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深町珠

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碧の想い

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双葉は、釈然としない。

「珠子だって大人なんだからなぁ。自分で考えさせた方がいいんじゃないかな」


とは、思った。
だからといって、自分からそれを珠子に告げようとは思わなかったが。



双葉の携帯に着信。


「・・・ああ、碧ちゃんか。珍しいな。」
共通の友人なのだから、電話番号くらいは教えている。




「もしもし・・・ああ、僕。双葉。元気?。うん。今日は懐かしい電話が多いな。
いましがた、神流ちゃんから電話があったんだ。

何って?・・・いや、あの、ほら・・・「神隠し」の話し。碧ちゃんも知ってるでしょう。
珠子が、こっちに来てるから。


あれがさ・・・・。ひょっとしたらね。お母さんが帰ってこれるかもしれないのさ。
それでね、珠子と入れ替わりになるかもしれなくて。

だから、珠子がこっちに来てるとさ、お母さんは帰って来れないんじゃないか?って
推理してたワケ。

まあ、根拠ないさ。ただの空想。


でも、もしそうだったらさ・・・。あのアーケードの辺りで
若い女の子が居なくなる「神隠し」ってさ・・・。説明できるでしょ?」












その頃・・・・・。


古都の大学、研究室で
詩織は、同じ事を考えていた。



神隠し。


伝承にあるような800年生きた人のお話。



そういう事も、起こり得る。
その時空間が歪んでいて。似て非なる二人が入れ替わる。
もしかすると、親子かもしれないし、子孫かもしれない。


「偶然、同じ座標に居た人が・・・・転送されるとしたら。」


あのアーケード周辺に、若い女の子が居ない理由。

地蔵尊が多い理由。


「・・・・碧ちゃんのおじいちゃんが、なぜ、碧ちゃんと一緒に住まないのか。」


もしかすると、それを知っていて。


そういう事も有り得る。



「・・・・ただの空想だけど。」












碧は、双葉の話がよく判らない。


「え?何?どういう事?・・・・珠子と、お母さんが入れ替わりに?

・・・珠子が小さい頃、お母さんが珠子の代わりになった?。


それで、20年だとどうなのよ!


・・・・誰かが身代わりに?消える?」



碧は考える。


珠乃家でアルバイトしようとしたら、丁重に断った
珠子のお父さん、お祖父ちゃん。


・・・それは、もしかすると・・・。
「それ」を知っていて。

危険を避けさせようとしたのかしら。




「それでさ、双葉!
珠子じゃないとダメなの?その身代わりって。」





双葉は、電話の向こうで。



「いや、そうとは言えない。お母さんの幻を見たって、珠子が言ってたんでしょう?
その時に、そこに立っていれば。たぶん、入れ替わると思うよ。理論上」






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