35 / 50
・・・
しおりを挟む
電源が切れたままの静流のスマホへ何度目かの電話をかけるが、相変わらず繋がる様子がなく涼太はソファーの背もたれに身体を預け天井を仰いだ。
今時病室でスマホが使える事くらい涼太にも分かる。
それでも電源が切れているという事は『出られる状況にない』という事だ。
それが体調によるものなのか……或いは長倉によってそうされているのか、何も解らないことが涼太を落ち着かなくさせていた。
───長倉さんは……このまま静流さんを返さないつもりだ…………。
長倉の電話の様子から静流がそう酷い症状ではないことは判る。
だとすれば長倉がスマホを取り上げているか……
まさか……いきなり静流本人がそこまで自分を拒絶するとは思えない……。
───静流さんにだって……俺が必要なはずだ……。
なんにせよ静流と連絡すらとれないことが涼太の不安を煽いだ。
病院へ出向いたところで会わせてもらえない事はハッキリしている。
病室さえ分かれば素知らぬ振りで入ってもいけるが、それすら分からない。
───静流さんは…………俺と離れていても平気なんだろうか……。……長倉さんが……いるから……
涼太の鼓動が苦しい程激しく打ち始めた。
───長倉さんがいるから…………あの人がいなきゃ……静流さんは俺に縋るしかなくなるのに……。
涼太の中で初めて長倉を排除したいという思いが湧き上がった。
もちろん長倉の存在は涼太にとって喜ばしいモノでは無かったが、別段気に止める程でもなかった。
特に静流が眠る為に自分から涼太を求めるようになってからは優越感すら抱いていた。
それが今はどうにか静流を自分から引き離そうとしているようにしか思えない。
「ただいま」
玄関から聞こえるはずのない耳に届き、涼太は急いでそちらへ向かった。
「───静流さん………」
慌てた様に玄関まで出てきて、まるで幽霊でも見たように立ち尽くす涼太を静流は呆れた様に笑った。
「どうしたの…?そんな怖い顔して」
「だって……しばらくの間入院するって……長倉さんが……」
「入院なんかしないよ……。長倉は心配してそう言ったけど、あれはただの貧血だよ。それに……」
静流は笑いながらリビングへと向かうとソファーへと腰を下ろした。
「自分の患者が入院してるのに、医者の俺が入院なんてカッコ悪くてしてられないだろ」
「───良かった………。このまま静流さんが帰って来ないんじゃないかと思った……」
自分の前に膝をつき甘えた様に抱きつく涼太の髪を静流は優しく撫でた。
こんな姿は、昔とまるで変わらない様に見える。
「…そんなわけないだろ……。したとしても、たかだか数日間の入院だよ」
「…………そうかな………長倉さんは……静流さんをここに帰すつもりは無かったと思うけど……」
涼太の言葉に困ったように
「まさか……それは考えすぎだよ」
そう言って笑う静流の顔を見つめる涼太の瞳の奥に、怒りがハッキリと見て取れた。
「……涼太…………?」
「……今日は…………一緒に眠ろうか…?───静流さん」
そしてその怒りを含んだままの瞳がにっこりと微笑んだ。
今時病室でスマホが使える事くらい涼太にも分かる。
それでも電源が切れているという事は『出られる状況にない』という事だ。
それが体調によるものなのか……或いは長倉によってそうされているのか、何も解らないことが涼太を落ち着かなくさせていた。
───長倉さんは……このまま静流さんを返さないつもりだ…………。
長倉の電話の様子から静流がそう酷い症状ではないことは判る。
だとすれば長倉がスマホを取り上げているか……
まさか……いきなり静流本人がそこまで自分を拒絶するとは思えない……。
───静流さんにだって……俺が必要なはずだ……。
なんにせよ静流と連絡すらとれないことが涼太の不安を煽いだ。
病院へ出向いたところで会わせてもらえない事はハッキリしている。
病室さえ分かれば素知らぬ振りで入ってもいけるが、それすら分からない。
───静流さんは…………俺と離れていても平気なんだろうか……。……長倉さんが……いるから……
涼太の鼓動が苦しい程激しく打ち始めた。
───長倉さんがいるから…………あの人がいなきゃ……静流さんは俺に縋るしかなくなるのに……。
涼太の中で初めて長倉を排除したいという思いが湧き上がった。
もちろん長倉の存在は涼太にとって喜ばしいモノでは無かったが、別段気に止める程でもなかった。
特に静流が眠る為に自分から涼太を求めるようになってからは優越感すら抱いていた。
それが今はどうにか静流を自分から引き離そうとしているようにしか思えない。
「ただいま」
玄関から聞こえるはずのない耳に届き、涼太は急いでそちらへ向かった。
「───静流さん………」
慌てた様に玄関まで出てきて、まるで幽霊でも見たように立ち尽くす涼太を静流は呆れた様に笑った。
「どうしたの…?そんな怖い顔して」
「だって……しばらくの間入院するって……長倉さんが……」
「入院なんかしないよ……。長倉は心配してそう言ったけど、あれはただの貧血だよ。それに……」
静流は笑いながらリビングへと向かうとソファーへと腰を下ろした。
「自分の患者が入院してるのに、医者の俺が入院なんてカッコ悪くてしてられないだろ」
「───良かった………。このまま静流さんが帰って来ないんじゃないかと思った……」
自分の前に膝をつき甘えた様に抱きつく涼太の髪を静流は優しく撫でた。
こんな姿は、昔とまるで変わらない様に見える。
「…そんなわけないだろ……。したとしても、たかだか数日間の入院だよ」
「…………そうかな………長倉さんは……静流さんをここに帰すつもりは無かったと思うけど……」
涼太の言葉に困ったように
「まさか……それは考えすぎだよ」
そう言って笑う静流の顔を見つめる涼太の瞳の奥に、怒りがハッキリと見て取れた。
「……涼太…………?」
「……今日は…………一緒に眠ろうか…?───静流さん」
そしてその怒りを含んだままの瞳がにっこりと微笑んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる