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深町珠

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なつかしい母校

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神流の推論ではーーー。

珠乃家    別時空間

曾祖母=> ?
母   <=

祖母=> ?
珠子   <=

だった。

この推論だと、遺伝的には直系ではない。
従って、詩織の推論のように
父の遺伝子とは合わない筈である。

生まれてから、普通は3歳くらいまでは
誰でも記憶は曖昧だ。
自分|他人 と言う境界もよく把握できていない。
故に、誰から生まれたか、と言うよりも
誰が育てたか、が
母親のイメージを作る。

珠子がどこまで覚えているかは判らないが。



別の時空間では、どんな存在になるか
3次元的には想像が出来ない。

絵も描けないだろう。4次元、あるいは紐状0次元座標は
想像も出来ない。

宇宙の全体空間が把握できないのと同じである。


・・・でも、心は残るようですね。
と、神流は思う。

珠子の「珠」と言う文字は魂の意味であるし

このお店の屋号にも「珠」と言う文字がある・・・。

あれこれ類推するのは、研究者所以だ。




翌日は日曜日。

「お店は気にしないで、行っておいで。」と
珠子の祖父は、穏やかにそう微笑んだ。

いつもお店を開けているから、そんな時くらいはと
気遣ってくれるけれど

その気持が嬉しいから、なるべく早く戻ろうと思う珠子である。


神流と一緒に、お店を出たのはお昼前。


丘の上の学校までは、歩いて行ける。


「なつかしいですね、珠ちゃん。」神流は
高校生に戻ったような気持になった。
河原沿いを歩いて通ったこの道。

春は桜が綺麗で。
夏は緑がいっぱい。
秋は、爽やかな川風が。
冬は、時々雪が降ったりして、美しい風景。

すべてが、記憶にある。

いつでも戻れそう、でも、もうどこにもない時空間。
あるとすると、記憶の中にだけ。



「珠子ー。」と、元気な声は碧である。
短めの髪は綺麗に揃っていて、見たところは高校生の頃と同じだ。

メイクや、服装で少し、年齢相応に見える。
加齢で異なるのは、主に顔の中のパーツの位置である。

認識学で言うような配置分類で言うと、目の位置が相対的に高くなったり
各々のパーツの配置が対称で無くなる。
それは、重力の影響と思われる

・・・ので、別時空間では地上とは異なる筈であると


神流は一瞬にそう思う。

それも、珠子を気遣って、考えているから。


「碧ちゃんもかわんないね。」と。
碧は、古都から少し離れた都会に暮している。
電車で1時間くらいだから、此処からも通えるのだが
なぜか、そうはしていない。


その「かわんない」と言う台詞に、碧はどっきりする。
珠子が若く見える事を気にしているから。

少しぎこちなく「そっかなぁ。ありがと。ははは。」と。

珠子が若く見える事には触れない。



「詩織は?」と、碧。


珠子は「うん。大学に行ってから来るって。」


「大変だなー。大学って。」と、碧はあまり勉強が好きではないから
そう思う。


「うん。家がペットショップだったから飼育をしているだけだって。詩織ちゃん。
入学するんじゃないから、そんなに難しくないんだって。」と、珠子。


「それだってねー。あたしだったら、あの雰囲気だけで
参っちゃうな。」と碧。

活発なほうだから。

ひと、それぞれ向き不向きがあるので
碧の代わりには、詩織は成れないだろう。

そういうものである。

静かな所で考えるのが好きな詩織には、大学は
向いているのだろう。


10年前、この道を快活に
撥ねながら歩いていた。

「ちょっと、撥ねましょうか、あの頃みたいに。」と
神流はおどけて。

少し撥ねてみたものの・・・。すぐに息切れ。

「運動不足じゃない?」と、碧。

ふーう、と息しながら、神流「そうですね・・・。」年ですね、と言いそうになって
碧が気を遣っていることに気づく。


よく気が付く娘である。


珠子は、一緒に撥ねてみたいと思ったけど
眩暈がすると困るから、止めた (笑)。

そんな風に、加齢は訪れるので
特別、細胞だけが若くても
心身の不調でも加齢は訪れる。




学校への坂道も「こんなに急だったかなー。」と碧。

「だいじょうぶ、碧ちゃん?」と、珠子は比較的元気。
でも、少し元気がない。


「どしたの?珠子?、あの事?」


碧の言葉に、珠子も神流も一瞬どっきりする。

碧は、珠子がお母さんの幻を見た事をイメージしている。

珠子と神流、それと詩織は
神隠しと、珠子の行く末までを憂慮している。


それで、碧は気楽に言ったのだ。


「見間違いだったよ。碧ちゃん、ごめんね、
心配掛けたね。」と、珠子はにこにこ。


「いーよ。幼馴染だもん。」と、碧は
珠子の頭を撫でた。

よしよし。

背丈は珠子の方が少し高いのだけれど。



「でもさ、お母さんなんて
そんなに逢いたいかなぁ。」と、碧は歩きながら。


「うん、思い出だもの。わたしの場合。」と、珠子。


「思い出は美しいですね」と、神流。



「うちの母なんて、そばにいると煩くてね。それで出たの、家。」と
碧。

そういうものである。そうして出て行く事が自然。





と言う階層構造は変わらないから
母は、より良い行動を示唆しようとする事もある。


それが、娘にとっては面倒な事もある。


珠子は、幼くして別れたせいで
そういう経験がない。

なので、美しい思い出になってしまうと言う訳。



校門が見えて来て。

明るい色合いの煉瓦の門。

広い校庭と、その奥に白い校舎は
かなり歴史的な感じ。


「部室、どうなってるかなぁ。」と。碧。

「もう、新しくなってるんではないでしょうか。」と、神流。



坂道を追いかけて来たのは、詩織だった。「ごめーん。遅くなって。」

元気である。駆けて来た。
ちょっと、大人しい感じだったけれど
意外にスポーティ。
運動は好きなタイプである。


「お、詩織ちゃん。元気ですね。」と、神流は
後で、珠子のお父さんのサンプルを渡そうと思っていて。
ちょっと、言葉がぎこちなかった。


「うん、元気そうだね。詩織」と、碧。

詩織は、高校生の頃と全然変わらない。
化粧もしない、着るものも地味。

大学、研究室の仕事と言う事もある。


珠子は詩織と会っているので、格別、久しぶりではなかったりする。
ふたりとも、この古都に住んでいるのもあるけれど。



開いている校門を通り、校庭を渡る。

日曜日なので、クラブ活動をしている声が聞こえ

バトミントン、ソフトボール、テニス。

ブラスバンド。

体操。


「なんか、なつかしいね。」と、珠子。



「我がクラブは、どうなってるんだろうね。」と、碧。

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