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十二月のこと
ブライアン先生のファッション講座
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ミシェルのパーティーへの参加が決まったところで
「ところでお前ら、パーティーに行けるような服は持っているのか?」
ブライアンの質問に、カザネは戸惑った顔で
「えっ? 普通の服じゃダメ? ドレスコードとかあるの?」
「俺はお嬢ちゃんのオタクファッション嫌いじゃないけどね。学校ではラフな格好をしているヤツも、流石にパーティーにはそれなりに気合を入れて来るよ。ミシェルのグループは特にチェックが厳しいし、また嫌味を言われちゃうだろうけど、大丈夫?」
ブライアンとしてはカザネが気にならないなら構わなかった。しかし実際にミシェルたちに何度も嘲笑されているカザネは「うっ」となって
「大丈夫じゃなさそう。でも、いきなりオシャレしろなんて言われても、何を着ればいいのか分からないよぉ……」
「私も。あれから雑誌やSNSでファッションの勉強をしているけど、自分に何が似合うのか分からなくて、けっきょく足踏み状態だし。普段着もままならないのにパーティー用のファッションなんて……」
頭を抱える眼鏡っ子たちを、ブライアンはジト目で見つつ、
「お前ら本当に女子力が低いな……仕方ない。お嬢ちゃんたちがパーティーで恥を掻かないように、俺がなんとかしてやろう」
それから2人はブライアンの車で、ショッピングモールに連れて行ってもらった。そこにはミシェルたちのようなキラキラ女子たち御用達のブランド店が、いくつも軒を連ねている。
日本ではデパートやユニクロなど庶民的な場所で服を買っていたカザネは、店構えだけで臆してしまって
「こういうところの服、高そうじゃない?」
不安そうにブライアンを見上げたが、
「女なら高くてもよそ行きの服を1着くらいは持っとけよ。どうしても足りないなら援助してやるから」
と背中を押されて、そのまま入店した。
ブライアンによれば、カジュアルパーティーにはドレッシーなワンピースで来る子が多いそうだ。
最初は自分で選ばせようとしたが、女子力に自信の無いカザネとハンナはブライアン目線「なぜそれを選ぶ」とツッコみたくなるような無難すぎてダサいデザインを選びがちだった。
特に現在ダイエット中ではあるが、大柄のハンナはボディラインを隠すようなダボッとしたシルエットを選ぼうとするので
「こんなにボディラインが分かる服、恥ずかしいわ。胸元も開き過ぎだし」
ハンナはブライアンが選んだ服を嫌がったが、
「いいから大人しく体にフィットしたのを着とけ。いくらボディラインに自信が無いからって、ダボダボの服を着ていたら余計に太って見える」
パツパツも見苦しいが、凹凸の無いフォルムでセクシーに見せることは難しい。また男はファッションによって、相手が異性を求めているかどうか直感的に判断する。よって肌や体型を隠す恰好は、男を拒んでいるように見られて、口説かれるチャンスを潰してしまう。
そんな考えからブライアンは
「それと谷間はちゃんと見せとけよ。唯一胸の大きさだけは、お前はミシェルに勝っているんだから。この機会に、お前を女として見てないジムを悩殺してやれ」
「そ、そんなにうまく行くかしら?」
ハンナは懐疑的だが、第三者のカザネはブライアンの指示が的確だと感じて
「ブライアン、すごい! 女の子の服装まで分かるんだね!」
尊敬の眼差しを受けたブライアンは慣れた様子で
「そりゃお前らよりは世慣れているから」
「私は何を着ればいい?」
「……これとか?」
ブライアンが選んだのは、腰の辺りにリボンがついたワンピースだった。ロイヤルブルーの光沢のあるサテン生地は高級感があって、いかにもよそ行きといった印象だ。
自分が選んでもらった服には戸惑っていたハンナも
「わっ、可愛いワンピース。確かにカザネに似合いそう」
笑顔で褒めてくれたが、素敵なワンピースだからこそ、カザネは自分に似合うと思えず
「こ、こんなに可愛いワンピース、本当に似合うかな? 物心ついてから、制服以外でスカートを穿いたことが無いんだけど」
自分で聞いておきながら、拒んでしまいそうになったが、
「着たことないからこそ、この機会に挑戦しろよ。お嬢ちゃんは好きだろ、冒険と成長。一度着たら元のファッションに戻れないわけでもあるまいし、一歩踏み出してみたら?」
