9 / 21
8
しおりを挟む
「セイ、ちゃんと息をするんだよ。鼻でするの」
「ふ、……ッわ、わかってはいるんです。上手くできなくて……」
緊張でおぼつかないセイの頬を、レンが愛おしそうに撫でる。自分から言い出したくせにと情けなく思うものの、セイにとっては何もかもが初めてなのだ。落ち着こうとすればするほど、身体は反比例して強張っていく。上手く出来ずにもどかしそうにしていると、何度目かのキスが降ってくる。不意に舌で唇をこじ開けられ、びくりと大袈裟に震えたセイの手を、逃すまいとレンが強く握りしめた。
「……口を少し開いて、舌を出して」
「っ、ん、」
「上手」
自分の舌に彼の舌が絡まる。唾液が交わる音にぞくぞくと背筋が震え、たまらずきゅっと目を瞑る。
嫌ではない。けれど、身体が勝手に熱くなる。幸せなのに、それだけではない。間違いなく自分の中から滲み出る情欲に困惑する。自分にもあったのだと、当たり前でも信じられなくて。上擦った声が溢れて鼓膜を震わせる。自分のものとは思いたくない、甘くて、レンを欲しがる声音。
口端から漏れた銀糸が垂れる。解放され、溜まった息が大きく吐き出された。機能していないとは思えない、光を宿した瞳と目が合う。そこにはやはり情欲が浮かんでいて、見ぬ間に濃くなったように思えて、また体温が上がった。
彼の手が腹部に触れる。熱い身体に体温の低い指が触れて、それだけで小さく声が上がった。手は素肌を滑り、布の下に潜り込む。困惑と多少の恐怖と、期待と性欲が入り乱れて、思考が追いつかないままに、セイはその動きを眺めるしか出来ない。
震える身体をレンに委ねる。誰にも見せたことのない彼女の、豊満な胸元が露わになり、そこに彼の手が触れる。ふに、と優しく持ち上げられ、恥じらいと未知の感触に唇を噛んだ。
「自分でしたことは?」
「な、いです」
「そう。嫌なら言うんだよ」
欲を纏っているのに、レンの言葉はいつまでも優しい。自分に経験があったら、気を遣わせずに済んだだろうか?本来は、目の見えないレンをリードしなくてはならないのでは?知識というか、そういった動画や本を目にしたことはあるのだが、興奮するどころか気分が悪くなってしまって、まともに見終えたことはなかったから、本当にこういったことに関して無知だった。ふにふにと揉みしだかれる感覚が不思議で、漠然とした不安感にそっとレンの腕に指をかける。それに制止の意図は無い。
「貴方は、経験豊富なのだから。好きにすれば……ッん、……いいのに、」
「まぁ、見えなくてもそこそこ出来るくらいにはね。不本意だけれど……。けれど、君は違うから」
「……?」
「本気で好きになった人を抱くのは初めてなんだよ。緊張しているのは俺も同じ」
「ッ、」
「見えないことで、そうじゃなくても、君を傷つけたくない。だからどうしたものかと、正直悩んではいる」
恥ずかしながら、と眉を下げて笑うレンを見て、少しだけ無駄な力が抜けた気がした。
レンも同じ?それなら、と。セイはキスをする。今度は歯は当たらなかった。
「貴方の触れたい場所に、したいように抱いてくれたら良いのです。難しいことを考えずに。それが、私の望みです」
「……」
「ま、まぁそもそも経験が無い以上、上手く受け止められるかは疑問ですが……努力をしますから」
「……はぁ、そうも可愛いことを言われてしまうと、すぐにタガが外れそうなんだけれど」
「余裕の無い貴方、見てみたいです」
「もう無いんだったら」
軽口を言いながら、くすくすと笑うセイの肩元に顔を置いて、レンは再度小さく息を吐いた。
……これで、少しは彼はやりやすくなっただろうか?安堵するのも束の間、突如耳に刺激を感じて、一際大きな声を上げる。舐められている、とわかった時には擽ったさと、それに近いが別の何かがぞわぞわと脳を揺さぶっていた。吐息が鼓膜を直接振るわせ、水音がいやらしく響く。
「ぅあ、ッ……♡しん、ぷさま、待っ……」
「駄目」
「ーーッ!?そこで喋っちゃ……」
