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アイオール皇国〜ニエの村
第43話 猫耳メイドと入浴と
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「あ、いえ……その……」
年かさのいったメイドはどこか焦ったような様子で目を伏せた。
そして深々とお辞儀をしたかと思えば、
「仕事が残っておりますので失礼いたします」
といって俺たちの横を通りすぎて去っていってしまった。
いったい何だったんだ?まぁいっか。
「何があったんだ?」
猫耳メイドさんにそう尋ねてみると、顔をうつむかせ、もごもごと口を開いた。
「いつもの……ことですから」
「そうなのか? もし俺たちのせいで怒られていたならこっちから言っておくけど」
「いえ、大丈夫です。私が獣人だからいけないんです……」
そういって目の前のメイドさんは猫耳をヘッドドレスで隠した。
が、その三秒後にはぴょこんっとヘッドドレスを押しのけるようにして猫耳が現れる。
それをまた隠せば、またぴょこん、と。
「あっ……お目汚し失礼しましたっ!」
メイドさんは頭の上の猫耳をヘッドドレスごと押さえつけた。
「……可愛い耳じゃないか。俺はもっと見てみたいな」
「え、可愛い……ですか?」
獣人のメイドさんはあっけにとられたような顔をしてヘッドドレスを押さえつけていた手を緩めた。
するとすぐにぴょこんと耳が飛び出してきて、その勢いはヘッドドレスを床に落とした。
元気な耳の動きを見ていると思わず笑顔になってしまうな。
「ああ、可愛いと思うぞ。少なくとも俺たちの前では隠さなくていい。うちには犬も馬もいるし誰も文句はいわないよ。さっきのメイドさんには後で俺から言っておくから」
「あ、ありがとう……ございます」
メイドさんは大きな目をうるませながらお礼をいってくる。
獣人である、という自分のアイデンティティを否定されていたもんな。
きっと普段からそうやっていびられていたんだろうし、せめて俺たちがいる間だけでも自分を隠さずにいられるようにしてやりたいものだ。
「それではお仕事に戻らないと叱られてしまいますので……」
猫耳のメイドさんはおずおずと頭を下げると、そそくさと去っていった。
「あ、これ忘れていっちまったな」
俺は床に落ちたヘッドドレスを拾い上げた。
「ま、同じ屋敷の中にいるんだろうし、後で返してやればいいか」
そう思った俺は、拾ったヘッドドレスを馬車に収納しておくことにした。
「ねぇご主人さまぁ」
そんな俺の後ろでフィズが甘えたような声を出してくる。
「ん、なんだ?」
振り返った先には……牛頭がいた。
フィズの体にユニコーンの頭を持った……うん、これは牛頭だな。
「ねぇご主人さまぁ……かわいい?」
「か、かわいいよ。でもちょっと失敗してるかも、な?」
「そうかしら?」
もしかしたら猫耳を見てかわいいといったことでちょっぴり嫉妬したのかもしれない。
フィズはそのままでもかわいいのにな。
そんな風におだて褒めそやしながら部屋に戻ることにした。
静かな部屋でのんびりしていると、リリアが居なくなったという事実を思い出してしまって、ちょっぴりおセンチな自分が鎌首をもたげてくる。
そんな時に明るく笑ってくれるフィズが居てくれるのはありがたかった。
やっぱり今日も一緒に寝てもらおうかな……なんて思ったところで部屋の扉がノックされた。
「夕食の用意ができましたので食堂へお越しください」
俺たちを呼びに来たのは、さっき猫耳メイドさんを叱っていた女性だった。
「ありがとうございます。あ、それから先程のメイドさんのことですけど……俺たちは気にしないのであんまり怒らないであげてもらえませんか?」
「…………かしこまりました、が……いえ、わかりました」
奥歯に物が挟まったような物言いではあったけど、一応の了解を得ることが出来たので俺はホッとしながら食堂へと向かった。
食堂へ着くと、一番に食堂へ現れたらしいルシアンがよだれを垂らしそうな顔をしながら待っていた。
全員が揃うと、料理が運ばれてきた。
食前酒からはじまるフルコースというやつだな。
前の世界でも滅多に食べたことのないような豪勢な食事に舌鼓をうつ。
こんなに良くしてもらっていいのだろうか、なんて不安になるほどだな。
ゴンザさんは料理はそこそこにしてお酒を飲み続けていたけど味は分かったのかな?
