記憶の海

海花

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涼太はベットの上の静流の寝顔を見つめていた。
細く開いた口から耳触りの良い寝息が聞こえている。
出会った頃より幾分歳を重ね痩せた様に見えるが、線の細い美しさも人を惹き付ける色気も変わらない所か年齢と共に増している様に見える。
涼太は静流の横に身を滑り込ませると甘い寝息を吐き出す唇に指を這わせ、自分の唇を重ねた。

「───ん…………」

昨夜何度も自分の名前を呼んだ唇から艶っぽい声が漏れ、瞼がゆっくりと開くと色素の薄い淡い茶色の瞳が自分を見つけたのが分かった。

「……涼太……?」

「おはよう」

静流は涼太に微笑むと窓に視線を向けた。

「……もう朝か…………」

「よく寝てたよ」

まだぼんやりとしている静流を抱きしめ細い首筋にキスしていく。

「……ン………お前……大学は……?」

「休むよ……静流さん体調崩してるのに学校なんて行かない」

「体調悪いの?……俺が?」

クスクス笑う静流を涼太はいつもの様に腕の中に閉じ込め顔に首にキスを重ねる。

「だから、仕事だってしばらく休むんでしょ?」

「それは長倉が心配してそうさせただけだよ」

「…………そう言えば……さっき長倉さん来たよ」

長倉の名前に動きを止めると、静流の瞳を窺う様にみつめた。
その顔からは笑顔が消えている。

「……長倉が?」

「心配で顔を見に寄ったって……」

「起こしてくれれば良かったのに」

「………寝てるなら無理に起こす必要ないって言うから……」

「長倉らしいな」

そう言ってまたクスッと笑う静流を涼太の瞳が真っ直ぐに捉えた。

「───ねぇ……長倉さんと別れなよ」

涼太の言葉に静流は目を丸くした。
長倉に限らず、今まで一度だって涼太が自分の人間関係に口を出した事など無かったからだ。

「俺がいるからいいでしょ?」

「…………お前と長倉は違うだろ」

いつもと少し様子の違う涼太に困惑しながら誤魔化すように笑った。

「……………どこが違うの?……俺だって静流さんを愛してる」

「……お前は………俺の甥で…………恋人じゃない…………」

───そうだ…………。涼太は兄さんの子で……

「そんなの……ただの関係の呼び名に過ぎない。俺は静流さんを愛してるし……静流さんも俺を愛してる」

「……俺はお前を愛してない…………」

涼太の言葉に静流の心臓が徐々にその速さを増していく。

───超えてはならない一線を……超えてしまっている…………

「……嘘だね。静流は俺を愛してるし……必要としてる。──長倉さんじゃなくて……俺を……」

何もかも見透かしている様な瞳が静流を搦め取り動けなくしていく。

「違う……俺は………お前が嫌いだ…………」

───愛してはいけない………………

涼太を易々と受け入れながら、辛うじて言葉だけが理性を保っていた。

微かな陽の光すら届かなくなった海の底を、まだ深く沈んでいく感覚に囚われる。
後は身体を押し潰すだけの終わりだと解っていながら、静流は沈むことしか出来ずにいた。




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