本当にご免なさい
もう二度と、勝手に動かない、約束するよ
楓姉ちゃんに、悲しい思い出を話させてしまって、本当にご免なさい
仲間を危険な目にあわせて御免なさい
う、う、う、っ」
「佐助こっちへ来い」
十造は佐助の肩を抱いて、静かに語り出した
「良いか、才蔵や静海が、お前に厳しいのは、お前が好きだからよ、死んで欲しくは無いからよ、皆仲間を失った事が有るのだ、楓が悲しい思い出を、お前に話したのも、お前に死んで欲しくないからよ
今は未だ、解らないかも知れぬが、お前にも必ずそう言う時が訪れる、忘れるな」
「うん、解ったよ」
「さあ、楓の作った飯を食え」
「いや、いいよ、今日は帰るよ
又、明日来るよ」
「そうか、明日は元気良く来るのだぞ、でないと楓が悲しむぞ」
「解ってる、帰るよ」
佐助と入れ替わりに、楓が小屋の中に入って来て、十造の横に座り、体を預けた、十造は楓の肩を抱いて、囲炉裏の火を見つめて居る
その晩、疲れた二人は抱き合って寝てしまう
朝、鳥の声が聞え出した途端に、楓が布団から飛び出した
「おはよう、十造、楓姉ちゃん」
何時もの佐助が戻って来た
「姉ちゃん飯出来た、いでっ、何で、何で叩くのさ」
十造は佐助の後ろから、そっと近付き羽交い締めにした
「馬鹿め楓は、お前の飯炊き女ではないわ、それっ楓、こやつを懲らしめろ」
楓は、佐助の頭を両手で、笑顔で何度も、ぺしぺしと叩いた
「あだだだ、止めて、止めて、そう言えば才蔵が後で来るってさ」
「十造、此度は活躍してくれた、改めて礼を申す
見事な働き、恐れ行った」
「何の、佐助を誉めてやってくれ、儂らは、此で終わっても良いのかの」
「おう、真田の仕事は、終わったのよ
もともと、武田の家臣としての、仕事であった故、此度はこれにて」
「そうか、では明日にでも、立つわい
その前に、武田の話しでも、聞かせてくれんか」
「そうだの、以前に、お主と話した通りよ、勝頼様と従来からの、家来衆との間が、どうにもこうにも」
「駄目か、止める者無しで良いのか」
「頼みの綱の、山県昌景様が匙を投げたわ」
「ほう、其でも真田は未だ、、、」
「うむ、其でも真田は、武田の家臣よ
今は待つのみ
未だ武田の力は強大であるからの」
「織田が、仕掛けを待って、おるのでは無いのか」
「ああ、其よ嫌な予感しかせぬわ
其はそうと、佐助をこのまま暫く、使って見てはくれぬか
いずれ真田が、独立するまで未だ日が有るのだ
それまで、お主の 元に置いたほうが、何かと、経験が積めそうに思えてならぬ
どうかのう、勿論必要な金は払う」
「いや、金は本人がもう稼げるわ
ただのう、お主なら解ろう、儂らは、佐助に情が入り込み過ぎる
正直辛い時があってのう、楓と少し話をしてからで良いか」
「おお、それは正常な者が持つ考えよ、当然と言えよう
儂らも、お主達にしか頼む事は無いのだ、
答えは、直ぐでなくとも、良いわ
佐助もお主達でなければ、行くとは言わぬ」
佐助は、一月後甲賀にいて、楓に飯を催促していた
『あー、誰か早く見付けてくれんかな
早いとこ、十造の応援に行か無くちゃ』
「止まれ、誰か、本陣である」
「お市様そして、三人の姫君を無事お連れ致しました」
佐助は番兵に、そう告げて、帰ろうとした
「佐助、行っちゃうの、やだ、やだ、やだ
折角友達が、出きると思うたのに」
茶々が声をかけてくる
「うん、戻らなくちゃ、そうだ、これあげるよ」
佐助は、楓にもらった、ビードロ玉を茶々に渡した
「これはなに、綺麗」
「うん、ビードロ玉って言うらしい、あげるよ
これ持ってると、絶対良いこと有るから失くすなよ
茶々、きっと又、会えるよ、ね」
