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19.ミュラーと下位精霊
しおりを挟むさて、9合目の目的地に到着した。
目論見通り、道中は敵にエンカウントしなかった。僕の体感的には一昼夜経過したくらいの辛さがあるが、こういう時は思っているより時間は経っていないものなので、今回もそれ程の時間は掛かっていないだろう。
「はーっ……」
深く息を吐く。興奮し過ぎず、かといって冷静になり過ぎない状態を保たねば。
僕がやっているのは、アナルトレーニングと真逆だ。
アナルトレーニングというと、外肛門括約筋を締めたり緩めたりして骨盤底筋全体を鍛えると共に、筋肉の使い方を覚え、入れた道具をうまく動かして気持ち良くなれるようにするのが通常だ。
けれど、それとは逆に、なるべくアナル周辺の筋肉を動かさないようにすることで理性を保ち、R18判定を取り続ける。
アダルトグッズを見ている限りでは、女体用の膣トレグッズやお散歩向けローターに始まり、首輪やリード、専門の服などかなり充実しているので、プレイとしての散歩は珍しくない。けれど、今の僕のように必要に駆られてフィールドに出る人は少ないだろうな。
コツがいるけど、僕にとっては無理でない。
とはいえ、陰喪さんの二の舞にはなりたくないので、早く片付けてしまおう。
「うーん、湖っていうか泉だよね?」
9合目の湖は、湖ではなかった。規模は圧倒的に小さく、池と呼んでも差し支えないくらい。しかも、水は貯まっているのではなく、噴水や天然温泉のように湧いている。
水の透明度が高く、木漏れ日を受けて水面が輝く姿は幻想的。木々に覆い隠されるようにして存在しているその空間は、獣に踏み荒らされる事もなく、ひっそりと佇んでいた。
6合目の湖も主道からは見られない絶景だが、こちらは更に秘境感がある。
「ここと6合目の湖の真ん中っていうと……?」
マップのウィンドウを開いて確認する。
合目は距離や道のりに比例しないので、やはり6合目と9合目の中間地点は中途半端な位置だった。
そして、攻略屋兼情報屋のビィちゃんが言っていたように、俯瞰して見た時に69の形かというと、これまた微妙だ。
川との位置関係もだが、そもそも湖の大きさに違いがありすぎるし、ここの湖……というか泉は、マップでは拡大しないと水場だとすら分からない。
「うーん?」
「困ってるネ?」
「うん、困ってる……、……うん?」
突然、バシャッと水音がした。
音のした泉の方を見ると、水が湧いている場所ではない所から飛沫が上がり、不自然に水面が波打っている。
そして、水面から飛び出た水は次第に人の形を成し、気付けば水面の上に、水でできた人が立っていた。
「珍しいネ」
それはクスクスと笑った。
何処から声が出ているのかさっぱりだが、これは、もしかしなくとも……。
「下位精霊?」
「ご明察。ボクは、水鏡の下位精霊デス」
「水鏡?」
「そう、色んな水があるからサ。ボクは水面、アナタを映す鏡なのサ」
僕は首を傾げた。
水面というくせに立体的な人型をしているし、鏡という割には僕に似ていない。
水流で作られた下位精霊の手足は、僕の手足よりも長く、背も高かった。
腑に落ちないでいる僕を見て、下位精霊は更にクスクスと笑い声を上げる。つられて水面がさざめいた。
「性交の範囲が広ければ広いほど、この湖は大きく見える。深い快楽を知っていれば知っている程、水深は深くなる。行為や相手に嵌っている状態なら沼のようにドロドロになるし、サッパリ後腐れなく過ごしているのならば流れる川のようになるものサ。アナタには何に見える? アナタはとても珍しいネ」
僕には小さな泉に見える。
そりゃ性交した事なんてないから、範囲も何も関係ない。深さは分からないが、泉は澄んでおり、湧水が心地良い音を立てている。
これはどういう意味だろう?
そんな疑問は、すぐに下位精霊によって解消された。
「その身に留めておけず、湧き上がるほどの気持ちがあるのですネ」
「なっ……!」
確かに僕は「ジルとセックスするぞ」と意気込んでいるけれど、……下位精霊にまで指摘されるって何?
そんなに分かりやすいのかな。指摘したくなるほど、僕の顔に出ているとか。
いや、だからといって下位精霊はそんな事気にしないだろう。たとえ、泉や湖がステータスによって変化するのだとしても……。
「まさか……」
人型は声を出さずに笑った。
水面の揺れが収まり、波紋が消える。
まさか、プレイヤーに合わせて、水面だけでなく、下位精霊自身も変化するのか。
僕の思考を裏付けるように、透明だった下位精霊は指先から色付いていく。
引き締まった肉体、艶やかな黒髪。男性的でありながらも均整の取れた美しい顔に、紫と黄のオッドアイ。
「ジ、ル……」
「森羅万象に祝福を。精霊達の春祭を楽しみましょうネ」
ジルの姿に変化した下位精霊は、水上を歩いた。
そのまま陸に上がるとこちらへ近づいて僕の手をとり、手のひらに花弁の形をした宝石をひとつ乗せる。
僕はヒュッと息を呑んだ。
ジルに似ているが、決定的に何かが違う。
掌にあるのがイベントアイテム「春祭の花弁」だとは分かったが、ジルの姿で動かれるのは違和感しかない。
「その顔、やめて。ジルはどこに……」
分かっている。下位精霊に悪意は無い。
彼等は自然そのものだ。
自然を擬人化したら彼等のようになると思って割り切るしかないのだろうが……、……ん?
