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窮鼠
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佐助に呼び出しが来た、真田信之からであった
「佐助、信繁のところへ書状を頼む、おそらくは、信繁も、返事を託す筈よ、気が付けば、この上田に居る
真田の忍衆は、お前だけになってしもうた、戦が迫っておる証よ、皆が大阪に行ってしもうた、皆帰る事が出来ようか」
信之は、長きに渡る真田の忍衆の働きに対し、やはり特別な思いを持っていた、出来れば最後は、真田の地に、帰って来て欲しいと願っていた
今、ここに真田の家や城があるのは、名もない忍衆の働きが大きかった、それも、一人欠け、二人欠け、次第に数を減らし今になった
この度、大阪方の呼び掛けに応じて、弟の信繁(真田幸村)が参加をした、どう考えても、最早、勝目は無かった、上手くいっても、十中八九、上田の合戦の様に、信繁の悪目立ちで終わろう
忍達も、わかっては居るのだ、だが、この上田や真田の土地に居て、窮地に立つ幸村を、放ってはおけぬのだ、父真田昌幸の策通り、徳川方の信之は、家康からも信頼される大名となった、そうとなれば尚更、今まさに窮地に立つ、幸村の助けに向かう事になる
止める術が無かった、忍達は、真田の一大事と感じ、幸村を手伝いに、向かったのだ
真田の領地安堵と、加増を成し遂げた、信之であったが、ここにきて、めっきりと、身体の調子が悪く、戦は息子達に任せてある
今さら信繁を止める事はしない、其なりの覚悟があっての事であろう、佐助に託す書状の中身は、徳川方の動きと、上田の近況、銭の心配であった、そして、上田に、戻る者がおれば、受け入れると記していた
勿論、この書状が徳川方の手に入れば、信之はただでは済まないのだが、佐助が居るので安心していた
「信之様、この後おいらは、上田に戻ったら、又、大阪へ行けば良いのですか」
「馬鹿な、お前は、もうすぐ、子が産まれるであろうに、儂は許さんぞ、十造に顔向けが出来ぬ、静庵に一服盛られるわ
それと、佐助、戦が終るか、一息ついたならば、皆一度、上田に顔を出せと、この信之が言っていたと伝えてくれ、頼む、必ず伝えてくれ」
『何とも、心根の優しい御方よ、だから、病に罹ってしまわれるのだ』
「はい、必ず伝えます、ではこれにて」
大阪城へ着いた佐助は、真田信繁が、築いた出丸に顔を出した
そこには、才蔵や静海達忍仲間が揃っていた
「才蔵、元気だったのかい、信之様がみんなに会いたがっておった、余りお体が良くないみたいだよ」
佐助は、才蔵達に、信之の言葉を伝えたり、上田の近況等を話して聞かせた
「おお、そうか、わかったわい、もうすぐ、戦が始まろう、終われば一度、皆で帰るとしよう、佐助の子供の顔を、見てみたいしのう」
「そうだよ、とーちゃん達も、みんなに会いたがっておったわ、酒を買って待って居るとさ」
「よしよし、楽しみが増えた、佐助約束しよう、終われば一度、上田に帰る、宴の用意をしておれと、十造に伝えてくれ、信之様にもな」
「本当かい、皆喜ぶよ、約束したよ、必ず帰って来てよ、待っているからね」
「わははは、くどいぞ佐助、幸村様の書状を持って、早う上田に戻らぬか」
佐助が幸村に呼ばれたので、才蔵と別れ、別の部屋へ通された、そこに、信繁が、笑顔で佐助を待っていた
「おう、佐助しばらくであったのう、子が生まれると聞いたぞ、重畳であるのう」
「信繁様も変わらずに、元気そうで良かった、信之様が心配しておりました」
「そうか、宜しく伝えてくれい、十造は元気にしておるか、そうか、爺さんになるか、そうか、佐助儂からの命である、しかと聞け、この書状を持って、直ぐにここを立ち去れ、良いな」
信繁は最後、佐助に有無を言わさぬ厳しい口調で、申し渡した、そしてその部屋を後にした
真田の出丸を出た佐助は、次に宮の前の、部屋へと向かった、少しの間、遠くから部屋を見張って居ると、宮が部屋の中へと、入っていった、佐助がその後を、
忍んでいった
「暫くだな、宮、元気かい」
「まあ、なんとかね、でも、淀の方様は、、、ついてないよね、何もかもがさ、明日辺り、一戦あるらしいってさ、でも元気が良いのは、あんたのとこ(真田)だけだよ」
「そうか、お前は、どうするのだ、そろそろ終わりではないのか」
「うん、あたしは、何時でも良いけどさ、実は頼まれてんだ、最後を頼むってさ、秀頼様と淀様の最後を、死にきれなかった時の止めを頼むってさ、淀様本人にさ」
「へっ、お前正体を明かしたのかい」
「何言ってんのさ、あんたの紹介で、あの御方に付いたんだよ、ただ者ではないのは、ばれてんだよ」
「おお、そうかわかった、済まないの、何も出来なくて、でも、全てが終わったらどうするのだ」
「未だ決めてはないさ、今さら伊達に付いても、仕事も無さそうだしな、どうしようかな」
「上田にでも顔を出せよ、田舎だけど、住むなら良いところだ」
「考えとくよ、未だ全てが終わった訳でもないし、さあ、あたしは出て行くよ、あんた、布団で待ってるかい、本当はしたくて来たんだろ」
「あは、止めとく、上田にとんぼ帰りよ、又来るよ
しかし、この城は、既に空き家同然だな、すかすかではないか」
「そう、だから、あたしは、何時でも逃げられるのさ、その点は良かったよ
大阪を出るなら、早い方が良いよ、直ぐに徳川方の兵に囲まれるからね」
「わかった、又、顔を出すとしよう、元気でな」
上田に帰った佐助は喜びがあった、波瑠が元気な男の子を産んだ、名前は、十助(とうすけ)に決まった、皆が喜んだ、信之からも祝いが届いた程に、波瑠と楓は、乳が足りないと、大童の毎日を送り、十造は毎日、祝い酒を喰らっていた
酒は幾らでもあるのだ、真田の忍衆が未だ帰らない、大阪城の戦は、疾うにに決着がついていた
早い話が、真田の悪目立ち、真田信繁を有名にしただけの様な戦であった
当然、徳川方が、真田の出丸など捨て置く筈もなく、出丸は壊され、堀は埋められてしまった
豊臣の終わりが見えて来た、徳川方の狙いは、大阪城内と国内の、豊臣方を根絶やしにする事にあった
それは、とりもなおさず、豊臣秀頼の死であった、そして、徳川家康は、詰めが甘くは無かった、ここまでは、上手く運んでいた、後少しである
油断はしていない、但し、気になる名前があった、真田信繁、、、何度煮え湯を飲まされたか、正しく喉の奥に刺さる魚の骨、早く取り除きたい、親父が亡くなった後、息子も変わらず戦上手であった
暗殺も一つの手ではあるのだが、そうなると、佐助と十造を含めた、真田の忍衆との戦いになる、家康が認める、服部半蔵の部隊をもってしても、圧倒的に不利であった
