タビスルムスメ

深町珠

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あ!熊だ!

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「たまちゃん、居ないねー」と、友里絵がホームを見ていて。
ディーゼル・カーに乗り込む。
ステップ、一段。


にゃ。

フロアに。きちんと足をそろえて。たまちゃん。


友里絵は、しゃがんで「たまちゃん、こんなとこにいたのー」と。

人差し指で、たまちゃんのあごのしたを、なでなで。
たまちゃんは、目を閉じて、ごろごろ。
指にじゃれている。


よしよし・・・と、なでなで。


ゴールデンちゃんは、ホームから。

ぼー・・・・っと、見ている。
なんとも、ふんわりしててかわいい。


由香は「濡れちゃうよ」と、ゴールデンちゃんに言う。

菜由は「犬は平気だよ」

愛紗「毛が長いからね」


と・・・ゴールデンちゃんはディーゼルカーに乗ってきて。
たまちゃんとすりすり。



「あれ、仲いいね」と、友里絵。

「ほんと」と、由香。


運転手さんは「ああ、時々乗ってるな、この犬も」


友里絵は「どこの犬?、この子」

運転手さんは「ああ、駅前の角のお店。いつもは店の前で寝てるな」


菜由は「列車乗ってどこ行くの?」

運転手さんは「見晴らし台とか、白水あたり。お昼には帰るな」


愛紗は「ダイアが解ってるんだ」


友里絵「賢いねー。よしよし」と、ゴールデンちゃんをなでなで。(^^)。


そのうちに、10時35分。

運転手さんがマイクで「立野行き、発車します」と言って
ドアを閉じる。


友里絵たちの他は、おばあちゃんが何人か。


わんこがいるので、にこにこ。

スルメかなにかをあげている。

たまが、よこから。とことこ・・と。来て「にゃ」

おばあちゃんは、にこにこ。スルメをたまにもあげた。


たま、かじかじ・・・・。かみつく。


ディーゼルカーの、エンジンを吹かして。回転が下がるときに
クラッチを変速段に入れる。

車体が、ゆらり、と。揺れて。

ホーンを、ふあん♪。


エンジンが、がらがらがら・・・。と。

走り出すと、すぐにノッチ0。

トルク・コンバータなので、そのまま慣性で進む。

かたこん、かたこん・・・・。



ベル式の踏み切り警報機が、かんかんかん・・・・。

カーブ。

友里絵は「トンネル公園見えるかなー。」


由香は「なんか、遠くに見えるみたいだ」



菜由は、伸びして見たけど・・・見えない。



愛紗は、運転手の動作を見ていた。


信号現示、確認。

踏み切り安全、確認。


前方、確認。


ひとつひとつ・・・。


また、踏み切りを過ぎる。


かったん、かったん・・・・。

景色は、たんぼ。畑。山。

それだけ、なんだけど。


駅にポスターが貼ってあって。
農家のおばあちゃんが、にっこり。

「ただのいなかじゃー。なかよ」

と、書いてあって。

ひろーい、村の景色が写っていた。

そんなことを思い出す、愛紗だったりして。


「ここで、バスに乗れるといいなぁ」

なんて、思ったり(^^)。


運転手さんは、ちょっと観光案内をしてくれたり。
友里絵たちが旅人だとわかって。

「このあたりは泉がいっぱいあってな。お米もよく取れるな。」

ギアを固定2段にし、エンジンを負荷にして降りる。

エンジンが、ごー・・・・と。空回りの音。


♪おてもやーん♪

の、オルゴールが鳴る。
なんか、テープが伸びてて、揺れてる(^^)。
それも、なんか、かわいい。


ーまもなく、見晴台ですーーー。

と、にこやかなお姉さんの声でアナウンス。

のどかな声なので、旅してるなぁ、と・・・。和める。


排気ブレーキを掛ける運転手さん。


エンジンが、ごろごろごろ・・・・。と、ちょっと唸る。


雨は、ぱらぱら・・・・。


「ほれ、あれが泉だ」と、運転手さんが指差す。

田んぼのような、池のような。


「なんか、釣れそうだね」と、友里絵。



運転手さんは「いるかもしれんのー。魚も。まあ、釣りだったら川の方がいいな。
どこでも釣れるな」


友里絵は「いいなー。釣り、いこっか」


由香「またにしよ」


友里絵「股に?何を?」


由香「アホ」(^^)。


しゅー、しゅ、しゅ・・・。
速度が落ちて、機械式ブレーキを掛けた。


ホームは、屋根もないけど。一応駅。

でも、誰も居ない。
居なくても、停まるのが鉄道。

路線バスとは結構違うな、と愛紗は思う。



止めて、ドアを一応開く。

降りる人がいるかもしれないから。


でも・・・高森から乗って、つぎで降りる人はまあ、居ない。


歩いても来れるし。


運転手さんはマイクで「発車します」と、言って
ドアを閉じた。




小雨に煙る南阿蘇村。

「いいとこね」と、菜由。


愛紗「うん」と・・・。
景色をのんびりと眺めた。












「こまったなぁ」と・・・・。
人吉、日光家から出てきた恵。


道がわからないので、適当に低い方を目指して歩いたら

ため池(笑)。


曲がり角を間違えたかな、と・・・

反対の方向に向かうと・・・。どんどん山の中に入って行って。

崖の上(^^)。



よーく見ると、崖の下に鉄道のレールがあるようだ。


「・・・っても、崖を下るのもちょっとなぁ」



道らしきものがあるので、崖沿いに降りて行ってみると
林の中。昼なお暗い。


「なんか・・・気味が悪いわね」と、見回すと・・・。


ばさばさばさ・・・と、何かが飛び立った。


「吸血こうもりかしら」

と、怖くなって。もときた道を戻った。・・・はず。

が。


どこかのお墓に出たり。

しばらく、誰も来て居ないようで

荒れ果てた。

コケが生えてて。なんか傾いてる。


「怖いよー、誰かー、助けてー」



と、叫ぶ。

何かが茂みで、がさがさがさ・・・。



「ひっ!」と、恵は怯える。


・・・・熊だったら・・・死んだまね、死んだまね・・・。(^^)。



・・・・嘘ついたから、天罰かな(^^;と、恵は思った。




「神様、仏様・・・。」
都合のいい時だけ信じる(笑)。







真由美ちゃんは、観光列車に乗って吉松へ。

雨で、木曜なので
ほとんど乗客はいない。

地元の人ぱっかりなので、観光案内も
ワゴンも、仕事はなし。


記念撮影のサービスも、まさか、と言う感じ。


それで、暇(^^)。


景色を眺めて・・・・。ふと思う。


「お兄ちゃん、どこ走ってるのかな?明日は明けー公休なのかな?」
とか。


「友里絵さんはどうしてるかなー。阿蘇山行ったかな」


とか。


「恵さんは、温泉でも行ったかな」

とか。

いろいろ・・・・。のんびり。(^^)。
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