薬の十造

雨田ゴム長

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青空

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空は、雲一つ無い、晴天であった
真田の部隊は、茶臼山を出て、徳川本陣へと向かって行った、その陣形は、正に弓の矢であった、その矢は、一直線に、徳川家康に向かって飛んで行った
信繁は、少し前に、主だった者達を集め、最後の話をしていた

「良いか先鋒であろうが、次鋒であろうが、目指すは、徳川家康のみぞ、他はどうでも良い、邪魔建てする者だけを、相手にするのだ、他は捨て置け、まかり間違うても、絶対に引くな、皆の者にそう伝えよ、さあ、いざ出陣ぞ、支度をせよ」

真田隊の限られた人数で、今出来る最良で、最後の策であった

巨大な戦力の徳川隊は、その軍勢を何段にも分けて、敵方が、徳川本陣へと、攻め込むのを、阻止する構えをとっていた
どの部隊にも余裕があった、と言うよりも、最初からわかっていた事なのだ
時は、既に徳川へと移り豊臣恩顧の大名達も、既に、迂闊には動けぬよう、手配がされていた
後は、豊臣方と最後まで心中するつもりの、跳ね返り共を、片付ければ良いだけであったのだが、、、

三郎が佐助に気を遣い、新しい仕事を持って来た、流石に、真田信繁隊の、最後を偵察させるのは、偲びなかった

「どうだ、佐助、京の都を探りに、行ってはくれぬか」

「三郎殿俺らならば、気を使ってくれなくとも大丈夫、信之様にも、報せなくてはならぬし、お願いです、誓って余計な動きはしませぬゆえ、行かせてくだされ」

「そうか、もう何も言わぬ、佐助、真田の部隊を見張るのだ」

「はっ、抜かり無く」

佐助は、真田信繁隊を探して駆け出した、恐らく戦場となりそうな、徳川の最前線となる木の上で、六文銭の旗印を持っていた

銃声と大砲の音が鳴り響くなか、硝煙の中から鬨の声と共に、地響きやら鎧擦れの音と共に、真田六文銭の旗印が、一気にやって来た、斬り合う、槍で叩き合う、そんな戦いでは無かった
真田の部隊は、満を持して放たれた、弓の矢であった、目標はあくまでも、徳川の本陣、家康の首、唯それだけの為に、邁進している

先鋒が、徳川の先陣に、襲いかかっている間に、次鋒は前に進んでいた、徳川の陣形が、真田の攻撃の速さについて行けない、先ず徳川本陣に、報せが入る

「真田の部隊が本陣に迫りつつあります、今のうちに後方へと行かれた方がよろしいかと、、、」

「馬鹿を申せ、たかだか、三千の兵に、何を狼狽えておるか、さっさと、かたずけてしまわぬか」

「申しあげます、真田の部隊が迫っております、ここは、旗本衆にお任せを、陣を速やかに、後方へ引いて下さいませ」

最早、家康が自分の目で見なくとも、どよめきと、戦の音が、ずんずんと、家康に迫り来る

「引け、引けーぃ、殿を御守りしながら、後方へ引くのだ、急げ、何をしておるか」

もう少し、後僅かで、家康の本陣へと攻め懸かる事が出来る、真田の部隊は、前がかりに押して来る、徳川方は、防戦に追われると言うよりも、家康を守る事に必死であった

真田の部隊は止まらない、逃げる家康が見えた、目標が見える

「いたぞー、かかれー、もう少しでとどくわ、今ぞ、逃すなー、本懐を遂げるのだー」

家康は、陣の位置を変えて、どうにか一息付けそうであった、流石に、真田の攻撃は、敵ながら大したものであると、感心する余裕も見せていた

「申しあげます、真田の部隊が迫りつつあります、急ぎ、陣をお引き下さいませ」

「何と、もう既に迫りおるか」

又もや慌てて、馬印も打ち捨てて、後方へ引く準備をする
皆が家康から注意を反らした、その時、黒い影が、本陣に忍び込んだ、手槍を携えた、その影は、家康の首目掛けて、手槍を突き刺す体制にあった、突然銃声が響き、家康に向かっていた、黒い影が崩れ落ちた、黒い影は、才蔵であった、その眉間には、丸い孔が開いていた、鉄砲で狙撃されていた、撃ったのは三郎である、幸か不幸か佐助からは、見えなかった、仰向けに倒れた才蔵の目は、青い空を見つめていた

才蔵に遅れて、真田の部隊が家康を追って来た、もう一息であった、家康にしてみれば、正に間一髪、真田の攻撃は、弓の矢である、勢い良く放たれた矢は、家康に向かって飛んで来た、だが、どんな強弓から放たれた矢でも、飛び続けることは出来ない、いつか勢いを失い、地面に落ちる
その時が来た、朝から何の補給もなく、援軍もなく唯々突き進んで来た、最早、気力、体力全てを使い尽くし、残りの兵は僅かになってしまった、痛みだの苦しみだの、そんなものはとうに感じてはいない、自分が生きているのか、どうかも定かではなかった
二回目の家康本陣突撃が、最後であった、真田信繁は仲間とはぐれ、その身を、近くの神社で休めていた