持っていても、絶対に失くす気がしていたので、其くらいなら、茶々の方が大事にしてくれそうだった
「では、お市様これにて」
「佐助ご苦労でありました、十造にもそう伝えてほしい」
疲れ切ったお市が、青白い顔で礼を言った
茶々がじっと、佐助を見つめていた
佐助は、ぺこりと頭を下げて、十造達の居る方へと戻って行った
「おーい佐助、終わったぞ、帰ろう、引き揚げじゃ
腹は減ってないか、どうじゃ」
「えー終わったの、此れからだと思うたのに」
「丁度引き揚げ時よ、これ以上居ても、目の毒、耳の毒よ、お前には見せられぬ事ばかり」
この後は、女達の悲鳴やら、叫び声、男達の下卑た笑い声、打ち取った首の自慢合戦が始まろう
我等には、関わりの無いこと
引き揚げるに越したことはない
「じゃあ、帰ろうよ、十造、俺、もう良いや」
楓が佐助の肩に、そっと手をかけ、軽く揺すった
「佐助、お前が元気を見せぬから、楓が心配しておるぞ」
「うん、わかってるさ、楓ねーちゃん大丈夫だよ、何でもないよ」
「佐助これからどうする、甲賀の儂らの家に寄って行かぬか」
「え~行きたいなあ、うわ~行きてぇ、でもさ、越後の動きが怪しいんだってどうすっかな」
「構わぬ、一日位お前の足なら取り戻せように
大好きな楓ねーちゃんの、料理を食って帰れ」
「しょうがねーや、そこまで言うなら、、、」
楓がすかさず頭を叩いた
「いでっ」
「はっはっはっ、そう言う時の楓は、儂らの三倍勘が働くぞ
どうする、佐助」
「行くよ、行きます、でも腹減った」
やっと、佐助の調子が良くなって来た
「ねえ、この道はどっちに行くの、分かりにくい道ばかりだ」
「当たり前ではないか、来たことも無いくせしおって、先頭に立つお前が悪かろうに、馬鹿たれ」
楓は、楽しそうに笑っていた
佐助は、兎に角、じっとしては居らぬ奴であった
「へー、十造の家は信濃みたいなとこだね、あ、外に風呂がある、入っていいの、自分でやるから入らせて」
見るもの、聞くもの佐助は珍しくて、しょうがない、そして、楓の拵えた飯を平らげ、誰よりも先に寝てしまった
そして、朝は鳥達よりも早く起き、外へ探険に出かけたのだ
楓が布団の中で、声を出して笑っていた
十造も、起きて囲炉裏の前に来た
楓が囲炉裏の灰に、火箸で書いた、家の中で、鶏を飼っているようだと
二人で大笑いして居ると、佐助が帰って来た
「楓姉ちゃん、魚取って来たから焼いて、塩焼きが旨いよ」
また二人で笑いあう
「佐助、お前と居ると楽しいぞ、楓もそう言うとるわ」
「俺ここが、結構気に行ったから、また来るよ、来てもいい」
「楓、佐助、ここが、気に入った、又、来る」
楓が佐助の、肩や頭をぽんぽんと叩き出した
三人で佐助が取って来た魚を、おかずにして朝めしを食ってから
「十造また来るよ、楓姉ちゃんもね
弁当ありがとう
十造、ところでさ、久政って言う爺ちゃんは誰なの」
「そうか、知らないままに、話をして居ったのか、浅井長政の父親だわ、茶々達の、じいさんだ」
「へー、死を覚悟した人って、なんか、透き通った感じがしたな」
佐助は、十造と楓に見送られて、信濃へ帰って行った
十造が囲炉裏端に座って居ると、楓が隣に来て、十造の肩に頭を傾け、体を寄せた
楓の肩を抱いて、唇を寄せた
楓の、いや二人の気持ちは一緒だった
『あんな、子が居ったら楽しいだろうに』
浅井、朝倉が亡び、いよいよ、織田、徳川の力が、飛び抜けて来ていた
信長の反目に居たもの達は、その対応に迫られていた
そして、十造と楓は、言い争いをしていた
「何故じゃ、お前の言う通り、美肌の水を作る準備をしておるぞ
火薬の材料硝薬もな
何を言う、これはその原料ではないか
