どんぐりの木

雨田ゴム長

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攻撃回避

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大村と若松は、阿寒町下徹別(しもてしべつ)駐在所員に話を聞きに来ていた。
「名前は須田敏行、年齢は52歳、職業不明です、若い頃24歳の時一度窃盗で挙げられてますね、執行猶予一年です、以来交通違反も無しです
近所、と言ってもかなり離れてますけど、何年か前に両親が亡くなってから、付き合いはありません、勿論町内会とか、人との交流は一切無しです、独身なのでゴミ収集もありません恐らく、自分の敷地で、処分しているものと思われます、汲み取りトイレは、3ヶ月以上していません、新聞はとってはいないです、公共料金は、全て引き落とし、滞納は無し、基本料金のみです、固定電話は、既に解約しています」本気まじ
「ありがとうございます、そこまで調べていただいて、それで、現在の状況はどんな感じでしょうか」
「私は制服勤務なので、国道上からの観察しかしないのですが、人の気配は感じないのですが、次に見た時は微妙に車の位置がずれていたり、駐車台数が変化したりと、何かがあるのかなと、場所的にも、該当しているかと思います」
確かに調べる価値がありそうだ、詳しい場所を聞いて訪ねて来た。
「主任ここって、一番最初の調査で休憩した場所ですね」
「そうだよな、今俺も言おうとしたよ、あ、あの向こうの赤い屋根の家じゃないか」
「この時期緑に囲まれて、案外とわからないもんですね」
「そうだよな、この前は気づかなかったよな
車が、トラックを入れて4台か、確かに一人身には、多すぎるな」
2人は車を降りて、玄関へと向かう、若松は、大村から離れ家を一回りしに離れた、玄関のチャイムを押した。
もう一度押してから、玄関の戸を引いてみる。
「須田さん、須田さ~んいませんか~警察です~」
返事は無かった、家の外を一回りして、最後に郵便受けを確認した若松が合流した。
「電気メーターはゆっくり一定のスピードで回ってます、冷蔵庫とトイレのファンくらいですね
屋外灯油タンクは、ほぼ空でした
裏口のドアがあります」
大村は、無言で頷き、玄関の上がり框を目線を水平に見た。
「埃がたまって、歩いた跡がないな、手袋とビニールカバーを頼む」
「了解」
若松が車から戻る間大村は、玄関を観察している
恐らく何ヵ月もの間、人が暮らしては居ない筈だ、臭いが一切しないのだ
2人は手袋と靴の上から、カバーを履いて先ず居間に上がり込んだ
「ヤッパ冷蔵庫は動いてます、でも中の物はどれも駄目ですね
玉子の期限からみて、約3ヶ月ってところですね」
「取り敢えず今日は、令状もないし、簡単にな、ゴミ箱はどうかな
まさか、風呂で孤独死なんてないだろうな」
「主任、ちょっと良いですか、裏口も無施錠ですが、主にこっちがメインに使われでたんじゃないですかね、汚れ具合とかからいっても」
「ああ、そうだな、でも、おかしくないか、この家のまわりは、砂利で囲ってあるし、道路もアスファルトから砂利道だ、こんなに泥が着くものかな」
「確かに、どう考えても山仕事の跡って感じですね」
「明日、早い時間から汚れても良い格好で詳しく調べようや」
「でも、令状はどうします」
「緊急の不明者捜索で、課長に頼もう」