まあ、正攻法で行っても後一押し、焦る必要は何処にも無い
「ごめん、誰か居られるか、才蔵である、、、おお、楓、元気そうだな、皆はどうしておるか」
入口に立つ才蔵を楓が出迎え、子供を抱えた波瑠も出てきた、十助を才蔵に預けた
「おお、十助か、わははは、おお、おお、泣くな泣くな、よしよし、よしよし、わははは、わははは」
「才蔵様、どうぞ、お入り下さいましな、旦那様も、父も薬草の畑にいっております、間もなくもどりましょう、今酒と肴を用意致します」
「うむ、今日は泊まって行くぞ、良いかな」
「はい、何日でも、ごゆるりと、皆が喜んで居ります、のう十助」
「わははは、赤ん坊が居ると、家の中が明るいのう、のう十助や、お、親父どもが帰って来たぞ、ほれ」
十造と佐助が戻って来た、才蔵を見るなり、二人も笑顔になった
「才蔵、お帰り、良く帰ってくれたね」
「才蔵、城には顔を出したのか、信之様には、会うたのか」
「おう、城には行って来た、静庵殿にも会うたわ、後でここに来ると言うておったぞ」
「そうか、まあ、取り敢えず、良く生きて帰って来たな、それだけで嬉しい事よ、さあ、飲もうではないか、上田に、帰って来れなかった者達のためにもな」
真田の忍衆は、残り五人、帰れなかった仲間に、静海も含まれる
才蔵は、亡くなった仲間の為にも、上田に帰って来た
「戦の仕方も、すっかりと変わってしもうた、最早、鉄砲と大砲の時代よ、儂等忍の働きは、少なくともあの大阪城では、大した意味が無いわ
銃撃戦が続いた後、気が付けば、静海は、胸から血を流して絶命しておった」
十造と佐助は、深いため息をついて、肩を落とした、流石にもう沢山だ
「才蔵、もう皆で帰って来い、勝敗は、決したではないか、お主の言う通り、鉄砲隊がおれば、忍は、最早用無しなのであろう」
「そうも、行かぬではないか、信繁様が一人になってしまう、儂らは、真田の家とは、一心同体なのだからして、ここまで来て、そんなことは、出来んわい、儂らは、この為に生きてきたようなものだ」
ここで、才蔵は、しくじったと気が付いた、佐助に聞かせてしまった、この家の者達に、取り返しのつかぬことを話してしまった
才蔵は、思わず握ってしまった手のひらに、汗を感じた
そんな才蔵に気が付き、十造が話し出した
「のう才蔵、佐助に気を遣うな、儂らが出会った頃
、佐助を、こういう時の為に、儂らに預けると言うておったではないか、今、佐助に声をかけねば、何時かけるのだ」
「むう、それは違う、上田には、もう一軒真田があるわ、大阪にばかり、片寄っておっては、不味かろう
さあさあ、今日は、言い争う為に、来たのではないぞ、飲もうではないか、ほれ、佐助も飲まぬか」
「とーさま、兄上も参りましたよ、私達も加わりとうございます」
「ほら見ろ十造、今宵は飲み明かそうぞ、面倒な話は、白けるばかり、今度にせい、儂は静海の分も、飲まねばまねばならぬのよ」
楓と波瑠は、静庵が来て盛り上がっていた、それなりに、この場は楽しく、時が過ぎて行った
皆、酔いがまわり始めると、静庵をかまい出した
「静庵は、まだ嫁を貰わんのか、もうそろそろ、良い頃合いではないか、信之様も、気にしておろう」
「でも、焦って変なのと一緒になるより、ようございましょうに、ね~十助」
「あははは、波瑠、儂は別に焦っては居らぬわ、縁があった時に、決まるというもの、それで良い」
「でも、静庵兄者は、身分から言うても、妾も貰えるのでしょう」
佐助は、油断をしていた
「あら、旦那様、妾が欲しいのですか、さぞかし、頑張って稼がねばなりませぬな、さあ十助、父上の邪魔をしてはなりませぬ、もう布団に入りましょう、お前の父上は、お忙しい御方ですからね」
波瑠が、ぷいっと十助を抱いて、出て行ってしまった
「わははは、佐助どうするのだ、正室が、おかんむりではないか」
「大体、静庵兄が、妻を娶らぬから、こう言う事になる」
「なんと、忍と喧嘩しても、勝てそうにも無いし、どうしたものか、わははは、わははは」
楓は、久々に楽しく時を過ごしていた、雰囲気だけでも、楽しく過ごせた
一同埒もない話で、夜を過ごし、部屋へ引き揚げ寝てしまった
翌朝、波瑠が皆を起こしてまわって居ると、十造の元へやって来た
「とーさま、才蔵様が居りませぬ、畳んだ布団の上に、これが置いてありました」
波瑠が十造に、書状と、手拭いに包んだ物を渡した、書状には、、、
(十造、楽しく過ごせた、皆元気で暮らして欲しい、儂の髪の毛を、真田の地に埋めて欲しい、むぎ殿への餞を少々置いて行く、去らばである、信之様をくれぐれも宜しく頼み申す)
覚悟が有って、帰って来たのはわかっていた、帰って来れない、幸村様の分も、真田の土地を見に来たのだ、これが本当の最後と言う事を呑み込んで、、、
十造は、何も言わずに、書状を楓に渡した、楓も何も言わずに、今度は、佐助に渡した
十造は、佐助に語り出した
「のう、佐助、儂も楓も覚悟はしているつもりよ、お前の気持ちは、わかっておる、後は波瑠と話し合え、どうするかは、佐助自身が決めるのだ、良いな」
「うん、わかった、波瑠も気にしているのさ、今日話してみるよ、どうせそろそろ、信之様から、呼び出されると思うしね」
土間に佐助が立っていた、波瑠が十助を抱き、佐助に渡す
佐助は、一度十助を抱きしめて、波瑠に戻した
十助は、何かを感じて泣き出した、佐助に自分を抱けと、両手をいっぱいに伸ばす、楓が代わりに十助を抱いて外に出て行った
「じゃあ、行って来るよ、大丈夫だよ、絶対に帰って来るさ、とーちゃん、波瑠」
「おう、わかったわ、待っておるぞ、元気でな
あの日、佐助は部屋で波瑠に、自分の気持ちを伝えた
「なあ、波瑠、身寄りの無いおいらを、才蔵達に育てて貰ったんだ、それなのに、未だ何の恩も返してはいないのだ、そして、今皆が困っておる、恐らく信之様が、幸村様に最後の書状を、おいらに託す筈よ、その時、少し手伝って来たいのだが、、、」
波瑠は、十助を背負いながら、洗濯物を畳んでいた、その手を動かしながら、佐助と話す
「良いですとも、旦那様、こう見えても、私は、十造と楓の娘、そして、旦那様は、真田の腕利き忍者、覚悟は出来て居ります、そして、旦那様は必ず帰って参ります、必ずです」
波瑠は、にこりと笑い、干してある洗濯物を、取りに行ってしまった
佐助は、十造の畑を手伝おうと、廊下へ出ると、波瑠が、物干しの支柱に掴まり蹲っていた、周りで十助が遊んでいた、波瑠が嗚咽を漏らしながら、泣いていた、波瑠は、佐助の前で、我慢していた涙が、一気に押し寄せた、支えがなければ、地面に崩れ落ちていた、涙が後から後から溢れて来る、悲しみが収まらない、とー様や、かー様に事有る事に言われていた、覚悟が、跡形もなく消えてしまった
