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転生〜ロッカの街
第5話 残念、それは効かない
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冒険者、いや勇者たちの前に立ちはだかっていたのは、俺が昔やっていたゲームでガーゴイルと呼ばれていたモンスターの姿をした魔物だった。
石のような質感の肌、おぞましい表情、そして目の奥に光る赤い光はどれをとってみても怖じ気を感じさせるのに十分だった。
それでも俺は退かない。
お客が後ろにいる限り、俺は逃げない。
それがせっかく御者として生まれ変わった俺の矜持だ。
「ギシャアァァァァ」
どこから声を出しているのか、石を擦るような叫び声をあげて突進してくるガーゴイル。
その手には鋭利な爪が鋭く生えているのが見てとれた。
「お、おい! 御者さん! 俺たちが勝てない相手にあんたが勝てるわけがないだろう! 逃げろっ!」
背中では勇者が叫び声をあげている。
ただ、俺にとっては逃げるという選択肢をとる必要がなかった。
なぜなら……ガーゴイルの動きが酷くゆっくりに見えたからだ。
【御者】という天職をもらった俺は、前世の自分と比べて非常に目がよくなっていると感じていた。
どうやら集中すれば時間の流れが遅く感じるほどらしいし、戦闘もできるようにしたという女神様の言葉はやはり本当だったか。
でもこれはどちらかといえば脳の処理速度の問題か?うーん、それなら……。
そんな事をゆっくりと考えながら俺はガーゴイルからの攻撃が来るのを待った。
あとはギリギリで一歩横にズレればいい、それだけだ。
侵入者に対して迎撃を命じられているはずの門番であろうガーゴイルが、侵入者の自分に対して手加減をするはずがない。
そうは思うものの、まさかこれが本気なのか?と訝しんだのも事実だった。
もしかしたらこれは罠かもしれない。
そう思いなおした俺は、ゆっくりと大上段から振られた爪をあえて大きく距離を取ることで回避した。
「な、なにっ!? 奴の見えない攻撃をかわした……だと!? たまたま……なのか?」
攻撃をかわされたガーゴイルよりも後ろの勇者の方が驚いているが、まぁ今はどうでもいいだろう。
先程のガーゴイルの攻撃はまだ続いているようだからな。
必殺だったのであろう爪をかわされたガーゴイルはそれで諦めずに、距離をとっている俺へと踏み込みながらの切り上げを見舞ってきた。
ただその速度はあまりに遅くてあくびがでそうな程だった。
やっぱり罠じゃなくて本気だったのかもしれない。
「よっ……と」
だから俺は攻撃をかわしたあと、今度は軽く反撃をしてみることにした。
今のガーゴイルは、渾身の切り上げをかわされて隙だらけだ。
だから振り上げられた左手の下から突き上げるようにクロスカウンターを打ち込むのも簡単だった。
相手は石の体だから自分が傷まないよう軽めに打ったパンチのはずだった。
それなのに、そのパンチがガーゴイルへ吸い込まれると、バキンという音がして右目の部分が割れた。
その衝撃はそれだけでは殺せなかったようで、ガーゴイルはそのまま後ろへ吹っ飛んで盛大な砂埃を舞い上げた。
「あれ? かなり軽く殴ったつもりだったんだけど……倒しちゃった、か?」
そんな油断をしていた俺の上に突然フッと影が差した。
「上かっ!」
俺はすんでのところで上から急降下してきたガーゴイルの攻撃をかわした。
その攻撃はなかなかの威力があったようで、地面に大きな凹みを作っていた。
「ギイィギイィィィッ!」
そんな風に憎しみを含んだ声をあげるガーゴイルだったが、よく見ると……あれ、目が割れていない?どうしてだろう。
まさか石が近くにある限り不死身だ、なんてことはないよな。