ブライアンの言葉に、的確にツボを突かれたカザネは
「そんなことを言われたら! 誰かの背中を押す作品を作りたいと思っている私がやらないわけには!」
自分の夢を思い出して勇ましい気持ちになった。その勇気が萎まぬうちに
「そうそう。人に指図したいなら、まずはお嬢ちゃんが冒険しなきゃ」
「やりましょう、カザネ! 私も勇気を出すから!」
「だね! 友だちと一緒なら怖くないね!」
ハンナはヌイグルミの販売が順調なので、問題なく支払いを済ませた。一方のカザネはマイチューブで少しは稼いでいるものの、金欠気味だった。
カザネの実家は貧乏ではないが、裕福でもない。しかもカザネの両親は、娘のアメリカ行きに反対だった。それを無理やり説得して出て来たのに
「パーティーに行くための衣装が必要だからお金をちょうだい」
なんて放蕩娘みたいなことは強請れない。広告収入で得たお金も、アメリカの大学に行くための生活費として大事に貯めていた。
なんとかワンピース代だけはねん出したが、それに合う靴までは自腹で買えず、
「ゴメンね、ブライアン。靴を買ってもらっちゃって」
本当にブライアンに頼ることになってしまい、肩を落とすカザネに
「いいよ。この機会に冒険しろって唆したのは俺だし。そもそも親の金なんだから、俺に謝ることない」
「でもブライアンのお父さんにも申し訳ないよ」
恋人ならともかく、ただの友だちに買ってあげるには高い買い物だと、カザネはやはり気に病んだが、
「いいの。どうせあくどいことをやって稼いだ金なんだから。人のために使って浄化されたってもんだよ」
「あくどいことって……ブライアンのお父さんは弁護士なんでしょ?」
カザネの質問に、ブライアンは皮肉な笑みを浮かべて
「弁護士が弁護するのは訴えられた側だぜ。ドラマみたいに毎回、無実の依頼人に当たるわけじゃないよ」
ブライアンはお父さんの仕事を軽蔑しているのかな? とカザネは感じた。しかしブライアンは父親の弁護士事務所を継ぐべく勉強しているはずだ。
その矛盾が気になったが、気まずい空気に耐えかねたハンナが
「と、ともかく必要なものが揃って良かったわね。お店に連れて来てくれただけじゃなく、服まで選んでくれて本当にありがとう、ブライアン」
話はそれでおしまいになり、カザネたちは最低限の装備を整えると、ブライアンに送ってもらって、それぞれ帰宅した。
「ところでお前ら、パーティーに行けるような服は持っているのか?」
ブライアンの質問に、カザネは戸惑った顔で
「えっ? 普通の服じゃダメ? ドレスコードとかあるの?」
「俺はお嬢ちゃんのオタクファッション嫌いじゃないけどね。学校ではラフな格好をしているヤツも、流石にパーティーにはそれなりに気合を入れて来るよ。ミシェルのグループは特にチェックが厳しいし、また嫌味を言われちゃうだろうけど、大丈夫?」
ブライアンとしてはカザネが気にならないなら構わなかった。しかし実際にミシェルたちに何度も嘲笑されているカザネは「うっ」となって
「大丈夫じゃなさそう。でも、いきなりオシャレしろなんて言われても、何を着ればいいのか分からないよぉ……」
「私も。あれから雑誌やSNSでファッションの勉強をしているけど、自分に何が似合うのか分からなくて、けっきょく足踏み状態だし。普段着もままならないのにパーティー用のファッションなんて……」
頭を抱える眼鏡っ子たちを、ブライアンはジト目で見つつ、
「お前ら本当に女子力が低いな……仕方ない。お嬢ちゃんたちがパーティーで恥を掻かないように、俺がなんとかしてやろう」
それから2人はブライアンの車で、ショッピングモールに連れて行ってもらった。そこにはミシェルたちのようなキラキラ女子たち御用達のブランド店が、いくつも軒を連ねている。
日本ではデパートやユニクロなど庶民的な場所で服を買っていたカザネは、店構えだけで臆してしまって
「こういうところの服、高そうじゃない?」
不安そうにブライアンを見上げたが、
「女なら高くてもよそ行きの服を1着くらいは持っとけよ。どうしても足りないなら援助してやるから」
と背中を押されて、そのまま入店した。
ブライアンによれば、カジュアルパーティーにはドレッシーなワンピースで来る子が多いそうだ。
最初は自分で選ばせようとしたが、女子力に自信の無いカザネとハンナはブライアン目線「なぜそれを選ぶ」とツッコみたくなるような無難すぎてダサいデザインを選びがちだった。
