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13. 全ての出逢いはナンパから生まれるんですよ
しおりを挟む気を取り直して、僕達は山登りを再開した。
だが、5合目は余裕だった。ジルも僕も、ソロでも大丈夫なくらい、余裕綽々。
まさか装備を新調しただけでこんなに楽になるとはなぁと僕は感心し、まさかB感度レベルが上がっただけでこんなに被ダメが減るとはなぁとジルは唸った。
あまりにも問題なく進めたので、僕達はそのまま6合目、7合目を目指した。
6合目のモンスターは流石にワンパンでは倒せなくなっていたので、ジルが初撃を入れた後、僕が追撃するスタイルになった。
基本的にジルが、攻守を神懸かったバランスで使い分けながらモンスターの注目を引いてくれるので、その隙に僕が攻撃なり回復なりバフなりを入れる。
ジルの立ち回りが上手すぎて、僕は随分と楽をさせてもらっている感じだ。
一方、ジルは「ミュラーがいるので、とても楽に進めますね」と言っていた。
とどのつまりは、一人より二人の方が簡単になるという真理だろう。
7合目は更に戦闘が長引く様になった。敵が強くなったのもあるが、複数体を相手にする事も珍しくない。
先を急いではいないので、今日は7合目の様子を見た後、解散となった。
次の日は僕がアナニーしている時にメッセージが来たので、各自で射精ボーナスを付けてから合流し、7合目を攻略した。
5合目から7合目を安定して回れるようになったので、また別日には、それまで通らなかった登山道から離れた場所も探索し、アイテムを回収。
途中、湖があった。湖畔に綺麗な花が咲いている秘境的な場所だったので、次のイベントの候補地じゃないかなどと噂した。
RPG的に充実した内容だが、探索中は射精ボーナスが切れるたびに付け直したので、R18的にも僕は大変満足している。玩具を挿入した状態でフェラさせてもらったりして……、まぁ、控えめに言って非常に興奮したよね。
僕のA感度レベルが上がって魔法は強くなるし、ジルのP感度レベルも上がって攻撃力は増すし、良い事尽くめだ。
それでも8合目、9合目はキツかった。
8合目は二人とも出来る限りの強化をした状態で、何とか対処出来る程度。
9合目はそれでもキツい。戦略的撤退を選択せざるを得なかった。
「簡単に山頂まで行けるかと思ったけど、まだ無理そうだね」
「本腰を入れて挑んで、イベント期間中に山頂に辿り着くかどうかといったところか」
「行く?」
「ミュラーが良いのなら、行きます?」
「行こ行こ。告知の感じだとイベントは童貞に無縁そうだし、それなら山頂目指した方が楽しいよ。イベントの下位精霊には割と会えるって聞いたし、運が良ければ山登りしてても会えるんじゃないかな」
「では、初日は9合目ポータル集合で」
「オッケー」
そうして僕達はイベント開始日にもオッキ活火山で落ち合う約束をしたのだった。
オッキ活火山9合目ポータル前で一服した後、メニューからログアウトを選択する。
見慣れた亜空間。ログ間へと移動すると、執事フェニエが慇懃に僕を出迎えた。
「お帰りなさいませ、ミュラー様」
「ただいま、フェニエ。新着情報はある?」
「はい。プレイヤーの丹波様からメッセージが届いております」
おお、ナンパ師の丹波さんか。
中身は純粋で猪突猛進な腐女子だが、外見は筋肉ムキムキの日焼けした肌に、金髪ベビーフェイスが眩しいオジサマ手前のオニイサマ。
僕が丹波さんにナンパされたり、ジルが丹波さんにナンパされている所に鉢合わせた縁があったりして、フレンド登録に至った。
ご飯に行こうと話していたが、お互いにタイミングが合わず実現していなかった。
ログアウトするつもりだったが、ご飯くらいは行けるので「これからなら空いてるよ」と返信すると、丹波さんから直ぐに色よい返事があった。
僕はエロ防具から街歩き用のカジュアルスーツに着替えて、風と花の街フロランティアにログインし直した。
待ち合わせは、僕と丹波さんが最初に出会ったお店。
風と花の街フロランティアの官能地区、中でも男体客限定の店が建ち並ぶ薔薇道にある、僕がチュートリアルで執事フェニエに連れて来てもらったあの店だ。
意外にも、丹波さんがその店を指定した。
丹波さんはあの店で迷惑なナンパ行為をした事を反省していたので、どういう意図だろうと不思議だったが、店に入ると腑に落ちた。
何という事はない。丹波さんはあの後、優良で善良な客として通い、あの店の常連になっていたのだ。
「よぉ、別嬪のミュラーちゃん、いらっしゃい。丹波の野郎ならあっちだよ」
「別嬪……? こんばんは店長、ご無沙汰してます」
きっと、初日の出来事は、もう笑い話にされているのだろう。店長の声色からは、丹波さんへの親しみが感じられた。
別嬪のミュラーちゃんという呼ばれ方には首を傾げざるを得ないが。
「ミュラーさん、こんばんは! こちらへどうぞ!」
店長の声が聞こえたのか、僕の来店に気付いた丹波さんは奥まった席からわざわざ迎えに来てくれた。
そして、その丹波さんに気付いた他の客が、「丹波くんいたの?」「丹波くん一緒に飲もうよ」と声を飛ばす。
また揉めるのか、とは思わなかった。
丹波さんはそれら全てを一言二言で上手く躱すと、スムーズに僕を席までエスコートしてみせたのだ。思わず感心する程の紳士振りだった。
「丹波さん、久しぶり。男前っぷりが板に付いてるし、凄い人気だね?」
「それもこれもミュラーさんのおかげですよ。さ、今日はわたしの奢りなので、何でも好きなだけ頼んでください」
少し奥まった席、二人掛けのソファに横並びで座る。
丹波さんは僕の後ろの背もたれに逞しい片腕を置き、組んだ長い足は外に。
僕の身には一切触れていない。
けれど、どうぞと言って渡してきたメニューは自然と一緒に覗き込んだり、確認を取る時はしっかりと僕の目を覗き込んでくる。
はっきり言って、距離が近い。だが、拒絶する程でもない。
最初と違って相手に不快感を感じさせず、ギリギリ受け入れられる範囲を学んだようだ。
いや、本当にナンパ慣れして、度胸と色気が標準装備になっていらっしゃる。ロールプレイの真骨頂だなぁ。
「その技術、僕も習得出来るかな?」
「ん? どの技術です?」
丹波さんは小首を傾げながら上体を丸め、僕の言葉をしっかり聞いてますよという姿勢をとる。
そうしながらも、彼の右手は白シャツのボタンを緩めているわけで、否応なしに僕の視線は彼の男らしい胸元へ誘導され……。
「それだよ、それ。その童貞処女を一本釣り出来そうな色気を放つ技術」
「ええっ、ミュラーさん、ワンナイト初物狙いなんです?」
「まさか!? しないよ?!」
「ですよね! ミュラーさんがその辺でナンパしてたら、皆ホイホイついて行きますよ。こんな美人で人が良さそうでエロい上物、滅多にお目に掛かれないし。というか、わたしが立候補します。という事で、今夜早速どうですか?」
「しないから! その三枚目ナンパムーブ止めて、笑っちゃう」
「ねぇねぇ、お兄さんちょっと良いかな。今時間ある? っていうか、お兄さん可愛いね!」
「あははっ! 止めて、ネタでナンパするのホント面白いから」
「ウハハッ。やだなぁ、ネタじゃなくて本気ですよ」
「えっ……ナンパガチ勢、怖っ……」
「怖くない、怖くない。ほぉら、グラス持って! 二人の出逢いに乾杯~!」
丹波さん、ナンパ師として大成しすぎでは?
僕がアナニーに操を捧げていなかったら危うかったかもしれない。
「で、わたしの本音はさておき」
「そこは冗談って言って?」
「本音ですよ、勿論。嘘百でナンパする人間なんていませんからね。多かれ少なかれ、皆、本心でナンパしてるんです。ミュラーさんとワンナイト出来る名誉を頂けるのなら、わたしは犬にもネコにもなりますが。残念ながらわたしが口説いてもご迷惑にしかならなさそうなので、大人しくしてるだけです。偉いでしょ?」
「あー、偉い偉い」
「やっぱり口説いて良いですか?」
「いや、遠慮するよ」
「手堅いなぁ~。で、ミュラーさんが一本釣りしたい、本命の童貞処女が居るんです?」
ジルの顔が思い浮かんで、思わず咽せた。
おしぼりを手繰り寄せ、丹波さんをひと睨みするが、丹波さんは意に介さずニコニコと表情を輝かせている。
「お相手さんは、童貞ですか」
「まぁ」
「最、高。はちゃめちゃに推します」
「ロールプレイ忘れてるよ、ロールプレイ」
「失礼。わたしはミュラーさんを応援しますよ?」
「いや、童貞を食いたいとかじゃないからね? むしろ守りたい。童貞は僕が守る」
「とても、非常に、この上なく。応援します」
なんだか僕と丹波さんの間で誤解が生じた気がする。
僕はジルにちょっとでも乗り気に楽しんでもらえたらと思っただけで、それ以上は望んでいないんだが。
僕の所為で童貞仲間が童貞の危機にならないか心配になったが、丹波さんは水を得た魚のように生き生きしているのでそっとしておこう。
「童貞処女を一本釣り出来るかは分かりませんが、さりげなくアピールする簡単な方法はありますよ。体感温度設定を、わざと極端に設定しておくんです」
「ほう」
「すると、人の隣に座ったり、さっきみたいにエスコートで急に歩いたりした後は暑く感じるので、純粋に『暑いな~』と思いながら、シャツのボタンを一つ外す。それだけです」
「ほほう」
「何かをしながらだとより良いですね。わざとらしさと下品さが減ります。それで食い付きが良ければ、もうちょっと分かりやすくするんです。胸元を寛げるついでにチラッと乳首を見せたり、『気になる?』とか『暑いよね』って声をかけたり。ほぼ行けるなって時は、もう触らせたり、触ったりします」
ナンパは如何に本音を混ぜるかが重要だと、丹波さんは語った。
暑くないのに暑いと言っても駄目。
相手を褒める時に、思ってもないお世辞を言っても駄目。
嘘は嘘っぽさが透けて見えるらしい。
「とはいえ、相手次第ですけどね。視線が胸板に移動したのが分かっても、さっきのミュラーさんみたいな感じだったら乳首を見せたりしませんよ。視線にも気付かないフリをします」
「なんで?」
「貴方に下心が無いので。ミュラーさんはキャラクリ上手いし拘りがありそうだから、わたしが乳首を見せても『その肌色に、その乳首の色形かぁ』って分析しそうじゃないですか。わたしは『エロいな』『ヤっても良いな』って思って欲しくて乳首を見せているだけなので、見せ損になる事はしません」
ぐうの音も出ない。
確かに、小麦色の肌に合わせる乳首はサーモンピンクか焦茶ならどっちだ議論をした経験がある。
本当に相手をよく見てるんだなぁ。
初日の視野狭窄っぷりは何だったのだろう。
「わたしは体感温度設定を変えてから、ナンパ成功率は変わってないですけど、ワンナイト達成率は上がりました」
「ワンナイト達成率」
「えぇ、多種多様な美男子諸君との絡みを撮影するのがわたしの生き甲斐ですから。今度のイベントも楽しみですね。ミュラーさんとワンナイト出来たらもっと楽しいと思うのですが?」
「謹んでご遠慮します」
僕には縁の無い話だ。
丹波さんはカラカラと笑った。
まぁ、丹波さんも『ネオ・ヴァラニア』を楽しんでいるようで何よりである。
「後は……そうですね。師匠は『とにかくボディータッチを増やす』って言ってました」
「え、師匠がいるの?」
ナンパの師匠? VRMMORPGで?
その世界は知らないなぁ。
「あんまりにも美男子だったんで声をかけたら、鼻で笑われまして。それでもめげず、見かける度に声を掛けていたらアドバイスを貰えるようになったので、勝手に師匠って呼んでます。今は、師匠兼ライバル兼友達ですかね?」
「変な縁があるもんだねぇ」
「ですねぇ。全ての出逢いはナンパから生まれるんですよ」
「それはどうだろう?」
そうして話に花が咲いているうちにご飯が運ばれて来た。
現実で食べるよりも断然美味しい料理だった。
そもそも現実では料理なんてしないし、当然ではあるが。
その後も、丹波さんは近況報告や情報交換、為になる話からどうでもいい雑談まで面白おかしく会話を盛り上げてくれた。
中々に有意義な時間だった。
店に入った時は夜だったのに、お開きになる頃には空がすっかり明るくなっていた。
丹波さんは、初日のお詫びとお礼ですと言って僕には一銭も負担させず、良かったらまたご一緒してくださいと笑って再び官能区域へと姿を消した。
バイタリティが凄い。ナンパしていないと死んでしまう生き物なのだろうか?
流石に体力の尽きた僕は、今度こそログアウトを選択した。
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