不可侵領域

 【番】読み・つがい
 特定の相手と結ばれる縁のこと。またはその相手自体を指す。
 「運命の相手」として、性行為をした際に女性の下腹部に印が現れ、そこに男性が口付けると成立する。死を二人が別つまで続く。
 番はお互いに惹き合う性質を持ち、他に目移りすることは出来なくなる。また世間的に番は大切なものとされ、横槍を入れることは許されない。
 また、番になると女性は子を宿すことが出来るーー……。

 番でなくとも恋仲や結婚は特に問題はない。新しい命は、最早人間と人間の間にのみ生まれるものではなくなっているからだ。
 しかし一部……特に神職者やその周辺には、「神から授かりし縁」として大変優遇され、職の地位などに影響する。
 そのため界隈の男性は毎夜違う女性を抱いては、番を探すのに躍起になっている。女性もその行動を良しとしている。
 結局番であれば相手に惹かれるのだから、その未来は明るいのだから……恋が先か、身体が先かなどというのは、些末な問題だと考える人間が一定数存在する。
 同意の下であることから、この思考は一般には許容されることもなかったが、弾圧されることでもなかった。
 そういう世界なのだと。そういう思考もあるのだと。所詮は、自分に関係が無いのなら、興味の無いことだと。
 そうやって、世界は回っていた。
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