特に現在ダイエット中ではあるが、大柄のハンナはボディラインを隠すようなダボッとしたシルエットを選ぼうとするので
「こんなにボディラインが分かる服、恥ずかしいわ。胸元も開き過ぎだし」
ハンナはブライアンが選んだ服を嫌がったが、
「いいから大人しく体にフィットしたのを着とけ。いくらボディラインに自信が無いからって、ダボダボの服を着ていたら余計に太って見える」
パツパツも見苦しいが、凹凸の無いフォルムでセクシーに見せることは難しい。また男はファッションによって、相手が異性を求めているかどうか直感的に判断する。よって肌や体型を隠す恰好は、男を拒んでいるように見られて、口説かれるチャンスを潰してしまう。
そんな考えからブライアンは
「それと谷間はちゃんと見せとけよ。唯一胸の大きさだけは、お前はミシェルに勝っているんだから。この機会に、お前を女として見てないジムを悩殺してやれ」
「そ、そんなにうまく行くかしら?」
ハンナは懐疑的だが、第三者のカザネはブライアンの指示が的確だと感じて
「ブライアン、すごい! 女の子の服装まで分かるんだね!」
尊敬の眼差しを受けたブライアンは慣れた様子で
「そりゃお前らよりは世慣れているから」
「私は何を着ればいい?」
「……これとか?」
ブライアンが選んだのは、腰の辺りにリボンがついたワンピースだった。ロイヤルブルーの光沢のあるサテン生地は高級感があって、いかにもよそ行きといった印象だ。
自分が選んでもらった服には戸惑っていたハンナも
「わっ、可愛いワンピース。確かにカザネに似合いそう」
笑顔で褒めてくれたが、素敵なワンピースだからこそ、カザネは自分に似合うと思えず
「こ、こんなに可愛いワンピース、本当に似合うかな? 物心ついてから、制服以外でスカートを穿いたことが無いんだけど」
自分で聞いておきながら、拒んでしまいそうになったが、
「着たことないからこそ、この機会に挑戦しろよ。お嬢ちゃんは好きだろ、冒険と成長。一度着たら元のファッションに戻れないわけでもあるまいし、一歩踏み出してみたら?」
ブライアンの言葉に、的確にツボを突かれたカザネは
「そんなことを言われたら! 誰かの背中を押す作品を作りたいと思っている私がやらないわけには!」
自分の夢を思い出して勇ましい気持ちになった。その勇気が萎まぬうちに
「そうそう。人に指図したいなら、まずはお嬢ちゃんが冒険しなきゃ」
「やりましょう、カザネ! 私も勇気を出すから!」
「だね! 友だちと一緒なら怖くないね!」
ハンナはヌイグルミの販売が順調なので、問題なく支払いを済ませた。一方のカザネはマイチューブで少しは稼いでいるものの、金欠気味だった。
カザネの実家は貧乏ではないが、裕福でもない。しかもカザネの両親は、娘のアメリカ行きに反対だった。それを無理やり説得して出て来たのに
「パーティーに行くための衣装が必要だからお金をちょうだい」
なんて放蕩娘みたいなことは強請れない。広告収入で得たお金も、アメリカの大学に行くための生活費として大事に貯めていた。
なんとかワンピース代だけはねん出したが、それに合う靴までは自腹で買えず、
「ゴメンね、ブライアン。靴を買ってもらっちゃって」
本当にブライアンに頼ることになってしまい、肩を落とすカザネに
「いいよ。この機会に冒険しろって唆したのは俺だし。そもそも親の金なんだから、俺に謝ることない」
「でもブライアンのお父さんにも申し訳ないよ」
恋人ならともかく、ただの友だちに買ってあげるには高い買い物だと、カザネはやはり気に病んだが、
「いいの。どうせあくどいことをやって稼いだ金なんだから。人のために使って浄化されたってもんだよ」
「あくどいことって……ブライアンのお父さんは弁護士なんでしょ?」
カザネの質問に、ブライアンは皮肉な笑みを浮かべて
「弁護士が弁護するのは訴えられた側だぜ。ドラマみたいに毎回、無実の依頼人に当たるわけじゃないよ」
ブライアンはお父さんの仕事を軽蔑しているのかな? とカザネは感じた。しかしブライアンは父親の弁護士事務所を継ぐべく勉強しているはずだ。
その矛盾が気になったが、気まずい空気に耐えかねたハンナが
「と、ともかく必要なものが揃って良かったわね。お店に連れて来てくれただけじゃなく、服まで選んでくれて本当にありがとう、ブライアン」
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