ブライアンのお気に入り

知見夜空

文字の大きさ
16 / 73
十月のこと

無邪気なハリーのお出迎え

しおりを挟む
 ブライアンいわく子ども向けのほんわかハロウィンは夜の7時までに終了した。おばさんと作ったお菓子は、子どもたちに大好評だった。

 ちなみにハロウィンでは、カザネも仮装させてもらった。もう来客は無いので本当なら脱いでもよいのだが、ジムのお父さんに仮装を見せる約束だった。なのでハロウィンが終わった後もすぐには着替えず、残業で遅くなると言うおじさんの帰りを待っていた。

 後片付けと夕飯を済ませた後、おばさんはお風呂に入った。カザネがリビングでテレビを見ていると、夜8時頃にインターホンが鳴った。

 ジムが帰って来るには早すぎるし、おじさんなら鍵を開けて入って来るはずだ。ジムがパーティーを早退したのか、おじさんが鍵を無くしてしまったのか?

 今おばさんはお風呂で、カザネが応対するしかない。こんな時刻に来客があることは早々ないし、もし強盗か何かだったらどうしよう?

 恐る恐るインターホンで外の映像をチェックしたカザネは

「ブライアン、どうしてうちに? パーティー、もう終わっちゃったの?」

 ドアを開けて迎え入れられたブライアンは

「まさか。俺だけ先に帰ったんだよ」
「せっかくのハロウィンなのに、どうして?」

 首を傾げるカザネを、ブライアンはジッと見下ろして

「……セクシーな女豹や悪魔より、無邪気なハリーに会いたかったからかな?」
「ハリーって、もしかしてこの格好のこと? これはいちおう魔女なんだけど、実は子どもたちにも「ハリー・ポッターだ!」って言われた。私もハリーのほうが好きだからいいけど」

 この衣装はおばさんが買って来てくれたもので、黒マントと杖だけの簡単なセットだった。ただカザネは普段から眼鏡で、しかも少年のような短髪なので、魔女よりもホグワーツ感が出てしまったらしい。

 玄関でそんな話をしていると、ちょうどお風呂から出て来たおばさんが、

「カザネ、どうしたの?」

 問いかけたものの、カザネが答えるより先にブライアンに気付いて

「あら、ブライアン。いらっしゃい」
「こんばんは、おばさん」
「ジムを送って来てくれたの?」
「いえ、ジムはハンナと帰るって俺だけ先に引き上げたんです。でも帰る前にカザネに会いたくなって。俺たちすっかり仲良しだから」

 ブライアンはカザネの肩を軽く引き寄せて仲良しアピールした。カザネが反応する前に、おばさんは興奮した様子で

「あら、すごいじゃない、カザネ。ブライアンは昔からハンサムで優秀で女の子にモテるのよ。こんな素敵なボーイフレンドを作るなんて、あなたも隅に置けないわね」

 本気で嬉しそうなおばさんを見ると、カザネは誤解だと言えなかった。


 2人の関係を誤解したおばさんによって「立ち話もなんだし、お茶でも飲んで行って」とブライアンはカザネの部屋に上げられた。

 ドアが閉まり、おばさんが立ち去った後。

「なんかおばさんの前では良い子ぶってない?」
「純粋に敬意を払っているだけだよ。おばさんには子どもの頃から世話になっているから」
「お隣さんだもんね。家族ぐるみで仲が良かったりするの?」

 無難な質問のはずが、ブライアンはなぜか少し言葉を濁して

「家族ぐるみって言うか……うちはほとんど大人不在だから、俺が熱を出した時とか、おばさんが面倒を看てくれたんだ」
「ブライアンのご両親、仕事が忙しいの?」
「まぁ、そんなとこ」

 口が減らないブライアンには珍しく、すぐに両親の話を切り上げると、

「それよりお前はハロウィンどうだった? 子どもたちにイジメられなかったか?」
「全然! みんな君と違って素直な良い子たちだったからね!」

 いつもどおり意地悪なブライアンを、嫌味で迎撃したカザネだったが、

「おまけに仮装すごく似合っていて可愛かったんだよ。写真を撮らせてもらったんだけど、見る?」

 スマホで撮影した写真をブライアンに見せてあげた。そこには天使やフェアリー、ゴーストや海賊など思い思いの仮装をした子どもたちの姿が映っている。

 写真を見たブライアンは、ふっと表情を和ませて

「確かに。可愛いゴーストとフェアリーだな」
「ねっ、子どもたちみんな可愛くて天使みたいだった」

 ニコニコしながら同意したカザネは、

「ブライアンもパーティーで仮装したの?」
「したよ。犬耳つけただけの、適当ウルフマンだけどな」
「犬耳まだある? つけて見せてよ。せっかくだから仮装したところ見たい」

 ブライアンは気乗りしない様子だったが、もう一押しすると、
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...