可笑しな奴よ、では聞くが、畑や田圃は、肥やしを撒くであろう、採れたものは、口に入れるわ、どうじゃ、汚ないか」
楓は、美肌の水の材料が、小便だと知り憤っていたのである
「たとえば、鈴蘭は、香りも良く、見た目も美しい、しかし、お前も知る通り、毒であろう
世の中には、その反対もあるのだ、第一、人の役にたっているであろうが
お前も、見たであろう、何の臭いもしない、粉ではないか」
楓が、身振り手振り筆談で言い返す
(では何故、楓だけが原料と言うか、小水を桶に溜めねば鳴らぬのですか
旦那様も溜めれば、倍に増えましょうに)
「儂のは、火薬よ、お前のは、美肌の水よ、文句があるか」
(一度、猫か犬のを混ぜてしんぜよう)
「お前のするのを、見て居るぞ、良いのか」
(見たければ、見せてあげましょうぞ)
「うぬぬぬ、言わせておけば、こうしてくれるわ」
十造は楓が、後ろを見た隙に尻を平手で叩いた
怒った楓が十造に、飛び掛かろうと構えた時に
「御免下さいまし、十造様は此方で宜しゅう御座いますか
真田の庄、才蔵様より、書状をお届けに参りました」
「ご苦労でござる、入られよ」
答えている十造の二の腕を楓が、つねりあげた
「御免下さいませ
確かにお渡し致しました、それがしは、此で失礼致します」
才蔵からの書状には、挨拶と佐助が世話になった礼、そして、仕事の誘いが書いてあった
楓に書状を渡し、十造は、囲炉裏の火を弄りながら、暫し考え込む
胡座をかいてじっと動かずにいると
横から足が、二本ぬーっと伸びてきた
「おーそうか、自分の夫に足を向けるか、この不埒者めが、成敗してくれるわ」
両足首を持って、開いてしまう、楓は、悲鳴を上げながら、抵抗していたが、十造がその間に、体ごと割り込んだ、楓が十造の首に、両手を回し顔を引き寄せる、十造も唇を寄せて、二人の一時が始まった
楓は十造の胸に、顔を乗せて、十造との激しかった余韻を過ごしていた
「のう楓、信濃に出掛ける前に、頼みたい作業が有るのだ
聞いてくれ、、、」
十造の話を楓は、十造の、胸に手を当てて聞いていた
「おお、出きそうか、それは良かった」
聞き終わった楓が、十造の胸に顔を埋めて、乳首をもてあそび出し、手で十造を刺激してきた
低い呻き声と共に、吐息を洩らす、十造を見て、楓は、嬉しそうに笑い、唇を求めて来た
十造は、恥じらって嫌がる楓を、無理矢理上に乗せて、動かせた
楓は、深い部分で十造を受入れ、悦びを増幅させて行った
七日後、十造と楓は、信濃上田付近で佐助と落ち合い、高野平城に来ていた
「佐助ここの守りは、何人位なのだ」
城といっても、砦に毛が生えた程度ではある
「多い時で八十人位、冬で三十人位だよ」
「そうか、で儂らの役目は最低、ここの守備兵を、足留めすれば良いのだな」
「うん、士気は結構高い方かな、三日後に足留めしてほしいってさ
後、応援は何人いるかって晴海が、、、」
「ふーん、取り敢えず、儂らだけでやろうわい」
「え~、たったの三人で、解ったよ、後でそう伝えるよ
で、何をするの」
「ふーむ、佐助お前今日から忙しくなるぞ、覚悟は良いか」
「今更なんだい、早く言ってくれよ」
「おう然らば、先ず生きておる、元気の良い、兜虫を無傷のまま三十程、これは、大きな雄が良い、其と、、、」
「ちょっ、十造本気なのかい、そりゃあ、直ぐに集まるけどさ」
「おう、本気よ続けるぞ、それは遅くとも、今日の夕刻までよ、儂らは火薬の準備がある
さあ、戻って各々作業を始めようではないか」
「楓、火薬はこのくらいに丸めて、少し押し潰すのだ
そう、そう、それで良いわ、今日は天気が良いわ外に出して乾かそう」
十造と楓は、用意された作業小屋で、今夜の準備をしていた