少し低くなった声が、電気のように流れ込む。翻弄されながら、これが快楽だと知覚する。これに、……レンから与えられるこの感覚に、委ねたら良いのか?しかしそんなことをしたら、自分はどうなってしまうのだろう。そんな必死の思考は、胸の先に指が這わされたことで遮られた。乳房自体を優しく触られた時とは違う、直接的な快楽がセイを襲う。
「ゃ、ぁ♡……なに、なんで、こんな……っ♡」
乳首を指で挟まれ、捏ねられている。耳を舐められ、裏筋をなぞられている。それだけなのに、腰が跳ねるのを止められない。レンの背中にぎゅっとしがみついて、快楽を受け止めようと努めた。レンの顔が見えなくて、不安そうに何度も名前を呼ぶと、深いキスを落とされる。一瞬見えた彼の顔に、笑みは無かった。
胸を弄られ、口内を弄られ、浮く腰を撫でられる。そのどれもに、信じられないくらいセイの身体は従順に快楽を拾い、甘い声を上げた。
レンに触れられている。レンの香りが強くなる。認識すればするほどに、セイの思考は蝕まれていく。
「っ、ひ♡あ、ぁ、や……しんぷさま、だめ、だめ、ッぁ♡」
「……イきそう?」
「わ、からな、ンッ♡いっかい、まって、」
「駄目だよ。痛かったり苦しかったりしないなら、このまま、」
弄られていない方の乳首も、ぷっくりと勃ち上がっていて。徐に顔を近づけられかと思うと、それを口に含まれた。理解が追いつかないセイに構わず、舌で飴のように転がして、それから付け根を軽く噛む。そうすれば、たまらずセイの身体がしなった。
下半身がかくかくと痺れる感覚に、セイは呆然とする。何が起きた?強い快楽が自分を貫いて、気づいたら力が抜けていた。これが絶頂というものなのだろうか。レンがキスをしてくれる。啄むように触れるだけなのに、その度にぴくりと反応してしまった。
大丈夫かと問うレンに、こくりと頷く。大丈夫かどうかは、実のところはわからなかったが。
首に腕を回すように言われ、その通りに。足を立てるようにも言われ、それも言われるがままに。しかし下腹部に手がいくのがわかると、はっとしたように意識が戻った。心許ない布をずらされ、股座が露出する。レンには見えていないとは言っても、人前で、こんな姿を。今更ではあるが、羞恥心に顔から火が出そうだ。
ゆっくりと指が宛てがわれ、息を飲んだセイに、やはりレンはキスをする。目元に、頬に、唇に。
つぷり。自分のナカに、レンの指が入り込んだ感触は、思うよりずっと鮮明だった。一度達したからなのか、すんなりと中に入っていく。きゅ、と下腹部に力が入って、その指を絡めとってしまうことに居た堪れなくて、腕に力を込めた。
「痛い?」
「痛くない、です……。不思議では、ありますが、」
「うん。慣れるまでは……そうだね。痛かったら言うんだよ」
「はい……」
言葉は途切れ途切れになりはしても、快楽自体は先ほどよりは無く、一度息を吐く。あんなものがまた来たら、本当におかしくなってしまいそうだったから。
レンの指が中を出たり入ったり、何かを探るように動く。息を吐いて、出来るだけ力を入れないように。彼がやりやすいように。そんな余裕が出て来て、しかしすぐに、それはかき消えていく。
「ぁ、う、…ンンッ♡……??」
先ほどまでなんでも無かったのに、再びじわじわと身体が痺れ始めた。レンが何かしたのだろうか?しかし指の動きに変わりはないように思えた。時々関節を折り曲げているくらいで……。
指が抜かれて、また奥を擦られて。ぐちゅ、と音がした。嬌声が漏れ出す。ナカを意識してしまう。
ぐちゅ、ぐちゅと嫌な音が響く。それは自分が出しているものだと理解が出来ない。指が増やされて、上下に開かれる。空気に触れるたびに震えた。
声が、止まらない。
「し、んぷさま、ぁ♡アッ、あ、や♡だめぇ……また、イッちゃ……ッ」
「いいよ」
「やッ♡やぁ、いや、いやです、」
「……どうして?」
「わたし、ばかりッ、ぅ、あなたも、あなたと一緒に……!」
「ッ」
ぐり、と一点を抉られて、セイは軽く果てる。中途半端なイき方に意識を飛ばすことも、しかししっかりとものを考えることも出来ずにいれば、ずるりと指が引き抜かれた。あったものが無くなった感覚に、ナカが切なそうに締まるのを自覚する。
