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純の宮妃
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純の宮妃
嫡男である寿の宮の正妻であり、皇后亡き後、宮中で最も発言力の強い女性の一人である。
これは、尊星の主観に過ぎないが、多くの人はこう思っている。
スラリと高い背に、艶やかな黒髪、顔立ちも整っている。何を着ていても様になるような気品、それでいて微笑みの母との異名を持ち、優しさや温もりを感じさせる。誰とでも一定の距離を保ちながら上手く付き合う。名家の出身で学もあり、趣味さえも上品である。非の打ち所は見当たらない。
だから、意外だった。
寿の宮が公然と不倫をしていることが。
「尊星さま、少し良いですか?」
居間でくつろいでいる尊星のもとへツキヨがやってくる。
「はい、どうぞ」
「この前の女子会で、純の宮妃さまの話題になりまして、恥ずかしながら、私、全然、純の宮妃さまのことを存じ上げていなくて、良ければ教えていただけませんか?」
ツキヨさんが他の妃に興味を持つのは少し珍しい。ツキヨさんには後ろ楯が居ないので、交友関係もかなり宮妃としては狭い部類だった。
「寿の宮の正妻です。まぁ、なんというか、非の打ち所のない人です。煌の宮の一件以降気を病んでいると聞いています」
「寿の宮さまとは不仲だったんですか?
ってすごい失礼な聞き方でしたね、すみません」
眉をハの字にしたツキヨ。
「いえ、構いません。う~ん、私の口からどうこうと言うことは夫婦間のことだしなんとも…でも、寿の宮は純の宮妃のことを少なくとも「愛して」とか「好きで」一緒にいるという感じはしなくて、もっと事務的な雰囲気があったようには思う。子どもができても言い方は悪いですが、任務を一つ達成したような感じの報告だったんです。あ、もちろん、純の宮妃のことも子供のことも大切にはしていましたけど」
「そうだったんですね」
「王族の結婚だったら珍しくもないことですよ、」
かく言う私もそちら側の人間だったわけで、寿の宮の態度がまるで分からないなんてことはなく、むしろよく分かる。ある日突然この人が奥さんです。なんて言われて急に情が湧くというのは結構難しいことだし、王族でみられる特徴の一つに感情表現の希薄な人が多いことが挙げらくらいだ。
「…でも、それは少し分かるような気がします。気持ちよりも周囲の方たちに意識が向かってしまうというか」
ツキヨはそう言った。
「確かに、それはそうかもしれませんね」
ツキヨは、すこし躊躇うような仕草を見せる。
「私、実は…楓の宮妃さまから純の宮妃に合うように言われていて」
「え?楓の宮妃から?」
「はい」
「一体、どうして?」
「私がお会いしたことがないと話したところ、とても気さくで感じのよい方なのでぜひ一度お会いするべきよ と言われまして」
「なるほど」
「煌の宮さまの一件以降沈んでいらっしゃるとも伺っていますし、なにか純の宮妃さまのお力にもなることができたらと思いまして」
「それは良いですね。確か、純の宮妃さまもお料理が趣味だったはずです、シンに調整がとれないか聞いておきましょうか?」
「お願いします」
そして、一週間後の夕方、夫婦共々、寿の宮に招待された。
嫡男である寿の宮の正妻であり、皇后亡き後、宮中で最も発言力の強い女性の一人である。
これは、尊星の主観に過ぎないが、多くの人はこう思っている。
スラリと高い背に、艶やかな黒髪、顔立ちも整っている。何を着ていても様になるような気品、それでいて微笑みの母との異名を持ち、優しさや温もりを感じさせる。誰とでも一定の距離を保ちながら上手く付き合う。名家の出身で学もあり、趣味さえも上品である。非の打ち所は見当たらない。
だから、意外だった。
寿の宮が公然と不倫をしていることが。
「尊星さま、少し良いですか?」
居間でくつろいでいる尊星のもとへツキヨがやってくる。
「はい、どうぞ」
「この前の女子会で、純の宮妃さまの話題になりまして、恥ずかしながら、私、全然、純の宮妃さまのことを存じ上げていなくて、良ければ教えていただけませんか?」
ツキヨさんが他の妃に興味を持つのは少し珍しい。ツキヨさんには後ろ楯が居ないので、交友関係もかなり宮妃としては狭い部類だった。
「寿の宮の正妻です。まぁ、なんというか、非の打ち所のない人です。煌の宮の一件以降気を病んでいると聞いています」
「寿の宮さまとは不仲だったんですか?
ってすごい失礼な聞き方でしたね、すみません」
眉をハの字にしたツキヨ。
「いえ、構いません。う~ん、私の口からどうこうと言うことは夫婦間のことだしなんとも…でも、寿の宮は純の宮妃のことを少なくとも「愛して」とか「好きで」一緒にいるという感じはしなくて、もっと事務的な雰囲気があったようには思う。子どもができても言い方は悪いですが、任務を一つ達成したような感じの報告だったんです。あ、もちろん、純の宮妃のことも子供のことも大切にはしていましたけど」
「そうだったんですね」
「王族の結婚だったら珍しくもないことですよ、」
かく言う私もそちら側の人間だったわけで、寿の宮の態度がまるで分からないなんてことはなく、むしろよく分かる。ある日突然この人が奥さんです。なんて言われて急に情が湧くというのは結構難しいことだし、王族でみられる特徴の一つに感情表現の希薄な人が多いことが挙げらくらいだ。
「…でも、それは少し分かるような気がします。気持ちよりも周囲の方たちに意識が向かってしまうというか」
ツキヨはそう言った。
「確かに、それはそうかもしれませんね」
ツキヨは、すこし躊躇うような仕草を見せる。
「私、実は…楓の宮妃さまから純の宮妃に合うように言われていて」
「え?楓の宮妃から?」
「はい」
「一体、どうして?」
「私がお会いしたことがないと話したところ、とても気さくで感じのよい方なのでぜひ一度お会いするべきよ と言われまして」
「なるほど」
「煌の宮さまの一件以降沈んでいらっしゃるとも伺っていますし、なにか純の宮妃さまのお力にもなることができたらと思いまして」
「それは良いですね。確か、純の宮妃さまもお料理が趣味だったはずです、シンに調整がとれないか聞いておきましょうか?」
「お願いします」
そして、一週間後の夕方、夫婦共々、寿の宮に招待された。
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