昼を過ぎた頃合いに佐助が戻って来た
「十造の注文通り、元気なでかい奴取って来たよ
楓姉ちゃんなんか無いの」
「おう、ご苦労、お前は何時も、腹を空かせておるの、まるで狼のようじゃわ」
楓はこうなる事は、わかっていたので、ちゃんと準備していた
佐助が飯を食いながら、十造に話しかけてくる
「ねえ、十造兜虫と違って、あっちの方は、かなり危ないよ、言われた様に、何時でも手配出きるけどさ」
粟の粒をぽろぽろ溢しながら、佐助が喋るので、楓が佐助の頭をひっぱたく
「いってぇ~、楓姉ちゃんも静海達と似て来たー、悲しいなー」
「わはははは、静海達は教えの為、楓は、躾の為よ、解らんか」
「良いけどね、この後はどうすんの
楓姉ちゃんお代わり」
楓は馬の様に食べる生き者が居ると、笑って佐助を見ていた
「時間はまだあるわ、食べてからにせい」
その日の夜、高野平城
佐助と楓が城の土塁近くの藪に潜んでいる
佐助はその間、十造が指示した事を思い返していた
「佐助お前は、楓と共に、爆発音がするまで待て、音に気が付いた奴らが、外に出て来たら、楓と動き出すのだ
そして、奴らの飯櫃の中やら、食器やらにこの粉を撒いてやれ、その頃には儂も落ち合う筈よ」
夜も更け、城の中は篝火が焚かれだした
城の回りは、山や森に囲まれている、辺りは真っ暗闇である、篝火だけが、唯一の光であった
突然爆発音が、闇の中に響いた、ズドドーン、パァーン
「来た、楓姉ちゃん、今だ」
楓も頷き、二人は城の周囲を囲む、土塁に近付く
十造は、佐助が昼間に採って来た、兜虫の腹に、鳥もちをつけ、その上に楓と作った火薬の団子を張り付けた、後はその兜虫を、空中にひょいと投げ上げるだけであった
兜虫は勝手に、城内の篝火に向かって、飛んで行き爆発するのだ
兵達が、わらわらと外へ出てきている、皆なにが何やら、解っては居なかった、パーン、ズダーン、まるで篝火が、破裂しているようだ、遠目にも、影が二つ土塁を、乗り越えたのが解った
「良し、行くとするか」
佐助と楓は、守備良く場内に潜入出来た
爆発は続いている、皆正体不明の、爆発に戸惑っている
二人に影が近付いて来た、十造であった
「ここまでは、順調よ、さあ、打ち合わせた通りに」
三人は丁度、晩飯を食っていた連中の、鍋やら、茶碗などへ白い粉を少しずつ、振り掛けて回った
佐助が打ち合わせの最後に聞いて来た
「ね、この粉何」
「おう、佐助も知っておる、蒟蒻よ」
「え~、蒟蒻ってあの食べる奴かい」
「おう、知る人ぞ知る、猛毒よ、きっちり、あく抜きしなければ、大変な事になるわい
口の中が兜虫の爆発よ、取り込みすぎると、命がないわ」
「ひえー、そんなにすげーの」
「おう、時々山に、自生したのがあるのよ、こやつは、野生なだけに、毒が強烈なのだ、それを採って来て、すりおろして、濾しながら、臭いを消し、水分を飛ばす
良いか佐助、決して吸いこむな、手に触れたならば、洗うのだ、心してかかれ、良いな」
「おっかねー、解ったよ、蒟蒻こえー」
「これは楓が作った薬よ、楓の言う事を聞かねば、お前も餌食よの」
「ひ~、おっかねー」
三人の作業は終わり、引き揚げ時がきた
その時佐助が十造に
「十造、あそこで、一人腕組みしている奴、あいつが、ここの頭だよ
ついでに、消してしまおうか」
「いや、待て生捕りにする、佐助お前、真田紐の細いやつ、持って居るな
楓あいつを生捕りにするのだ、何か頭に被せる物が欲しい」
頷いた楓が姿を消し、佐助も十造に真田紐を渡して、逃げ道を探しに偵察に行った
三人での仕事は、二回目だったが、随分と呼吸が合ってきた
高野平城を預かる、居林武吉は、謎の爆発を検分していたが、これは、どうやら敵の、武田方の撹乱であろうと見当を付けた
