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第二章 魔族領編
第26話 雨の港湾都市
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期待が一切出来ずに魔族領に行かされる事になった主人公ライリーは馬車に乗り込み旅に出た。外の景色を眺めながら二、三日はこれが自然あふれる心地よいファンタジー世界かと感銘を受けていたが馬車が妙に快適なために朝起きる度に旅をしているのを忘れるという事が何度かある移動の日々を送っていた。
何日も移動をしていくうち、魔族領に体が慣れて来たと同時に前にいた世界を思い出す。空気が何となく前の世界に似ているからである。
まだ王国領に近い地点だからかモンスターはおろか、猛獣すら出てこないというのは拍子抜けするところである。たまに獣が居るのかと思いきや、よく見たら獣人だったと言う事はいつもの事だった。
王国を出てから10日が経ったある日、雨に降られながらも蒸し暑さを感じる港湾都市に着いた。カセムも同行しているので、前にバーで話していたのはこの町の事かと尋ねた。
「いや。あの町はもっと南だ。それにこんなに綺麗な街じゃないし、スリや強盗はいつもの事だからこんなに落ち着いて歩いたりなんて出来ないぞ」
「携帯端末で地図を見た感じだと、この町の事か? 随分と寂れている町みたいだな?」
「ああ……そこだ。今の移動ペースのままだと、あと一ヵ月ってとこだな」
「そんなにかかるのか? でもカセムの話を聞いた感じとこの地図の距離が合わない気がするんだが?」
「そりゃそうだ。俺が行った時は今の三倍くらいのペースで移動していたからな」
「そうなのか。このペースの遅さには何か意味があるのか?」
「そりゃ魔族領の空気に体を慣れさせるためだな。こうやって最初はゆっくり進んで、体が慣れてきたら似たような空気の区間は速度を上げる。そしてもう一段階、空気が重くなるところに入る時は一日休んでからまたゆっくりと進んで慣れたら速度を上げる。
特に今回は魔族領に行くのが初めての兵士が多いからゆっくりめだが、あと二週間もしたら速度を上げる事にもなれないといけないので上げる予定だ」
「なるほどな。慣れるにも大変だな」
「魔族領の人間が王国に行く場合はさらに大変だ。空気が良くなり続けるから常に体が慣れていないような状態になる。だからゆっくりしか進めない。だから冒険者とかが協力しているってわけだ」
「それは授業で聞いたな。ソフィアはこの陰鬱な感じはどうだ?」
「それがね、なんだか分からないけど胸躍る感じがするよ!」
「多分、経験したことのない感覚に触れて興奮しているんだな。分かっていると思うが、悪に触れて流されてもいけないし、能力差があるからといってヒーローになった気分でいてもいけない。
俺は前の世界でそんな腐ったのを無数に見て来たからな」
「分かってるよ。それより今日は宿で休むの?」
「それは私から説明します。本日はこの地に駐屯している兵士から情報を聞いた後は宿で宿泊し、翌日からライリーさんの初仕事になるある商人との交渉をしてもらいます」
「ヤレヤレだな。詳細は駐屯地で聞けばいいのか?」
「はい」
そう言うと、宿に向かい、街の情報を探る部隊と駐屯地で事情を聞く部隊とに別れた。ライリー一行は駐屯地に向かった。そこには部隊長と兵士が数名おり、商人についての詳細と何が目的なのかを確認した。
「私が隊長だ。よろしく。今回の商人との交渉は魔族領からの密輸品を王国の貴族に渡しそれを元に謀反を起こさせようとしている魔族の目論みを阻む事にある。
今、調査して分かっているのはこの商人は比較的、誠実な人物で魔族に利用されている可能性が高いという事だ。この街にも恵まれない人はいくらか居るんだがその人たちを対象にした奉仕活動もしている」
「なるほど。この地点で二つの可能性があるような気がするな」
