神殺しの花嫁

海花

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「────は…………!?」

「だからさ……おれがその人間を殺してあげるって言ってんの」

言葉とは逆に、至極真っ当なことを言っていると思わせる様な、悪気の無い笑顔を黒曜は見つめた。

「そいつが気に入らないんでしょ?…………顔に書いてあるよ」

「…………本気で言ってんのか……?……そんな事したら……どんな怒りを買うか…………」

「──そんなのおれに関係ないもん。おれは狼でもなけりゃ……この土地のモンでもない……。あんたの大事な琥珀様が怒り狂ったところで、おれの存在すら判ってないんじゃない?……どうせ、そう長くいるつもりも無かったし……逃げちゃえばお終い…………でしょ?」

「ここを離れるってのか…………?」

「そう。それとも……あんたが一緒に逃げてくれる?」

冗談とも、本気ともつかない笑顔を、黒曜は食い入るように見つめた。
怪我の手当をし、住む所も与えた。
それから今の今まで、自分の元を離れるつもりでいるなど、露程も感じられなかった。

「……馬鹿言うな…………」

目を逸らし吐き捨てる様に言った黒曜を、しばらくの間見つめると、月夜はまた肩を竦め鼻で笑ってみせた。

「───冗談だよ。あんたがから離れられる訳ないもんね」

「そうじゃねぇ。……あいつに……余計なことすんなって言ってんだよ」

「…………なんでさ……?あんたはその人間が目障りなんだろ?……なら───」

月夜は黒曜の胸に頬を当てると、適度に筋肉のついた引き締まった下腹部に、また熱を引き戻そうとしているかの様に指を這わせた。
しかしその柔らかく長い指が、魔羅に行き着く前に黒曜の手が強引に握った。

「俺にとってあいつが目障りだろうが、そうじゃなかろうがお前には関係ねぇ。───とにかく……あいつには手を出すな……解ったか……?」

冷たく突き放した物言いに、見つめ合っているとも、睨み合っているとも取れる視線が交差する。

「…………なんだ……つまんないの…………」

その視線を断ち切るように月夜は身体を起こし、黒曜の肌を離した。
全てが面白くない。
美しい尻尾をパタパタと動かすと、自分の気を逸らす様にそれに目を向けた。
どんなに美しい姿に変えても、その身体の上で艶やかに乱れても、黒曜が自分を見ることは無い。
こんなにも自尊心を満たしてくれない男は初めてだった。

「……おれはあんたの役に立ちたいだけなのに…………」

月夜が不貞腐れ口にすると、身体を支えていた手が引かれ、無理矢理黒曜の上に戻された。
決して自分のものにならない漆黒の瞳が見つめる。

「…………だったら余計なことしねぇで……黙って俺に抱かれてろ……」

容赦なく熱が戻され、尻尾で隠れていたまだ柔らかく解されたままの窪みが指で溶かされていく。

「───ふぁッ──あ…………ンんッ…………」

自分の身体を知り尽くした指に、月夜は黒曜の身体にしがみついた。

「───ほんと…………嫌な奴…………」

腹立たしげに口にすると、頭に着く様に倒れている黒曜の耳に、甘く噛みついた。




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