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布団の中で目覚め掛けた意識が障子を抜けて届く光を薄らと捉えると、いつも隣にある温もりが感じられず微睡みながらその温もりを手で探した。
しかし、その手にも愛しい熱が触れない。
幸成は慌てて身体を起こすと、いつも隣から抱きしめてくれる琥珀の姿をさがした。
急いで着替え寝所を出る。
するともう陽が高いところまで来ていて昼に近い時間だと分かり、幸成は僅かに程を紅くした。
昨夜も夜更けまで琥珀に愛され、まだ腹の奥が微かに熱い。
前に瑠璃が『相当お強いんでしょうねぇ』と言っていたが……
それはあまり経験が無い幸成にも分かる。
毎回では無いにしろ、グズグズに溶かされ意識が無くなるまで抱かれる。
そしてその度に昼頃まで起こされることも無く、琥珀は握り飯を用意していてくれるのだ。
───またやっちゃった…………
毎回自分も朝起こしてくれと言っているが、どうも聞き入れてもらえない。
「わかった、わかった」と笑っているだけで、聞き流されているのが言っているそばから分かる。
「あっ!幸成ー!!」
琥珀を探し、台所へ行くと開け放たれた勝手口から幸成の姿が見えたのか翡翠が外から走ってきた。
その後から蒼玉と蛍も着いてくるのが見える。
共に暮らして半月近く経ち、子供達からの呼び名も『兄ちゃん』から『幸成』へとすっかり馴染んでいた。
「ごめん…………また寝坊しちゃって……」
申し訳なさそうに項垂れ首の後ろをポリポリと掻く幸成の頭を、翡翠は精一杯背伸びをして小さな手で撫でた。
「気にすんなって!幸成は悪くないよ!……だいたい琥珀ってさぁ、あぁいう時……ねちっこいとこあるもんな……どうせ夜中まで寝かせて貰えないんだろ?」
「───え!?」
解ってるから……とでも言っている様に“うんうん”と頷いている翡翠を、幸成はギョッとして見つめた。
───ああいう時……!?……ねちっこい!?………
「おれ達もいつも執拗くされるから解るよ……なっ!蒼玉!!」
翡翠に追いつき、隣に並ぶ蒼玉に同意を求め、蒼玉も同じ様に“うんうん”と頷いている。
───な……ッッ…………まさか琥珀……こんな小さな子達にまで……!?
「……そんなの……二人が真面目にやらないから…………いけないんでしょ……」
蛍の顔が責める様に翡翠と蒼玉へ向けられた。
「……私は………いつも…すぐに終わるし………褒めて……もらえるもの……」
───真面目に……!?……すぐ終わる!?……褒めてもらえる……!?
「ちょッ…ちょっと待って!!……みんなはなんの話をしてるの!?」
幸成の必死な声に三人の視線が一斉に集まった。
その不思議そうな眼差しに幸成の喉がゴクリと音を立てる……。
「…………なにって…………幸成…勉強してんだろ?琥珀に、ここでの暮らしのこととか……大切な事を教わってるんだろ…………?」
────え…………勉強…………?
「……なんだぁ…………そぅ…だよね…………」
緊張が解けて、幸成はへなへなと床にしゃがみ込み、思わず馬鹿な事を考えた自分が恥ずかしくなり頬を紅く染めた。
冷静になって考えてみれば、あれだけ子供達を大切にしている琥珀が、そんなことする訳ないと解りそうなもなのに……。
「…………違うの?」
「え!?」
翡翠達がいるのも忘れ肩を落とした幸成に、丸くなった二人の瞳が、そして訝しげな蛍の瞳が痛いほど見つめる……。
「……違う……んだ……ね……」
ボソッと言った疑う様な眼差しに幸成は背中に汗が伝ったのが分かった。
「ち───違わないッ!違わないです!」
「だよなぁ!琥珀がそう言ってたもん!だから起こすなって」
慌てている幸成に気付きもしないのか、ケラケラと笑う二人の後ろから見つめ続ける蛍の視線が妙に鋭く感じ、幸成はそれから逃げる様に目を逸らした。
「あッ!幸成、琥珀がおにぎり……」
突然思い出した様にそう言いと、翡翠が戸棚から海苔で巻かれた握り飯を取り出した。
しかしその量が今回は異様に多い。
「おれ達の昼飯も作ってくれたんだ!」
「…………え…………じゃぁ琥珀は……?」
「黒曜と出掛けた。里に行くって!」
「里に……?」
「うん!土産買ってきてくれるって!」
ここに来てから何度か里に行く琥珀を見ているが、今回の様に自分に何も言わずに行くのは初めてだった。
しかも昼まで用意して行くという事は、それなりの時間帰って来ないという事だ。
───なにか……あったんだろうか…………
「ほらッ!早く食おうぜ!」
「え!?……まだ昼になってないんじゃないの……?」
「琥珀が幸成が起きたら一緒に食えって言ってた!」
握り飯の乗った皿を器用に片手で抱きかかえながら、自分の手を引く翡翠と蒼玉に苦笑いしながら幸成もその後へ続いた。
しかし、その手にも愛しい熱が触れない。
幸成は慌てて身体を起こすと、いつも隣から抱きしめてくれる琥珀の姿をさがした。
急いで着替え寝所を出る。
するともう陽が高いところまで来ていて昼に近い時間だと分かり、幸成は僅かに程を紅くした。
昨夜も夜更けまで琥珀に愛され、まだ腹の奥が微かに熱い。
前に瑠璃が『相当お強いんでしょうねぇ』と言っていたが……
それはあまり経験が無い幸成にも分かる。
毎回では無いにしろ、グズグズに溶かされ意識が無くなるまで抱かれる。
そしてその度に昼頃まで起こされることも無く、琥珀は握り飯を用意していてくれるのだ。
───またやっちゃった…………
毎回自分も朝起こしてくれと言っているが、どうも聞き入れてもらえない。
「わかった、わかった」と笑っているだけで、聞き流されているのが言っているそばから分かる。
「あっ!幸成ー!!」
琥珀を探し、台所へ行くと開け放たれた勝手口から幸成の姿が見えたのか翡翠が外から走ってきた。
その後から蒼玉と蛍も着いてくるのが見える。
共に暮らして半月近く経ち、子供達からの呼び名も『兄ちゃん』から『幸成』へとすっかり馴染んでいた。
「ごめん…………また寝坊しちゃって……」
申し訳なさそうに項垂れ首の後ろをポリポリと掻く幸成の頭を、翡翠は精一杯背伸びをして小さな手で撫でた。
「気にすんなって!幸成は悪くないよ!……だいたい琥珀ってさぁ、あぁいう時……ねちっこいとこあるもんな……どうせ夜中まで寝かせて貰えないんだろ?」
「───え!?」
解ってるから……とでも言っている様に“うんうん”と頷いている翡翠を、幸成はギョッとして見つめた。
───ああいう時……!?……ねちっこい!?………
「おれ達もいつも執拗くされるから解るよ……なっ!蒼玉!!」
翡翠に追いつき、隣に並ぶ蒼玉に同意を求め、蒼玉も同じ様に“うんうん”と頷いている。
───な……ッッ…………まさか琥珀……こんな小さな子達にまで……!?
「……そんなの……二人が真面目にやらないから…………いけないんでしょ……」
蛍の顔が責める様に翡翠と蒼玉へ向けられた。
「……私は………いつも…すぐに終わるし………褒めて……もらえるもの……」
───真面目に……!?……すぐ終わる!?……褒めてもらえる……!?
「ちょッ…ちょっと待って!!……みんなはなんの話をしてるの!?」
幸成の必死な声に三人の視線が一斉に集まった。
その不思議そうな眼差しに幸成の喉がゴクリと音を立てる……。
「…………なにって…………幸成…勉強してんだろ?琥珀に、ここでの暮らしのこととか……大切な事を教わってるんだろ…………?」
────え…………勉強…………?
「……なんだぁ…………そぅ…だよね…………」
緊張が解けて、幸成はへなへなと床にしゃがみ込み、思わず馬鹿な事を考えた自分が恥ずかしくなり頬を紅く染めた。
冷静になって考えてみれば、あれだけ子供達を大切にしている琥珀が、そんなことする訳ないと解りそうなもなのに……。
「…………違うの?」
「え!?」
翡翠達がいるのも忘れ肩を落とした幸成に、丸くなった二人の瞳が、そして訝しげな蛍の瞳が痛いほど見つめる……。
「……違う……んだ……ね……」
ボソッと言った疑う様な眼差しに幸成は背中に汗が伝ったのが分かった。
「ち───違わないッ!違わないです!」
「だよなぁ!琥珀がそう言ってたもん!だから起こすなって」
慌てている幸成に気付きもしないのか、ケラケラと笑う二人の後ろから見つめ続ける蛍の視線が妙に鋭く感じ、幸成はそれから逃げる様に目を逸らした。
「あッ!幸成、琥珀がおにぎり……」
突然思い出した様にそう言いと、翡翠が戸棚から海苔で巻かれた握り飯を取り出した。
しかしその量が今回は異様に多い。
「おれ達の昼飯も作ってくれたんだ!」
「…………え…………じゃぁ琥珀は……?」
「黒曜と出掛けた。里に行くって!」
「里に……?」
「うん!土産買ってきてくれるって!」
ここに来てから何度か里に行く琥珀を見ているが、今回の様に自分に何も言わずに行くのは初めてだった。
しかも昼まで用意して行くという事は、それなりの時間帰って来ないという事だ。
───なにか……あったんだろうか…………
「ほらッ!早く食おうぜ!」
「え!?……まだ昼になってないんじゃないの……?」
「琥珀が幸成が起きたら一緒に食えって言ってた!」
握り飯の乗った皿を器用に片手で抱きかかえながら、自分の手を引く翡翠と蒼玉に苦笑いしながら幸成もその後へ続いた。
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