「というと?」
「一つは善人を嫌う連中は善人が最も苦しむ方法で落胆するような事が何かを知っているが、その一つに奉仕活動の邪魔をする事だ。あの手この手で悪人に仕立て上げようとする。
そして、奉仕活動に協力するフリをして情報を引き出し、悪意ある噂を流す。多分、この商人を利用しようとしている奴はこう考えていると思う」
「なるほど。と言う事は炊き出しとかをやればやるほど評判が悪くなっていく可能性があるのか。もう一つは?」
「この商人が誠実な人間では無い場合。全て演技でやっている魔族だとしたら?」
「それも無い事はないが、この街では我が王国で製造された魔道具が使える。これを使えば魔族かどうかはよほど高位の魔族でない限りは見破る事が出来る」
「そこなんだよ。この街は王国に比較的、近い位置にある。そこで密輸を手引きするような魔族が居るとすればある程度は高位な魔族でないと難しくはないか? この街に居る事自体が苦しいと思うが?」
「それはあるな。稀な話だが、本体と肉体が別のところにあるという魔族がいる。憑依しているみたいな状態なんだが、この場合、魔道具にすぐ反応する。それすら隠すとなるとよほどの重要な作戦という事にはならないか?」
「ああ。魔道具に反応するのか。ならやっても悪評の流布くらいだろうな」
「それは何故だ?」
「盗撮するためのモノやよほどの威力の兵器でもないとそこまでして密輸する意味がないし、そこまで本気ならもっと動きが活発になっているんじゃないか?」
「なるほどな。確かに王城や貴族の屋敷にはそういうものを防ぐ仕掛けは大抵、してある。それに向こうも大々的な戦いになる事は避けたいだろうからな。兵力自体はこちらが上だから本気で来られると向こうも困るはずだ」
「そんなところだと思う。汚い連中は狂う事もあるがそれは大抵、小物だからな」
「よし。では、この地図を見てくれ。ターゲットの商人は大抵、この商館のこの部屋にいる。王国との取引をネタにでもして接触をしてくれ」
「台本とか、作戦ではこう言ってからこうするとかないのか?」
「ないな。それが必要なヤツにはこの仕事は任せない」
「分かった。失敗したら後は頼むよ」
そう言うと一行は宿に向かった。荷物を置くとこの街の名物である海鮮料理を食べに行こうとなったので行くことにした。
夜の海岸沿いのレストランのテーブルの中央には花が添えられ、キャンドルを灯している。おしゃれな店で前の世界でもこういう店で可愛い彼女と過ごしたいなと思っていたが、似たような店には行った事がありその店に行ったカップルはどういうわけか別れるので不思議だった店があった。
この店はそんな事は無いと思うのだが……。
「ライリー、今日は何を飲むの? ビール?」
「前の世界でこんな感じの街があったんだが、そこではワインが合う料理が多かったな。この店の料理はどんなものがあるんだ?」
「いらっしゃい。お客さん。カルパッチョにパエリア、ワイン蒸し、何でもおいしいよ。合う酒はワインなら大体合うよ」
「なら、ワインにしよう。カセムと君らもそれでいいか?」
「いいぞ。ボトルで頼もう」
料理も酒も美味いしこういうのもいいなと思っているとソフィアが何かに気が付いた。
「ねえ、ライリー、あの人たちどうしたの?」
「どれだ?」
奥の席を見るとカップルと一人の女が揉めているようだ。
「ちょっとアンタ! どうしてこの女と知り合いなの! おかしいと思ったよ、最近、夜の方がサッパリだったし。元が元だから分かりにくかったけどね!」
「ねえ、怖い事言わないで! どうしてって、私が彼女じゃないの? どういうこと!」
「ちょっと、落ち着いてくれよ。もうこうなりゃしょうがないけど、二人とも愛してるんだよ! 三人で愛し合おう! 大きい家を建てて大きい犬も買って……!」
「うるさいよ! アンタのどこにそんな金があるの! しょうもない癖に甲斐性もないし、でかいのは口だけだよ! このクズが!」