佐助は、後悔していた、この世で一番大事な人を、悲しませていた、波瑠の涙を止めたい、が、それは、同時に仲間を裏切る事になる
なぜ、静海や才蔵に、妻や子が居ないのか、漸く解ったような気がする
波瑠の、悲しみを止められない自分が情けない、涙を佐助に見せまいと、こんな場所で泣いて居る、波瑠が愛おしい、佐助は庭へ降りて、波瑠を後ろから抱きしめた、かける言葉は見つからない、しかし、それくらいはしてやれる
十助も佐助に、抱きついて来たと思ったら、佐助を両手で叩き出した、どうやら、佐助が波瑠を泣かせたと思い、小さな手で必死に波瑠を助けようとしているらしい
才蔵や静海には、よく叩かれたが、こんなに、心が痛む拳は初めてであった、胸の中に激痛が走る、暫し三人で抱き合っていた
とうとう、信之から呼び出しが来た
「佐助、恐らくは、これが最後の書状となろう、皆の者達に、宜しく伝えて欲しい、生きて帰ってくれと、当然、佐助も入っておる、わかっておるの」
「はい、信之様、家族にも、そう約束しました、佐助は、必ず戻ります」
「おう、そうか、そうであったか、よしよし、佐助、せめてお前だけでも、帰って来て欲しい
儂は、お前に命ずる、佐助良く聞け、信繁に書状を渡した後は、徳川方、真田信吉、信政の元で大阪方の諜報をせよ」
「はっ、では、信之様も、どうかお元気で」
佐助は、信之の、心使いに驚いた、その手があったか、真田家当主である信之は、体調不良の為、大阪へは出陣出来なかった、代わりに子供達を送り出していた、その手助けを命じられたのだ
大阪城へ着いた佐助は、早速、宮の前の部屋へ潜み、二人で話あった
「暫くだな、もうすぐ本当の決着がつく、ご苦労だった、消える用意は出来たのかい」
「うん、大した荷物も無いからね、何時でも良いよ
豊臣方は、大分煮詰まって来たよ、その分もう、本当の味方しか、残ってないよ、名の有る武将ったって、大野、毛利、後藤、長宗我部、そして真田くらいしか、聞かないし、あっ海に一人出てるか、それでも、たったの五人しかいない、徳川方は、それこそ、石をぶつけりゃ、皆大名に当たるくらい居るよ、その中にちゃっかり伊達も居るしさ」
最早、悲壮感すらなかった、有終の美をどうやって飾るか、大阪方に未来が見えない、逃げ場すら無い
佐助が引き揚げた後、宮ノ前は、まだ部屋にいた、後少し時間が有る、今頃、淀様は大野治長と、、、しょうがない事であった、女が生き延びるための、武器を使って居るだけだ
淀様の味方は、豊臣秀吉しか居なかった、その秀吉が朦朧しだすと、自分を守ってくれる者を探す必要があったのだ、最初は、野心溢れる石田三成に、身を任せた、やがて、子が出来た、秀吉か三成の子か解らぬが、或いは佐助かもしれぬ、本人にしか、解らない事ではある
宮ノ前は、深いため息をついた、佐助に頼まれるままに、淀様の味方について、月日が流れ、すっかりお互いに情も通じ、友の様な関わりも出来たと言うのに、、、
こんな世の中である、強い方につかねば、生き残れぬのだ、そこには、男女の区別はないのだ
そろそろ、淀様の部屋を片付けようと、廊下を歩いて行くと、前から一人の、鎧武者が現れた、一礼をしてすれ違おうとする
「待て、何処の女中か、名は何と申すか」
「はい、淀の方様にお仕えいたしております、宮ノ前と申します」
「おお、そうであったか、佐助から、話は聞いておったわ、なーに、忍び足が見事なゆえ、聞いたまでの事、許せ」
「それでは、真田のお殿様ですね、何か御不自由は、御座いませぬか、わたくしが何時でもお相手つかまつりますが、、、」
宮ノ前は、臆せず、にこりとして、真田信繁に自分の思った事を口にした
「わははは、お前に夢中になって、戦どころで無くなるわ、楽しみは、先に取っておくとする、然らば」
『ふん、良い男は、どんどん居なくなってくね、なんだい、全く』
信繁とすれ違ってから、淀様の部屋へと入って行く
『どうやら、お別れは済んだ様だね、皆最後の一仕事だよ、精々頑張りな、あたしも、そろそろ着替えるかな』
佐助が、才蔵の前に現れた、才蔵は穏やかな笑顔で佐助を出迎えた
「おお、敵方の忍がおるぞ、皆であえい、めしとるのだ、わははは」
「元気そうだね、才蔵、信繁様に、書状を持って来たよ、何処かな」
「もうじき、お帰りになるだろう、休んで行け、飯は食うたのか」
「うん、腹は減ってはおらぬし、あっ、信繁様、書状をお持ちしました」
「おう、敵方の佐助ではないか、皆の者何をしておる、引っ捕らえて、洗いざらい聞き出すのだ、わははは、よう来たな佐助」
「ちぇっ、信繁様も、才蔵と同じとは、、、」
「わははは、許せ佐助、面白き事が、余りにも少のうてな」
信繁は、軍議の席で、豊臣秀頼の出陣を、強く願い出たのだが、かなわなかった
諸将の、士気に影響する大事なことがらなのだが、淀の方様は、頑として首を縦に振らなかった
暗殺等々を、案じての事であろうが、事態はそれ以上に、予断を許さぬ状況であった
佐助は、信之からの書状を信繁に手渡した、信繁は、それを読むなり、皆に下知しだした
「皆聞け、いない者には伝えよ、上田城主、真田信之様からである、この戦が終わり、上田に、帰る者があれば受け入れる、但し、厳罰は免れず、徳川方に対し、二心無きところをみせねばならぬ、覚悟して帰参する様に、とある
そして、此度、御子息お二人が参戦しておる、お互い敵同士、戦で会うたならば、遠慮はせぬとも書いてあるわ」
誰かが言う
「くっ、信之様もご苦労が絶えないの、誠に申し訳無い事よ、おめおめと帰れぬわ、じゃが、これで決死の覚悟が、強くなると言うものよ」
才蔵が、佐助の袖を引っ張って、隅へと連れて行く
「のう、佐助、真田の戦仕立ては、どちらも赤備え、しかも、井伊の部隊もよ、お前何とか出来ぬか」
「わかった、此れから向こうに行くから何とかしてみるよ、才蔵頼むから無茶はしないでよ、皆、上田で待ってるからさ、ね、才蔵」
「おう、佐助、わかった、孤児のお前が、とても良い家族に恵まれた、儂はそれが何よりも嬉しい、静海も、事有る度に言うておった、信繁様に挨拶して早う、向こうの真田の役にたつのだ、行け、儂は忙しくなる」
才蔵は、にこやかに、その両手で、佐助の背中を押し出した
「信繁様、御武運を御祈り致します」
「うむ、佐助、向こう側についても、真田の為に尽くしてくれ、それが儂からの頼みである、元気での、行け、行くのだ」
信繁も明るい笑顔で、佐助を送り出した、佐助は、気付いていた、才蔵も信繁も、だんだんと、透明になって行く、いつかの、むぎと同じく影も無くなって行く、もう佐助は、何もしてあげられなかった、ただの見物人と同じなのだ、才蔵が消えて行く、幼い頃から、佐助の面倒を見てくれた才蔵が、、、
