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第二章
72:対決の決意
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ニュース番組の解説者がOP社が司法警察権を得ることに対して肯定的な発言をしたのをウォーリーは見過ごせなかった。
「誰にも選ばれてない奴が、司法と警察を司るだと?! そんな独裁国家みたいなやり方のどこが望ましいんだ?! ただでさえ、あのハドリと言う奴は気に入らん奴だというのに! 秘密警察でも持とうというのか?」
「マネージャー、秘密警察じゃないですよ。OP社が治安改革活動をするのは、そもそも公に発表されていますって」
ウォーリーの怒りの言葉をミヤハラが冷静に訂正した。
「そんなことはどうでもいい! ハドリの奴が権力を持つだけで俺は気に入らないんだ。そもそも、誰があの男を支持していると言うのだ?!」
ウォーリーが椅子を蹴って立ち上がったが、ミヤハラは落ち着いた様子でウォーリーの席から動こうとしない。
「それは……ただ、ハドリ氏のところには一八万の社員がいますから……
本意ではないにしろ、社員はハドリ氏を支持する以外にないのでは?」
「……嫌な野郎だ。それにしても、奴には危険な雰囲気を感じるな。ニュースを見る限り、何が犯罪かを決めるのも、処罰の内容を決めるのもハドリの会社、ってことになるようだからな。ところで、市民はどんな反応なんだ?」
ウォーリーの言葉にミヤハラは部下を呼んで、市民の反応についての情報はないかと聞いた。
部下はしばらく情報を調べた後、次のように答えた。
「歓迎ムード一色、という様子ですね。主だったところでは反対意見のようなものは聞かれないようです」
その答えにウォーリーが毒づいた。
「ますます気に入らんね! 奴の会社は独裁国家だと言われているが、まさにそのもののようだ。社長の文句も言えん会社など、俺は勤めたいとも思わん!
ECNはいろいろと気に入らないことがある会社だったが、社内で社長の悪口を言っても許される度量のある会社だった。それだけは俺が評価しているところだ……」
ウォーリーは最後まで言葉を続けることができなかった。ミヤハラに市民の反応を報告した部下が口を挟んだのだ。
ウォーリーのチームでは彼の話の途中に口を挟んだとしても問題ない。
トップのウォーリーがそうしたツッコミを歓迎すると宣言しているからだ。
もっとも、ウォーリー自身は短気な人間なので、自分の宣言を忘れて激高することもある。
そのような場合はミヤハラやサクライがウォーリーをたしなめるのだが、今回はその必要はないようだ。
「あのような人物に権力を集中させるのは危険ではないですか? そのうち、OP社の意向に逆らうものは全て犯罪者として断罪されかねません。『エクザローム防衛隊』がたどった末路を考えると、逆らった者は全て消されかねないと思いますが」
その言葉にウォーリーとミヤハラの動きが止まる。
確かにそのような節はある。
「エクザローム防衛隊」だけではない、ハドリの意向に逆らい、OP社に敵対した企業や組織は十指に余る。
その全てがハドリの執拗な攻撃によって呑み込まれたか、完全に解体させられたかで、現在残っている企業や組織は一つもない。
「エクザローム防衛隊」のときと違って軍事力や警察力は用いてないものの、相手を完全に従わせるか、徹底的に殲滅するかのやり方は変わっていないのだ。
「……危ない奴だな。これ以上増長させるわけにはいかん」
ウォーリーが考え込んだ。部下の話を聞いて少しは落ち着きを取り戻したのだろう。
人間にはどう考えても感情的に許せない人物というのが存在するようである。
ウォーリーの場合はそれがハドリだった。
力で他人を押さえ付けるというやり方が気に入らない。
力ずくで来る相手には徹底的にやり返す、というのがウォーリーのやり方である。
その代わり自分の過ちを認めたり、仲間として協力して事に当たる相手に対しては甘い部分がウォーリーにはある。
要するに水と油で、交わる接点がこの両者には存在しないのだ。
件の部下が答える。
「危険だと思います。ただ、市民の多くは彼の危険性に気づいていないか目をつぶっていると思います。まずは彼の危険性について声をあげ、市民に知ってもらうことからはじめるというのはどうでしょうか?」
ウォーリーは少し考えてから答えた。
「地道な方法であまり好きではないがな……まあ、そのあたりからはじめてみるか。
わかった、その線でいこうじゃないか。ミヤハラはどう思う?」
ウォーリーは顔には出さなかったが部下の提案にはあまり乗り気ではなかった。
ただ、地道であるがゆえに一定の効果が期待できることも理解できていた。
「私も……それでいいと思いますがね」
ミヤハラは無表情でウォーリーの言葉に同意した。
「よし、早速活動を検討するか」
ウォーリーは張り切ってハドリの危険性を訴えるための文言を考え始めた。
(あの男にこの世の春を謳歌させたらどうなるかわからんからな……
他の誰かが許したとしても、それだけは俺が許さん!)