そういうと彼女は彼の頭に水をかけたあと、コップを叩きつけて帰って行った。もう一人の方の彼女? も甲斐性もないのかと確認すると無いと認めたのを聞き届けた後、去って行った。
「ソフィア、本当の愛を知らないとああなるんだ」
「悲しい事だね……」
前の世界でも似たような三人を見た気がするライリーであった。
何日も移動をしていくうち、魔族領に体が慣れて来たと同時に前にいた世界を思い出す。空気が何となく前の世界に似ているからである。
まだ王国領に近い地点だからかモンスターはおろか、猛獣すら出てこないというのは拍子抜けするところである。たまに獣が居るのかと思いきや、よく見たら獣人だったと言う事はいつもの事だった。
王国を出てから10日が経ったある日、雨に降られながらも蒸し暑さを感じる港湾都市に着いた。カセムも同行しているので、前にバーで話していたのはこの町の事かと尋ねた。
「いや。あの町はもっと南だ。それにこんなに綺麗な街じゃないし、スリや強盗はいつもの事だからこんなに落ち着いて歩いたりなんて出来ないぞ」
「携帯端末で地図を見た感じだと、この町の事か? 随分と寂れている町みたいだな?」
「ああ……そこだ。今の移動ペースのままだと、あと一ヵ月ってとこだな」
「そんなにかかるのか? でもカセムの話を聞いた感じとこの地図の距離が合わない気がするんだが?」
「そりゃそうだ。俺が行った時は今の三倍くらいのペースで移動していたからな」
「そうなのか。このペースの遅さには何か意味があるのか?」
「そりゃ魔族領の空気に体を慣れさせるためだな。こうやって最初はゆっくり進んで、体が慣れてきたら似たような空気の区間は速度を上げる。そしてもう一段階、空気が重くなるところに入る時は一日休んでからまたゆっくりと進んで慣れたら速度を上げる。
特に今回は魔族領に行くのが初めての兵士が多いからゆっくりめだが、あと二週間もしたら速度を上げる事にもなれないといけないので上げる予定だ」
「なるほどな。慣れるにも大変だな」
「魔族領の人間が王国に行く場合はさらに大変だ。空気が良くなり続けるから常に体が慣れていないような状態になる。だからゆっくりしか進めない。だから冒険者とかが協力しているってわけだ」
「それは授業で聞いたな。ソフィアはこの陰鬱な感じはどうだ?」
「それがね、なんだか分からないけど胸躍る感じがするよ!」
「多分、経験したことのない感覚に触れて興奮しているんだな。分かっていると思うが、悪に触れて流されてもいけないし、能力差があるからといってヒーローになった気分でいてもいけない。
俺は前の世界でそんな腐ったのを無数に見て来たからな」
「分かってるよ。それより今日は宿で休むの?」
「それは私から説明します。本日はこの地に駐屯している兵士から情報を聞いた後は宿で宿泊し、翌日からライリーさんの初仕事になるある商人との交渉をしてもらいます」
「ヤレヤレだな。詳細は駐屯地で聞けばいいのか?」
「はい」
そう言うと、宿に向かい、街の情報を探る部隊と駐屯地で事情を聞く部隊とに別れた。ライリー一行は駐屯地に向かった。そこには部隊長と兵士が数名おり、商人についての詳細と何が目的なのかを確認した。
「私が隊長だ。よろしく。今回の商人との交渉は魔族領からの密輸品を王国の貴族に渡しそれを元に謀反を起こさせようとしている魔族の目論みを阻む事にある。
今、調査して分かっているのはこの商人は比較的、誠実な人物で魔族に利用されている可能性が高いという事だ。この街にも恵まれない人はいくらか居るんだがその人たちを対象にした奉仕活動もしている」
「なるほど。この地点で二つの可能性があるような気がするな」
「というと?」
「一つは善人を嫌う連中は善人が最も苦しむ方法で落胆するような事が何かを知っているが、その一つに奉仕活動の邪魔をする事だ。あの手この手で悪人に仕立て上げようとする。
そして、奉仕活動に協力するフリをして情報を引き出し、悪意ある噂を流す。多分、この商人を利用しようとしている奴はこう考えていると思う」
「なるほど。と言う事は炊き出しとかをやればやるほど評判が悪くなっていく可能性があるのか。もう一つは?」
「この商人が誠実な人間では無い場合。全て演技でやっている魔族だとしたら?」
「それも無い事はないが、この街では我が王国で製造された魔道具が使える。これを使えば魔族かどうかはよほど高位の魔族でない限りは見破る事が出来る」
「そこなんだよ。この街は王国に比較的、近い位置にある。そこで密輸を手引きするような魔族が居るとすればある程度は高位な魔族でないと難しくはないか? この街に居る事自体が苦しいと思うが?」
「それはあるな。稀な話だが、本体と肉体が別のところにあるという魔族がいる。憑依しているみたいな状態なんだが、この場合、魔道具にすぐ反応する。それすら隠すとなるとよほどの重要な作戦という事にはならないか?」
「ああ。魔道具に反応するのか。ならやっても悪評の流布くらいだろうな」
「それは何故だ?」
「盗撮するためのモノやよほどの威力の兵器でもないとそこまでして密輸する意味がないし、そこまで本気ならもっと動きが活発になっているんじゃないか?」
「なるほどな。確かに王城や貴族の屋敷にはそういうものを防ぐ仕掛けは大抵、してある。それに向こうも大々的な戦いになる事は避けたいだろうからな。兵力自体はこちらが上だから本気で来られると向こうも困るはずだ」
「そんなところだと思う。汚い連中は狂う事もあるがそれは大抵、小物だからな」
「よし。では、この地図を見てくれ。ターゲットの商人は大抵、この商館のこの部屋にいる。王国との取引をネタにでもして接触をしてくれ」
「台本とか、作戦ではこう言ってからこうするとかないのか?」
「ないな。それが必要なヤツにはこの仕事は任せない」
「分かった。失敗したら後は頼むよ」
そう言うと一行は宿に向かった。荷物を置くとこの街の名物である海鮮料理を食べに行こうとなったので行くことにした。
夜の海岸沿いのレストランのテーブルの中央には花が添えられ、キャンドルを灯している。おしゃれな店で前の世界でもこういう店で可愛い彼女と過ごしたいなと思っていたが、似たような店には行った事がありその店に行ったカップルはどういうわけか別れるので不思議だった店があった。
この店はそんな事は無いと思うのだが……。
「ライリー、今日は何を飲むの? ビール?」
「前の世界でこんな感じの街があったんだが、そこではワインが合う料理が多かったな。この店の料理はどんなものがあるんだ?」
「いらっしゃい。お客さん。カルパッチョにパエリア、ワイン蒸し、何でもおいしいよ。合う酒はワインなら大体合うよ」
「なら、ワインにしよう。カセムと君らもそれでいいか?」
「いいぞ。ボトルで頼もう」
料理も酒も美味いしこういうのもいいなと思っているとソフィアが何かに気が付いた。
「ねえ、ライリー、あの人たちどうしたの?」
「どれだ?」
奥の席を見るとカップルと一人の女が揉めているようだ。
「ちょっとアンタ! どうしてこの女と知り合いなの! おかしいと思ったよ、最近、夜の方がサッパリだったし。元が元だから分かりにくかったけどね!」
「ねえ、怖い事言わないで! どうしてって、私が彼女じゃないの? どういうこと!」
「ちょっと、落ち着いてくれよ。もうこうなりゃしょうがないけど、二人とも愛してるんだよ! 三人で愛し合おう! 大きい家を建てて大きい犬も買って……!」
「うるさいよ! アンタのどこにそんな金があるの! しょうもない癖に甲斐性もないし、でかいのは口だけだよ! このクズが!」
そういうと彼女は彼の頭に水をかけたあと、コップを叩きつけて帰って行った。もう一人の方の彼女? も甲斐性もないのかと確認すると無いと認めたのを聞き届けた後、去って行った。
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