佐助は、涙を拭いながら、徳川方へと向かって行った
伏見の城は、ごった返していた、明らかな、勝ち戦の前であった、佐助は、伝令位の軽い出で立ちで、難なく家康の居場所までたどり着いた
その事自体、正に徳川の天下が近づいた証左であろう
最早、危険な事など、無いに等しいとでも、思っていそうだ
『お、いたいた、相変わらず、書状が山積みだね』
「コホン、殿、大阪城からの密偵が参りました」
「なんじゃ、半蔵に任せよ、いちいち来んで良いわ、どの様な用件であるか」
「は、佐助と申す者が、殿にお目にかかりたいと、忍び込みまして、、、」
書状に向かっていた家康が、顔を上げて伝令を見た
「な、なんと、佐助、又もや、、、」
「あはは、そりゃあ、あんな警備じゃね、誰でも来れるよ」
しかし、流石に時期が時期なだけに、家康も身構えた、思わず刀に手をかける
「あ、此度は、信之様の配下だから、味方だよ、安心して」
家康が、ホッと静かに息を吐いた
「ならば、儂の配下と言うことか、それにしては、態度がでかいの、佐助、なんぞ、この儂に用か」
「あはは、相変わらず忙しくしてるね、用件だけ言うね、赤備えの隊が三つ、そして、家紋と旗印も同じのが二つ敵味方、あ、赤備えは、伊達にも、、、」
「はっはははは、なんだ、そう言う事か、わかったわ、真田信之は、最早、押しも押されもせぬ、徳川の重臣よ、二心無きところを見せる為にも、文句は言わぬ、いや、言えぬわな、弟が、敵の要なれば尚更に、確かに、現場が混乱するな、良かろう佐助の言うとおりにしようではないか
佐助の考えとは、思えぬがの」
「はは、有り難き幸せで、、、」
「なんだ、思い通りに事が運んだのに、不服そうではないか、まだ何か有るのか」
「いや、もうこれで、家康様とも、会うことはありませぬ、此が最後であります、御世話になりました」
「そうか、儂は、十造とお前には、格別の思いがある、儂の方こそ世話になった、礼を申すぞ佐助
そして、上田では、二度も煮え湯を飲ませおってからに、不倶戴天の敵よ」
「お元気で、此にて御免」
昨夜から、鉄砲や大砲の音が鳴り止まぬ、佐助は、徳川方の、圧倒的な戦力に最早、豊臣方の勝利はない事を確信していた
『それでも、やりますか、信繁様、やるだろうな、もう行くところなど無いし、徳川が何処までも、追って来そうだし、信之様のお陰で、好きに出来るし』
徳川方の真田隊は、後詰めになっていた、お陰で佐助は、特にする事がなかった
朝から、あっちへうろうろ、此方へうろうろと、落ち着かない
「おい、佐助、佐助ではないか、ここで何をしておる、事と次第によっては、生かしては置かぬぞ、早う上田に帰るが良いわ」
「三郎様っ、元気そうですな、何と言うことか、儂は、此度は徳川方でありますぞ、もっとも、その総大将も、疑っておったが」
「わははは、その親戚もな、わははは、暫くだな、楓からの手紙に子が産まれたと、書いておったが」
「はい、男の子です、皆元気にしております」
「そうか、戦が終ったならば、一度顔を出そうかと思っておったのよ、そうか、此方の真田か、、、」
「はい、特にする事がないから、どうしようかと、、、」
「そうか、ならば儂を手伝わぬか、なーに、戦う必要は無い、状況を報せるだけよ、真田には、儂から伝えておくわい、どうじゃ」
「はい、はい、やりますとも、親戚の頼みを、断る訳には行きますまい」
「おうそうか、では、早速だが、この先三里方向に、豊臣方の後藤又兵衛隊が、潜んでおるらしい、恐らくは、真田信繁の部隊と、合流する手筈、それを知らせてくれぬか、霧が深くて何も解らぬ」
又兵衛の部隊は、小松山にいた、真田の部隊を待って居たのだが、真田隊は、濃い霧に阻まれ合流出来ずにいた、待っている間も、徳川方の陣が、どんどんと厚みを増して行く、後藤は、意を決して、諸将を集めた、と、言っても、味方の数は二千八百、対する敵は万といる
「此れから、総がかりになる、去りたい者があれば、止めはせぬ、好きにして良いぞ、儂は生きて帰るつもりはない」
誰も去らなかった、どおせ行くところなど、有りはしない、ここを去ったところで、浪人狩りに会うだけなのだ、ならば戦うほうが、まだましと、言うものであった
「では皆の者、冥土で再び逢おうぞ、かかれー、かかれー」
豊臣方の後藤隊は、激しかった、別にこの先の事を、考えなくとも良いのだ、唯々突き進む、既に飛び道具の距離では無く、白兵戦である、気合いが違っていた、ここを死地と決めた者達、と、こんなところで、死にたく無い、と、思う者達とでは、動きが違って当たり前であった
当然最初の頃は、鬼が無双するかのように、徳川方を蹴散らしていた、しかし、大河の様に溢れ来る敵方に、次第に呑み込まれて行く
佐助は、小高い木の上から消えかかる、後藤隊を眺めていた、既に先程までの勢いは無く、闇雲に暴れる集団と化していた
それも、一人狩られ二人と、あちら此方で、一人が何人もの相手をしていた、もう疲れきっていた、どうせ本人達も、自分が生きているのかどうかも、わかってはいないのだ
唯、殺されるまでの間、刀や槍を振り回している
そして、いつの間にか、徳川方の兵しか見えなくなった、佐助は、深いため息をついて、三郎の元へ、報告に向かった
「そうか、やはり全滅したか」
「そう、誰一人として抜け出さずに、呑み込まれてしまった、あ、俺らの反対側に、同じような物見がおったよ、向こうにも伝わったね、きっと」
「そうだのう、恐らく今日は、これで一旦引き上げよう、戦いは明日に持ち越すわい、佐助、今日はもう休んで良いぞ、明日また頼む、それまでは、自由にせい」
佐助は気が付いた、三郎は最後となる、真田信繁の部隊に、別れを告げよと、暗黙のうちに、語っていたのだ
「三郎様、俺らなら既に、別れを告げました、こう見えても、今は、真田信之様の配下、最早向こうに、用の向きはありませぬ」
「ならば、なおのこと、休んでくれ、明日からは、しっかりと、働いてもらうからのう」
真田信繁の部隊は、後藤隊と合流すべく、濃い霧の中を進んでいた、しかし、かなわなかった、物見からの報せで、後藤隊の全滅を知った
「何と、儂としたことが、口惜しや、かくなるうえは、潔く腹を切って終わりにしよう」
これを聞き付けた毛利が、止めに入る
「真田殿、まだ早いわ、明日、ここは、一旦引いて明日大暴れして、本懐を遂げようではないか、儂等は、未だ無傷ではないか、勿体なかろう、違うか」
やる気十分の、部下達にも励まされ、信繁は、これに従って、茶臼山方面へと退却した