ふと、空を見上げると、青い空が広がっていた、上田も晴れておるのかなと、信繁は埒もない事を考えた、既に精も根も尽きて、動く事が辛かった

「名の有る、お方とお見受け申す、いざ勝負願いたい」

「おう、そうか、儂は疲れた、この首を持って、手柄にせよ」

信繁は、見上げた空から、目を離さずに、相手にそう告げた、雲一つ無い青空が、最後に見た景色であった

才蔵と真田信繁の人生が終わってしまった
空は、雲一つ無い青空である、真田の部隊は雲の様に消えて行く

佐助は才蔵を探していた、どうしても見つからない、首の無い死体も多々有る、その場合は、才蔵がどれだか、益々わからない、ため息をついて諦めた

その方が、かえって才蔵が、未だ生きている様な気になれたのだ

「大野、女中宮ノ前に伝えよ、わたくしを、見届けずとも良いと、早く逃げるように伝えよ」

「はっ、先程千姫様は、無事に徳川方へ引き渡しましてございます」

「わかりました、秀頼殿、それでは、母は先に旅に出ます、大野後を頼みます」

茶々は、もう何も考えてはいなかった、血の気の失せた青白い顔は、穏やかで、落ち着いていた、懐刀をスッと引き抜くと、静かに目を瞑り、体重をかけて、前に倒れた

大坂の城に、兵達が、出て行った時よりも、随分と数を減らして戻って来る、遠くの郭から煙らしきものが見える、宮ノ前は、淀様の最後を、見届けようと、淀様に呼ばれるのを待っていた、部屋に待っていると、城代大野治長の使いが現れ、宮に告げた

「淀の方様は、先程、秀頼様と共に、御自害あそばされた、よってその方は、速やかに、この城を出よ、淀の方様からもその様に、、、」

「わかりました、、、」

実に呆気ないものだった、最後に何か話したかったのだが、それすらもできぬとは、、、
城内は、既に火の手に阻まれ、仕方なく旅装束に着替え、城から引き上げる事にした、城内は既に混乱していた、火の手は激しく、あちこちで略奪も始まっていた

大広間の前に、一人の若武者が、静かに座っていた

「如何なさいました、逃げませぬのか」

「中では、最後の儀を行っております、邪魔が無いよう、番をしております」

「わたくしは、淀様のお付きで、宮と申します、あなた様は、どうなさいますので、、、もし、宜しければ、お名前をお聞かせ下さいませ」

「私は、真田信繁が長男、幸昌、皆が終わり次第に、私も後を、、、」

「え、信繁様のご長男、で、信繁様は、、、」

「父とは、戦場ではぐれてしまいました、さあ、早く行かねば、お逃げなされ」

覚悟を決めた顔があった、宮はその場を離れた
城を出るのは、易い事であった、誰もが自分の事で精一杯なのだ、最後の門を抜け、宮は城を向いて、淀様への手向けのつもりで、両手を合わせ、頭を下げた
久しぶりの、城外は、雲一つ無い青空であった

「こんな良い天気に、殺し合いとはね、やだやだ、早く何処かに行こう」

何日か前に、宮は淀様に呼ばれ話をしていた

「宮ノ前、そなたには、大変世話になりました、京の都に、泉屋と言う呉服屋が有ります、そこへ寄って、この目録を渡しなさい、わたくしの気持ちです、それと、これを持っていると、幸せになれるそうです、幼い頃に佐助から貰いました、わたくしには、もう必要がありませぬ、宮ノ前が持っておれば良い」

それは、小さなビードロ玉が入った、匂い袋であった
今思えば、淀様は、既に落ち着いた顔つきで、運命を受け入れる覚悟が出来ていたようである

佐助は、立ち竦んでいた、首を並べた場所にいた、そこには、見馴れた顔ばかり、どれも傷付いて、戦闘の激しさを物語っていた
そして、あった、真田信繁の、あの見馴れた顔が、、、
佐助は、自分を不思議がっていた、涙が出て来ない、あれ程世話になったのに、そして、もう一つ、才蔵の首が無かった、もしや生きておるのかもしれぬ、少しばかりの望みを持って、三郎に、人を探して来たいと申し出た

