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雨
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葵が俊輔の瞳を窺う。
明らかに動揺して、何かを考えているかと思えば顔を赤くしている。
…さっき起きた時もおかしかった。
──今よりずっと真っ赤な顔で…。
片山との『行為』を思い出していた?
…いや…。発作の後は本当に記憶を無くしている。
何かしらの『行為』があったとしても思い出せるとは思えない。
しかも今言われるまで片山が来たことすら覚えていなかった…。
葵の脳裏に俊輔のアザが浮かび、胸が痛み苦しくなる。
──俊とあいつの関係って─…。
俊輔に聞きたい衝動に駆られたが、飲み込んだ。
勝手に好きになっただけで…
──自分は俊輔の弟にすぎないのだから…。
「俊、調子はどうなんだよ?」
おもむろに葵が尋ねた。
「え?…あー…今日は全然大丈夫だと思う」
「じゃあ買い出し行かね?」
「買い出し?」
確かに…。冷蔵庫の中も空っぽだ。
「色々買っとこうぜ。簡単に食べれる物とかさ…」
俊輔が発作を起こした時の為の食べ物を買っておきたかった。
そんなに頻繁に起こすわけでは無かったが、万が一また発作を起こした時なるべく手を離さなくていいようにしておきたい……。
……俊が不安にならないように……。
「そうだな」
俊輔はにっこり笑って「行くか!」
そう言って立ち上がった。
空には雲がかかり日差しが思いの外弱くて、2人はのんびりと歩いていた。
ちょっとした買い物以外、買い出しは2人で…と決めていた。
葵に頼むといらない物まで山ほど買ってくるからだ。
2人であれやこれや言い合いながらスーパーで買い物を済ます。
葵の「2日間俺は頑張った」の主張が通り、甘い物も山ほど買った。
そして万が一の『非常食』や普段の食材で、山のような荷物を手分けして持つ。
葵は帰りに食べようと買った氷のアイスを早速取り出し歩きながら食べ始める。
すると、しばらくして空からゴロゴロと雷鳴が聞こえた。
「やば…降ってくるかな…」
俊輔が空を見上げる。
厚い雲が空を覆っている。
この荷物で雨に降られるのは嫌だな…。
俊輔が考えていると
「俊!走るぞ」
葵が声を掛け走り始めた。
「え!?ちょっと…待って…」
一瞬遅れて俊輔も走り出す。
2人の全力疾走もむなしく家にたどり着く頃には荷物も自分達も雨でびっしょりになっていた。
「マジで最悪…」
葵がダイニングテーブルに荷物を置き雫が滴り落ちる程のTシャツを脱いだ。
「葵、ほら!」
先に家に入った俊輔がタオルを投げて渡すと、シャツを脱ぎタオルで髪を拭く。
「お前…」
葵もタオルで髪を拭きながら俊輔に声を掛けた。
「ん?」
「雨……、最近調子悪いみたいだから…」
葵が手を止め言葉を濁す。
俊輔の顔が一瞬歪む。
「バーカ。雨くらい平気だよ」
俊輔は視線を荷物に戻すと、わざと軽く言い返した。
自分の発作のせいで葵に心配ばかりかけているのだと胸が痛んだ……。
俊輔は上半身裸のまま、荷物を分け冷蔵庫へ片付け始める。
葵は髪を拭きながらその様子を見ていた。
俊輔の髪からは、まだ時々雫が垂れている。
いつもきちんとブラシを入れられている髪が無造作に拭かれたまま顔にかかる…。
長い睫毛にも高く通った鼻筋にも……。
そして髪から滴り落ちる雫が、首へ、敵度に筋肉がついた肩や胸へと伝っていく。
その姿が綺麗で…
──ひどく色っぽく見えて……
葵の鼓動が少しづつ早くなっていく。
髪を拭く手もいつの間にか止まっていた。