「佐助、信繁のところへ書状を頼む、おそらくは、信繁も、返事を託す筈よ、気が付けば、この上田に居る
真田の忍衆は、お前だけになってしもうた、戦が迫っておる証よ、皆が大阪に行ってしもうた、皆帰る事が出来ようか」
信之は、長きに渡る真田の忍衆の働きに対し、やはり特別な思いを持っていた、出来れば最後は、真田の地に、帰って来て欲しいと願っていた
今、ここに真田の家や城があるのは、名もない忍衆の働きが大きかった、それも、一人欠け、二人欠け、次第に数を減らし今になった
この度、大阪方の呼び掛けに応じて、弟の信繁(真田幸村)が参加をした、どう考えても、最早、勝目は無かった、上手くいっても、十中八九、上田の合戦の様に、信繁の悪目立ちで終わろう
忍達も、わかっては居るのだ、だが、この上田や真田の土地に居て、窮地に立つ幸村を、放ってはおけぬのだ、父真田昌幸の策通り、徳川方の信之は、家康からも信頼される大名となった、そうとなれば尚更、今まさに窮地に立つ、幸村の助けに向かう事になる
止める術が無かった、忍達は、真田の一大事と感じ、幸村を手伝いに、向かったのだ
真田の領地安堵と、加増を成し遂げた、信之であったが、ここにきて、めっきりと、身体の調子が悪く、戦は息子達に任せてある
今さら信繁を止める事はしない、其なりの覚悟があっての事であろう、佐助に託す書状の中身は、徳川方の動きと、上田の近況、銭の心配であった、そして、上田に、戻る者がおれば、受け入れると記していた
勿論、この書状が徳川方の手に入れば、信之はただでは済まないのだが、佐助が居るので安心していた
「信之様、この後おいらは、上田に戻ったら、又、大阪へ行けば良いのですか」
「馬鹿な、お前は、もうすぐ、子が産まれるであろうに、儂は許さんぞ、十造に顔向けが出来ぬ、静庵に一服盛られるわ
それと、佐助、戦が終るか、一息ついたならば、皆一度、上田に顔を出せと、この信之が言っていたと伝えてくれ、頼む、必ず伝えてくれ」
『何とも、心根の優しい御方よ、だから、病に罹ってしまわれるのだ』
「はい、必ず伝えます、ではこれにて」
大阪城へ着いた佐助は、真田信繁が、築いた出丸に顔を出した
そこには、才蔵や静海達忍仲間が揃っていた
「才蔵、元気だったのかい、信之様がみんなに会いたがっておった、余りお体が良くないみたいだよ」
佐助は、才蔵達に、信之の言葉を伝えたり、上田の近況等を話して聞かせた
「おお、そうか、わかったわい、もうすぐ、戦が始まろう、終われば一度、皆で帰るとしよう、佐助の子供の顔を、見てみたいしのう」
「そうだよ、とーちゃん達も、みんなに会いたがっておったわ、酒を買って待って居るとさ」
「よしよし、楽しみが増えた、佐助約束しよう、終われば一度、上田に帰る、宴の用意をしておれと、十造に伝えてくれ、信之様にもな」
「本当かい、皆喜ぶよ、約束したよ、必ず帰って来てよ、待っているからね」
「わははは、くどいぞ佐助、幸村様の書状を持って、早う上田に戻らぬか」
佐助が幸村に呼ばれたので、才蔵と別れ、別の部屋へ通された、そこに、信繁が、笑顔で佐助を待っていた
「おう、佐助しばらくであったのう、子が生まれると聞いたぞ、重畳であるのう」
「信繁様も変わらずに、元気そうで良かった、信之様が心配しておりました」
「そうか、宜しく伝えてくれい、十造は元気にしておるか、そうか、爺さんになるか、そうか、佐助儂からの命である、しかと聞け、この書状を持って、直ぐにここを立ち去れ、良いな」
信繁は最後、佐助に有無を言わさぬ厳しい口調で、申し渡した、そしてその部屋を後にした
真田の出丸を出た佐助は、次に宮の前の、部屋へと向かった、少しの間、遠くから部屋を見張って居ると、宮が部屋の中へと、入っていった、佐助がその後を、
忍んでいった
「暫くだな、宮、元気かい」
「まあ、なんとかね、でも、淀の方様は、、、ついてないよね、何もかもがさ、明日辺り、一戦あるらしいってさ、でも元気が良いのは、あんたのとこ(真田)だけだよ」
「そうか、お前は、どうするのだ、そろそろ終わりではないのか」
「うん、あたしは、何時でも良いけどさ、実は頼まれてんだ、最後を頼むってさ、秀頼様と淀様の最後を、死にきれなかった時の止めを頼むってさ、淀様本人にさ」
「へっ、お前正体を明かしたのかい」
「何言ってんのさ、あんたの紹介で、あの御方に付いたんだよ、ただ者ではないのは、ばれてんだよ」
「おお、そうかわかった、済まないの、何も出来なくて、でも、全てが終わったらどうするのだ」
「未だ決めてはないさ、今さら伊達に付いても、仕事も無さそうだしな、どうしようかな」
「上田にでも顔を出せよ、田舎だけど、住むなら良いところだ」
「考えとくよ、未だ全てが終わった訳でもないし、さあ、あたしは出て行くよ、あんた、布団で待ってるかい、本当はしたくて来たんだろ」
「あは、止めとく、上田にとんぼ帰りよ、又来るよ
しかし、この城は、既に空き家同然だな、すかすかではないか」
「そう、だから、あたしは、何時でも逃げられるのさ、その点は良かったよ
大阪を出るなら、早い方が良いよ、直ぐに徳川方の兵に囲まれるからね」
「わかった、又、顔を出すとしよう、元気でな」
上田に帰った佐助は喜びがあった、波瑠が元気な男の子を産んだ、名前は、十助(とうすけ)に決まった、皆が喜んだ、信之からも祝いが届いた程に、波瑠と楓は、乳が足りないと、大童の毎日を送り、十造は毎日、祝い酒を喰らっていた
酒は幾らでもあるのだ、真田の忍衆が未だ帰らない、大阪城の戦は、疾うにに決着がついていた
早い話が、真田の悪目立ち、真田信繁を有名にしただけの様な戦であった
当然、徳川方が、真田の出丸など捨て置く筈もなく、出丸は壊され、堀は埋められてしまった
豊臣の終わりが見えて来た、徳川方の狙いは、大阪城内と国内の、豊臣方を根絶やしにする事にあった
それは、とりもなおさず、豊臣秀頼の死であった、そして、徳川家康は、詰めが甘くは無かった、ここまでは、上手く運んでいた、後少しである
油断はしていない、但し、気になる名前があった、真田信繁、、、何度煮え湯を飲まされたか、正しく喉の奥に刺さる魚の骨、早く取り除きたい、親父が亡くなった後、息子も変わらず戦上手であった
暗殺も一つの手ではあるのだが、そうなると、佐助と十造を含めた、真田の忍衆との戦いになる、家康が認める、服部半蔵の部隊をもってしても、圧倒的に不利であった
まあ、正攻法で行っても後一押し、焦る必要は何処にも無い
「ごめん、誰か居られるか、才蔵である、、、おお、楓、元気そうだな、皆はどうしておるか」
入口に立つ才蔵を楓が出迎え、子供を抱えた波瑠も出てきた、十助を才蔵に預けた
「おお、十助か、わははは、おお、おお、泣くな泣くな、よしよし、よしよし、わははは、わははは」
「才蔵様、どうぞ、お入り下さいましな、旦那様も、父も薬草の畑にいっております、間もなくもどりましょう、今酒と肴を用意致します」
「うむ、今日は泊まって行くぞ、良いかな」
「はい、何日でも、ごゆるりと、皆が喜んで居ります、のう十助」
「わははは、赤ん坊が居ると、家の中が明るいのう、のう十助や、お、親父どもが帰って来たぞ、ほれ」
十造と佐助が戻って来た、才蔵を見るなり、二人も笑顔になった
「才蔵、お帰り、良く帰ってくれたね」
「才蔵、城には顔を出したのか、信之様には、会うたのか」
「おう、城には行って来た、静庵殿にも会うたわ、後でここに来ると言うておったぞ」
「そうか、まあ、取り敢えず、良く生きて帰って来たな、それだけで嬉しい事よ、さあ、飲もうではないか、上田に、帰って来れなかった者達のためにもな」
真田の忍衆は、残り五人、帰れなかった仲間に、静海も含まれる
才蔵は、亡くなった仲間の為にも、上田に帰って来た
「戦の仕方も、すっかりと変わってしもうた、最早、鉄砲と大砲の時代よ、儂等忍の働きは、少なくともあの大阪城では、大した意味が無いわ
銃撃戦が続いた後、気が付けば、静海は、胸から血を流して絶命しておった」
十造と佐助は、深いため息をついて、肩を落とした、流石にもう沢山だ
「才蔵、もう皆で帰って来い、勝敗は、決したではないか、お主の言う通り、鉄砲隊がおれば、忍は、最早用無しなのであろう」
「そうも、行かぬではないか、信繁様が一人になってしまう、儂らは、真田の家とは、一心同体なのだからして、ここまで来て、そんなことは、出来んわい、儂らは、この為に生きてきたようなものだ」
ここで、才蔵は、しくじったと気が付いた、佐助に聞かせてしまった、この家の者達に、取り返しのつかぬことを話してしまった
才蔵は、思わず握ってしまった手のひらに、汗を感じた
そんな才蔵に気が付き、十造が話し出した
「のう才蔵、佐助に気を遣うな、儂らが出会った頃
、佐助を、こういう時の為に、儂らに預けると言うておったではないか、今、佐助に声をかけねば、何時かけるのだ」
「むう、それは違う、上田には、もう一軒真田があるわ、大阪にばかり、片寄っておっては、不味かろう
さあさあ、今日は、言い争う為に、来たのではないぞ、飲もうではないか、ほれ、佐助も飲まぬか」
「とーさま、兄上も参りましたよ、私達も加わりとうございます」
「ほら見ろ十造、今宵は飲み明かそうぞ、面倒な話は、白けるばかり、今度にせい、儂は静海の分も、飲まねばまねばならぬのよ」
楓と波瑠は、静庵が来て盛り上がっていた、それなりに、この場は楽しく、時が過ぎて行った
皆、酔いがまわり始めると、静庵をかまい出した
「静庵は、まだ嫁を貰わんのか、もうそろそろ、良い頃合いではないか、信之様も、気にしておろう」
「でも、焦って変なのと一緒になるより、ようございましょうに、ね~十助」
「あははは、波瑠、儂は別に焦っては居らぬわ、縁があった時に、決まるというもの、それで良い」
「でも、静庵兄者は、身分から言うても、妾も貰えるのでしょう」
佐助は、油断をしていた
「あら、旦那様、妾が欲しいのですか、さぞかし、頑張って稼がねばなりませぬな、さあ十助、父上の邪魔をしてはなりませぬ、もう布団に入りましょう、お前の父上は、お忙しい御方ですからね」
波瑠が、ぷいっと十助を抱いて、出て行ってしまった
「わははは、佐助どうするのだ、正室が、おかんむりではないか」
「大体、静庵兄が、妻を娶らぬから、こう言う事になる」
「なんと、忍と喧嘩しても、勝てそうにも無いし、どうしたものか、わははは、わははは」
楓は、久々に楽しく時を過ごしていた、雰囲気だけでも、楽しく過ごせた
一同埒もない話で、夜を過ごし、部屋へ引き揚げ寝てしまった
翌朝、波瑠が皆を起こしてまわって居ると、十造の元へやって来た
「とーさま、才蔵様が居りませぬ、畳んだ布団の上に、これが置いてありました」
波瑠が十造に、書状と、手拭いに包んだ物を渡した、書状には、、、
(十造、楽しく過ごせた、皆元気で暮らして欲しい、儂の髪の毛を、真田の地に埋めて欲しい、むぎ殿への餞を少々置いて行く、去らばである、信之様をくれぐれも宜しく頼み申す)
覚悟が有って、帰って来たのはわかっていた、帰って来れない、幸村様の分も、真田の土地を見に来たのだ、これが本当の最後と言う事を呑み込んで、、、
十造は、何も言わずに、書状を楓に渡した、楓も何も言わずに、今度は、佐助に渡した
十造は、佐助に語り出した
「のう、佐助、儂も楓も覚悟はしているつもりよ、お前の気持ちは、わかっておる、後は波瑠と話し合え、どうするかは、佐助自身が決めるのだ、良いな」
「うん、わかった、波瑠も気にしているのさ、今日話してみるよ、どうせそろそろ、信之様から、呼び出されると思うしね」
土間に佐助が立っていた、波瑠が十助を抱き、佐助に渡す
佐助は、一度十助を抱きしめて、波瑠に戻した
十助は、何かを感じて泣き出した、佐助に自分を抱けと、両手をいっぱいに伸ばす、楓が代わりに十助を抱いて外に出て行った
「じゃあ、行って来るよ、大丈夫だよ、絶対に帰って来るさ、とーちゃん、波瑠」
「おう、わかったわ、待っておるぞ、元気でな
あの日、佐助は部屋で波瑠に、自分の気持ちを伝えた
「なあ、波瑠、身寄りの無いおいらを、才蔵達に育てて貰ったんだ、それなのに、未だ何の恩も返してはいないのだ、そして、今皆が困っておる、恐らく信之様が、幸村様に最後の書状を、おいらに託す筈よ、その時、少し手伝って来たいのだが、、、」
波瑠は、十助を背負いながら、洗濯物を畳んでいた、その手を動かしながら、佐助と話す
「良いですとも、旦那様、こう見えても、私は、十造と楓の娘、そして、旦那様は、真田の腕利き忍者、覚悟は出来て居ります、そして、旦那様は必ず帰って参ります、必ずです」
波瑠は、にこりと笑い、干してある洗濯物を、取りに行ってしまった
佐助は、十造の畑を手伝おうと、廊下へ出ると、波瑠が、物干しの支柱に掴まり蹲っていた、周りで十助が遊んでいた、波瑠が嗚咽を漏らしながら、泣いていた、波瑠は、佐助の前で、我慢していた涙が、一気に押し寄せた、支えがなければ、地面に崩れ落ちていた、涙が後から後から溢れて来る、悲しみが収まらない、とー様や、かー様に事有る事に言われていた、覚悟が、跡形もなく消えてしまった
佐助は、後悔していた、この世で一番大事な人を、悲しませていた、波瑠の涙を止めたい、が、それは、同時に仲間を裏切る事になる
なぜ、静海や才蔵に、妻や子が居ないのか、漸く解ったような気がする