ズボンに手を掛けるレンをぼんやりと眺める。反り立った男性のモノが晒け出されると、あれだけ嫌悪し直視出来なかった筈なのに、無意識に手を伸ばしていた。ふるふるとしている。レンが驚いたのか息を詰めたのがわかった。
自分のこんなはしたない姿に、興奮してくれている。それが顕著に表れていることに、愛おしさを感じた。そして、快楽を吐ききれていない自分の身体は、間違いなくこれを求めていた。
心身共に繋がりたいと、強く願った。
「ーー、」
言葉を交わすことはなく、片手を繋ぎ、キスをして。指とは比べ物にならない質量の熱が宛てがわれ、詰まりそうな息を吐く。
ずぷり。
「……ーーッ!!♡」
押し広げられる感覚。伴う痛み。圧迫感。じりじりと侵入されていく。空いた片手で、自分の下に敷かれた彼の上着をぐしゃりを掴む。
それでも、受け入れたいという想いは揺らぐことはなかった。自分の上で、苦しそうなレンの吐息が聞こえる。力を抜かなくてはと、無理矢理に吐いた息は嬌声になった。
何かが破れる感触がした。それでも侵食は続く。内壁が擦れる感覚に、痛みと共に快楽を覚える。
痛い。苦しい。なのに、幸せで、気持ち良い。
奥まで貫かれて、足の震えが止まらない。やがてレンは動きを止めて、じっとりと汗を浮かべたセイの額にキスをした。
「……、入ったよ。全部」
「……本当に?」
「見る?」
「……」
そっと目をやる。自分のナカに、すっかりおさまったレンの欲望。素直に驚きもあり、快楽も痛みもあり、恥もあったが……何より彼と繋がれた事実に、その多幸感に無意識に涙が溢れた。
「嬉しい。……嬉しいです。神父様」
「セイ、」
「大丈夫です。だから……抱いて。離さないでください。……ね、ぎゅっとして……」
「うん、離さない。……愛しているよ」
身体を密着させる。抱き合って、体温を感じる。レンに纏わりついていたあの嫌な香りは、もうしない。
ゆっくりと、レンは動き出す。初めて受け入れたのに、自分はもう快楽を見出していることを、幻滅されやしないかと。セイはレンの肩口で口を押さえ喘ぎを押さえる。しかし、とん、と先程軽く絶頂させられた箇所を突かれれば、あっけなくイかされてしまった。それでも今度は、レンは動きを止めない。快楽が波のように押し寄せる。もはや痛みさえ、快楽の一部になる。
「は、ぁ"ッ♡あ♡ぃッ、ぅぁ♡」
彼の背に爪を立てて、快楽に甘んじる。目の前がチカチカして、意識がスパークする。粘着質な音がひっきりなしに響いて、肌同士が当たる音がする。
自分に覆い被さったレンは眉間に皺を寄せて、珍しく頬を紅潮させていて、汗を垂らしながら余裕なさげに吐息を噛み殺している。本気で愛されているのが、嫌でもわかる。
キスを交わす。情欲に溺れる。五感全てで彼を感じて、他には何もわからない。
「しんぷさま、すき、しゅき♡ぁ、ッあ"!♡」
「俺も、俺も好き、セイ、……ごめんね、止まらない……!」
腰を強く打ちつけられて、海老反りになる身体を抱き締められる。何度達したかわからない。縋りついて、腰を揺らす。お互いを求めて、愛欲に塗れていく。
「し、んぷしゃ、ま♡ッひぁ、あ、あ"、キ、ちゃうッ、……!♡」
「いいよ。俺も、もう、」
「このまま"ッ♡キて、くだしゃ、ッはなさないでぇ、」
ガクガクと痙攣する足を絡める。呂律はとっくに回らない。抱き締めるレンの手が、痛いくらいに肩に食い込む。
刹那、どくりと熱い欲望がナカに流し込まれ、セイの身体は大きく跳ねた。透明な欲が噴き出るのが止められない。そんな余裕はない。
「ッ♡……ッ、は、♡」
「セイ、……セイ」
荒い息を整えることはしない。二人で抱き合ったまま、絶頂の余韻を堪能する。愛おしそうに名前を呼ばれ、安心したと思うと、途端に身体に力が入らなくなっていった。目が、まだチカチカしている。
「いいよ、このまま落ちてしまって。……ね?」
「……、いて、くれますか……?」
「うん。……傍にいる」
「……、………」
瞼が重くなる。意識を手放す直前に見たのは、自分の頬を撫でる手と、やはり、優しい彼の顔だった。
「ふ、……ッわ、わかってはいるんです。上手くできなくて……」
緊張でおぼつかないセイの頬を、レンが愛おしそうに撫でる。自分から言い出したくせにと情けなく思うものの、セイにとっては何もかもが初めてなのだ。落ち着こうとすればするほど、身体は反比例して強張っていく。上手く出来ずにもどかしそうにしていると、何度目かのキスが降ってくる。不意に舌で唇をこじ開けられ、びくりと大袈裟に震えたセイの手を、逃すまいとレンが強く握りしめた。
「……口を少し開いて、舌を出して」
「っ、ん、」
「上手」
自分の舌に彼の舌が絡まる。唾液が交わる音にぞくぞくと背筋が震え、たまらずきゅっと目を瞑る。
嫌ではない。けれど、身体が勝手に熱くなる。幸せなのに、それだけではない。間違いなく自分の中から滲み出る情欲に困惑する。自分にもあったのだと、当たり前でも信じられなくて。上擦った声が溢れて鼓膜を震わせる。自分のものとは思いたくない、甘くて、レンを欲しがる声音。
口端から漏れた銀糸が垂れる。解放され、溜まった息が大きく吐き出された。機能していないとは思えない、光を宿した瞳と目が合う。そこにはやはり情欲が浮かんでいて、見ぬ間に濃くなったように思えて、また体温が上がった。
彼の手が腹部に触れる。熱い身体に体温の低い指が触れて、それだけで小さく声が上がった。手は素肌を滑り、布の下に潜り込む。困惑と多少の恐怖と、期待と性欲が入り乱れて、思考が追いつかないままに、セイはその動きを眺めるしか出来ない。
震える身体をレンに委ねる。誰にも見せたことのない彼女の、豊満な胸元が露わになり、そこに彼の手が触れる。ふに、と優しく持ち上げられ、恥じらいと未知の感触に唇を噛んだ。
「自分でしたことは?」
「な、いです」
「そう。嫌なら言うんだよ」
欲を纏っているのに、レンの言葉はいつまでも優しい。自分に経験があったら、気を遣わせずに済んだだろうか?本来は、目の見えないレンをリードしなくてはならないのでは?知識というか、そういった動画や本を目にしたことはあるのだが、興奮するどころか気分が悪くなってしまって、まともに見終えたことはなかったから、本当にこういったことに関して無知だった。ふにふにと揉みしだかれる感覚が不思議で、漠然とした不安感にそっとレンの腕に指をかける。それに制止の意図は無い。
「貴方は、経験豊富なのだから。好きにすれば……ッん、……いいのに、」
「まぁ、見えなくてもそこそこ出来るくらいにはね。不本意だけれど……。けれど、君は違うから」
「……?」
「本気で好きになった人を抱くのは初めてなんだよ。緊張しているのは俺も同じ」
「ッ、」
「見えないことで、そうじゃなくても、君を傷つけたくない。だからどうしたものかと、正直悩んではいる」
恥ずかしながら、と眉を下げて笑うレンを見て、少しだけ無駄な力が抜けた気がした。
レンも同じ?それなら、と。セイはキスをする。今度は歯は当たらなかった。
「貴方の触れたい場所に、したいように抱いてくれたら良いのです。難しいことを考えずに。それが、私の望みです」
「……」
「ま、まぁそもそも経験が無い以上、上手く受け止められるかは疑問ですが……努力をしますから」
「……はぁ、そうも可愛いことを言われてしまうと、すぐにタガが外れそうなんだけれど」
「余裕の無い貴方、見てみたいです」
「もう無いんだったら」
軽口を言いながら、くすくすと笑うセイの肩元に顔を置いて、レンは再度小さく息を吐いた。
……これで、少しは彼はやりやすくなっただろうか?安堵するのも束の間、突如耳に刺激を感じて、一際大きな声を上げる。舐められている、とわかった時には擽ったさと、それに近いが別の何かがぞわぞわと脳を揺さぶっていた。吐息が鼓膜を直接振るわせ、水音がいやらしく響く。
「ぅあ、ッ……♡しん、ぷさま、待っ……」
「駄目」
「ーーッ!?そこで喋っちゃ……」
少し低くなった声が、電気のように流れ込む。翻弄されながら、これが快楽だと知覚する。これに、……レンから与えられるこの感覚に、委ねたら良いのか?しかしそんなことをしたら、自分はどうなってしまうのだろう。そんな必死の思考は、胸の先に指が這わされたことで遮られた。乳房自体を優しく触られた時とは違う、直接的な快楽がセイを襲う。