部下達に其を告げ、居室に引き揚げようとした刹那、目の前がいきなり暗くなり、息が詰まり、声が出せない、何処かえと引き摺られて行く
真っ暗で、何かに首を絞められて、其に付いて行かねば、息が続かない
居林は、嫌がる犬の様に、無理矢理に、何かを乗り越えさせられる
十造は、佐助を本陣に走らせ、人質を連れて速足で進んで行く
楓は回りの気配を探りながら、殿を努めて付いて行く
佐助が、迎えに戻って来た
「もうすぐ味方の部隊が来るよ」
十造は、唇に人差し指を立て、佐助の言葉を遮った
自分達の人数や、構成を知られたくなかったのだ
未だ、暫く此処に居る事になるのなら、其は重要な事だ、戦場に、女と子供が居るのは、矢張目立つのだ、味方にも見られる必要は無かった
三人は、真田の兵達に、無言のまま、高野平城の守備隊の頭、居林武吉を引き渡して、引き揚げた
「佐助ご苦労、今日は、此れからどうするのだ
儂らの所で休むのか」
「ううん、才蔵に言われてるんだ、二人の邪魔すんなって、其に、楓姉ちゃん疲れてても、俺の面倒見てくれるから、やめとくよ」
佐助は結構大人なのだと感心する十造がいた
楓にその事を伝えると、楓は佐助の頭をくしゃくしゃに、しだした
可愛くてしょうがないのだ
「なんだよ、姉ちゃん、やめろよ、こうしてやる」
佐助は楓の鳩尾辺りに頭を、ぐりぐりと押し付ける
「ヒヤッ、くっくっくっ」
楓が止めろとばかりに佐助の頭を、両手で、ぺんぺんと叩き出した
「わははは、止めんか、もう帰ろうぞ、では佐助、明日また来よ、楓が何か拵えておるわ」
「うん、解ったよ」
「あーそれから、鳥よりも早く来ないでくれ、頼む」
「うん、多分上手く行き過ぎたから、仕事が増えて、明日は誰かと、一緒に来るんだと思うよ、又明日」
そう、仕事が捗り過ぎたのだ、作業小屋に着いて、明日は佐助が、飯をもっと食いそうだと伝えると、楓が笑いながら、火薬の費用以上に、食費が嵩むと言う
「なんと、正しく爆薬の様な奴よ
飯代を、さっ引かねばのう
割に合わんぞ楓
、そうは思わんか」
十造が冗談で言って居るので、楓も笑いながら、火薬なら文句は言わない筈だと言う、その晩は笑いながら床に着いた
翌朝、鳥よりも少しばかり遅く、佐助と才蔵がやって来た
「楓姉ちゃん、腹減ったー、なんかないの」
楓が、満願の笑顔で飯を準備しだした
「ほう、すっかり楓は、佐助の妻の様ではないか、羨ましいの、あはははは」
「才蔵、朝早くからの訪れは、佐助が飯を食う姿が見たくて来たのかな」
「おう、済まぬ、此度の、お主達の働きを、いたく喜んでくれるお方が居てのう、どうせなら今一つ、砦を落としてくれぬかとな、、、」
「ふん、佐助でさえ、昨日そうなると言うておったわ、時間が惜しい、話を先に進めてくれ」
「うむ、では申そう
昨日、高野平城の居林を拐ってくれたお陰で、奴は此方に寝返ってくれた、まあ、城兵達は、ぼこぼこに腫れ上っておるゆえ、戦どころではないがの
しかし、三十匹の兜虫と、お主達三人で
城をひとつ手に入れた手腕は、真田に衝撃をあたえたわ」
「で、どうしろと言うのだ」
「うむ、昨日の高野平城の先には、上野稲荷城というのが有るのだが、ここの西側辺りの兵を、動けなくして欲しいのだが
どうであろうか
何しろ此方も人数が多い訳ではないからの」
「となると、攻め時を教えて貰わんとの
其に、昼夜どちらかでも、儂らの攻めが違うて来る」
「うむ、夜戦はないわ、明日の午前で考えて欲しい、良いかな」
「解った、取り急ぎ、揃えて欲しい物が有るのだ
楓、何か書くものを取ってくれぬか
なんだ佐助、お前未だ飯を食っていたのか」