俺はちょっと不安になった。
だがその不安は、舞い上がる砂埃と共に晴れることになった。
少しずつ晴れていく砂埃の中から、体を引きずりながら先程右目を割ってやったガーゴイルが出てきた。
目の前には今攻撃してきたガーゴイルもいる。つまり——。
「二体いたのかっ!!」
俺が思っていた事を後ろの勇者が叫んでいる。
意外と元気があるからまだ助けに来なくても平気だったかもしれないな。
二体になったガーゴイルは自然な動きで、俺を挟み込むような位置取りをした。
おそらく同時に攻撃をしてくるつもりなんだろう。
でも集中すれば攻撃は遅く見えるし、回避するだけならきっと問題ないだろう。
そう思っていたら二体のガーゴイルが突然両手を前に突き出した。
なにやら手の前ではバチバチとした光がほとばしっている。
「おい、何してるんだ! その魔法光は広域魔法だろ! 早く距離を取れッ!」
俺の後ろで勇者が叫んだ瞬間、それは俺を襲った。
耳鳴りがするような激しい風が吹き荒れ、地面が次々とめくれ上がっていく。
そしてその風はさらに強さを、鋭さをまして辺り全てを切り刻んでいく。
「ト、竜巻だとッ!? こんな魔法も使えたのか! ぎょ、御者さぁぁぁぁん!!」
俺の後ろでは勇者が何かを叫んでいるが、激しい風の音で何も聞こえやしない。
もしかしたら俺がやられてしまったと思って心配してくれているのかもしれない。
まぁ確かに俺の服はボロボロになってしまったが……まぁそれだけだ。
むしろ去年の台風何号かの方が激しかったような気すらする。
やがて魔力が尽きたか、風の威力が徐々に弱まってきた。
せっかく女神様が用意してくれた服はみるも無残な姿になっている。
許せん……お仕置きをしてやらなければ!
そう思った俺はガーゴイル達……ガーゴイルズをキッと睨みつけた。
そしてあの風の中、なんとか腰に引っかかってくれていた鞭を引っ張り出した。
「さぁ、お仕置きの時間だぞ……?」
そんな俺の言葉が通じているのかいないのか、ガーゴイル達がビクリと震えたような気がした。
それでも容赦なんて……してやらない!
石のような質感の肌、おぞましい表情、そして目の奥に光る赤い光はどれをとってみても怖じ気を感じさせるのに十分だった。
それでも俺は退かない。
お客が後ろにいる限り、俺は逃げない。
それがせっかく御者として生まれ変わった俺の矜持だ。
「ギシャアァァァァ」
どこから声を出しているのか、石を擦るような叫び声をあげて突進してくるガーゴイル。
その手には鋭利な爪が鋭く生えているのが見てとれた。
「お、おい! 御者さん! 俺たちが勝てない相手にあんたが勝てるわけがないだろう! 逃げろっ!」
背中では勇者が叫び声をあげている。
ただ、俺にとっては逃げるという選択肢をとる必要がなかった。
なぜなら……ガーゴイルの動きが酷くゆっくりに見えたからだ。
【御者】という天職をもらった俺は、前世の自分と比べて非常に目がよくなっていると感じていた。
どうやら集中すれば時間の流れが遅く感じるほどらしいし、戦闘もできるようにしたという女神様の言葉はやはり本当だったか。
でもこれはどちらかといえば脳の処理速度の問題か?うーん、それなら……。
そんな事をゆっくりと考えながら俺はガーゴイルからの攻撃が来るのを待った。
あとはギリギリで一歩横にズレればいい、それだけだ。
侵入者に対して迎撃を命じられているはずの門番であろうガーゴイルが、侵入者の自分に対して手加減をするはずがない。
そうは思うものの、まさかこれが本気なのか?と訝しんだのも事実だった。
もしかしたらこれは罠かもしれない。
そう思いなおした俺は、ゆっくりと大上段から振られた爪をあえて大きく距離を取ることで回避した。
「な、なにっ!? 奴の見えない攻撃をかわした……だと!? たまたま……なのか?」
攻撃をかわされたガーゴイルよりも後ろの勇者の方が驚いているが、まぁ今はどうでもいいだろう。
先程のガーゴイルの攻撃はまだ続いているようだからな。
必殺だったのであろう爪をかわされたガーゴイルはそれで諦めずに、距離をとっている俺へと踏み込みながらの切り上げを見舞ってきた。
ただその速度はあまりに遅くてあくびがでそうな程だった。
やっぱり罠じゃなくて本気だったのかもしれない。
「よっ……と」
だから俺は攻撃をかわしたあと、今度は軽く反撃をしてみることにした。
今のガーゴイルは、渾身の切り上げをかわされて隙だらけだ。
だから振り上げられた左手の下から突き上げるようにクロスカウンターを打ち込むのも簡単だった。
相手は石の体だから自分が傷まないよう軽めに打ったパンチのはずだった。
それなのに、そのパンチがガーゴイルへ吸い込まれると、バキンという音がして右目の部分が割れた。
その衝撃はそれだけでは殺せなかったようで、ガーゴイルはそのまま後ろへ吹っ飛んで盛大な砂埃を舞い上げた。
「あれ? かなり軽く殴ったつもりだったんだけど……倒しちゃった、か?」
そんな油断をしていた俺の上に突然フッと影が差した。
「上かっ!」
俺はすんでのところで上から急降下してきたガーゴイルの攻撃をかわした。
その攻撃はなかなかの威力があったようで、地面に大きな凹みを作っていた。
「ギイィギイィィィッ!」
そんな風に憎しみを含んだ声をあげるガーゴイルだったが、よく見ると……あれ、目が割れていない?どうしてだろう。
まさか石が近くにある限り不死身だ、なんてことはないよな。
俺はちょっと不安になった。
だがその不安は、舞い上がる砂埃と共に晴れることになった。
少しずつ晴れていく砂埃の中から、体を引きずりながら先程右目を割ってやったガーゴイルが出てきた。
目の前には今攻撃してきたガーゴイルもいる。つまり——。
「二体いたのかっ!!」
俺が思っていた事を後ろの勇者が叫んでいる。
意外と元気があるからまだ助けに来なくても平気だったかもしれないな。
二体になったガーゴイルは自然な動きで、俺を挟み込むような位置取りをした。
おそらく同時に攻撃をしてくるつもりなんだろう。
でも集中すれば攻撃は遅く見えるし、回避するだけならきっと問題ないだろう。
そう思っていたら二体のガーゴイルが突然両手を前に突き出した。
なにやら手の前ではバチバチとした光がほとばしっている。
「おい、何してるんだ! その魔法光は広域魔法だろ! 早く距離を取れッ!」
俺の後ろで勇者が叫んだ瞬間、それは俺を襲った。
耳鳴りがするような激しい風が吹き荒れ、地面が次々とめくれ上がっていく。
そしてその風はさらに強さを、鋭さをまして辺り全てを切り刻んでいく。
「ト、竜巻だとッ!? こんな魔法も使えたのか! ぎょ、御者さぁぁぁぁん!!」
俺の後ろでは勇者が何かを叫んでいるが、激しい風の音で何も聞こえやしない。
もしかしたら俺がやられてしまったと思って心配してくれているのかもしれない。
まぁ確かに俺の服はボロボロになってしまったが……まぁそれだけだ。
むしろ去年の台風何号かの方が激しかったような気すらする。
やがて魔力が尽きたか、風の威力が徐々に弱まってきた。
せっかく女神様が用意してくれた服はみるも無残な姿になっている。
許せん……お仕置きをしてやらなければ!
そう思った俺はガーゴイル達……ガーゴイルズをキッと睨みつけた。
そしてあの風の中、なんとか腰に引っかかってくれていた鞭を引っ張り出した。
「さぁ、お仕置きの時間だぞ……?」
そんな俺の言葉が通じているのかいないのか、ガーゴイル達がビクリと震えたような気がした。
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