ウォーリーは密かにハドリとの対決を決意したのであった。
「誰にも選ばれてない奴が、司法と警察を司るだと?! そんな独裁国家みたいなやり方のどこが望ましいんだ?! ただでさえ、あのハドリと言う奴は気に入らん奴だというのに! 秘密警察でも持とうというのか?」
「マネージャー、秘密警察じゃないですよ。OP社が治安改革活動をするのは、そもそも公に発表されていますって」
ウォーリーの怒りの言葉をミヤハラが冷静に訂正した。
「そんなことはどうでもいい! ハドリの奴が権力を持つだけで俺は気に入らないんだ。そもそも、誰があの男を支持していると言うのだ?!」
ウォーリーが椅子を蹴って立ち上がったが、ミヤハラは落ち着いた様子でウォーリーの席から動こうとしない。
「それは……ただ、ハドリ氏のところには一八万の社員がいますから……
本意ではないにしろ、社員はハドリ氏を支持する以外にないのでは?」
「……嫌な野郎だ。それにしても、奴には危険な雰囲気を感じるな。ニュースを見る限り、何が犯罪かを決めるのも、処罰の内容を決めるのもハドリの会社、ってことになるようだからな。ところで、市民はどんな反応なんだ?」
ウォーリーの言葉にミヤハラは部下を呼んで、市民の反応についての情報はないかと聞いた。
部下はしばらく情報を調べた後、次のように答えた。
「歓迎ムード一色、という様子ですね。主だったところでは反対意見のようなものは聞かれないようです」
その答えにウォーリーが毒づいた。
「ますます気に入らんね! 奴の会社は独裁国家だと言われているが、まさにそのもののようだ。社長の文句も言えん会社など、俺は勤めたいとも思わん!
ECNはいろいろと気に入らないことがある会社だったが、社内で社長の悪口を言っても許される度量のある会社だった。それだけは俺が評価しているところだ……」
ウォーリーは最後まで言葉を続けることができなかった。ミヤハラに市民の反応を報告した部下が口を挟んだのだ。
ウォーリーのチームでは彼の話の途中に口を挟んだとしても問題ない。
トップのウォーリーがそうしたツッコミを歓迎すると宣言しているからだ。
もっとも、ウォーリー自身は短気な人間なので、自分の宣言を忘れて激高することもある。
そのような場合はミヤハラやサクライがウォーリーをたしなめるのだが、今回はその必要はないようだ。
「あのような人物に権力を集中させるのは危険ではないですか? そのうち、OP社の意向に逆らうものは全て犯罪者として断罪されかねません。『エクザローム防衛隊』がたどった末路を考えると、逆らった者は全て消されかねないと思いますが」
その言葉にウォーリーとミヤハラの動きが止まる。
確かにそのような節はある。
「エクザローム防衛隊」だけではない、ハドリの意向に逆らい、OP社に敵対した企業や組織は十指に余る。
その全てがハドリの執拗な攻撃によって呑み込まれたか、完全に解体させられたかで、現在残っている企業や組織は一つもない。
「エクザローム防衛隊」のときと違って軍事力や警察力は用いてないものの、相手を完全に従わせるか、徹底的に殲滅するかのやり方は変わっていないのだ。
「……危ない奴だな。これ以上増長させるわけにはいかん」
ウォーリーが考え込んだ。部下の話を聞いて少しは落ち着きを取り戻したのだろう。
人間にはどう考えても感情的に許せない人物というのが存在するようである。
ウォーリーの場合はそれがハドリだった。
力で他人を押さえ付けるというやり方が気に入らない。
力ずくで来る相手には徹底的にやり返す、というのがウォーリーのやり方である。
その代わり自分の過ちを認めたり、仲間として協力して事に当たる相手に対しては甘い部分がウォーリーにはある。
要するに水と油で、交わる接点がこの両者には存在しないのだ。
件の部下が答える。
「危険だと思います。ただ、市民の多くは彼の危険性に気づいていないか目をつぶっていると思います。まずは彼の危険性について声をあげ、市民に知ってもらうことからはじめるというのはどうでしょうか?」
ウォーリーは少し考えてから答えた。
「地道な方法であまり好きではないがな……まあ、そのあたりからはじめてみるか。
わかった、その線でいこうじゃないか。ミヤハラはどう思う?」
ウォーリーは顔には出さなかったが部下の提案にはあまり乗り気ではなかった。
ただ、地道であるがゆえに一定の効果が期待できることも理解できていた。
「私も……それでいいと思いますがね」
ミヤハラは無表情でウォーリーの言葉に同意した。
「よし、早速活動を検討するか」
ウォーリーは張り切ってハドリの危険性を訴えるための文言を考え始めた。
(あの男にこの世の春を謳歌させたらどうなるかわからんからな……
他の誰かが許したとしても、それだけは俺が許さん!)
ウォーリーは密かにハドリとの対決を決意したのであった。
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