「ゃ、ぁ♡……なに、なんで、こんな……っ♡」
乳首を指で挟まれ、捏ねられている。耳を舐められ、裏筋をなぞられている。それだけなのに、腰が跳ねるのを止められない。レンの背中にぎゅっとしがみついて、快楽を受け止めようと努めた。レンの顔が見えなくて、不安そうに何度も名前を呼ぶと、深いキスを落とされる。一瞬見えた彼の顔に、笑みは無かった。
胸を弄られ、口内を弄られ、浮く腰を撫でられる。そのどれもに、信じられないくらいセイの身体は従順に快楽を拾い、甘い声を上げた。
レンに触れられている。レンの香りが強くなる。認識すればするほどに、セイの思考は蝕まれていく。
「っ、ひ♡あ、ぁ、や……しんぷさま、だめ、だめ、ッぁ♡」
「……イきそう?」
「わ、からな、ンッ♡いっかい、まって、」
「駄目だよ。痛かったり苦しかったりしないなら、このまま、」
弄られていない方の乳首も、ぷっくりと勃ち上がっていて。徐に顔を近づけられかと思うと、それを口に含まれた。理解が追いつかないセイに構わず、舌で飴のように転がして、それから付け根を軽く噛む。そうすれば、たまらずセイの身体がしなった。
下半身がかくかくと痺れる感覚に、セイは呆然とする。何が起きた?強い快楽が自分を貫いて、気づいたら力が抜けていた。これが絶頂というものなのだろうか。レンがキスをしてくれる。啄むように触れるだけなのに、その度にぴくりと反応してしまった。
大丈夫かと問うレンに、こくりと頷く。大丈夫かどうかは、実のところはわからなかったが。
首に腕を回すように言われ、その通りに。足を立てるようにも言われ、それも言われるがままに。しかし下腹部に手がいくのがわかると、はっとしたように意識が戻った。心許ない布をずらされ、股座が露出する。レンには見えていないとは言っても、人前で、こんな姿を。今更ではあるが、羞恥心に顔から火が出そうだ。
ゆっくりと指が宛てがわれ、息を飲んだセイに、やはりレンはキスをする。目元に、頬に、唇に。
つぷり。自分のナカに、レンの指が入り込んだ感触は、思うよりずっと鮮明だった。一度達したからなのか、すんなりと中に入っていく。きゅ、と下腹部に力が入って、その指を絡めとってしまうことに居た堪れなくて、腕に力を込めた。
「痛い?」
「痛くない、です……。不思議では、ありますが、」
「うん。慣れるまでは……そうだね。痛かったら言うんだよ」
「はい……」
言葉は途切れ途切れになりはしても、快楽自体は先ほどよりは無く、一度息を吐く。あんなものがまた来たら、本当におかしくなってしまいそうだったから。
レンの指が中を出たり入ったり、何かを探るように動く。息を吐いて、出来るだけ力を入れないように。彼がやりやすいように。そんな余裕が出て来て、しかしすぐに、それはかき消えていく。
「ぁ、う、…ンンッ♡……??」
先ほどまでなんでも無かったのに、再びじわじわと身体が痺れ始めた。レンが何かしたのだろうか?しかし指の動きに変わりはないように思えた。時々関節を折り曲げているくらいで……。
指が抜かれて、また奥を擦られて。ぐちゅ、と音がした。嬌声が漏れ出す。ナカを意識してしまう。
ぐちゅ、ぐちゅと嫌な音が響く。それは自分が出しているものだと理解が出来ない。指が増やされて、上下に開かれる。空気に触れるたびに震えた。
声が、止まらない。
「し、んぷさま、ぁ♡アッ、あ、や♡だめぇ……また、イッちゃ……ッ」
「いいよ」
「やッ♡やぁ、いや、いやです、」
「……どうして?」
「わたし、ばかりッ、ぅ、あなたも、あなたと一緒に……!」
「ッ」
ぐり、と一点を抉られて、セイは軽く果てる。中途半端なイき方に意識を飛ばすことも、しかししっかりとものを考えることも出来ずにいれば、ずるりと指が引き抜かれた。あったものが無くなった感覚に、ナカが切なそうに締まるのを自覚する。
ズボンに手を掛けるレンをぼんやりと眺める。反り立った男性のモノが晒け出されると、あれだけ嫌悪し直視出来なかった筈なのに、無意識に手を伸ばしていた。ふるふるとしている。レンが驚いたのか息を詰めたのがわかった。
自分のこんなはしたない姿に、興奮してくれている。それが顕著に表れていることに、愛おしさを感じた。そして、快楽を吐ききれていない自分の身体は、間違いなくこれを求めていた。
心身共に繋がりたいと、強く願った。
「ーー、」
言葉を交わすことはなく、片手を繋ぎ、キスをして。指とは比べ物にならない質量の熱が宛てがわれ、詰まりそうな息を吐く。
ずぷり。
「……ーーッ!!♡」
押し広げられる感覚。伴う痛み。圧迫感。じりじりと侵入されていく。空いた片手で、自分の下に敷かれた彼の上着をぐしゃりを掴む。
それでも、受け入れたいという想いは揺らぐことはなかった。自分の上で、苦しそうなレンの吐息が聞こえる。力を抜かなくてはと、無理矢理に吐いた息は嬌声になった。
何かが破れる感触がした。それでも侵食は続く。内壁が擦れる感覚に、痛みと共に快楽を覚える。
痛い。苦しい。なのに、幸せで、気持ち良い。
奥まで貫かれて、足の震えが止まらない。やがてレンは動きを止めて、じっとりと汗を浮かべたセイの額にキスをした。
「……、入ったよ。全部」
「……本当に?」
「見る?」
「……」
そっと目をやる。自分のナカに、すっかりおさまったレンの欲望。素直に驚きもあり、快楽も痛みもあり、恥もあったが……何より彼と繋がれた事実に、その多幸感に無意識に涙が溢れた。
「嬉しい。……嬉しいです。神父様」
「セイ、」
「大丈夫です。だから……抱いて。離さないでください。……ね、ぎゅっとして……」
「うん、離さない。……愛しているよ」
身体を密着させる。抱き合って、体温を感じる。レンに纏わりついていたあの嫌な香りは、もうしない。
ゆっくりと、レンは動き出す。初めて受け入れたのに、自分はもう快楽を見出していることを、幻滅されやしないかと。セイはレンの肩口で口を押さえ喘ぎを押さえる。しかし、とん、と先程軽く絶頂させられた箇所を突かれれば、あっけなくイかされてしまった。それでも今度は、レンは動きを止めない。快楽が波のように押し寄せる。もはや痛みさえ、快楽の一部になる。
「は、ぁ"ッ♡あ♡ぃッ、ぅぁ♡」
彼の背に爪を立てて、快楽に甘んじる。目の前がチカチカして、意識がスパークする。粘着質な音がひっきりなしに響いて、肌同士が当たる音がする。
自分に覆い被さったレンは眉間に皺を寄せて、珍しく頬を紅潮させていて、汗を垂らしながら余裕なさげに吐息を噛み殺している。本気で愛されているのが、嫌でもわかる。
キスを交わす。情欲に溺れる。五感全てで彼を感じて、他には何もわからない。
「しんぷさま、すき、しゅき♡ぁ、ッあ"!♡」
「俺も、俺も好き、セイ、……ごめんね、止まらない……!」
腰を強く打ちつけられて、海老反りになる身体を抱き締められる。何度達したかわからない。縋りついて、腰を揺らす。お互いを求めて、愛欲に塗れていく。
「し、んぷしゃ、ま♡ッひぁ、あ、あ"、キ、ちゃうッ、……!♡」
「いいよ。俺も、もう、」
「このまま"ッ♡キて、くだしゃ、ッはなさないでぇ、」
ガクガクと痙攣する足を絡める。呂律はとっくに回らない。抱き締めるレンの手が、痛いくらいに肩に食い込む。
刹那、どくりと熱い欲望がナカに流し込まれ、セイの身体は大きく跳ねた。透明な欲が噴き出るのが止められない。そんな余裕はない。
「ッ♡……ッ、は、♡」
「セイ、……セイ」
荒い息を整えることはしない。二人で抱き合ったまま、絶頂の余韻を堪能する。愛おしそうに名前を呼ばれ、安心したと思うと、途端に身体に力が入らなくなっていった。目が、まだチカチカしている。
「いいよ、このまま落ちてしまって。……ね?」
「……、いて、くれますか……?」
「うん。……傍にいる」
「……、………」
瞼が重くなる。意識を手放す直前に見たのは、自分の頬を撫でる手と、やはり、優しい彼の顔だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる