記憶の海

海花

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「……ホント申し訳ないね……。荷物まで運ばせてしまって……」

二人で運んでも両手いっぱいにある荷物を、車に乗せながら長倉はすまなそうに笑った。
持ち手が切れてしまったせいで、持てなくなってしまった袋を、両手で抱える様にした冬音夜はそれに応える様に笑い返しながら気が緩めば落としそうになる荷物を長倉へ渡した。

「こんな事くらい……別に…そんな……」

「イヤイヤ……本当に助かったよ。久しぶりに予定の無い休みだったから、料理でもしようと思ったら……バカみたいに買っちゃってね……」

「……そうなんですね」

人懐っこく笑う長倉につられる様に冬音夜も笑った。

「中村くんは……これから買い物かな?」

「──え!?」

長倉に言われてふと手を見るが……先程買ったリンゴを持っていない事にそこで気付いた。

「あ…………いえ……あれ…………リンゴ……買ったんですけど…………」

「え……?……」

二人の視線が今積み込んだばかりの幾つもの買い物袋へ向けられる。

「……もしかして…………混ざっちゃったかな…………」

「……あー………………」




窓の外の流れる景色を見ながら冬音夜は僅かに後悔していた。
お詫びに夕食に招待したいという長倉の申し出を一度は断ったものの、『涼太のことも話したい』そう言われ結局車へ乗り込んでしまった。

「あの…俺なんか突然お邪魔して……ご家族に迷惑なんじゃ…………」

「ん?……ああ……その辺は心配しなくて大丈夫だよ。しがない中年の一人暮らしだから」

「……そうなんですか…………?」

──一人暮らしで……あの買い物の量って……

後部座席にチラッと視線を向けた冬音夜に気付いたのか

「久々にスーパーなんて行ったから楽しくなってしまって……」

そう言って長倉は自嘲気味に笑った。

野菜や肉や魚……どう考えても一人分の食材とは思えなかった。
これだけの量を一人で消費するとなると一体どれ程かかるだろうか。

「だから……中村くんが来てくれると有難いんだよ。料理はやっぱり……誰かの為の方が作りがいがあるから」

「それは……解ります……」

冬音夜は長倉の言葉に笑顔で返すと、再び窓の外へ視線を向けた。
涼太が来ない日は以前にも増して料理をする気になれなかった。
“もしこのまま、涼太が姿を現さなかったら…” そう考えただけでゾッとする。
それ程までに冬音夜の中で涼太の存在が大きくなっていた。
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感想 10

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みんなの感想(10件)

さくら乃
2023.02.08 さくら乃

冬音夜くんが涼太さんを想う気持ちが可愛くて、そして切ないです。
長倉さんが出てきて不穏な展開になりそうで怖いです゜゜(´O`)°゜
怖いけど、続き楽しみにしてます。

解除
さくら乃
2023.01.25 さくら乃

本日更新分最高です♡
冬音夜くんは可愛いし、涼太さんが嫉妬してるし。涼太さんの最後の台詞いいです。
もうきゅんきゅんしてしまいました♡

2023.01.25 海花

ありがとうございます〜(,,> <,,)
嬉しい♡♡

解除
さくら乃
2023.01.16 さくら乃

涼太さんの過去のお話すごく辛かったです( ノД`)
冬音夜くんとのお話に戻って、これからどういう展開になるのか、すごく楽しみにしています。少しずつ二人の気持ちが寄り添っていくといいなとおもいます。

2023.01.16 海花

いつもありがとうございます( *´꒳`*)
2人が幸せになれるといいなぁ〜♡と私も思います( ´ㅁ` ;)

解除

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