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「───琥珀…………」
琥珀色の穏やかな瞳と目が合い、思わず口から漏れた名前に幸成は照れたように俯いた。
───つい……呼び捨てに…………
昨夜“さまなどいらない”と言われ「琥珀」と呼んでいたが、やはりずっとそう呼んでいただけに恥ずかしいような畏れ多いような……どこか居心地が悪い。
しかしそんな事は琥珀本人には解る筈もなく、俯いた幸成を力強い腕が抱きしめた。
「よく眠っていたな」
髪に口付けた琥珀の唇から吐かれる息が熱く、その柔らかさも昨夜のことを思い出させ、幸成は琥珀の着物にしがみついた。
見なくても自分がどんな顔をしているか容易に想像させる。
しかも今度はそのしがみついた着物の奥の肌すら熱く感じるような気がして、結局それすら離し、見られないように手で顔を覆った。
───何やってんだ俺は…………
昨夜あんなに大胆に琥珀に想いを告げたのが、信じられない程恥ずかしい。
そしてそんな自分を見てクスッと笑った琥珀がまた一際恥ずかしくさせた。
「顔を隠すなよ」
「───隠してませんッ……」
「……隠してるだろ……?」
「か……隠してなど……いませんッ」
ついムキになって答えた幸成に、さすがに堪えられなくなったのか琥珀が「クックッ」と声を立てて笑った。
「そうか……?なら、顔を見せてくれよ」
まだ微かに笑っている声に、今度は無言で返した隠されていない耳が、紅く染まっている。
「幸成?…………怒ったのか?…………悪かった…………な?」
それでも何も言わない幸成を、琥珀は胸にキツく抱きしめた。
強がって、不貞腐れて……以前の幸成と何も変わらない。
それが堪らなく愛おしくさせた。
「……頼む幸成……顔を上げてくれよ……」
「……………………」
それでも無視を決め込む幸成に苦笑いすると
「お前に聞きたい事があったんだがなぁ……」
わざわざ大きな溜息を吐いてみせた。
「………………なんですか……聞きたいことって……」
暫くおいてから、素直に返事を返した幸成にまた笑ってしまいそうになるのを堪えると、自分の枕元から昨夜見つけた“櫛”を手にした。
「……昨夜お前の胸元からこれを見つけた。何故……これをお前が持ってたんだ?」
その言葉にやっと幸成が顔を上げた。
「───それは俺のッ──」
琥珀の手から櫛を受け取ると、大事そうに両手でギュッと胸に抱いた。
「…………それは……お前の物か…?」
「──え………………あ…………それは…………」
まるで我が子でも抱きしめる様な表情に、琥珀の鼓動が高鳴り始めた、
「ここで初めて目が覚めた時……枕元にあって…………覚えてないけど……これは俺の宝物だって思ったんです」
幸成を見つめる月のような瞳が、僅かに揺れた。
今の言葉が、記憶を無くしてなお……『愛しい想い』は変わらないのだと教えている。
「あの…………俺のでは無かったですか……?」
「…………いや……これはお前の物だ……」
たった今まで紅く染めた顔を隠していたことなど忘れたように、ほっと安堵したように笑い、櫛を見つめる幸成を琥珀は力強く抱きしめた。
「───琥珀……?」
琥珀色の穏やかな瞳と目が合い、思わず口から漏れた名前に幸成は照れたように俯いた。
───つい……呼び捨てに…………
昨夜“さまなどいらない”と言われ「琥珀」と呼んでいたが、やはりずっとそう呼んでいただけに恥ずかしいような畏れ多いような……どこか居心地が悪い。
しかしそんな事は琥珀本人には解る筈もなく、俯いた幸成を力強い腕が抱きしめた。
「よく眠っていたな」
髪に口付けた琥珀の唇から吐かれる息が熱く、その柔らかさも昨夜のことを思い出させ、幸成は琥珀の着物にしがみついた。
見なくても自分がどんな顔をしているか容易に想像させる。
しかも今度はそのしがみついた着物の奥の肌すら熱く感じるような気がして、結局それすら離し、見られないように手で顔を覆った。
───何やってんだ俺は…………
昨夜あんなに大胆に琥珀に想いを告げたのが、信じられない程恥ずかしい。
そしてそんな自分を見てクスッと笑った琥珀がまた一際恥ずかしくさせた。
「顔を隠すなよ」
「───隠してませんッ……」
「……隠してるだろ……?」
「か……隠してなど……いませんッ」
ついムキになって答えた幸成に、さすがに堪えられなくなったのか琥珀が「クックッ」と声を立てて笑った。
「そうか……?なら、顔を見せてくれよ」
まだ微かに笑っている声に、今度は無言で返した隠されていない耳が、紅く染まっている。
「幸成?…………怒ったのか?…………悪かった…………な?」
それでも何も言わない幸成を、琥珀は胸にキツく抱きしめた。
強がって、不貞腐れて……以前の幸成と何も変わらない。
それが堪らなく愛おしくさせた。
「……頼む幸成……顔を上げてくれよ……」
「……………………」
それでも無視を決め込む幸成に苦笑いすると
「お前に聞きたい事があったんだがなぁ……」
わざわざ大きな溜息を吐いてみせた。
「………………なんですか……聞きたいことって……」
暫くおいてから、素直に返事を返した幸成にまた笑ってしまいそうになるのを堪えると、自分の枕元から昨夜見つけた“櫛”を手にした。
「……昨夜お前の胸元からこれを見つけた。何故……これをお前が持ってたんだ?」
その言葉にやっと幸成が顔を上げた。
「───それは俺のッ──」
琥珀の手から櫛を受け取ると、大事そうに両手でギュッと胸に抱いた。
「…………それは……お前の物か…?」
「──え………………あ…………それは…………」
まるで我が子でも抱きしめる様な表情に、琥珀の鼓動が高鳴り始めた、
「ここで初めて目が覚めた時……枕元にあって…………覚えてないけど……これは俺の宝物だって思ったんです」
幸成を見つめる月のような瞳が、僅かに揺れた。
今の言葉が、記憶を無くしてなお……『愛しい想い』は変わらないのだと教えている。
「あの…………俺のでは無かったですか……?」
「…………いや……これはお前の物だ……」
たった今まで紅く染めた顔を隠していたことなど忘れたように、ほっと安堵したように笑い、櫛を見つめる幸成を琥珀は力強く抱きしめた。
「───琥珀……?」
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