「ほう、未だ生きておる者もおるのか、行くが良い、ただし、城に戻った者は、その殆どが、死を選んだ、佐助の仲間ならば、上田に戻ったのやも知れぬではないか」

「ああ、そうだよね、だと良いのだが、、、」

「む、さ、佐助、儂について来い、心当たりが有る」

三郎に連れて行かれた、そこには、土饅頭があった

「真田の二度目の、攻めで、後僅かで家康様を、殺られるところであった、儂が鉄砲で仕留めた、忍であろうから、打ち捨てておかれたが、儂も忍、弔いはできぬが、せめて埋めてやること位ならとな、もし、佐助が探しておる人物ならば、腕から言うても、この人物と思う、許せ佐助」

「三郎殿、殺るか殺られるかの世界で生きておる、儂等に、謝る必要などありませぬ、よくぞ埋めていただきました、礼を申し上げます、才蔵も相手が貴方ならば、悔いは有りますまい」

「佐助、既に城は落た、最早、儂からの命は無い、才蔵殿に別れを告げたなら、みなの待つ、上田に戻るが良い、儂が全ての手配をしておく
落ち着いたら、儂は一度上田に参ろうと思う」

三郎は、佐助の肩を軽くたたいて、戻って行った
佐助は、竹の水筒や野に咲く花等を用意して、才蔵の墓に供えた、のろのろと、歩きながら、途中で食べ物も供えようと、乾飯を手に入れこれも供えてやった
青空が何処までも続く、何も無い、寂しい空であった
佐助は、才蔵が眠る土饅頭の前で、膝をついて手を合わせ、泣いた、無情なこの世を恨んだ、初めて青空が寂しく見えた、まるで海の底の様だ、この辺りの、戦闘は終わり、部隊も移動して行った、何も聞こえない、たとえ聞こえたとしても、佐助の耳には、届かない、しばらくして、佐助は、立ち上がり、才蔵が眠る土饅頭に、話しかけた

「才蔵、もう行くね、上田に帰るよ、御免よ連れて帰れなくてさ、あんなに世話になっておきながら、こんな寂しいところで、、、」

佐助は、大坂の城も落ちた事を知り、茶々の最後を悟った、後は、宮が上手く逃れたかどうかであったが

『万が一にも、心配は無用よな』

そう呟いて、佐助は上田に帰る決心をした
戦も終わり、信繁も才蔵も失った、もうここに居てもしょうがない、家族の元に帰るのだ、忍の稼業は棄て、十造の、畑や薬を手伝い、ずっと家族と過ごすのだ、信之様にそう伝えよう、佐助は、そう心に誓い上田を目指した、早く家族に会いたさが、佐助の脚を軽くしていた、もう戦も何もかも、争い事から解き放たれた、明るい気持ちが甦って来た

畑を耕す十造は、フッと手を休めて、空を見上げた、上空をトンビがのんびりと、輪を描いてピーヒョロロと鳴いていた
上田にいる十造でさえ、戦が終わり、徳川の勝が決まったと聞いた
もうすぐ、佐助が帰って来るはずである、まだほんの、半月ばかりしかたっていないのに、家族皆が元気を無くしていた
遠くの方から、何か拍子木を叩く音が、十造に向かって近づいて来る、カンカンカンカンと、楓が十助を背負い、乾いた薪を叩いてあやしながら、十造の居る畑に来たのだ、楓は音の強弱がわからないので、物凄い音を出していたのだ
楓が泣き笑いで、十造のところに来た

「しゃしゅけ、しゃしゅけ」

十造の目は、見る間に潤み涙が溢れた、静かに楓を抱きしめ、言葉が出ない、楓も十造に抱きしめられ、胸の中で、声を出して鳴いていた
直ぐに家に戻ろうとした、十造を、楓が止めた

『おお、そうか、佐助と波瑠を暫し、二人きりにしてやらねばの』

十造は、楓が背負っていた、十助を下ろさせ、三人で鬼ごっこをしだした

「ほうれ、十助、じいじが鬼よ、捕まえて食べてしまうぞー」

十助は、キャーキャー叫びながら、楓ばぁばのところへかけて行く
十造は、鬼ごっこをしていた、幸せを感じながら、楓と泣きながら、何時までも続けた
その前、波瑠が洗い物をして、何気に振り返ると、佐助が立っていた、波瑠は、洗っていた茶碗を落とすと、両手で顔を覆ったまま、泣き崩れた、そのまま、佐助の胸で泣き続ける、楓が十助を背負い、外に出て行った、畑に居る十造を、呼びに行ったに違いない
佐助も涙が止まらない、これでもう、ずっと家族と一緒に居られるのだ、波瑠が、胸にしがみついたまま離れない、嬉しかった、心の底から、喜びが溢れ出る
それでも、波瑠は、泣きながら、佐助の為に、膳やらなにやら、いそいそと、支度をし出した、時々佐助が居るかどうか、振り向きながら、確めながら、、、佐助は、そんな波瑠を見て、嬉しくてしょうがなかった

「なあ波瑠、俺らはもう、何処にも行かぬわ、これからは、皆ずーっと一緒に居るのよ」

波瑠が台所から、囲炉裏にかけ上る勢いで、佐助の首にしがみついた、二人は抱き合い、唇を合わせた
波瑠の涙が止まらない、嬉しくてしょうがなかった、もう、ずっと旦那様と一緒に、十助と暮らせるのだ、殺しの話しも聞かなくて済むのだ、いくらでも泣いてやる、、、そう思うと嬉し涙が止まらない

家の外から、十造のこえが聞こえた

「佐助帰ったか、お役目ご苦労、波瑠、酒を用意せい、わはははは、楓も波瑠も、もう、良いではないか、さあ佐助の祝いをしようぞ」

「でも、とーちゃん、、、、」

「待て、佐助、弔いの話しと酒は、明日にしようではないか、今日は家族の無事再会の祝いぞ、お前も、文句はあるまい、波瑠、風呂はどうした、皆全て済ませて、祝いをしようではないか」

「旦那様、わたくしもそう思います、風呂に入られましな、久しぶりに、十助を洗って下さいませ」

十造の家は、夜通し賑やかであった
次の日から、佐助は十造と畑に出て行った、昼に皆でむぎの墓を参り、その横に才蔵の、遺髪を埋めて、手を合わせた
その後は暫く、静かな日々が訪れた

上田の街道を吹く風は、夏だと言うのに、涼しく清らかであった、肌に粘り付く湿気も感じなかった、城下の町は、田舎とはいえ、それなりの活気があった

「ぎゃー、痛いよー、痛いよー、助けてー」

突然子供の叫び声が聞こえ、あたりが騒然とし出した、何だろうと見に行くと、どうやら、荷車に、子供が轢かれたらしい、一見元気に叫んではいるが、内臓が破裂しているのであろう、口から血を噴いていた、最早、どちらかと言うと、、、

「済まぬ、退いてくれぬか、儂は医者である、見せてくれ」

医者であると、名乗った人物はまだ、若かった、周りの者達は、道を開け、口々に

「静庵様がお見えだ、道をあけい、静庵様だ」

静庵が荷車に轢かれた、子供の前に来ると、一人の女が子供の様子を見てやっていた

「む、しまった、持ち合せが無いわ、この子の親が来る前に、何とか、、、そこのお女中、阿片、若しくは、石見銀山、あるいは、鳥兜、青梅の種は持っておるまいか」

静庵は、女に小声で話しかけた

「はっ、はい、な、何の事やら」

「時間がない、この子の親が来る前に、早う、有るのか、無いのか」

女は、意を決したように

「鳥兜ならば、少しばかり」

「上出来よ、お女中が野次馬の、気を反らして居る間に、儂がこの子の口の中へ、、、残念であるが、儂の医術では無理なのだ」

「はい、わかりました、お医者様、わたくしが、水を請うて参ります、その間にこの子に、、、」

女は、おもむろに立ち上がり、集まって居る者達に語りだした

「何方か、水を頼みたいのですが、この子に水をやりたいのです」

大声で叫 ぶ女に、皆の注意が注がれる間に、静庵は素早く、子供に猛毒の、鳥兜を飲ませた

『済まぬな、苦しまないで、行ってくれ、誰にもお前を、治す事ができないのだ、済まぬ』

静庵が、水を飲ませたのが、子供にとって末期の水となってしまった
そうして、子供の母親が駆けつけた時には、その子は
絶命していた

奉行所やら町名主やらも、知らせを聞いて、わらわらと集まりだした
静庵は、女にまた小声で話しかけた

「ここに居ては、長引く、そおっと、姿を眩まそうではないか、貴方もその方が宜しかろう」

にこりと笑うその顔は、爽やかで好ましい、女は素直に頷いた
二人はそっと人混みの輪の中を抜け出した
静庵と呼ばれた男は、途中で、ある一軒の家の前で立ち止まり、女に待って居るように伝え、家の中へと入って行った
やがて、風呂敷包みを手にぶら下げて、出て来た

「先程は、ご苦労をかけてしまいました、貴方の心に負担を掛けてしまった、この先の社の境内で、休もうでは有りませんか、どうですか」

「はい、喜んで、でもお医者様はお忙しいのでは、、、」

「なあに、暇ではないですが、一緒に仕事をした仲間と、遅い朝飯を食べる位の時間は有りますよ」

二人は階段に腰を掛け、握り飯を分け有った

「おお、申し遅れました、儂は、静庵、若狭静庵と申す者、貴方は、、、」

「わたくしは、宮と申します、静庵様、どうして、わたくしが、毒を持っているなどと、わかったのですか」

「はあ、先ず、あのような凄惨な場で、誰よりも落ち着き払っておった事は、人の死を見慣れておる人、あるいは産婆様、そして何よりも、何と言うのか、儂の身の回りの、親しき人々と貴方の雰囲気が、同じでありました、ああ、でも貴方の方が、随分と、、、若くて美しいが、、、」

何故か宮は、心が弾んだ、其は、美しいと言われたからではなく、一緒に居ると心が穏やかになる、楽しいのだ、水の入った竹の水筒や、漬け物を並べながら、世話がたのしく、嬉しかった、そして、、、

『えっ、ひょっとして、この人は、忍、、、いやいや、そんな影など何処にもない、所詮、あたしみたいな者とは、住む世界が違うのさ』

「ところで、宮殿は、どちらに行くのか、急ぎでないならば、今日は、儂の家に泊まってゆかれよ、こう見えても、そなたが泊まる部屋くらいはあるが、、、先程の、詫びをせねば気が済まぬ故」

「とんでも御座居ませぬ、この、朝の用意だけで、宮は十分でございます」

「そうか、残念だのう、まあ、無理に引き留めても、せんなき事、久しぶりに、酒飲み相手が、出来そうであったに」

何と諦めの良いこと、素直な人であろう、男女の駆引きなど、この御方には、関係無いのか、、、

「こう見えても、助けられなかった命があると、落ち込んでのう、そんな時誰かに、話を聞いて欲しくなるのだ、いや、すまなんだ、引き留めてしまった、儂の我が儘を許されよ」

「良いのです、そう言うことなら、喜んで私が、静庵様の、話し相手になりましょう」

「わははは、そうか、宮殿、忝ない、そうしてくれるか、さあ、それでは、早う儂の家に行こう、さあさあ」

宮は、自分に戸惑っていた、もっとこの人の喜ぶ顔を見たい、ただ単に、それだけの気持ちしかなかった、生まれて初めての気持ちに、ドキドキしていた
この、ふわふわとした、曖昧な、雲の中に居る気持ち

宮は、素直に自分の気持ちを静庵に伝えた

「はい、静庵様、今日は、宜しくお願い申します、どうか、私の事は、宮と呼んで下さいまし」

「宮は何が好みか、何か食べたい物でも有るか」

「いいえ、今宵は私が静庵様に拵えましょう、何が宜しいでしょう」

「うーん、思い浮かばぬ、きっと、今宵は、酒と宮が居れば大宴会よ」

街道を歩きながら、宮は、静庵の後ろを付いて行く、正面から騎馬武者が現れた、その武士は、静庵を見るなり、下馬をして挨拶をしてきた

「これは、静庵様、ご無礼致しました」

「何の、気にせずとも、城で会いましょう」

「はっ、では、御免下さいませ」

武士は、去って行った

「静庵様、あなた様は、もしや御殿医でしたか、何とまあ」

「はは、ここ上田の真田信之様は、出来た御方で、ご自分の身体よりも、領民が心配で、儂はこうして、城下の人々も、診察しておるのだ」

「流石に、真田の家系は傑物ばかりですね、父上様も、弟様も」

「宮は、詳しいの、何か会った事が有るような、物言いよ」

不味い、素直になりすぎて、すっかり警戒心を無くしていた宮であった

「そりゃあ、真田と申せば、知らない者など居りませぬもの、違いますか」

「ふむ、まあ良いわ、おう、じい様の具合はどうか、まだ、薬は有るのか」

静庵とすれ違う人々は、皆挨拶をしてきた、宮は静庵が慕われて居ること、人気が有るのだと感心していた

やがて、武家屋敷の様な建物に、招き入れられ、宮は旅の装束を解いた

女の気配の欠片もない、味もそっ気もない、屋敷ではあった、どうやら、患者以外は、女の出入りなど無いのであろう

「静庵様、このお屋敷には、静庵様の他には、誰も居られぬのですか」

「そうなのだ、弟子たちは、皆地元の通いの者ばかりなのでな、些かこの広さを、もて余しておるのだ」

「でも、掃除は行き届いておるような」

「あはは、そもそもが一人住まい、散らかし様も無いわ、それに、時たま妹が、掃除に来てくれる、連れて来る子が、大暴れする位よ、儂の父は、薬売りでな、この人が作ってくれる、健康茶が旨いのだ、今入れてしんぜよう、待っておれ」