俊輔から目が離せなくなる。
2人でシャワーを浴びた記憶が蘇る。
俊輔の柔らかい肌が離れることなくずっと自分に触れていた──。
妙に熱くて…、その熱さが心地良くて……。
…──触れたい……。
「葵!」
俊輔の声にハッとする。
「お前…見てないで手伝えって!」
口調は怒っているが顔は困ったように笑っている。
葵は我に返り顔が熱くなるのを感じた。
───バカか!…何考えてんだよ…。
「…葵?」
俊輔が再び声をかける。
「今行く…」
まだテーブルの上にある荷物を持ちキッチンへ運ぶ。
俊輔が眉をひそめて葵の顔を見ている。
「…顔赤いけど…大丈夫か?」
「大丈夫だよ、何もない」
葵が気まずくて目を逸らした。
「…熱でもあるんじゃないか…?」
額に俊輔の手が伸びてきて、思わず葵はその手を振り払った。
「何でもないって!」
俊輔が驚いて目を見開いた後…
ほんの一瞬悲しげに歪んだ。
「あ……、ごめん、俺…」
「ごめん、ごめん。葵は非常食しまってくれる?俺、他の物やるから」
謝ろうとした葵を俊輔が笑顔で遮った。
「──俊……俺…」
「終わったら、お前先にシャワー浴びろよ。その後俺も浴びるから」
再び俊輔が遮り、背中を向け荷物を片付け始めた。
「……分かった…」
気まずい空気の中お互い背中を向けあった。
俊輔は微かに震える手を何とか止めた。
これ以上葵に謝らせるのも、気を使わせるのも嫌だった。
発作を起こす度におかしくなる兄の面倒をみなければならない弟が他にいるだろうか…。
果たして自分だったら出来るだろうか…。
子供のようになる兄と手を繋ぎ、慰め、一緒に眠る…。
──うんざりして当たり前だ─…。
「……終わったから…シャワー浴びてくる」
葵がそれだけ告げて浴室へ向かった。
──挙句の果てに弟に欲情した……。
「…最低だ……」
俊輔は軽く乱れ始めた呼吸にイラつくように床に座った。
明らかに動揺して、何かを考えているかと思えば顔を赤くしている。
…さっき起きた時もおかしかった。
──今よりずっと真っ赤な顔で…。
片山との『行為』を思い出していた?
…いや…。発作の後は本当に記憶を無くしている。
何かしらの『行為』があったとしても思い出せるとは思えない。
しかも今言われるまで片山が来たことすら覚えていなかった…。
葵の脳裏に俊輔のアザが浮かび、胸が痛み苦しくなる。
──俊とあいつの関係って─…。
俊輔に聞きたい衝動に駆られたが、飲み込んだ。
勝手に好きになっただけで…
──自分は俊輔の弟にすぎないのだから…。
「俊、調子はどうなんだよ?」
おもむろに葵が尋ねた。
「え?…あー…今日は全然大丈夫だと思う」
「じゃあ買い出し行かね?」
「買い出し?」
確かに…。冷蔵庫の中も空っぽだ。
「色々買っとこうぜ。簡単に食べれる物とかさ…」
俊輔が発作を起こした時の為の食べ物を買っておきたかった。
そんなに頻繁に起こすわけでは無かったが、万が一また発作を起こした時なるべく手を離さなくていいようにしておきたい……。
……俊が不安にならないように……。
「そうだな」
俊輔はにっこり笑って「行くか!」
そう言って立ち上がった。
空には雲がかかり日差しが思いの外弱くて、2人はのんびりと歩いていた。
ちょっとした買い物以外、買い出しは2人で…と決めていた。
葵に頼むといらない物まで山ほど買ってくるからだ。
2人であれやこれや言い合いながらスーパーで買い物を済ます。
葵の「2日間俺は頑張った」の主張が通り、甘い物も山ほど買った。
そして万が一の『非常食』や普段の食材で、山のような荷物を手分けして持つ。