「え、いいから、ほっといてよ」
「なんだって楓、犬でさえ、飯の最中に構われると、噛みつくとな、お前それで、佐助を庇っておるつもりか
わはははは」
十造は、仕事に必要な品を書き出して、才蔵に渡した
「なんだと、十造こんな物で良いのか」
「そうだ、但し当日の現場と、此処での稽古用に、二揃え頼む」
「明日も三人で良いのか、必要ならば、静海でも儂でも、何人でも出せるが」
「いや、人が多いと味方も危ないのだ
儂らだけで良いわ
此処への資財はなるべく速く頼む」
「おう、早速手配いたす、これにて御免」
才蔵が出て行った後、十造は佐助に声をかけた
「佐助、お前の準備の出来が、此度の全てよ、紙袋や竹籠の用意は大丈夫か」
「任しといて、ちゃんと手伝いも、居るから、皆これで本当に、金に成るのか、疑ってるけどね」
「そうか、しっかり払うて、信じて貰え
良し行け、頼むぞ」
「楓、薬を準備するぞ、儂は蓬を刈り取って来るわい」
佐助が帰って来た
「十造、全部終わったよ、後は明日持って来るだけだよ
あれ、なんか面白そうな事やってる」
資財が届いたので、十造は早速組み立て出した
直径二尺、長さ半間の丸太の上に、厚さ一寸五分、長さ二間半の板が、直角に渡して有る
板の一方には、物を載せられる様に、大きな笊を取り付けてあった
「おお、佐助良いところに帰って来たの、お前台の上から、この板に、飛び降りるのだ
あれの重さは、こんなものか佐助」
佐助に重さを確めさせて、笊の上に、丸めた着物を載せた
「良し、佐助飛び降りるのだ」
佐助が板の一方へ飛び降りると、反動で笊の上に載せてあった、丸めた着物が、弧を描いて飛んでいった
「うわー、凄いね、あんなに遠く飛んでったよ
でも、十造どうやって、当たりを操作するのさ」
「二通りある、飛ぶ位置や、勢いを調節して重さをかえるのだ、そして、もうひとつ、丸太と板の位置をずらすのだ
やってみい」
「あ、凄いや、なんとなく、解って来たよ、十造」
「そうか、どのみち、此はお前の役だからして」
「楓は、石弓で兜首の狙撃、儂は全体の監視となろう
佐助、其に慣れたら、飯にして、帰って明日にそなえろ、良いな」
「うん、解ったよ
もう少し、もう少しやらせて」
翌朝三人は、受け持った、上野稲荷城の西側に待機して、城攻めの合図を待っていた
十造は高い木の上から、全体の景色を見ていた
楓と佐助は地上にいて、合図を待っている
ダダーン、ズダダーン、銃声が二発、楓にも解るように、佐助に手を振って合図を送る
楓が佐助の飛び乗る板の籠に、壺を載せた、中には、酒、酢、蜂蜜を混ぜて、煮詰めた物が入っている
佐助が、踏み台がわりの木から、板の上に飛び降りた、最初の壺が、城を目掛けて飛んでいった、偶然にも櫓の開口部へと吸い込まれて行った、二個目、三個目と場内へと落ちて行く、十造は佐助に本番開始を合図した、此処から、打ち合わせ通り、佐助一人の仕事になる、楓は、石弓での狙撃をするために、十造が居る隣の木へ登って来た
佐助の本格的な攻めが始まった、笊の上に、簡単な竹籠で覆われた、和紙の袋が置かれた、佐助が十造に、手を上げて合図をした、十造が頷いた
其は、城内目掛けて飛んでいった、何かポーンと呑気な音がしそうな、とても戦の光景では無かった
佐助は、ひとつ目が地上に落ちるのを見ないで、二発、三発と無くなるまで、都合十五回続けたのだった
作業が終わった佐助は、楓の手子をするためにも、木へ登って自分の仕事を確めた
今日は晴れているのに、景色が霞んで見えた、違う、良く見ると何かが、沢山翔んでいる、佐助が地元の民を雇って、手に入れた、蜂、其も雀蜂が、戦の終わった場所の蝿よりも、飛び交っていたのだ
蜂の群れは怒り狂っていた、巣を壊されおまけに、護らなければならない蜂の子が、剥き出しになっている
そして、大好物の蜜蜂の臭いが充満していた、狂乱状態にならない訳がなかった
西側の城兵達は、最初は、何が始まったのか解らなかった
何処からか、何か飛んできて、酒臭い液を撒き散らす、そして、ブーンと言う音と共に、悲鳴があちらこちらから、聞えだした
雀蜂だ、山国の此処でも蜂の子は食う、中でも、黄色い雀蜂の子は、一番脂が乗っていて上手い、そして蜂の中でも、一番危険なことも知っていた、何より蜂の毒針も恐ろしいのだが、カチカチと牙を鳴らして噛みつかれた時の、激痛も恐ろしいのだ
刺された、噛みつかれた事がある者は、脂汗が出る、其は心の奥に刻まれた恐怖からだった
足軽など軽装の者から、被害が大きくなっている
既に部隊としての、まとまりは無かった
その間にも、蜂は益々、増えてきた
軽装の者達は、外へと逃げ出した、そうして、雲霞のごとく集り来る、蜂の攻撃に合っていた、既に動かなくなった者もいた
遂に鎧武者が外へと姿を現した
楓は、直ぐに仕留めると、次が来なくなると思い、わざと暫く泳がせた、頃合いを見て出入口の死角に来たところで、喉に向けて、石弓の矢を放った、狙い通りだ、登って来た佐助が次の的を教える、当てる、その繰り返しで、五、六人の鎧武者を屠った
この一連の仕事で、西側の制圧は終わった様なものであった
楓の手子も、用が無くなった佐助が、十造の居る木へと移って来た
銃声が三発鳴り響く
「良し合図だ、佐助、楓と石弓を代われ
儂らは、蜂を始末して来る」
十造と楓は、飛び交う蜂の群れに、蓬や除虫菊を焚いて、燻し始めた
するとあんなに、元気良く飛んでいた蜂の群れが、ぽとぽとと墜ちて来る、作業は、そんなに時を待たずに、終わりを迎えた
その時、建物の縁の下から、鎧武者が一人と、二人の足軽が出てきた
恐らくほとぼりが冷め、静かになったのを確めて、出てき来たのだろう
三人共に蜂に刺されて、
顔が腫れていた
鎧武者が、十造に斬りかかった、十造は、右足で地面の土をほじくりかえして、土を掬い上げ、鎧武者の顔に目潰しを見舞う、素早く懐に入り込み、脇差しを奪った、鎧武者の背後に回り、いきなりしゃがみ込み、鎧武者の股間に脇差しを突き立てた
背後に風を感じて、直ぐに横へ移った、槍が振り下ろされた、足軽二人が槍で突いて来る、いきなり一人が倒れこんだ、楓が盆の窪を突いたのだろう
最後の一人は、十造に向き合った途端、喉から、槍の穂先が飛び出した
楓が拾い上げた槍で、刺したのだった
佐助はそんな事になっている二人から、完全に目を離していた
佐助が木から降りてきて、十造のもとに来た
「馬鹿たれっ、誰が持場を離れろと言うたのか、仲間を死なせるつもりか、さっさと戻らぬか」
佐助から笑顔が消えていた
十造に対し、素直に返事をする
「はい」
佐助は、元の自分の持場へと戻って行った
楓は、十造の風を感じた、佐助が居たのだが、十造の合図は無かった、我等の仕事が終わったと思い、勝手に動いたのだ
仕事が終わり引き揚げる、帰り道は、三人して無言だった
佐助が悄気ていた、何時もの元気がまるでなかった
作業小屋の前まで来た時、楓は、佐助の肩を抱きながら、十造に、少し佐助に話しがあるから、先に小屋へ入って欲しいと伝えた
頷いた、十造はそうした、小屋へ入って火を焚べ、湯を沸かす、何気に炉端で、火を弄って居ると、佐助が入って来た
「ご免なさい、楓姉ちゃんから、四郎さんの事を聞かせて貰ったよ、話すのがあんなに苦手なのに、一生懸命話してくれた、本当にご免なさい
もう二度と、勝手に動かない、約束するよ
楓姉ちゃんに、悲しい思い出を話させてしまって、本当にご免なさい
仲間を危険な目にあわせて御免なさい
う、う、う、っ」
「佐助こっちへ来い」
十造は佐助の肩を抱いて、静かに語り出した
「良いか、才蔵や静海が、お前に厳しいのは、お前が好きだからよ、死んで欲しくは無いからよ、皆仲間を失った事が有るのだ、楓が悲しい思い出を、お前に話したのも、お前に死んで欲しくないからよ
今は未だ、解らないかも知れぬが、お前にも必ずそう言う時が訪れる、忘れるな」
「うん、解ったよ」
「さあ、楓の作った飯を食え」
「いや、いいよ、今日は帰るよ
又、明日来るよ」
「そうか、明日は元気良く来るのだぞ、でないと楓が悲しむぞ」
「解ってる、帰るよ」
佐助と入れ替わりに、楓が小屋の中に入って来て、十造の横に座り、体を預けた、十造は楓の肩を抱いて、囲炉裏の火を見つめて居る
その晩、疲れた二人は抱き合って寝てしまう
朝、鳥の声が聞え出した途端に、楓が布団から飛び出した
「おはよう、十造、楓姉ちゃん」
何時もの佐助が戻って来た
「姉ちゃん飯出来た、いでっ、何で、何で叩くのさ」
十造は佐助の後ろから、そっと近付き羽交い締めにした
「馬鹿め楓は、お前の飯炊き女ではないわ、それっ楓、こやつを懲らしめろ」
楓は、佐助の頭を両手で、笑顔で何度も、ぺしぺしと叩いた
「あだだだ、止めて、止めて、そう言えば才蔵が後で来るってさ」
「十造、此度は活躍してくれた、改めて礼を申す
見事な働き、恐れ行った」
「何の、佐助を誉めてやってくれ、儂らは、此で終わっても良いのかの」
「おう、真田の仕事は、終わったのよ
もともと、武田の家臣としての、仕事であった故、此度はこれにて」
「そうか、では明日にでも、立つわい
その前に、武田の話しでも、聞かせてくれんか」
「そうだの、以前に、お主と話した通りよ、勝頼様と従来からの、家来衆との間が、どうにもこうにも」
「駄目か、止める者無しで良いのか」
「頼みの綱の、山県昌景様が匙を投げたわ」
「ほう、其でも真田は未だ、、、」
「うむ、其でも真田は、武田の家臣よ
今は待つのみ
未だ武田の力は強大であるからの」
「織田が、仕掛けを待って、おるのでは無いのか」
「ああ、其よ嫌な予感しかせぬわ
其はそうと、佐助をこのまま暫く、使って見てはくれぬか
いずれ真田が、独立するまで未だ日が有るのだ
それまで、お主の 元に置いたほうが、何かと、経験が積めそうに思えてならぬ
どうかのう、勿論必要な金は払う」
「いや、金は本人がもう稼げるわ
ただのう、お主なら解ろう、儂らは、佐助に情が入り込み過ぎる
正直辛い時があってのう、楓と少し話をしてからで良いか」
「おお、それは正常な者が持つ考えよ、当然と言えよう
儂らも、お主達にしか頼む事は無いのだ、
答えは、直ぐでなくとも、良いわ
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佐助は、一月後甲賀にいて、楓に飯を催促していた
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でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
『お前を愛する事はない』なんて言ってないでしょうね?
あんど もあ
ファンタジー
政略結婚で妻を娶った息子に、母親は穏やかに、だが厳しく訊ねる。
「『お前を愛する事は無い』なんて言ってないでしょうね?」
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