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第十七章
783:ミヤハラ、ピンチを楽しむ
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ポータル・シティで暴動発生、死傷者が多数出ている模様!
LH五二年夏のある日、サブマリン島西端部はこのニュースで騒然となった。
このニュースを「マッチ・ラボ」にいるバン・シシガが耳にしたら、「ECN社は見通しを誤った、エリックが正しかったのだ」と指摘したに違いなかった。
何故ならECN社は島西端部で暴動が起きるよりも、ECN社の幹部が襲撃される可能性を高く見ていたためだ。
この日の島西端部は午前中雲ひとつない快晴で、正午から電力事業者管理団体の関係者がポータル・シティにあるOP社本社前で、電力供給回復を求めるデモを行っていた。
午後三時過ぎに天候が急変し、叩きつけるような猛烈な雨がデモ隊を襲った。
落雷の危険も予想されたため、安全を考えてOP社は本社ビルの一部を解放して、デモ隊など近くにいる人々の一時避難場所とした。これが午後三時一〇分のことであった。
大部分のデモ隊がOP社本社ビルに避難したが、十数名が避難を拒否した。
一部にはデモ隊の代表的な人物から避難を許可されなかったため外に残ったという話もあった。
避難したのはデモ隊だけではなく、合宿でポータル・シティ郊外のキャンプ場に向かう中学生の集団なども含まれていた。
豪雨と雷は一時間以上続き、OP社本社は外にいる者たちへ避難を呼びかけ続けた。
外に残ったデモ隊の近くに落雷があったのは、午後四時二〇分のことである。
道路脇の木の近くにいたデモ隊のメンバーが雷を受けた。
それとほぼ時を同じくして近くの木が燃え出し、炎は近くのベンチやデモ隊が設置したテントなどに燃え移った。
それを見たOP社の一部従業員が救助のため現場へと向かったが、逆にどこからともなく湧いて出てきた者たちの襲撃を受けた。
更に八月一〇日にOP社本社近くのビルを占拠した電力事業者管理団体を名乗る集団が襲撃に加わり、乱闘状態となった。この集団はビルを占拠した後もその場に留まり続けていたのだった。
OP社本社も従業員を守るための応援を派遣したが、時既に遅く、数に劣るOP社の従業員が一方的に暴行を受ける事態となった。
事件について最初の報道がなされたのは、午後五時過ぎのことであった。
この時点で雷を受けたデモ隊の一人と、暴行を受けたOP社の従業員二名の計三名の死亡が確認されていた。
午後五時半過ぎには雨が上がったが、乱闘は治まるどころか更に規模を大きくしていった。
負傷者などの搬送を行おうと応援に入った一〇人ほどが何者かからの暴行を受けた。
このうちの数名が「OP社の従業員に暴行を受けた」と声を荒げて抗議したため、事態はより深刻となった。
インデストからハモネスにあるECN社本社に向かっているミヤハラたちに事件の情報が入ったのは事件発生から約四時間後の八月一九日午後八時のことであった。
未だ彼らは帰り道の途中にあり、ハモネスへの到着は八月二六日前後になる予定であった。
「サクライの奴は何をやっているのだ!」
ミヤハラは簡易宿泊所の食堂で声を荒げたが、その表情はどこか状況を楽しんでいるようであった。声や表情にはあまりにも怒りの部分が少なかった。
「移動の速度を上げた方がいいかな?」
そう問いかけたのはオイゲンであった。
ミヤハラとは一昨日に合流し、現在は一緒に移動している。
他にメイ、オオイダ、コナカ、ムレハの四名が同行しており、計六名がハモネスへと向かっていた。
この中でミヤハラに気軽に声をかけることができるのは、親友でもあるオイゲンかお気楽なオオイダくらいであった。
このため移動の予定が変更される可能性があると察知したオイゲンが、確認のためにミヤハラに声をかけたのであった。
「その必要はないだろう。何のためにサクライを残したと思っているのだ?」
留守中の対応はサクライの仕事なので自分が出るまでもない、というのがミヤハラの答えであった。
情報が少ないことは気に入らないが、事件が起きたことがわかればこちらにも対応策がある。
死傷者が出ていることで、ECN社としても事件の捜査を行う大義名分が立つ。
関連会社のOP社に被害が出ている状況なので、その支援の形で事件を捜査することは、ここサブマリン島では一般的なことだからだ。
どうやら事件の発端は電力事業者管理団体を名乗る集団の行動にあるようだ。
この集団についても、ECN社は極秘で調査を進めていた。
既に海洋調査隊の運営代行会社が絡んでいることが判明しており、海洋調査隊に送られた者を利用して事件を起こしているのではないかという情報もあった。
確証が得られていないためミヤハラは情報の裏取りを進めるよう命じていたが、彼らの動きが少なかったため、今までは十分な情報が得られていなかった。
しかし、今回の事件で彼らが動きを見せたことにより、表立って捜査を行うことができる。
