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微睡の中、セイは目を開ける。大好きな匂いとあたたかい体温を感じて、再び閉じかけた瞼の向こうにレンの顔が見えた。穏やかな笑みを携えて、頬を撫でてくれる。その手に擦り寄ると、いつもより彼の指先があたたかい気がした。
「夢じゃ、ないのですね」
「うん」
腕の中に包まれている。夜空のような紺色の髪の向こうに、消えかけた暖炉が見えた。小窓から差し込む陽の光が線になって、燃え尽きた灰を照らしている。
「寝ていないのですか?」
「火を焚いていたから、一応ね。それより、体調はどう?」
「……ふふ、貴方はいつも心配してくれる。大丈夫ですよ。それなりに怠さや痛みはありますが、許容範囲です。むしろ、実感できる大切な材料ですから」
違和感の残る下腹部に触れた。それから、自分が一糸纏わぬ姿であることに気づき、僅かにたじろぐ。彼の前では今更だが、いつの間に?いくら半分程度溶かされていたと言っても、肌に密着するあの素材の衣服が勝手に脱げるほどではない。
「身体を拭くのに、脱がせてしまったんだ。だいぶぐしゃぐしゃになってしまっていたから」
察したらしいレンが口を開く。自分があのまま意識を飛ばしてしまった後も、彼は傍にいるだけでなく世話をしてくれていたらしい。慣れていなかったとはいえ、申し訳なくなって胸元に埋まる。
「すみません、何から何までさせてしまったのですね」
「それは問題ないけれど、……寒い?」
「いえ。ですが私、着る服が……」
「それは大丈夫。此処には替えがある。ただ、シスターの衣服を、君を起こさずに着せることが難しくて」
ごめんね、と眉を下げるレンにふるふると首を振って、そっと胸板を叩く。そうすれば腕から解放されて、名残惜しさに何回かキスをして、セイは自分の身体に被さっていた上着を軽く羽織った。確かにこれからレンの匂いはしない。そもそも彼の上着は、自分が汚してぐしゃぐしゃにした筈だし……。
小屋の中を見回す。暗くてよく見えていなかった室内は、日光が入り込んだことで視認出来るようになっていた。建物や家具は各々古く使用感があるが、さほど汚さは感じない。壁沿いに暖炉と、木箱がいくつかと、薪の束。壁に年季の入った麻布がいくつか掛かっている。人が住むには足りず、倉庫にしては整然としていた。
「今更なのですが、此処は何処なのですか?」
「森の奥の小屋だよ。避難所といったところかな。君がいた場所から近くて、雨の中森を抜けるより良いと思ったから」
「こんな場所があるなんて、知りませんでした」
「そうだろうね。まず、こんなところまで任務で来る人はそう居ないし。そもそもは昼に林業に携わる人たちが使っている場所だから。そこに、万が一を考えて教会が物資を置かせてもらっているというだけで」
「なるほど」
木箱を漁る。保存のきく食料、水、布や工具。様々ある中で、見慣れた修道服を見つけた。取り出して眺める。サイズも、おそらく問題ない。足を通そうとしたところで、はた、と止まる。下腹部をさすりながら振り向くと、レンは器用に火の後処理をしていた。
「……神父様、」
「どうしたの?サイズが違った?」
「いえ、あの……」
「それとも、やはり体調が、」
「違います。……、番、では、ないようです。私たち」
指の下に、印は無かった。セイはきゅ、と唇を噛む。これだけ惹かれているのに、心も身体も満足するような関係なのに、うっすらとも現れていない。番を重んじてはいないし、そんな都合の良い話は無いとわかっている。けれど……。
レンは少しだけ目を丸くして、しかしすぐに穏やかな顔に戻ると、火バサミを端に立て掛けながら返した。
「まぁ、そんな簡単に番が見つかることはないだろうし。番でなくても交際は可能でしょう?」
「はい。でも貴方は、番を見つけないといけない立場ではないですか。私が番であったなら、貴方の負担も減らすことが出来たのに」