「あれ、そんなことは、わたくしが致します、静庵様こそお座り下さいまし」

慣れぬ台所に苦心しながら、宮は静庵に茶を入れた
そうして二人で飲んでいると、来客があった

「裏木戸からの客は、儂個人の客なのだ、誰であろう」

暫くして、静庵が皿一杯の団子を持って来た

「はは、儂と宮が歩いておるのを見て、作ってくれたのだ、宮は団子が好きか、売る程あるわ、食べてくれ、おや、また誰か来よった」

今度は饅頭を持って来た、飯まで届いた

「静庵様は、大人気ですね、その内に、誰かが嫁も連れて来るのでは、、、」

「うん、以前はその様な事もあったに、さすがに、受け取れぬわ、そんなことをすれば、あそこの娘は良くて、何故うちの娘は、、、となってしまうではないか」

静庵は、妹の波瑠以外で、若い女とこんなに長く話をしたのは初めてであった、それにしても、初対面なのに、話をするのが楽しかった

「それにしても、今夜は買い物になど、行かぬほうがよいですね」

「うむ、儂の予想では、次あたりは、酒が届くはずよ、おっ、客が来おった、どれ」

静庵が戻ると、手には徳利を提げていた

「おっほっほっ、予想が当たりましたな、たいそう愉快な話があったものですね、何故でしょうか」

「実はな、町人からは、銭を受け取ってはおらぬゆえ、彼等にすると、その代わりの、つもりやも知れぬ、銭ならば、信之様からの給金で、暮らして行けるしの」

宮は、感動すら覚えた、こんなに欲の無い人が、この世におったのか、まるで修験者の様ではないか
そりゃあ、嫁も来ぬわけよ、苦労しそうなのが目に見える、忙しく働くだけの医者など面倒見きれぬ、でも、そこがまた、、、

宮は静庵に、風呂やら、食器やらの在処を尋ね、やおら、襷をかけて動き始めた

「どうしたと言うのだ宮、
座っておれば良いものを」

「宮は今夜を静庵様と楽しく過ごす為に支度をします、診療も有るでしょうに、どうぞ、行ってらっしゃいまし」

静庵は、弟子達が驚く程に、張り切って仕事をしていた、顔つきが違っていた
それはどこか、浮わついておるような、何か楽しき事でも、待ち受けておるような、、、

夕刻近くに、静庵が戻ると、宮が三つ指付いて出迎えてくれた

「お疲れ様でございました、風呂が沸いてございます」

至れり尽くせりとは、正にこの事、静庵はたいそう喜んだ
風呂から上がると、浴衣が
揃えて置いてある、感動の連続であった

宮は、こんなに喜ぶ静庵に、思い付く限りの世話をした、奥女中の時の、やって当然と言う感じの男達に比べ、余程上等な人である

「さあ、宮も湯に浸かって来ぬか、旅で疲れておるだろうに、なんなら、儂が足を洗うてやろうか」

宮は泣きそうになった、働いたもの、旅に出ていた者は、一日の終わりに、先ず足を洗う、助平な男達は、背中を流そうかなどと、言ってくる、静庵は誰とも違い、本当の労いを言ってくれた
好きにならずにいられない、宮は、生まれて初めて、好きな人が出来た、そして、この気持ちを、どうして良いのか、わからなかった
恋をして抱かれた事など、一度もない、くノ一の役目や、塞ぎ込んだ気持ちを、発散させるために、男達に抱かれて来たのだ

風呂上がりの宮は、格別に綺麗だった、静庵はそんな宮を、見ているだけで嬉しい
町の住民達が、持って来てくれた、食べ物や飲み物で、二人はにこやかに過ごした、忽ちに時が過ぎ、すっかり夜も更けた
静庵は、明日も仕事である、宮が片付け出した

「何とまあ、時の流れが速い事よ、宮とおると、楽しいばかり、もてなそうとしたが、反対にもてなされてしもうた、面倒をかけたのう」

「宮の方こそ、楽しく過ごせました、静庵様のお陰です、明日も仕事で御座いましょう、今床を延べますゆえに、暫しお待ちを」

「宮、待ってくれぬか、話を聞いて欲しくての、まだ座ってくれ」

「何で御座いましょう、あらたまって」

「うむ、そのな、もし急ぐ旅で無いのならば、当分の間、ここに居てはくれぬか、駄目かの、そうも行かぬか、、、」

宮がにこりと笑いながら

「急ぐ旅では、御座いませぬ、喜んで居させて頂きます」

「おお、そうか、ははははは、良かった、久しぶりに良い日となった、、、」

宮は、クスッと笑いながら、酔って寝てしまった、静庵にそっと丹前をかけ、床の準備をし出した
心が充実していた、兎に角静庵の、面倒を見るのが楽しい、そばに居るだけで嬉しい、宮は、その内に厭きて、自分から出て行くまで、ここに居ようと決めて、床についた

早いもので、五日が過ぎようとしていた、宮は洗濯をしていた、自分が、男物の洗濯をしているのが可笑しくて仕方がない、それ以上に、手も握らずに、男と一つ屋根の下で、暮らして居る自分が不思議であった
そんな自分を笑いながら、機嫌良く手を動かしていた
そんな時、不意に気配を感じ、つい、仕事の癖を出してしまった

「誰、出て来な」

振り返ると、自分と同じくらいの、若い女が子供の手を引いて立っていた、波瑠と十助であった
十助は、宮の気を敏感に感じ、泣き出した

「ああ、申し訳ございません、洗濯に夢中で、突然の気配に驚いてしまいました、おお、泣かないで坊や、御免なさい、まあ、どうしましょう」

「わたくしの方こそ、申し訳ございません、兄の一人住まいだったもので、勝手知ったる、何とかのつもりで、入って参りました、十助、もう泣かないの、ほらッ」

「まあ、静庵様の妹様でございましたか、わたくしは、宮と申します、静庵様から、お話は聞いております、どうぞ、御上がり下さいまし、今静庵様を呼びに行って参ります」

「ああ、良いのです、兄は、仕事の最中は、出て来ませぬ、こら、十助抱き付くな」

十助は、宮に抱き付いたまま、離れない

「あははは、どうぞ中へ、わたくしが言うのも可笑しいですが」

座敷へ上がり、波瑠は部屋の中が、綺麗になっている事に、感心すると同時に、宮が何日かこの家に、滞在中であろう事に、気が付いた

『ふーん、兄上も、随分とお綺麗な人を、、、これは、間違いないでしょう』

「さあ、茶をどうぞ、十助は、団子をどうぞ、はい」

少しの間、話をして波瑠は急いで、家に帰り、皆にこの事を報告した

「何と、あの堅物が、む、む、む、む、む、これはひょっとして、祝言が近いのか」

家族一同色めきたった、楓までもが、落ち着かぬ
久々の、楽しい話題に、飢えていたのだ
波瑠が言う

「あの御方ならば、兄上にお似合いです、十助もすっかり懐いてしまって」

「おお、そうか幼子が、懐くのならば、良い人に違い無かろう、上手く行けば良いな、何れにしても、何か心が弾む様ではないか」

「あっ、それと、とーさま、かーさま、波瑠にもう一人子が、、、」

「わははは、なんじゃ、早う言わぬか、今までか酷すぎたのよ、楽しみが色々出来て、嬉しいのう、のう楓」

「ほう、波瑠と十助が来たか、そう言えば、あちらには、暫く顔を出していなかった、気候も程よい、行ってみるとするか」

「あんなに、可愛らしい妹様がいらして、兄としても鼻が高いでしょうに」

「そう言えば、宮には親、兄弟は居らんのか、、、」

「はい、わたくしは、孤児でして、親などは、知りもしませぬ、、、」

「す、済まぬ、許してくれ、このとおりだ、つい、宮の事が知りたくての、それだけなのだ、他意は無いのだ、済まぬ」

宮の限界が来ていた、この人が好きだった、厭きたら出て行こうと、思って居たが、どんどん深みに呑み込まれる、もっと早くに出会っていたなら、、、

「いいえ、わたくしの事に関心を持っていただいて、嬉しゅうございます」

「おお、そうか、何しろ儂は、宮の事が好きでのう、出会った時から、どうして良いのか、わからなかったのだ、宮とおると儂は、その、何と言うか、、、」

宮は、嬉しくて気が狂いそうであった、こんなに素朴な口説き文句を聞いたことがなかった

「静庵様、わたくしも、あなた様に出会った時から、あなたが、好きになりました、でも、、、」

「宮、儂は宮と夫婦になりたい、儂はお前と、これからも、一緒に暮らしたいのだ駄目か」

宮は自分を、自分の人生をこれ程憎んだ事はなかった
今までが、どーでも良い人生であった、気儘に男に抱かれ、仕事で抱かれ、結構な贅沢も出来た、しかし、愛とは無縁であった、運命とは残酷だ、最後に、こんなに素晴らしい人に、会わせるなんて
そう、明日、明日が来れば

「静庵様、宮はもう一晩、考えとうございます、返事は、明日でも、、、」

「何を言うか、返事など何時でも良い、宮がここに居るだけで、儂は、儂は、楽しいのだ」

「今宵はもう、遅く成りました、もうお休み下さい、明日も又、忙しくなります故に」

二人は互いの部屋へと戻り、静庵は寝てしまった、
布団に入った宮は、大きなため息をつき、両手で顔を覆った、そして、何かを決心し、やがて静かな寝息をたてた

「静庵様、今日も、元気に行ってらっしゃいませ」

「おう、宮は今日も宮だのう」

静庵が仕事場に行ってから、宮は、荷造りを始めた、もうここに来ることは無いのだ、大した荷物が有るわけでもなかった

裏木戸をくぐって、振り向き、ペコリと頭を下げて、江戸にでも向かおうかと、歩き出した

すれ違う人が、皆頭を下げて挨拶をしてくる、何と言う事か、何時の間にやら、どこの誰かが、わかってしまっていた

方法の体で、街道に出た、いきなり背中に、何かぶつけられた
振り向くと、佐助が立っていた

「よう、暫くだな宮、これから何処に向かうのだ」

「ふん、何も無いよ、江戸にでも行くかな」

そこへ突然、十助が現れて宮に抱き付いて来た、そして、波瑠も現れた

「宮殿、出掛けるのなら、仰って下さいましな、兄上は、ああ見えて、寂しがりやです、まして一番大切なあなた様がいなければ、この、上田の医療が大変な事になります、どうか、考え直して下さいまし」

そして、一番会いたくて、会ってはならない人が出て来た

「宮、出掛けるのなら、何故儂も誘わぬか、水くさいぞ、儂は、誰の前でも、恥ずかしくは無いぞ、宮、大好きな宮、出掛けるのなら儂も誘わぬか」

宮は崩れ落ちた、大声で泣いた、静庵が初めて宮の肩を抱いてくれた、嬉しくて嬉しくて、また泣いた

佐助も波瑠も、安心していた、家族が増えるのだ

「兄上、俺達は帰るよ、又ね、宮もね」

「佐助殿、わたくしは、貴方の義理の姉になります、姉上様と呼ぶのが礼儀です、違いますか、佐助」

「くっ、あ、ね、う、え、さ、ま
これで宜しいか」

「まあ、良いでしょう、さあ、旦那様、わたくしは、気が変わりました、屋敷へ戻りましょう」

波瑠が喜んでいた、佐助も文句はなかった
静庵と宮が幸せになるなら、良いことである、何しろ、宮は本気であるようだ

町中に入り、静庵と宮に皆が挨拶をして来る

「これは、静庵様、失礼を承知で御聞き致します、時々お見かけ致します、こちらの御方は、何とお呼びすれば、宜しいのでしょうか」

「これは、町名主殿、この人は、私、若狭静庵の妻、宮であります、宮、町名主殿だ」

「宮と申します、どうか宜しくお願いいたします」

「これは、これは、奥方様でしたか、こちらこそ、町の者を代表して、宜しくお願い申し上げます、それにしても、先生どうして早くに、教えてくれませぬか、町中に噂が、飛びかっておりますぞ」

「それは、すまなんだ、だが、これで謎が解けましたな、あっはっはっは
それでは、これにて、御免」

「不味い、不味いのう、宮、急いで帰るのだ、大変な事になるぞ」

「どうしました、旦那さま」

「儂らが夫婦になったと、知れたら、付け届けが心配よ、早く帰るのだ」

静庵の予想は、大当たりであった、噂は千里を走り、城にまで届いた

十造の元に、静庵の弟子が、文を持って駆けつけた

「おーい、静庵が皆で助けに来いと言うて居る、儂と楓に、宮を会わせたいともな、泊まりがけで来よとな」

「何やら楽しそう、皆で行きましょう、畑も大丈夫なら」

「面白そうだね、とーちゃん、かーちゃん、行って見ようよ」

「うむ、ついでに何か、祝いをやらねばのう、楓何か想い付かぬか、お、有るのか、そうか、任せたぞ、佐助、荷車を借りて来るのだ、何やら儂らに渡す荷物が山ほど有るそうな」

四人は、荷車に十助を乗せて、静庵の屋敷へやって来た

「あはははは、いらっしゃい、よう来てくれました、宮、父の十造様、義母の楓様だ」

「父上様、母上様、宮にございます、ふつつか者ではございますが、どうか末永く宜しく、お願い申し上げます」

「固い挨拶など無用だわ、儂の顔を忘れたか、伊豆の山中で、殺りおうたではないか、佐助から、聞いて驚いたがな、どうだ、生きておると、良いことも有ると、わかったであろう、静庵を宜しく頼む」

「えっ、あの時の、、、」

佐助が十造に教えていたのだ、あの時のくノ一であると

宮は驚いていた、それを知っても反対もせずに、受け入れてくれた、更なる驚きは、楓であった、一目で勝てないとわかった、隙が無かった、佐助と言い、この三人を倒す術が見つからない
楓が、身振り手振りで十造と会話をしていた

「のう、宮、楓が言うには、頭の中で、家族を相手に戦うのを止めてくれとよ、で、勝てたのか」

「いえ、忽ちのうちに、母上に、、、」

楓が宮を別の部屋に誘った、渡したい物があると言う

「兄者、何とこの品々、どうしたと言うのか、確かに荷車が必要ではあるが」

「うむ、宮と夫婦になったと知れたら、こうなってしもうたのよ、診察は弟子が行うのだが、先ずこれらをなんとかせねばのう、城にもばれて、信之様にも知られてしもうた」

「あは、この人気者」

宮が着替えて出て来た、楓が着た、着物を身に付け豪華な彩りであった、楓は、着物を宮に託したのだ

宮は生まれて初めて、家族や親子の団欒や、絆を感じる事が出来た
いたずら盛りの、十助を追いかけ、波瑠が庭へ降りて行く、それを見ながら、笑顔や笑い声があった
見上げる空には、雲一つ無い青空が広がっていた


































































































































































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