葵は帰りに食べようと買った氷のアイスを早速取り出し歩きながら食べ始める。
すると、しばらくして空からゴロゴロと雷鳴が聞こえた。
「やば…降ってくるかな…」
俊輔が空を見上げる。
厚い雲が空を覆っている。
この荷物で雨に降られるのは嫌だな…。
俊輔が考えていると
「俊!走るぞ」
葵が声を掛け走り始めた。
「え!?ちょっと…待って…」
一瞬遅れて俊輔も走り出す。
2人の全力疾走もむなしく家にたどり着く頃には荷物も自分達も雨でびっしょりになっていた。
「マジで最悪…」
葵がダイニングテーブルに荷物を置き雫が滴り落ちる程のTシャツを脱いだ。
「葵、ほら!」
先に家に入った俊輔がタオルを投げて渡すと、シャツを脱ぎタオルで髪を拭く。
「お前…」
葵もタオルで髪を拭きながら俊輔に声を掛けた。
「ん?」
「雨……、最近調子悪いみたいだから…」
葵が手を止め言葉を濁す。
俊輔の顔が一瞬歪む。
「バーカ。雨くらい平気だよ」
俊輔は視線を荷物に戻すと、わざと軽く言い返した。
自分の発作のせいで葵に心配ばかりかけているのだと胸が痛んだ……。
俊輔は上半身裸のまま、荷物を分け冷蔵庫へ片付け始める。
葵は髪を拭きながらその様子を見ていた。
俊輔の髪からは、まだ時々雫が垂れている。
いつもきちんとブラシを入れられている髪が無造作に拭かれたまま顔にかかる…。
長い睫毛にも高く通った鼻筋にも……。
そして髪から滴り落ちる雫が、首へ、敵度に筋肉がついた肩や胸へと伝っていく。
その姿が綺麗で…
──ひどく色っぽく見えて……
葵の鼓動が少しづつ早くなっていく。
髪を拭く手もいつの間にか止まっていた。
俊輔から目が離せなくなる。
2人でシャワーを浴びた記憶が蘇る。
俊輔の柔らかい肌が離れることなくずっと自分に触れていた──。
妙に熱くて…、その熱さが心地良くて……。
…──触れたい……。
「葵!」
俊輔の声にハッとする。
「お前…見てないで手伝えって!」
口調は怒っているが顔は困ったように笑っている。
葵は我に返り顔が熱くなるのを感じた。
───バカか!…何考えてんだよ…。
「…葵?」
俊輔が再び声をかける。
「今行く…」
まだテーブルの上にある荷物を持ちキッチンへ運ぶ。
俊輔が眉をひそめて葵の顔を見ている。
「…顔赤いけど…大丈夫か?」
「大丈夫だよ、何もない」
葵が気まずくて目を逸らした。
「…熱でもあるんじゃないか…?」
額に俊輔の手が伸びてきて、思わず葵はその手を振り払った。
「何でもないって!」
俊輔が驚いて目を見開いた後…
ほんの一瞬悲しげに歪んだ。
「あ……、ごめん、俺…」
「ごめん、ごめん。葵は非常食しまってくれる?俺、他の物やるから」
謝ろうとした葵を俊輔が笑顔で遮った。
「──俊……俺…」
「終わったら、お前先にシャワー浴びろよ。その後俺も浴びるから」
再び俊輔が遮り、背中を向け荷物を片付け始めた。
「……分かった…」
気まずい空気の中お互い背中を向けあった。
俊輔は微かに震える手を何とか止めた。
これ以上葵に謝らせるのも、気を使わせるのも嫌だった。
発作を起こす度におかしくなる兄の面倒をみなければならない弟が他にいるだろうか…。
果たして自分だったら出来るだろうか…。
子供のようになる兄と手を繋ぎ、慰め、一緒に眠る…。
──うんざりして当たり前だ─…。
「……終わったから…シャワー浴びてくる」
葵がそれだけ告げて浴室へ向かった。
──挙句の果てに弟に欲情した……。
「…最低だ……」
俊輔は軽く乱れ始めた呼吸にイラつくように床に座った。
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