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「随分簡単に手放すんだね」
襖を開けるなり掛けられた、皮肉のこもった言葉に成一郎は視線だけ向けた。
「……勝手に部屋に入るな」
真神が姿を現すまで幸成を抱いていた布団の上に、図々しく座った小柄な男などさして関心が無いのか、何の感情も隠っていない声で返し、後手に襖を閉めた。
「ぼくの助けが必要なくせに……偉そうに……」
不貞腐れ、頬を膨らませながら睨みつける瞳を一瞥すると、成一郎は寝間着を脱ぎ着替え始めた。
それにもまた面白くなさそうに男は暫く睨みつけていたが、なんの効果も無いと解ったのか自分を紛らわす様に布団の周りに目を向けあれこれと手に取り始めた。
「───こんな物まで使ってんの⁉︎趣味悪……そりゃあいつも嫌がる訳だ」
その中の捨てられたままの芋茎を手に取ると、ケラケラと笑った。
「あんた、自分のに余っ程自信ないわけ?」
しかし馬鹿にした自分の声など聞こえないのか、新しい着物を羽織り帯を結ぶ背中を男はもう一度睨みつけると
「…………無視すんなよ……」
紅く形の良い唇がボソリと吐いた。
「何しに来た……?」
やっと返ってきた言葉に、紅い唇が今度は嬉しそうにニヤッと笑った。
「見物に来たに決まってんじゃん。……まぁぼくが望んでたモノじゃなかったけど……久しぶりに本気で怒る琥珀が見られたよ」
物珍しそうに手にした芋茎を角度を変え見ている瞳を、成一郎の冷たい視線が捉えているのにも気付かず男は言葉を繋げた。
「所詮人間風情に琥珀を捕らえるなんて無理に……」
「──勘違いするな」
言葉を遮られた身体がビクッと震えた。
「今回は余興に過ぎない。真神が幸成を連れに来ると教えたのは貴様であろう……?」
“人間風情”と言った相手に怯んでいる自分に苛立ち、男は無理に笑うと持っていた芋茎を敷かれたままの布団に投げ出した。
「余興ねぇ……負け惜しみも大概にしなよ……?琥珀がお前なんかに───」
「その名を口にするな」
徐に男の前まで来た成一郎の指が、人形の様に白く美しい顔を自分へと向け、男もされるがままにそれに甘んじた。
“たかが人間”に触れられ、挙句この様に扱われ、心底腹が立つのにどこか人間離れした成一郎に何故か抗うことが出来ないのだ。
「貴様は大人しく俺の言う通りにしていれば良い。その代わりに貴様には真神の死をくれてやる…………解ったな?」
震えそうになるのを堪えると、白姫は無言で頷いた。
襖を開けるなり掛けられた、皮肉のこもった言葉に成一郎は視線だけ向けた。
「……勝手に部屋に入るな」
真神が姿を現すまで幸成を抱いていた布団の上に、図々しく座った小柄な男などさして関心が無いのか、何の感情も隠っていない声で返し、後手に襖を閉めた。
「ぼくの助けが必要なくせに……偉そうに……」
不貞腐れ、頬を膨らませながら睨みつける瞳を一瞥すると、成一郎は寝間着を脱ぎ着替え始めた。
それにもまた面白くなさそうに男は暫く睨みつけていたが、なんの効果も無いと解ったのか自分を紛らわす様に布団の周りに目を向けあれこれと手に取り始めた。
「───こんな物まで使ってんの⁉︎趣味悪……そりゃあいつも嫌がる訳だ」
その中の捨てられたままの芋茎を手に取ると、ケラケラと笑った。
「あんた、自分のに余っ程自信ないわけ?」
しかし馬鹿にした自分の声など聞こえないのか、新しい着物を羽織り帯を結ぶ背中を男はもう一度睨みつけると
「…………無視すんなよ……」
紅く形の良い唇がボソリと吐いた。
「何しに来た……?」
やっと返ってきた言葉に、紅い唇が今度は嬉しそうにニヤッと笑った。
「見物に来たに決まってんじゃん。……まぁぼくが望んでたモノじゃなかったけど……久しぶりに本気で怒る琥珀が見られたよ」
物珍しそうに手にした芋茎を角度を変え見ている瞳を、成一郎の冷たい視線が捉えているのにも気付かず男は言葉を繋げた。
「所詮人間風情に琥珀を捕らえるなんて無理に……」
「──勘違いするな」
言葉を遮られた身体がビクッと震えた。
「今回は余興に過ぎない。真神が幸成を連れに来ると教えたのは貴様であろう……?」
“人間風情”と言った相手に怯んでいる自分に苛立ち、男は無理に笑うと持っていた芋茎を敷かれたままの布団に投げ出した。
「余興ねぇ……負け惜しみも大概にしなよ……?琥珀がお前なんかに───」
「その名を口にするな」
徐に男の前まで来た成一郎の指が、人形の様に白く美しい顔を自分へと向け、男もされるがままにそれに甘んじた。
“たかが人間”に触れられ、挙句この様に扱われ、心底腹が立つのにどこか人間離れした成一郎に何故か抗うことが出来ないのだ。
「貴様は大人しく俺の言う通りにしていれば良い。その代わりに貴様には真神の死をくれてやる…………解ったな?」
震えそうになるのを堪えると、白姫は無言で頷いた。
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