「……これでいい」
ミヤハラが不敵な笑みを浮かべながら事件を報じる携帯端末のモニタに見入っていた。
LH五二年夏のある日、サブマリン島西端部はこのニュースで騒然となった。
このニュースを「マッチ・ラボ」にいるバン・シシガが耳にしたら、「ECN社は見通しを誤った、エリックが正しかったのだ」と指摘したに違いなかった。
何故ならECN社は島西端部で暴動が起きるよりも、ECN社の幹部が襲撃される可能性を高く見ていたためだ。
この日の島西端部は午前中雲ひとつない快晴で、正午から電力事業者管理団体の関係者がポータル・シティにあるOP社本社前で、電力供給回復を求めるデモを行っていた。
午後三時過ぎに天候が急変し、叩きつけるような猛烈な雨がデモ隊を襲った。
落雷の危険も予想されたため、安全を考えてOP社は本社ビルの一部を解放して、デモ隊など近くにいる人々の一時避難場所とした。これが午後三時一〇分のことであった。
大部分のデモ隊がOP社本社ビルに避難したが、十数名が避難を拒否した。
一部にはデモ隊の代表的な人物から避難を許可されなかったため外に残ったという話もあった。
避難したのはデモ隊だけではなく、合宿でポータル・シティ郊外のキャンプ場に向かう中学生の集団なども含まれていた。
豪雨と雷は一時間以上続き、OP社本社は外にいる者たちへ避難を呼びかけ続けた。
外に残ったデモ隊の近くに落雷があったのは、午後四時二〇分のことである。
道路脇の木の近くにいたデモ隊のメンバーが雷を受けた。
それとほぼ時を同じくして近くの木が燃え出し、炎は近くのベンチやデモ隊が設置したテントなどに燃え移った。
それを見たOP社の一部従業員が救助のため現場へと向かったが、逆にどこからともなく湧いて出てきた者たちの襲撃を受けた。
更に八月一〇日にOP社本社近くのビルを占拠した電力事業者管理団体を名乗る集団が襲撃に加わり、乱闘状態となった。この集団はビルを占拠した後もその場に留まり続けていたのだった。
OP社本社も従業員を守るための応援を派遣したが、時既に遅く、数に劣るOP社の従業員が一方的に暴行を受ける事態となった。
事件について最初の報道がなされたのは、午後五時過ぎのことであった。
この時点で雷を受けたデモ隊の一人と、暴行を受けたOP社の従業員二名の計三名の死亡が確認されていた。
午後五時半過ぎには雨が上がったが、乱闘は治まるどころか更に規模を大きくしていった。
負傷者などの搬送を行おうと応援に入った一〇人ほどが何者かからの暴行を受けた。
このうちの数名が「OP社の従業員に暴行を受けた」と声を荒げて抗議したため、事態はより深刻となった。
インデストからハモネスにあるECN社本社に向かっているミヤハラたちに事件の情報が入ったのは事件発生から約四時間後の八月一九日午後八時のことであった。
未だ彼らは帰り道の途中にあり、ハモネスへの到着は八月二六日前後になる予定であった。
「サクライの奴は何をやっているのだ!」
ミヤハラは簡易宿泊所の食堂で声を荒げたが、その表情はどこか状況を楽しんでいるようであった。声や表情にはあまりにも怒りの部分が少なかった。
「移動の速度を上げた方がいいかな?」
そう問いかけたのはオイゲンであった。
ミヤハラとは一昨日に合流し、現在は一緒に移動している。
他にメイ、オオイダ、コナカ、ムレハの四名が同行しており、計六名がハモネスへと向かっていた。
この中でミヤハラに気軽に声をかけることができるのは、親友でもあるオイゲンかお気楽なオオイダくらいであった。
このため移動の予定が変更される可能性があると察知したオイゲンが、確認のためにミヤハラに声をかけたのであった。
「その必要はないだろう。何のためにサクライを残したと思っているのだ?」
留守中の対応はサクライの仕事なので自分が出るまでもない、というのがミヤハラの答えであった。
情報が少ないことは気に入らないが、事件が起きたことがわかればこちらにも対応策がある。
死傷者が出ていることで、ECN社としても事件の捜査を行う大義名分が立つ。
関連会社のOP社に被害が出ている状況なので、その支援の形で事件を捜査することは、ここサブマリン島では一般的なことだからだ。
どうやら事件の発端は電力事業者管理団体を名乗る集団の行動にあるようだ。
この集団についても、ECN社は極秘で調査を進めていた。
既に海洋調査隊の運営代行会社が絡んでいることが判明しており、海洋調査隊に送られた者を利用して事件を起こしているのではないかという情報もあった。
確証が得られていないためミヤハラは情報の裏取りを進めるよう命じていたが、彼らの動きが少なかったため、今までは十分な情報が得られていなかった。
しかし、今回の事件で彼らが動きを見せたことにより、表立って捜査を行うことができる。
「……これでいい」
ミヤハラが不敵な笑みを浮かべながら事件を報じる携帯端末のモニタに見入っていた。
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