107 / 173
・・・
しおりを挟む
頭の上が妙に騒がしい。
何人もの声がぐちゃぐちゃと入り交じり、ただ苛つきだけが意識を覚醒させていく。
ただの話し声のようにも聞こえれば、名前を呼ばれているようにも聞こえるその騒音に耳がピクピクと動いた。
しかし堪えられない程の眠気が、瞼を開けることを拒ませ、それにもまた余計苛つく。
寝返りをうち「うるさい」と言うように、手で声を追い払おうとしたが、今度は執拗に名前を呼ばれ、眉がピクリと反応した。
───翡翠か…………?
「…うるせぇな……」
声になったかならないかの音が口から漏れると、突然懐かしい顔が目の前に現れ
「起きろ!───琥珀!!」
初めて見る形相で怒鳴りつけられ、琥珀は一気に現実へ引き戻された。
「───浅葱ッ!?」
いきなり目を開け飛び起きた琥珀に、周りにいる翡翠、蒼玉、蛍、そして瑠璃までもが一瞬の驚愕の後、一斉に抱きついた。
「だからさぁ……ぼくは頼まれたから、ここから連れ出しただけで、その後の事は何も知らないんだって」
白姫が先程から何度も聞いている言い訳を口にした。
「ふざけんなッ!」
いい加減痺れを切らし、紫黒が怒鳴り声と共に胸ぐらを掴んだ。
幸成が姿を消してから既に三日の月日が経っている。
琥珀が深い眠りに落ちている間、紫黒も黒曜も幸成を探したが、その姿を見つける事が出来なかった。
白姫が連れ出したことで幸成本人の匂いが薄かったことに加え、その夜に降った雨が追う手立てを完全に消し去っていたのだ。
「……幸成が…此処を出たいと……お前に頼んだと言うのか……?」
紫黒を止めるように琥珀が口を開いた。
余程強い薬を盛られていたのか、まだ頭の隅がぼんやりとする。
「そうだよ。唄ってたぼくの元に彼は自分の足で自らやってきた」
壁に寄り掛かり、座ったまま琥珀は庭に視線を向けた。
幸成が来た日、あんなに美しく揺れていた彼岸花はもう見る影もない。
「あのチビが何のためにてめぇんとこに行ったってんだよッ!嘘も大概にしとけッ!」
「───気になったんだろッ!?」
紫黒が掴んだままの胸元を、白姫が思い切り払い除けた。
「あいつの過去がっ!だからぼくんとこに来たんだろ!」
その言葉に紫黒の顔色が変わった。
「───てめぇ……」
「そりゃ気になるでしょ。琥珀のやった事は人間の間でも伝えられてる。それが実際来てみたら善人気取りで子育てなんかしてりゃァさ。気にならない方が異常だよ」
乱れた胸元を直し、涼しい顔で続けている白姫には全く視線を向けず琥珀は庭を見つめていた。
何人もの声がぐちゃぐちゃと入り交じり、ただ苛つきだけが意識を覚醒させていく。
ただの話し声のようにも聞こえれば、名前を呼ばれているようにも聞こえるその騒音に耳がピクピクと動いた。
しかし堪えられない程の眠気が、瞼を開けることを拒ませ、それにもまた余計苛つく。
寝返りをうち「うるさい」と言うように、手で声を追い払おうとしたが、今度は執拗に名前を呼ばれ、眉がピクリと反応した。
───翡翠か…………?
「…うるせぇな……」
声になったかならないかの音が口から漏れると、突然懐かしい顔が目の前に現れ
「起きろ!───琥珀!!」
初めて見る形相で怒鳴りつけられ、琥珀は一気に現実へ引き戻された。
「───浅葱ッ!?」
いきなり目を開け飛び起きた琥珀に、周りにいる翡翠、蒼玉、蛍、そして瑠璃までもが一瞬の驚愕の後、一斉に抱きついた。
「だからさぁ……ぼくは頼まれたから、ここから連れ出しただけで、その後の事は何も知らないんだって」
白姫が先程から何度も聞いている言い訳を口にした。
「ふざけんなッ!」
いい加減痺れを切らし、紫黒が怒鳴り声と共に胸ぐらを掴んだ。
幸成が姿を消してから既に三日の月日が経っている。
琥珀が深い眠りに落ちている間、紫黒も黒曜も幸成を探したが、その姿を見つける事が出来なかった。
白姫が連れ出したことで幸成本人の匂いが薄かったことに加え、その夜に降った雨が追う手立てを完全に消し去っていたのだ。
「……幸成が…此処を出たいと……お前に頼んだと言うのか……?」
紫黒を止めるように琥珀が口を開いた。
余程強い薬を盛られていたのか、まだ頭の隅がぼんやりとする。
「そうだよ。唄ってたぼくの元に彼は自分の足で自らやってきた」
壁に寄り掛かり、座ったまま琥珀は庭に視線を向けた。
幸成が来た日、あんなに美しく揺れていた彼岸花はもう見る影もない。
「あのチビが何のためにてめぇんとこに行ったってんだよッ!嘘も大概にしとけッ!」
「───気になったんだろッ!?」
紫黒が掴んだままの胸元を、白姫が思い切り払い除けた。
「あいつの過去がっ!だからぼくんとこに来たんだろ!」
その言葉に紫黒の顔色が変わった。
「───てめぇ……」
「そりゃ気になるでしょ。琥珀のやった事は人間の間でも伝えられてる。それが実際来てみたら善人気取りで子育てなんかしてりゃァさ。気にならない方が異常だよ」
乱れた胸元を直し、涼しい顔で続けている白姫には全く視線を向けず琥珀は庭を見つめていた。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる