あやめ祭り~再び逢うことが叶うなら~

柿崎まつる

文字の大きさ
66 / 86
第三章

66.消毒(2)※

しおりを挟む
 桜色の蕾を強調するように押しだされ、指先でその周りに円を描かれる。男の手は乳房全体を包みこむほど大きかったが、決して彼女の敏感な処に触れなかった。鈍い快感にシーツを蹴りながらも、決定的な刺激を与えられなくて、乳房の先が痛いほど主張する。
 
――……なにかが足りない。すごく、もどかしいの……っ 

浩海ハオハイ、さん、あの……」
「なあに? 溪蓀シースン
 
 浩海ハオハイの晴れやかな笑顔は、彼女の言わんとすることを確信していた。

――こっちは恥ずかしくて、言えるわけがないのに。……意地悪な人、わたしの反応をみて愉しんでいるの。

 彼の方が年上で経験豊富だからといって、悔しい。涙目でねめつけると、浩海ハオハイは相好をくずした。
 
「その顔だけで、イケそう」
「ああん……っ」
 
 茱萸グミのように硬くなった先を吸われて、腰が跳ねる。彼の愛撫は執拗だった。片方の乳頭を舐めまわして吸いあげ、唾液で淫靡に潤わせる。もう片方は長い指で摘まんで延ばしたりひねったり、爪の先で弾いたりといじくり、愛する女性の官能を急速に高めようとしていた。彼女が身をよじらせて、切なく息を吐くと、男は嬉しそうに口角を上げる。
 彼女は仕上げとばかりに乳首を強く吸われ、ピリリとした甘い痛みに腰を跳ねさせる。

「あ……っ、はぁ……っ、んっ」
 
 喘ぐ声が止まらない。溪蓀シースンは初めて感じる快感から逃れようと、浩海ハオハイのこめかみにすがった。こげ茶色の長い髪が指を滑って、流れていく。その手触りが気持ち良くて無意識に撫でていると、浩海ハオハイのどこを刺激したのだろうか、動きがにわかに激しくなった。

「あんっ!」

 浩海ハオハイは大きく乳房をくわえ、音を立てるほど吸った。手はゆるやかに胸を離れ、腰の細くなったところを堪能し、ついには下帯のなかへと侵入する。

 溪蓀シースンの頭のなかはぐちゃぐちゃで、何が何だか分からない。だから、浩海ハオハイが彼女の下帯を解いて蝋燭の灯りにさらしても、ろくに抵抗できなかった。布と秘所が合わさった箇所が愛液でぐちゃっと濡れているのが、まるで粗相をしたよう。恥ずかしくてたまらない。自分の秘所など覗き見たことがなく、今彼が目にしているものがどんな状態かも分からないのだ。
 彼は、感慨深げに息をもらした。

「やっと『れられぬ花』にさわれるね」

 女性器を花に見立てる生々しい発言に、溪蓀シースンはかっと顔を赤らめて夫から視線を外す。  
「はぁ……、い、いやらしい人ね、信じられないわ」 
「夫が妻に欲情するのは、自然なことだよ。溪蓀シースンの秘密の場所、桃色で初々しい。夢にまで見るほど欲したよ。――やっと、僕が手折ることができるんだね」

 熱に浮かされた恍惚とした表情。待たすにも待たされるにも五年は長すぎて、少なからぬ狂気をお互いに産んでいる。浩海ハオハイは潤みきった秘所に指を這わせ、こり固まった花芯を摘まんだ。すっかり過敏になった秘処への刺激は、急速に彼女を快楽の高みに引き上げる。

「あっ……、やめてっ、そこ、変だから……っ」
「可愛いね。腰が動いているよ」

 彼の、身を焼くような情熱が甘苦しくて、逃れられない。何度も秘裂をこすられると、潤滑油みたいに愛液が湧いてくる。浩海ハオハイは出てきたものを指に絡め、しとどに濡れた蜜壺にゆっくりとうずめる。

「ひんっ! ……やぁ……っ」

 ぐちゃぐちゃと聞くに耐えない水音が耳を打つ。はしたないと思いつつ、溪蓀シースンは喘ぎ声をおさえられない。
 
「締まりがきつくなってきたね。イキそう?」

 熱を帯びた浩海ハオハイの声が、束の間彼女を正気に戻す。快楽に溺れた頭は熱くてもやがかかったようにおぼろ気だ。男は指一本で彼女の膣壁をなぞり、円を描き、彼女の身体も頭も蕩けさせる。

――いきそう? どこへ? ああ、でもなにか、きちゃう‥‥‥っ。

「やぁ……、ああぁっ!」

 快感の極みにビクビクと腰が跳ね、しなやかな足が反り返る。生まれて初めて味わう絶頂。
 
「はぁ、はぁ」

 打ち寄せていた波が引くように、だんだんと意識が鮮明になってくる。口の端に接吻され、ぼんやりと目を開いた。

「いまの何?」
「イったんだよ。気持ち良かった? 溪蓀シースン

 秀麗な顔でにこにこと尋ねられて、恥ずかしさで枕に顔を伏せる。
 返事もしないでしばらく頭を伏せていると、浩海ハオハイが彼女の髪を撫でてきた。その手は優しさに満ちていて、溪蓀シースンが機嫌を直して顔を見せてくれることをずっと待っている。彼がどんなに溪蓀シースンを愛しているのか、伝わってくるのだ。

――わたしのために、名前を変えて仕官して。それから、わたしの家族の面倒をみてくれた人。

 一度も会えなくとも五年間、想い続けた。今日という日を迎えて、それが正しかったことも証明された。彼に身を捧げるのに、何を不安に思うことがあるだろう。
 
「好きよ、世界中で一番、あなたが好き」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...