はて、彼等は自然と違って話が通じる。
もしかして、下位精霊や精霊の間には独自のコミュニティがあって、精霊フローラの居場所を知っているのでは?
「あの、ちょっと聞きたいんだけど。精霊フローラがどこにいるか知ってる? 『6合目と9合目の間』に行きたいんだけど」
「知ってるヨ」
「マジ!? お願い、教えて?」
「良いヨ。ソレをくれたら、教えてあげル」
ソレと言って下位精霊は僕の下腹部を指す。
一瞬、臓器とか性器とかいう単語が頭を過ったが、こんな所でグロいのはないよね。『春祭の花弁』を返せと言っている訳でもなさそうだし、もうインベントリに仕舞ってしまったし。となると、残りは。
「『保湿保証アナトレ団子EX君』が欲しいの?」
「そう! いつでも水が出てル!」
下位精霊はキャッキャとはしゃいでいるが、語弊がある。
『保湿保証アナトレ団子EX君』からじんわりと出るのは純水ではなくアナルローションだし、ナカが乾燥してきた時にしか出ない。
生憎と新品は持ち合わせが無いので、これを渡すと僕は9合目を歩くのもままならなくなってしまう。
「これはちょっと……」
「ソレが欲しいナ!」
他の物では駄目かと交渉しても、下位精霊はソレが良いの一点張りだ。
「うーん、仕方ないか……?」
「チョーダイ! チョーダイ!」
オウムのようにオネダリを繰り返す下位精霊。顔形は同じでも、ジルとは似ても似つかない。
僕は苦笑した。
「仕方がないな。良いよ、あげる」
「ホント!? ヤッタ!」
「うん。あげるから、ちょっと待って……」
アナトレ君をアナルから出して、『清掃』をかけて、道具の耐久値が減っていたら回復して。
僕はそんな手順を考えたが、それは返事をする前に済ませておくべきだったらしい。
「ありがとう!」
下位精霊は僕の待てという言葉を聞かず、僕の両手を握った。
その瞬間、ジルの姿をしていた下位精霊が、僕の姿に変わる。
背格好から、恐らくはステータスまで、完全に僕の鏡映し。
視界の端には、『スキル「水鏡」の習得が可能になりました』なんてメッセージがホロウィンドウに表示されているが、それどころではない。
「……ッ……!」
尻の中の異物が、引き抜いた訳でもないのにスッと消えて無くなった。
突然の空白。
異物が無い違和感に戸惑ったが、僕の驚きはまだ続く。
「精霊が滞在する場所なんて限られてるからネ。6合目と9合目の間にはアソコしかないヨ。おいで、こっちサ!」
おいでと言うが、下位精霊は僕の手を掴んだままなので、僕はただただ下位精霊に引っ張られるだけだ。
行き先は泉。
「いや本当に待って……ッ、うわっ!」
下位精霊は水面を数歩歩いた。僕も水面歩行が出来るのかと思ったが、そんな事はない。
僕、ネオヴァラ内で泳いだことないんだけど、水中ってどうなるんだっけ?
ザパッ、ザブッ、ザブッと激しい水の抵抗を受けながら、歩いているのか泳いでいるのか判別つかない不恰好な動作で、水中へと引き摺り込まれる。
慌てて息を止めた。時間が経てば、普通に酸欠で苦しくなりそうだ。
ステータスとしての体力は減っていないが、限界を超えてしまったらデスペナルティだろうな。
(「ここまで来て死に戻りは嫌だけど……、これは、保たない、かも……」)
泉の中の筈なのに、いつの間にか外から差し込む光は見えなくなっていた。
目的地まで泳ぐとかなら、まだ計画や予想も立てれたが、経路は下位精霊しか知らない。
その下位精霊も、僕の姿ではなく人型の水に戻っており、水中では周りに溶け込んでしまって僕の目には見え難いことこの上ない。
そこに居るのは分かるが、見えないのは不安だ。周囲も深海より深く広い、無限の水中。
深海と違って時折何かが煌めいたり、海洋生物の形をした下位精霊達とすれ違ったりするが、一人だけ別世界に放り込まれたような心細さが僕を襲う。
限界だった。
数分は粘ったが、体の自由が効かなくなっている。
目の前が真っ暗になり、僕は意識を失った。
――――――――
名前:ミュラー
種族:人間♂
技能:[A感度]Lv.18、[B感度]Lv.12、[P感度]Lv.11、[T感度]Lv.11
[A絶頂]Lv.11、[B絶頂]Lv.6、[P絶頂]Lv.6、[T絶頂]Lv.6
[A拡張]Lv.8 、[射精]Lv.15、[オナニー]Lv.9 、[チクニー]Lv.6、[アナニー]Lv.12、[フェラチオ]Lv.9、[手淫]Lv.8
[フェラチオ上手]Lv.2
[アナニスト]Lv.1
[玩具好き]Lv.2(NEW:実践的な使用により獲得)
[騎乗位のコツ]Lv.1(NEW:ディルドで練習した成果)
[露出癖]Lv.2 (NEW:山小屋でオナニーを見られたり、アナル挿入したままでのフィールドワークスした結果)
称号:童貞、バックヴァージン、ベータテスター、チュートリアル経験済
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