番でないことを咎められる世界ではない。番であることを、大切にされるだけで。けれど教会の者には通じない話だ。自分が番でないならば、たとえ交際を公言したとて、レンは変わらず今後とも、主任に女を押しつけられるだろう。それを拒めば、彼の立場はより危うくなる。しかし彼が他の女を抱くのはもちろん嫌だ。上着の裾をぎゅっと握りしめる。そんなセイを、レンは近づいて抱き締める。
「気にしなくて良いんだよ」
「でも、」
「君を悲しませるようなことはしない。今以上に、のらりくらり躱してみせるよ。大丈夫」
「……」
「それに、俺だって君がいるのに他の女性を抱きたくなんてない。だから、信じて」
目を合わせて伝えられる言葉は、実直で信念を帯びていて、セイはゆっくりと頷いて背に手を回した。愛情で満たされる感覚に、不安が薄れていく。完全には消えきらないけれど、だからと言って、もう離れたくはない。離れることは、出来ない。
「ただ、公言はしない方が良いかもしれない。上の人たちに躍起になられても困るし、君にもきっと迷惑が掛かる」
「私?」
セイは首を傾げる。彼を追い込むつもりはないから、言いふらすつもりはなかった。けれど自分へのデメリットはよくわからない。レンを好いた女からの嫉妬などだろうか。確かに多そうだ、と考えていると、レンは少しだけ言い淀んでから言葉を続けた。
「君は、神父たちの間では本当に人気なんだよ。純潔を掲げていた君が、誰かに身体を許したとなれば、自分もと驕る人間はきっと出てくるだろう。今までよりしつこく言い寄られても嫌でしょう?」
「……、嫌です」
思い出して、あれがよりエスカレートすることを考えれば、自然と口がへの字に曲がった。たまったものではない。レンだから良いのだ。今他の男性に触られたら、鳥肌だけでは済まないかもしれない。短く直接的に答えると、レンも苦笑する。
「他の男に君が触れられるのは嫌だけれど、四六時中一緒にいることは、流石に出来ないからね。歯痒いかもしれないけれど、当分の間、教会内では黙っていた方がいいと思う」
「はい」
「ごめんね。俺が面倒な立場にいるばかりに」
「神父様の所為ではありません。此処は"そういう"場所なのです。一緒にいてくれるだけで、私は嬉しいから。だから、謝るのはやめてください」
「……そう。ありがとう、セイ」
そっと額に口づけられる。それだけで笑みが溢れた。たとえ明言していなくとも、今まで通りに一緒にいる時間はとれるのだ。彼と二人だけの秘密。他を許さない不可侵領域の構築。そう思えば、悪くはない。
幸せな時間。しかし一枚羽織るだけの身体は空気を読まずに冷えを感じて、小さなくしゃみとなって現れる。レンが慌てて離れて、そっと壁まで移動すると、今度こそセイは着替え始めた。それから隅に置かれた元の服だったものと、石の入った袋を拾い上げる。そういえば、最後に斃した異形の石を拾っていないことを思い出す。そんな余裕はまるで無かったので仕方ないことだが、結構な量を吐いていただろうに勿体ない。おそらく十字架もあの場所に置いて来てしまったから、帰りがけに寄った方が良さそうだ。
袋から時計を取り出すと、思っていたより日の出から大した時間は経っていなかった。それでも起床の時間は近づいていて、おそらく二人の外出札が元に戻っていないことには誰かが気づいてしまうだろう。
「セイ、帰る前にいいかな」
「なんですか?」
水の入ったボトルを一つ拝借して、口をつける。カラカラだった喉が潤い、胃に落ちる感触が伝う。呼びかけられてレンの方を向くと、彼はガンベルトを腰に巻き、すっかり乾いた包帯を巻き直していた。
「俺と、正式に任務のバディになってほしい。その方がきっと、動きやすいと思う」
「えっ……あぁ、そういえば、申請は出していませんでしたね」
何度も一緒にいた所為で忘れていたが、レンはあくまでセイの任務を"手伝っていた"に過ぎない。だから石も全てセイに渡していた。頷いてからレンは続ける。
「もっと効率よく石を集めて、貯蓄を貯めたいと思うんだ。そうしたら、君と一緒に此処を出たい」
「……!!」
「散々横着と怠惰を繰り返していた所為で、今すぐにと言えないのが情けないのだけれど……。君との関係を隠さなくてはいけない場所に、いつまでも居座るつもりはなくなったから。……どうだろう?」
自分はこれほど涙脆かっただろうか。此処で生きていく未来を妥協していた彼が、自分の為に前に進もうとしてくれる。そんな幸せなことがあるだろうか。選択肢は、もちろんない。
「……断るとお思いですか?一緒に、番に縛られない場所へ行きましょう」
「うん。ありがとう。……はぁ、本当に、少しでも努力しておくべきだったな」
過去を悔やんでも仕方ないけれど、とレンは溜息を吐く。確かに以前、石の為に任務を行っているわけではないと聞いた。その時の彼の答えは、確かーー。
「現実逃避、って……もしかして、女性を抱くタイミングから逃げていたということですか?」
「そう。主任に捕まらないようにそっと抜け出して、朝になるまで帰らない。石の殆どを教会の資金として渡していれば、渋い顔はされても強く咎められなかったから」
「な、なかなかなことをしていらっしゃったのですね……」
「逃げきれずに、昨日のように捕まることもあったけれどね。これからはより気をつけて、上手いことやり過ごす。当面はこれでいくしかないかな」
レンの言葉に、セイは頷く。そもそも風習に従順でなく悪目立ちしている二人なのに、今後更におかしな動きをしていくのだ。言動共に注意するしかない。結局アクシデントの所為でセイも十分に石を貯めきることは出来なかった。元々、無謀な挑戦ではあったが。
今はあのように余裕が無い状況ではない。なんとか切り抜けるのだ、二人で。
セイはボトルに蓋をして、レンと一緒に小屋を出た。朝日が眩しい。だが、嫌ではない。漠然としていた未来が、はっきり見えた気がした。
二人の影が歩き出す。どちらかが前でなく、隣に立って。
「神父様、」
「もちろん。君の武器と石は回収しようね」
二人で笑って、鳥の囀りを聞いて。
新しい一歩を踏み出した。
「夢じゃ、ないのですね」
「うん」
腕の中に包まれている。夜空のような紺色の髪の向こうに、消えかけた暖炉が見えた。小窓から差し込む陽の光が線になって、燃え尽きた灰を照らしている。
「寝ていないのですか?」
「火を焚いていたから、一応ね。それより、体調はどう?」
「……ふふ、貴方はいつも心配してくれる。大丈夫ですよ。それなりに怠さや痛みはありますが、許容範囲です。むしろ、実感できる大切な材料ですから」
違和感の残る下腹部に触れた。それから、自分が一糸纏わぬ姿であることに気づき、僅かにたじろぐ。彼の前では今更だが、いつの間に?いくら半分程度溶かされていたと言っても、肌に密着するあの素材の衣服が勝手に脱げるほどではない。
「身体を拭くのに、脱がせてしまったんだ。だいぶぐしゃぐしゃになってしまっていたから」
察したらしいレンが口を開く。自分があのまま意識を飛ばしてしまった後も、彼は傍にいるだけでなく世話をしてくれていたらしい。慣れていなかったとはいえ、申し訳なくなって胸元に埋まる。
「すみません、何から何までさせてしまったのですね」
「それは問題ないけれど、……寒い?」
「いえ。ですが私、着る服が……」
「それは大丈夫。此処には替えがある。ただ、シスターの衣服を、君を起こさずに着せることが難しくて」
ごめんね、と眉を下げるレンにふるふると首を振って、そっと胸板を叩く。そうすれば腕から解放されて、名残惜しさに何回かキスをして、セイは自分の身体に被さっていた上着を軽く羽織った。確かにこれからレンの匂いはしない。そもそも彼の上着は、自分が汚してぐしゃぐしゃにした筈だし……。
小屋の中を見回す。暗くてよく見えていなかった室内は、日光が入り込んだことで視認出来るようになっていた。建物や家具は各々古く使用感があるが、さほど汚さは感じない。壁沿いに暖炉と、木箱がいくつかと、薪の束。壁に年季の入った麻布がいくつか掛かっている。人が住むには足りず、倉庫にしては整然としていた。
「今更なのですが、此処は何処なのですか?」
「森の奥の小屋だよ。避難所といったところかな。君がいた場所から近くて、雨の中森を抜けるより良いと思ったから」
「こんな場所があるなんて、知りませんでした」
「そうだろうね。まず、こんなところまで任務で来る人はそう居ないし。そもそもは昼に林業に携わる人たちが使っている場所だから。そこに、万が一を考えて教会が物資を置かせてもらっているというだけで」
「なるほど」
木箱を漁る。保存のきく食料、水、布や工具。様々ある中で、見慣れた修道服を見つけた。取り出して眺める。サイズも、おそらく問題ない。足を通そうとしたところで、はた、と止まる。下腹部をさすりながら振り向くと、レンは器用に火の後処理をしていた。
「……神父様、」
「どうしたの?サイズが違った?」
「いえ、あの……」
「それとも、やはり体調が、」
「違います。……、番、では、ないようです。私たち」
指の下に、印は無かった。セイはきゅ、と唇を噛む。これだけ惹かれているのに、心も身体も満足するような関係なのに、うっすらとも現れていない。番を重んじてはいないし、そんな都合の良い話は無いとわかっている。けれど……。
レンは少しだけ目を丸くして、しかしすぐに穏やかな顔に戻ると、火バサミを端に立て掛けながら返した。
「まぁ、そんな簡単に番が見つかることはないだろうし。番でなくても交際は可能でしょう?」
「はい。でも貴方は、番を見つけないといけない立場ではないですか。私が番であったなら、貴方の負担も減らすことが出来たのに」
番でないことを咎められる世界ではない。番であることを、大切にされるだけで。けれど教会の者には通じない話だ。自分が番でないならば、たとえ交際を公言したとて、レンは変わらず今後とも、主任に女を押しつけられるだろう。それを拒めば、彼の立場はより危うくなる。しかし彼が他の女を抱くのはもちろん嫌だ。上着の裾をぎゅっと握りしめる。そんなセイを、レンは近づいて抱き締める。
「気にしなくて良いんだよ」
「でも、」
「君を悲しませるようなことはしない。今以上に、のらりくらり躱してみせるよ。大丈夫」
「……」
「それに、俺だって君がいるのに他の女性を抱きたくなんてない。だから、信じて」
目を合わせて伝えられる言葉は、実直で信念を帯びていて、セイはゆっくりと頷いて背に手を回した。愛情で満たされる感覚に、不安が薄れていく。完全には消えきらないけれど、だからと言って、もう離れたくはない。離れることは、出来ない。
「ただ、公言はしない方が良いかもしれない。上の人たちに躍起になられても困るし、君にもきっと迷惑が掛かる」
「私?」
セイは首を傾げる。彼を追い込むつもりはないから、言いふらすつもりはなかった。けれど自分へのデメリットはよくわからない。レンを好いた女からの嫉妬などだろうか。確かに多そうだ、と考えていると、レンは少しだけ言い淀んでから言葉を続けた。
「君は、神父たちの間では本当に人気なんだよ。純潔を掲げていた君が、誰かに身体を許したとなれば、自分もと驕る人間はきっと出てくるだろう。今までよりしつこく言い寄られても嫌でしょう?」
「……、嫌です」
思い出して、あれがよりエスカレートすることを考えれば、自然と口がへの字に曲がった。たまったものではない。レンだから良いのだ。今他の男性に触られたら、鳥肌だけでは済まないかもしれない。短く直接的に答えると、レンも苦笑する。
「他の男に君が触れられるのは嫌だけれど、四六時中一緒にいることは、流石に出来ないからね。歯痒いかもしれないけれど、当分の間、教会内では黙っていた方がいいと思う」
「はい」
「ごめんね。俺が面倒な立場にいるばかりに」
「神父様の所為ではありません。此処は"そういう"場所なのです。一緒にいてくれるだけで、私は嬉しいから。だから、謝るのはやめてください」
「……そう。ありがとう、セイ」
そっと額に口づけられる。それだけで笑みが溢れた。たとえ明言していなくとも、今まで通りに一緒にいる時間はとれるのだ。彼と二人だけの秘密。他を許さない不可侵領域の構築。そう思えば、悪くはない。
幸せな時間。しかし一枚羽織るだけの身体は空気を読まずに冷えを感じて、小さなくしゃみとなって現れる。レンが慌てて離れて、そっと壁まで移動すると、今度こそセイは着替え始めた。それから隅に置かれた元の服だったものと、石の入った袋を拾い上げる。そういえば、最後に斃した異形の石を拾っていないことを思い出す。そんな余裕はまるで無かったので仕方ないことだが、結構な量を吐いていただろうに勿体ない。おそらく十字架もあの場所に置いて来てしまったから、帰りがけに寄った方が良さそうだ。
袋から時計を取り出すと、思っていたより日の出から大した時間は経っていなかった。それでも起床の時間は近づいていて、おそらく二人の外出札が元に戻っていないことには誰かが気づいてしまうだろう。
「セイ、帰る前にいいかな」
「なんですか?」
水の入ったボトルを一つ拝借して、口をつける。カラカラだった喉が潤い、胃に落ちる感触が伝う。呼びかけられてレンの方を向くと、彼はガンベルトを腰に巻き、すっかり乾いた包帯を巻き直していた。
「俺と、正式に任務のバディになってほしい。その方がきっと、動きやすいと思う」
「えっ……あぁ、そういえば、申請は出していませんでしたね」
何度も一緒にいた所為で忘れていたが、レンはあくまでセイの任務を"手伝っていた"に過ぎない。だから石も全てセイに渡していた。頷いてからレンは続ける。
「もっと効率よく石を集めて、貯蓄を貯めたいと思うんだ。そうしたら、君と一緒に此処を出たい」
「……!!」
「散々横着と怠惰を繰り返していた所為で、今すぐにと言えないのが情けないのだけれど……。君との関係を隠さなくてはいけない場所に、いつまでも居座るつもりはなくなったから。……どうだろう?」
自分はこれほど涙脆かっただろうか。此処で生きていく未来を妥協していた彼が、自分の為に前に進もうとしてくれる。そんな幸せなことがあるだろうか。選択肢は、もちろんない。
「……断るとお思いですか?一緒に、番に縛られない場所へ行きましょう」
「うん。ありがとう。……はぁ、本当に、少しでも努力しておくべきだったな」
過去を悔やんでも仕方ないけれど、とレンは溜息を吐く。確かに以前、石の為に任務を行っているわけではないと聞いた。その時の彼の答えは、確かーー。
「現実逃避、って……もしかして、女性を抱くタイミングから逃げていたということですか?」
「そう。主任に捕まらないようにそっと抜け出して、朝になるまで帰らない。石の殆どを教会の資金として渡していれば、渋い顔はされても強く咎められなかったから」
「な、なかなかなことをしていらっしゃったのですね……」
「逃げきれずに、昨日のように捕まることもあったけれどね。これからはより気をつけて、上手いことやり過ごす。当面はこれでいくしかないかな」
レンの言葉に、セイは頷く。そもそも風習に従順でなく悪目立ちしている二人なのに、今後更におかしな動きをしていくのだ。言動共に注意するしかない。結局アクシデントの所為でセイも十分に石を貯めきることは出来なかった。元々、無謀な挑戦ではあったが。
今はあのように余裕が無い状況ではない。なんとか切り抜けるのだ、二人で。
セイはボトルに蓋をして、レンと一緒に小屋を出た。朝日が眩しい。だが、嫌ではない。漠然としていた未来が、はっきり見えた気がした。
二人の影が歩き出す。どちらかが前でなく、隣に立って。
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二人で笑って、鳥の囀りを聞いて。
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