異世界に招かれしおっさん、令嬢と世界を回る

いち詩緒

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第二章 魔族領編

第51話 宴の夜

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 昼にたらふく飲んだので夜は流石に酔いつぶれてほとんど寝転がっているものだろうと思っていたが皆、ゆっくりと飲み続けたので酔いつぶれて眠っているのはほとんどいない。
 ライリーも寝ることはないが飲み続けているので酔っている感じがずっと続いており、ハーレムの幻覚が見えているのではないかと錯覚するような宴を過ごしていた。

「ソフィア、もうさすがに飲めないぞ。何杯注ぐ気だよ」
「何言ってるのライリー。私は豚の串焼きを口に入れたよ?」

「ああ。酔いが回りすぎているんだな」
「ライリーさん。さあ、次の焼酎ですよ~」

「焼酎? ビールじゃないのかこれ?」
「お兄さん、これこれ。多分、これおいしいよ」

「なんだこれ? 何色の酒なんだこれ?」
「お酒? それジュースじゃないの?」

 流石にこれ以上は気を失いそうだなと思っていると、やはりというか眠ってしまった。しばらくすると、木の板の上に大きな植物の葉が何枚か置かれているところで目が覚めた。
 何となく見覚えがある気がするなと思ったら、村長の家の客間であった。床に放置されていたのかと思ったが、ベッドに寝ていたので長い事眠ってしまったようだ。

 外は完全に暗くなっており、静まり返っているので深夜なのだろう。蒸し暑い風が寝床を吹き抜け、そのせいで体に纏わりつく湿気が汗をかかせているのかと思ったがどうやら違ったようだ。

「随分と暑いと思ったら君だったのか」
「ねえ、ライリーさん。私とも寝てもらえませんか? いいでしょう?」

「まあ、それもいいか」

 そう言うと彼女は酔った勢いなのか、貪るようにライリーに迫った。喰らいつくように責め立てる姿は大食いであるいつもの彼女の様相が現れていると言えるのかもしれない。
 と言っても、もしかしたら普段は欲望を押させているから大食いなのかもしれない。前の世界にもそういう友人がいた。

 彼女も中々の大食いだったが、何故彼女は大食いなのかと疑問に思っていた。しばらく食べている姿を眺めていたある日、それが分かるような気がする事がいくつかあった。
 まず、承認欲求が強い。何かと『こういう事してもいいよね?』とか『これが上手く行ったのは私が上手くやったからだよね』とか何かと成果を気にする傾向があった。

 別の調子が悪い日には『どうしてこうしてくれないの?』とか『私って何てこんな事をしてしまうんだろう?』といった事を言う事が多かった。
 こういった様子を見て思ったのは彼女には沢山の注目と愛情が必要なのだと思った。多分だが、同性にはチヤホヤされたいかまってちゃんな娘に映っているのだと思うが何らかの理由で自分が愛されていないと感じるようになったのかもしれない。

 そうなれば本当はいつも一緒に居られるような親友と呼べる友人や恋人が居ればいいものなのだが、こういう時に限って出来ない。しかも長い事。
 だが、この目の前の彼女のように一時的にでも相手が出来れば幸せだ。ライリーはどんなに願っても前の世界ではこちらの世界に転移してくるまで現れなかったのだから。どうして前の世界では現れてくれなかったのだろうか?

 しばらくして、南国の蒸し暑さと汗が体に纏わりつき、汗の匂いで寝床が満たされたところで夜が明けた。

「あれ? ライリーさん。夜が明けましたね。はあ……ねえ、これからもっとしてくださいね?」
「それもいいかもな。でもハーフとは言えエルフだからな。あまり俺に本気になるなよ? 俺の方が先に逝くだろうからな」

「……そうなんですよね。私たち長命種は何度も別れを経験するでしょうから」
「ああ。でも、君は大切な仲間である事は変わりないからな。これからもそうだ」

「え? 何ですか急に?」
「どうも君はそう言っておいた方がいい気がしてな」

「でも、嬉しいです。私って大切なんですね」
「そういう事だ」

 あまり強く言うと依存状態になりかねないのでそこそこにしておくのが良さそうなのでこの辺にしておこう。
 前の世界ではこういう心理を悪用する人間が実に多かった。男であれば都合の良い女になるようにし、女であれば脅して使い勝手のいい駒にするというのを見て来た。

 心優しい人間が不誠実な人間の餌食になるのは実に胸糞悪い。この世界ではそういう事にならないのかというと、魔族領なのでもっと中心部に行けば日常茶飯事なのだろう。
 汗だくなので二人で川辺に行き、水浴びをすることにした。エルフ特有の透き通るような美しい肌が朝日に照らされ神々しいように光り輝いている。こんな美女と一夜を過ごしていたのかと呆然としてしまっていると、誰かが近づいて来た。

「あれ? 二人とも水浴び?」
「昨日の夜は蒸し暑くてな。汗だくになってしまった」

「へえ~? お楽しみだったからじゃなくて?」
「それはどうかな?」

「……匂いが無いね。幾ら水浴びをしたからってここまで無い事はないんじゃない?」
「そういや、前の世界でも匂いが殆ど無いって言われていたな。相手が何年も居なくても同じだったからそういう体質なんじゃないか?」

「まあ、お兄さんが誰と寝ようが私には関係の無い事だからね」

 そう、この少女が言う事は当たっているのだが前の世界でも匂いがあまりにないのでそれが原因になって相手がいると勘違いされているんじゃないかと思う事も多かった。
 勘違いされているから誰も寄ってこないというのも変な話で、前の世界の国は王国のような国とは程遠い国であった。

 なので恋愛も比較的、本能的に行われていた。モテているかどうか、どれほど稼げるか、見た目は良いか、とかだ。
 王国では感覚で感じ、適した相手かを瞬時に判断する国民が多いのとは正反対でそれは金を稼がないと生きていけないという国であるという問題もあったわけだがそれにしても出会いの無さがあまりにも酷い人は存在した。

 ライリーもその一人だったわけだがどんなに手を尽くしても改善されない場合はもう、解決策は神のみぞ知ると言えるだろう。時が解決してくれるのかもしれないがあまりに長いと絶望すらしてしまうものだ。
 水浴びをしている横で少女は岩をじっと見つめている。貝を採っているようだ。この辺りはオープンな性格の子が多いのか裸で水浴びをしていても気にしないようだ。

 水浴びも終わったので少女を手伝って貝を採る事にした。岩の裏にくっついているのもいれば岩の近くでじっとしているだけのもいる。毎日、採取しているのに居なくならないのが何とも言えないところだ。

 一通り、採ったところで少女の家に向かった。いつもの事だとかまどに薪をくべて塩茹でにしていたがこの貝も今日、食べたらまたしばらく食べる事はないだろうと思うが似たような味の貝はどこにでも居る気がするので特に考えるまでもないだろう。

 朝食がてら茹でた貝を食べていると今日、家族に王国に行く話をするのだと少女は話した。時間の流れが違うので王国でそろそろ実家の様子を見に行こうかと村に帰ったらいつの間にか年老いた両親ときょうだいという事にもなるのでそういう点では反対するのかもしれない。

 まあ、考えていてもしょうがないので馬車に戻る事にした。今後の予定を立てなければならない。
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