「結局、管内の緊急配備で、また2人体制ですね」
「まだ、こうして、外に行かせてもらえるだけ良しとしようや」
「そうですよね、ところで主任、昨日署に戻ってから、何気にあの家の辺りの地図を検索していると、あの家の脇に細い道路があって小屋みたいな建物があるんですよ
古い航空地図にしか載ってないんですけど」
「そうか、今日は、時間があるから大丈夫だよ調べてみよう」
須田の家の脇を通り過ぎると、草むらの中に隠れて、微かに轍が見える
「これじゃあ、Uターンどころか、進むのも難しいな、降りて歩くとするか」
2人は、車を降りて歩きだした、藪の先にトタン屋根が見える。
大村は、下車してから、何かが焦げた臭いに気付いたが、若松が何も言わない事から、自分だけがそう感じるだけだと考えた、そのまま進むと今度は、はっきりと、嗅いだ事のある臭い思い出した、と、同時に黒い塊をみつけた。
「若松、止まれ、そのまま、振り向かないで、ゆっくり車までさがるんだ」
若松巡査は、配属されて、初めて大村主任の緊張感ある指示命令を聞いた。
そして、その指示は、何の為か理解した
小屋の方から、ガサッガサッと音が聞こえた。2人はゆっくり、下がり続ける。
それは、いきなりだった、ものすごく大きな焦げ茶色の物体が、藪の中から立ち上がった、ヒグマがいた。
車に辿り着いて、乗車した途端、
大村は、クラクションを思い切り押した、こんなに本気になって鳴らすのは免許証を取得して初めてだ。
咆哮と共に、襲いかかろうと、又立ち上がった熊は、突然の大音響に怯んだのか、立ち上がりをやめ、その姿は草薮に隠れた、上手くバックにシフトした途端、草薮から巨体が「グゥオーッ」咆哮と共に突進してきた。
一瞬早く、車が下がり襲撃は回避した。国道近くまで待避して一息ついた。
「まさか、こんな目に会うなんて、酷い調査出向も有ったもんですね」
感想は二人共一緒だ、冷汗が止まらない、呼吸も荒いままに、今日のところは署へ引き返した。
「おい、おい、おい、勘弁してくれよ、ヒグマの襲撃で殉職なんて、警察の歴史どころか、日本の歴史になるから
しかし、考えただけでも、鳥肌ものだな」
「はあ、夢に出てきそうです」
「まあでも、その小屋には、少なくとも、生身の人間は、居そうに無いわな、須田の家には何か変化があったのかい」
「いえ、特には、ただ同敷地内に駐車してある車両ナンバーから、須田以外の男2名があがっています
エヌシステムの検索によると、須田のトラックは時々北見、中標津方面へと出掛けています
名前は、福井安道、23、釧路市松浦町、大村高夫、25、釧路市堀川町
両名共に無職、住所は親の所在地、現在地不明」
若松が説明した、係長が続ける
「そして、家族からは、捜索願い等は出ておらず、居ないほうが安心して暮らせてると、、」
「そのとおりです、この2人は、小、中、高と先輩後輩の悪仲間です、暴力的と言うよりも、手癖の悪さで、有名でした」
「成る程、須田との間であるいは、組んで何らかの、仕事をしていた可能性が大と」
「もう1つ、この両名が姿を消したあたりから、北見や中標津方面の自販機荒しは、めっきり減少しました」
「う~、薬物事案からは遠退いた感じだが、この三名ももっと叩かんとならんな
駐在所からの連絡だと、車両の移動は認められないそうだ
東京の方は、主任どうかな」
「はい、予定では今日か明日連絡がある筈です」
「オーケーそれに合わせて会議しようじゃないか」

徳山周作弁護士は、依頼人で友人でもある、村重健一朗と電話で話をしていた。
「予想以上に時間がかかったけど、取り敢えず土地の取得は完了したよ、後は例の財団に寄付するだけだ、本当に良いのか、かなりの金額が向こうに行くけど」
「ああ勿論だ、ありがとう、予定通りに進めて欲しい、頼むよ」
「解ったよ、そうする」

都内港区某ホテルの一室
「手間取らせたな宮島、助かったよ、恩に着る」
「とんでもないすよ、児島さん、そんくらい、でも何で今さら、失礼ですけど、二億位なら今の貴方なら簡単じゃないですか」
「信じてくれとは言わないが、頭の中から、指示が来るんだ、こうしろ、ああしろと、それに対して逆らう事が出来んのだ、なんというか、もう一人の自分がいるような
しかも、こうやってわざと犯罪に手を染めさせてな」
「ふーん、私にゃ、さっぱりですけど、でも、家族とかには、知られて無いんですよね」
「それがな、家内と娘は中身を見ても何の反応も示さないんだ
娘婿は、その二億を使って別の事をやっているみたいなのだ
それに対して俺も含めた三人は全く反応しないのだ
信じられんだろ」
宮島は話の途中から、訳が解らなくなってきた、そしてここは、下手に事情を知るよりも、このままにしたほうが捜査があった場合、混乱するだろうと判断した。
「ま、ま、いずれにしても、お互い惚けるしかないですし」
「むう、そうだな、そう言う事だな」

村重健一朗は戸惑っていた。徳山法律事務所を出てから頭の中が、晴々としている、反対に事務所の事はあまり良く覚えていなかった。








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