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長持の中から藍色の小袖と濃い灰色の帯を取り出すと、幸成は着ていた襦袢を肌から下ろした。
先程の会話を思い出しまたクスッと笑が込み上げる。
───山神…………琥珀の……子だろうか……。
三人とも変わった瞳と毛の色をしていた。
子供達を叱っていた時ですら優しく愛情深い瞳が、どれだけ大切にしているか分かる。
子供達も琥珀をとても慕っていた。
───あの人を殺そうとする必要はあるのだろうか…………。
昔……まだ幼かった頃、山神の言い伝えを聞いた事がある。
百年以上昔の話。
倭建命が神とした一頭の狼。
それが大口真神であった。
長い間郷を守っていた真神が、ある時突然非道の限りを尽くしだした。
郷の人間を手当り次第殺し喰らう。
若い娘は犯してから食らった。
人も真神の怒りを沈める為にあるゆる手を尽くしたが、怒りは治まるどころか増すばかりであった。
そこで人間は真神を作り出した日本武尊に縋り、真神の怒りを沈めてもらった。
それ以降真神が郷に来ることは無くなったが、再び山神が郷に来るのを恐れ、年に一度若い娘を差し出すようになり、それと同時に日本武尊への感謝を込めた祭りを開くようになった。
それが今は『山神』と呼ばれる大口真神の言い伝えだ。
──あの人が…………言い伝えに出てくる大口真神なのだろうか…………
幼い頃初めて聞いた時はその“真神”が恐ろしく思えた。
しかし……それと『琥珀だ』と名乗ったあの人とはどうしても結びつかない。
幸成は小さくため息を吐くと、襟を正し琥珀の寝室を後にした。
先程の会話を思い出しまたクスッと笑が込み上げる。
───山神…………琥珀の……子だろうか……。
三人とも変わった瞳と毛の色をしていた。
子供達を叱っていた時ですら優しく愛情深い瞳が、どれだけ大切にしているか分かる。
子供達も琥珀をとても慕っていた。
───あの人を殺そうとする必要はあるのだろうか…………。
昔……まだ幼かった頃、山神の言い伝えを聞いた事がある。
百年以上昔の話。
倭建命が神とした一頭の狼。
それが大口真神であった。
長い間郷を守っていた真神が、ある時突然非道の限りを尽くしだした。
郷の人間を手当り次第殺し喰らう。
若い娘は犯してから食らった。
人も真神の怒りを沈める為にあるゆる手を尽くしたが、怒りは治まるどころか増すばかりであった。
そこで人間は真神を作り出した日本武尊に縋り、真神の怒りを沈めてもらった。
それ以降真神が郷に来ることは無くなったが、再び山神が郷に来るのを恐れ、年に一度若い娘を差し出すようになり、それと同時に日本武尊への感謝を込めた祭りを開くようになった。
それが今は『山神』と呼ばれる大口真神の言い伝えだ。
──あの人が…………言い伝えに出てくる大口真神なのだろうか…………
幼い頃初めて聞いた時はその“真神”が恐ろしく思えた。
しかし……それと『琥珀だ』と名乗ったあの人とはどうしても結びつかない。
幸成は小さくため息を吐くと、襟を正し琥珀の寝室を後にした。
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