波瑠の、悲しみを止められない自分が情けない、涙を佐助に見せまいと、こんな場所で泣いて居る、波瑠が愛おしい、佐助は庭へ降りて、波瑠を後ろから抱きしめた、かける言葉は見つからない、しかし、それくらいはしてやれる
十助も佐助に、抱きついて来たと思ったら、佐助を両手で叩き出した、どうやら、佐助が波瑠を泣かせたと思い、小さな手で必死に波瑠を助けようとしているらしい
才蔵や静海には、よく叩かれたが、こんなに、心が痛む拳は初めてであった、胸の中に激痛が走る、暫し三人で抱き合っていた
とうとう、信之から呼び出しが来た
「佐助、恐らくは、これが最後の書状となろう、皆の者達に、宜しく伝えて欲しい、生きて帰ってくれと、当然、佐助も入っておる、わかっておるの」
「はい、信之様、家族にも、そう約束しました、佐助は、必ず戻ります」
「おう、そうか、そうであったか、よしよし、佐助、せめてお前だけでも、帰って来て欲しい
儂は、お前に命ずる、佐助良く聞け、信繁に書状を渡した後は、徳川方、真田信吉、信政の元で大阪方の諜報をせよ」
「はっ、では、信之様も、どうかお元気で」
佐助は、信之の、心使いに驚いた、その手があったか、真田家当主である信之は、体調不良の為、大阪へは出陣出来なかった、代わりに子供達を送り出していた、その手助けを命じられたのだ
大阪城へ着いた佐助は、早速、宮の前の部屋へ潜み、二人で話あった
「暫くだな、もうすぐ本当の決着がつく、ご苦労だった、消える用意は出来たのかい」
「うん、大した荷物も無いからね、何時でも良いよ
豊臣方は、大分煮詰まって来たよ、その分もう、本当の味方しか、残ってないよ、名の有る武将ったって、大野、毛利、後藤、長宗我部、そして真田くらいしか、聞かないし、あっ海に一人出てるか、それでも、たったの五人しかいない、徳川方は、それこそ、石をぶつけりゃ、皆大名に当たるくらい居るよ、その中にちゃっかり伊達も居るしさ」
最早、悲壮感すらなかった、有終の美をどうやって飾るか、大阪方に未来が見えない、逃げ場すら無い
佐助が引き揚げた後、宮ノ前は、まだ部屋にいた、後少し時間が有る、今頃、淀様は大野治長と、、、しょうがない事であった、女が生き延びるための、武器を使って居るだけだ
淀様の味方は、豊臣秀吉しか居なかった、その秀吉が朦朧しだすと、自分を守ってくれる者を探す必要があったのだ、最初は、野心溢れる石田三成に、身を任せた、やがて、子が出来た、秀吉か三成の子か解らぬが、或いは佐助かもしれぬ、本人にしか、解らない事ではある
宮ノ前は、深いため息をついた、佐助に頼まれるままに、淀様の味方について、月日が流れ、すっかりお互いに情も通じ、友の様な関わりも出来たと言うのに、、、
こんな世の中である、強い方につかねば、生き残れぬのだ、そこには、男女の区別はないのだ
そろそろ、淀様の部屋を片付けようと、廊下を歩いて行くと、前から一人の、鎧武者が現れた、一礼をしてすれ違おうとする
「待て、何処の女中か、名は何と申すか」
「はい、淀の方様にお仕えいたしております、宮ノ前と申します」
「おお、そうであったか、佐助から、話は聞いておったわ、なーに、忍び足が見事なゆえ、聞いたまでの事、許せ」
「それでは、真田のお殿様ですね、何か御不自由は、御座いませぬか、わたくしが何時でもお相手つかまつりますが、、、」
宮ノ前は、臆せず、にこりとして、真田信繁に自分の思った事を口にした
「わははは、お前に夢中になって、戦どころで無くなるわ、楽しみは、先に取っておくとする、然らば」
『ふん、良い男は、どんどん居なくなってくね、なんだい、全く』
信繁とすれ違ってから、淀様の部屋へと入って行く
『どうやら、お別れは済んだ様だね、皆最後の一仕事だよ、精々頑張りな、あたしも、そろそろ着替えるかな』
佐助が、才蔵の前に現れた、才蔵は穏やかな笑顔で佐助を出迎えた
「おお、敵方の忍がおるぞ、皆であえい、めしとるのだ、わははは」
「元気そうだね、才蔵、信繁様に、書状を持って来たよ、何処かな」
「もうじき、お帰りになるだろう、休んで行け、飯は食うたのか」
「うん、腹は減ってはおらぬし、あっ、信繁様、書状をお持ちしました」
「おう、敵方の佐助ではないか、皆の者何をしておる、引っ捕らえて、洗いざらい聞き出すのだ、わははは、よう来たな佐助」
「ちぇっ、信繁様も、才蔵と同じとは、、、」
「わははは、許せ佐助、面白き事が、余りにも少のうてな」
信繁は、軍議の席で、豊臣秀頼の出陣を、強く願い出たのだが、かなわなかった
諸将の、士気に影響する大事なことがらなのだが、淀の方様は、頑として首を縦に振らなかった
暗殺等々を、案じての事であろうが、事態はそれ以上に、予断を許さぬ状況であった
佐助は、信之からの書状を信繁に手渡した、信繁は、それを読むなり、皆に下知しだした
「皆聞け、いない者には伝えよ、上田城主、真田信之様からである、この戦が終わり、上田に、帰る者があれば受け入れる、但し、厳罰は免れず、徳川方に対し、二心無きところをみせねばならぬ、覚悟して帰参する様に、とある
そして、此度、御子息お二人が参戦しておる、お互い敵同士、戦で会うたならば、遠慮はせぬとも書いてあるわ」
誰かが言う
「くっ、信之様もご苦労が絶えないの、誠に申し訳無い事よ、おめおめと帰れぬわ、じゃが、これで決死の覚悟が、強くなると言うものよ」
才蔵が、佐助の袖を引っ張って、隅へと連れて行く
「のう、佐助、真田の戦仕立ては、どちらも赤備え、しかも、井伊の部隊もよ、お前何とか出来ぬか」
「わかった、此れから向こうに行くから何とかしてみるよ、才蔵頼むから無茶はしないでよ、皆、上田で待ってるからさ、ね、才蔵」
「おう、佐助、わかった、孤児のお前が、とても良い家族に恵まれた、儂はそれが何よりも嬉しい、静海も、事有る度に言うておった、信繁様に挨拶して早う、向こうの真田の役にたつのだ、行け、儂は忙しくなる」
才蔵は、にこやかに、その両手で、佐助の背中を押し出した
「信繁様、御武運を御祈り致します」
「うむ、佐助、向こう側についても、真田の為に尽くしてくれ、それが儂からの頼みである、元気での、行け、行くのだ」
信繁も明るい笑顔で、佐助を送り出した、佐助は、気付いていた、才蔵も信繁も、だんだんと、透明になって行く、いつかの、むぎと同じく影も無くなって行く、もう佐助は、何もしてあげられなかった、ただの見物人と同じなのだ、才蔵が消えて行く、幼い頃から、佐助の面倒を見てくれた才蔵が、、、
佐助は、涙を拭いながら、徳川方へと向かって行った
伏見の城は、ごった返していた、明らかな、勝ち戦の前であった、佐助は、伝令位の軽い出で立ちで、難なく家康の居場所までたどり着いた
その事自体、正に徳川の天下が近づいた証左であろう
最早、危険な事など、無いに等しいとでも、思っていそうだ
『お、いたいた、相変わらず、書状が山積みだね』
「コホン、殿、大阪城からの密偵が参りました」
「なんじゃ、半蔵に任せよ、いちいち来んで良いわ、どの様な用件であるか」
「は、佐助と申す者が、殿にお目にかかりたいと、忍び込みまして、、、」
書状に向かっていた家康が、顔を上げて伝令を見た
「な、なんと、佐助、又もや、、、」
「あはは、そりゃあ、あんな警備じゃね、誰でも来れるよ」
しかし、流石に時期が時期なだけに、家康も身構えた、思わず刀に手をかける
「あ、此度は、信之様の配下だから、味方だよ、安心して」
家康が、ホッと静かに息を吐いた
「ならば、儂の配下と言うことか、それにしては、態度がでかいの、佐助、なんぞ、この儂に用か」
「あはは、相変わらず忙しくしてるね、用件だけ言うね、赤備えの隊が三つ、そして、家紋と旗印も同じのが二つ敵味方、あ、赤備えは、伊達にも、、、」
「はっはははは、なんだ、そう言う事か、わかったわ、真田信之は、最早、押しも押されもせぬ、徳川の重臣よ、二心無きところを見せる為にも、文句は言わぬ、いや、言えぬわな、弟が、敵の要なれば尚更に、確かに、現場が混乱するな、良かろう佐助の言うとおりにしようではないか
佐助の考えとは、思えぬがの」
「はは、有り難き幸せで、、、」
「なんだ、思い通りに事が運んだのに、不服そうではないか、まだ何か有るのか」
「いや、もうこれで、家康様とも、会うことはありませぬ、此が最後であります、御世話になりました」
「そうか、儂は、十造とお前には、格別の思いがある、儂の方こそ世話になった、礼を申すぞ佐助
そして、上田では、二度も煮え湯を飲ませおってからに、不倶戴天の敵よ」
「お元気で、此にて御免」
昨夜から、鉄砲や大砲の音が鳴り止まぬ、佐助は、徳川方の、圧倒的な戦力に最早、豊臣方の勝利はない事を確信していた
『それでも、やりますか、信繁様、やるだろうな、もう行くところなど無いし、徳川が何処までも、追って来そうだし、信之様のお陰で、好きに出来るし』
徳川方の真田隊は、後詰めになっていた、お陰で佐助は、特にする事がなかった
朝から、あっちへうろうろ、此方へうろうろと、落ち着かない
「おい、佐助、佐助ではないか、ここで何をしておる、事と次第によっては、生かしては置かぬぞ、早う上田に帰るが良いわ」
「三郎様っ、元気そうですな、何と言うことか、儂は、此度は徳川方でありますぞ、もっとも、その総大将も、疑っておったが」
「わははは、その親戚もな、わははは、暫くだな、楓からの手紙に子が産まれたと、書いておったが」
「はい、男の子です、皆元気にしております」
「そうか、戦が終ったならば、一度顔を出そうかと思っておったのよ、そうか、此方の真田か、、、」
「はい、特にする事がないから、どうしようかと、、、」
「そうか、ならば儂を手伝わぬか、なーに、戦う必要は無い、状況を報せるだけよ、真田には、儂から伝えておくわい、どうじゃ」
「はい、はい、やりますとも、親戚の頼みを、断る訳には行きますまい」
「おうそうか、では、早速だが、この先三里方向に、豊臣方の後藤又兵衛隊が、潜んでおるらしい、恐らくは、真田信繁の部隊と、合流する手筈、それを知らせてくれぬか、霧が深くて何も解らぬ」
又兵衛の部隊は、小松山にいた、真田の部隊を待って居たのだが、真田隊は、濃い霧に阻まれ合流出来ずにいた、待っている間も、徳川方の陣が、どんどんと厚みを増して行く、後藤は、意を決して、諸将を集めた、と、言っても、味方の数は二千八百、対する敵は万といる
「此れから、総がかりになる、去りたい者があれば、止めはせぬ、好きにして良いぞ、儂は生きて帰るつもりはない」
誰も去らなかった、どおせ行くところなど、有りはしない、ここを去ったところで、浪人狩りに会うだけなのだ、ならば戦うほうが、まだましと、言うものであった
「では皆の者、冥土で再び逢おうぞ、かかれー、かかれー」
豊臣方の後藤隊は、激しかった、別にこの先の事を、考えなくとも良いのだ、唯々突き進む、既に飛び道具の距離では無く、白兵戦である、気合いが違っていた、ここを死地と決めた者達、と、こんなところで、死にたく無い、と、思う者達とでは、動きが違って当たり前であった
当然最初の頃は、鬼が無双するかのように、徳川方を蹴散らしていた、しかし、大河の様に溢れ来る敵方に、次第に呑み込まれて行く
佐助は、小高い木の上から消えかかる、後藤隊を眺めていた、既に先程までの勢いは無く、闇雲に暴れる集団と化していた
それも、一人狩られ二人と、あちら此方で、一人が何人もの相手をしていた、もう疲れきっていた、どうせ本人達も、自分が生きているのかどうかも、わかってはいないのだ
唯、殺されるまでの間、刀や槍を振り回している
そして、いつの間にか、徳川方の兵しか見えなくなった、佐助は、深いため息をついて、三郎の元へ、報告に向かった
「そうか、やはり全滅したか」
「そう、誰一人として抜け出さずに、呑み込まれてしまった、あ、俺らの反対側に、同じような物見がおったよ、向こうにも伝わったね、きっと」
「そうだのう、恐らく今日は、これで一旦引き上げよう、戦いは明日に持ち越すわい、佐助、今日はもう休んで良いぞ、明日また頼む、それまでは、自由にせい」
佐助は気が付いた、三郎は最後となる、真田信繁の部隊に、別れを告げよと、暗黙のうちに、語っていたのだ
「三郎様、俺らなら既に、別れを告げました、こう見えても、今は、真田信之様の配下、最早向こうに、用の向きはありませぬ」
「ならば、なおのこと、休んでくれ、明日からは、しっかりと、働いてもらうからのう」
真田信繁の部隊は、後藤隊と合流すべく、濃い霧の中を進んでいた、しかし、かなわなかった、物見からの報せで、後藤隊の全滅を知った
「何と、儂としたことが、口惜しや、かくなるうえは、潔く腹を切って終わりにしよう」
これを聞き付けた毛利が、止めに入る
「真田殿、まだ早いわ、明日、ここは、一旦引いて明日大暴れして、本懐を遂げようではないか、儂等は、未だ無傷ではないか、勿体なかろう、違うか」
やる気十分の、部下達にも励まされ、信繁は、これに従って、茶臼山方面へと退却した
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*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
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