「ふぅ、美味かった」
味はもちろん見た目にもこだわった素晴らしい食事だった。
だというのにルシアンの顔は晴れなかった。
「んー。確かに美味かったけど……なんかこう……違うんだよなぁ」
そんな事をブツブツいいながらルシアンは部屋へ戻っていった。
なんとなく言いたいことは分かるけど、ルシアンはリリアの食事を三食くらいしか食べていないはずだけどな。
いつの間にか餌付けされていたのか。
「さ、ご主人さま。行きましょ」
そんな俺の思考を中断させる声がフィズからかかった。
「ん、行くってどこへ?」
「さっき言ってたじゃない、ふろって所によ」
「あ、そうだったな」
俺は若干の抵抗を感じつつ、全く抵抗を感じていないフィズを伴って欲情……じゃなくて浴場へと向かった。
「ふ、ふわあぁぁぁ……き、気持ちいぃぃぃ」
「だろ?」
二人が入ってもまだまだ余裕がある浴槽でフィズと二人、ぷかぷかと浮かんでいる。
ちなみに俺ルールによって、フィズの体にはタオルが巻かれている。
前の世界であればマナー違反筆頭ともいえる行為だけど、ここは異世界だから許されるのである。
「ふぁ、温まったぁ……じゃあご主人さま、お湯を出たらフィズが洗ってあげるわね」
「だ、大丈夫だぞ。自分で洗えるからな」
「何で遠慮するのよ? やっぱりフィズがきら——」
「あああ、じゃあ頼む、頼むからっ!」
結果としてフィズの力加減は絶妙で、とても気持ちのいい風呂となった。
また一緒に入るのもいいかもしれない。
そう思う程度には最高だった。
よし、これで明日も一日頑張れそうだ。
年かさのいったメイドはどこか焦ったような様子で目を伏せた。
そして深々とお辞儀をしたかと思えば、
「仕事が残っておりますので失礼いたします」
といって俺たちの横を通りすぎて去っていってしまった。
いったい何だったんだ?まぁいっか。
「何があったんだ?」
猫耳メイドさんにそう尋ねてみると、顔をうつむかせ、もごもごと口を開いた。
「いつもの……ことですから」
「そうなのか? もし俺たちのせいで怒られていたならこっちから言っておくけど」
「いえ、大丈夫です。私が獣人だからいけないんです……」
そういって目の前のメイドさんは猫耳をヘッドドレスで隠した。
が、その三秒後にはぴょこんっとヘッドドレスを押しのけるようにして猫耳が現れる。
それをまた隠せば、またぴょこん、と。
「あっ……お目汚し失礼しましたっ!」
メイドさんは頭の上の猫耳をヘッドドレスごと押さえつけた。
「……可愛い耳じゃないか。俺はもっと見てみたいな」
「え、可愛い……ですか?」
獣人のメイドさんはあっけにとられたような顔をしてヘッドドレスを押さえつけていた手を緩めた。
するとすぐにぴょこんと耳が飛び出してきて、その勢いはヘッドドレスを床に落とした。
元気な耳の動きを見ていると思わず笑顔になってしまうな。
「ああ、可愛いと思うぞ。少なくとも俺たちの前では隠さなくていい。うちには犬も馬もいるし誰も文句はいわないよ。さっきのメイドさんには後で俺から言っておくから」
「あ、ありがとう……ございます」
メイドさんは大きな目をうるませながらお礼をいってくる。
獣人である、という自分のアイデンティティを否定されていたもんな。
きっと普段からそうやっていびられていたんだろうし、せめて俺たちがいる間だけでも自分を隠さずにいられるようにしてやりたいものだ。
「それではお仕事に戻らないと叱られてしまいますので……」
猫耳のメイドさんはおずおずと頭を下げると、そそくさと去っていった。
「あ、これ忘れていっちまったな」
俺は床に落ちたヘッドドレスを拾い上げた。
「ま、同じ屋敷の中にいるんだろうし、後で返してやればいいか」
そう思った俺は、拾ったヘッドドレスを馬車に収納しておくことにした。
「ねぇご主人さまぁ」
そんな俺の後ろでフィズが甘えたような声を出してくる。
「ん、なんだ?」
振り返った先には……牛頭がいた。
フィズの体にユニコーンの頭を持った……うん、これは牛頭だな。
「ねぇご主人さまぁ……かわいい?」
「か、かわいいよ。でもちょっと失敗してるかも、な?」
「そうかしら?」
もしかしたら猫耳を見てかわいいといったことでちょっぴり嫉妬したのかもしれない。
フィズはそのままでもかわいいのにな。
そんな風におだて褒めそやしながら部屋に戻ることにした。
静かな部屋でのんびりしていると、リリアが居なくなったという事実を思い出してしまって、ちょっぴりおセンチな自分が鎌首をもたげてくる。
そんな時に明るく笑ってくれるフィズが居てくれるのはありがたかった。
やっぱり今日も一緒に寝てもらおうかな……なんて思ったところで部屋の扉がノックされた。
「夕食の用意ができましたので食堂へお越しください」
俺たちを呼びに来たのは、さっき猫耳メイドさんを叱っていた女性だった。
「ありがとうございます。あ、それから先程のメイドさんのことですけど……俺たちは気にしないのであんまり怒らないであげてもらえませんか?」
「…………かしこまりました、が……いえ、わかりました」
奥歯に物が挟まったような物言いではあったけど、一応の了解を得ることが出来たので俺はホッとしながら食堂へと向かった。
食堂へ着くと、一番に食堂へ現れたらしいルシアンがよだれを垂らしそうな顔をしながら待っていた。
全員が揃うと、料理が運ばれてきた。
食前酒からはじまるフルコースというやつだな。
前の世界でも滅多に食べたことのないような豪勢な食事に舌鼓をうつ。
こんなに良くしてもらっていいのだろうか、なんて不安になるほどだな。
ゴンザさんは料理はそこそこにしてお酒を飲み続けていたけど味は分かったのかな?
「ふぅ、美味かった」
味はもちろん見た目にもこだわった素晴らしい食事だった。
だというのにルシアンの顔は晴れなかった。
「んー。確かに美味かったけど……なんかこう……違うんだよなぁ」
そんな事をブツブツいいながらルシアンは部屋へ戻っていった。
なんとなく言いたいことは分かるけど、ルシアンはリリアの食事を三食くらいしか食べていないはずだけどな。
いつの間にか餌付けされていたのか。
「さ、ご主人さま。行きましょ」
そんな俺の思考を中断させる声がフィズからかかった。
「ん、行くってどこへ?」
「さっき言ってたじゃない、ふろって所によ」
「あ、そうだったな」
俺は若干の抵抗を感じつつ、全く抵抗を感じていないフィズを伴って欲情……じゃなくて浴場へと向かった。
「ふ、ふわあぁぁぁ……き、気持ちいぃぃぃ」
「だろ?」
二人が入ってもまだまだ余裕がある浴槽でフィズと二人、ぷかぷかと浮かんでいる。
ちなみに俺ルールによって、フィズの体にはタオルが巻かれている。
前の世界であればマナー違反筆頭ともいえる行為だけど、ここは異世界だから許されるのである。
「ふぁ、温まったぁ……じゃあご主人さま、お湯を出たらフィズが洗ってあげるわね」
「だ、大丈夫だぞ。自分で洗えるからな」
「何で遠慮するのよ? やっぱりフィズがきら——」
「あああ、じゃあ頼む、頼むからっ!」
結果としてフィズの力加減は絶妙で、とても気持ちのいい風呂となった。
また一緒に入るのもいいかもしれない。
そう思う程度には最高だった。
よし、これで明日も一日頑張れそうだ。
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