ソーダ色の夏

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無人島

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無人島に旅立つ朝は、朝からドタバタと支度に追われていて、ただでさえよく眠れず疲労が溜まっている体に鞭を打って動かす。
「入るよ、紅葉」
「はーい」
蒼士が、紅葉の部屋に入る。支度の遅い紅葉を手伝いに来たのだろう。
「おはよー」
「おはよー、とか、そういう時間じゃないよ!はやく、準備して。忘れ物もしないように」
ベッドの上に散乱した服を見て、蒼士は、ため息をつく。
「あと、鞄に入れるだけだから」
「パパッとしてくれよ」
バックパッカーが背負うような、大きなリュックがパンパンになる。
「はい、これ」
「ありがと」
紅葉が、リュックにものを積めていき、蒼士が、ホテルの洗面所なんかをキレイにしたり、忘れそうな物を紅葉に渡す。
 蒼士の手伝いもあって、どうにか時間に間に合った。
「一ノ瀬くん、藤原さん、おはようございます。」
翠が、ホテルのフロントのソファに腰を掛けている。
「あ、加賀くん、おはよう」
「おはよう、あれ?大堂くんは?」
「隣の部屋なので、一緒にフロントへ向かおうと、ホテル内の電話で呼び掛けたのですが、先に行っといてくれと言われてしまって。多分、もう少しで来ると思います。」
「加賀くんは、堅いなぁ、敬語なんか使わなくても、同学年だし」
蒼士は、ニコッと笑う。
「ごめん!探し物が見つからなくて」
「大堂くん、探し物は見つかったの?」
「あれ?翠がタメ口だ。うん、見つかったよ」
大きなリュックがよく似合っている、琥珀。
「さ、全員が揃いましたね。あと、5分後にバスが来ます。降りたら、見えるところに船乗り場があるので、その船で、無人島に向かいます」
「はい」
六人の付き添いの先生は、ホテルのフロントまでだ。あとは、派遣された政府の高校生更生プロジェクト担当委員が無人島まで案内をして、万が一の時は助けてくれる。
 バスに乗り、降りると、一気に塩の香りが漂う。
「すごい!きれい」
「本当だ!」
透き通るようなきれいな海を見れば、誰でも跳び跳ねて感動するものだ。
「船に乗るよ、紅葉、蒼士」
琥珀が手招きで呼ぶ。
船内は、貸切状態。悪くない。大きな船ではないけれど、それなりに良さそうな船だ。出港時には、その土地の人が、手を振っていた。
「なんだか、すっかり、有名人になったみたいだ。」
「そうだね。」
蒼士は、子供のようにはしゃいでいる。
4人は、甲板に出て手を振り返す。
「翠、あのさ、向こうについたら、俺の事ちゃんと、下の名前で呼んでくれよ。何て言うか、そっちの方が親しみやすいし。俺、周りのやつからも下の名前で呼ばれることが多いから」
翠は少し静止してから
「わかった。琥珀  みたいな、感じ?」
照れ臭そうに聞く
「ちょっと、緊張してるな。翠。ま、でも、そんな感じだ。」
翠の背中をパンと、叩く琥珀。
 ずいぶんと港が小さく見えてきたので、船内の小さな食堂におりる。
 「二人とも、一緒に目指すってことでいいんだよな?」
 太平洋の真ん中についたペアから賞金が出る。一番最初についたペアが、5000万そこから、500万ずつ、減らされていく。ちなみに、税金は発生するが、税抜きでこの価格だ。高校生には大きすぎる金額だが、その使い道も含めて、この人なら大丈夫。という人が選ばれているのだろう。今回は、二つのペアなので、5000万と4500万、たどり着けない可能性も十分にあり得るので、なんとも言えないが、今回は4人で話し合い、4人で行動して、賞金を足して4で割るという話にまとまった。賞金はどう分けてもいいらしい。最終確認を、蒼士は行ったのだ。
  「そろそろ、着きますよ」
スーツ姿の若い女性が、4人を先導する。
 蒼士が、一番最初に、無人島の砂を踏む。
「ガチの無人島だ!」
砂は、サラサラとしていて、白色に近い色をしている。
「あちらに見えるものが、支給されている乗り物です。使っても使わなくても、どちらでもかまいません」
無人島には似合わないスーツの女性が、浜の先の方にある船らしきものを指す。
「わかりました」
「では、私どもはこれで。気を付けてください」
あっという間に、女はたった今、4人を下ろした船に乗る。
「さよなら」
4人は手を振り、船に別れを告げる。

 「なんか、ワクワクするね」
紅葉が、そういうと、蒼士が激しく頷く。
「まずは、水の確保からかな?」
翠は深呼吸をして、無人島の空気を肺胞一つ一つに入れてからそう言った。
「翠、その前に俺らが使う船の方を見に行こうぜ」
すかさず、琥珀の言葉に蒼士が反応する。
「そうだな、琥珀。」
琥珀の次に蒼士が並ぶような感じで、駆け出す。別に、蒼士の足が遅いということはないのだが、差が開いて、琥珀がダントツの一番乗りでたどり着く。
「はぁ、はぁ、琥珀、足速いな。」
相当、悔しそうな蒼士。
「まぁ、運動は好きだから」
涼しい顔の琥珀。
「二人とも速いよ」
後から、翠と紅葉がたどり着く。だいたい、こんなに重たい荷物があるのに走ろうと思う神経が凄い。


  その日は、とりあえず火を起こして、水をつくって、木の実と魚を食べた。

水は、海水と鍋とコップとアルミホイルと熱で作る。鍋の中央にコップを入れる。コップを立たせて、そのコップに海水が入らないように鍋に海水を入れる。上から、鍋のサイズと同じくらいにアルミホイルを切って、真ん中をくぼませる。そして、蓋のように被せる。これを火にかければたちまち、海水は沸騰。水蒸気が発生し、アルミホイルのくぼみに水滴が集まる。集まった、水滴がコップに落ちて水ができる。
「凄いな、翠!」
蒼士が、出来上がった水を飲んで驚く。
「僕は魚を捕まえたり、木の実をとったりするのは得意じゃないから、これくらいしかできなくて申し訳ないよ。」
「でも、水があるってすっごく、大切なことだよ」
紅葉に言われて、「そうかな?」と言いたげな顔をする翠。
「無人島では、必要なものだけを集めてさっさと海に出よう」
「琥珀に賛成かな。俺も、そう思う。」

 無人島でのはじめての夜は、「どんな生き物がいるか、わからないよ」という紅葉の言葉で、二時間ごとにペアで見張りをしながら寝ることになった。
「おやすみ」
はじめは、じゃんけんで勝った、翠と琥珀が見張りだ。蒼士と、紅葉は、琥珀が持ってきたテントで寝る。まぁまぁ広い。
「紅葉、ここから、俺の方には入ってこないようにな」
薄手のタオルをぐるぐると巻いて枕にする。
「はーい、おやすみ」

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