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十二月のこと
クリスマスパーティー当日
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クリマスパーティー当日。ブライアンは日が暮れてから、カザネとジムを迎えに、車でマクガン家に訪れた。インターホンを鳴らすと、リビングで待機していたのか、すぐにジムがドアを開けて
「いらっしゃい、ブライアン。今日はよろしく」
にこやかなジムとは対照的に、彼の格好を見たブライアンは頭を抱えて
「おい、ジム。いくらパーティーでも、同級生だけのカジュアルな集まりに黒のタキシードはないだろ」
ブライアンの指摘に、ジムは目を丸くして
「えっ? 何か変? プロムはタキシードだと聞いていたから、ミシェルのパーティーもそうだと思ったんだけど」
確かにプロムでは男子はタキシードを着る。しかしクラスメイトが主催する若者だけのクリスマスパーティーに正装は行き過ぎだ。「授賞式かよ」と揶揄されそうな恰好だったが、
「いや、いいや。お前のファッションなんて誰も気にしないからなんでも同じだ。今からお前のクローゼットを引っ繰り返したところでろくな服が無いだろうし、それで行けよ」
「ええっ!?」
ブライアンは無慈悲にジムを見捨てると、
「それでアイツは?」
「ぶ、ブライアン……」
おずおずとした呼びかけに、ブライアンは階段の上を見た。そこには例のワンピースを着たカザネが、恥ずかしそうに立っていた。今日のカザネは服装だけでなく、ブライアンの指示で眼鏡を外し、おばさんに軽くメイクしてもらっていた。素肌が綺麗なのでポイントメイクだけだが、目元がパッチリして頬や唇が色づき、ずいぶん可愛らしく見える。
またカザネのワンピースを見たおばさんが、
「この恰好なら絶対にアレが似合うわ!」
と趣味で作っていたブルーローズの髪飾りを髪につけてくれた。
カザネのはじめての女の子らしい姿に、ブライアンは時を忘れたように見入った。映画なら恋に落ちそうなシーンだったが、カザネは自ら空気を壊すように
「やっぱり眼鏡が無いとダメだぁぁ。何も見えないよぉぉ」
階段の手すりに縋りついて、えぐえぐと泣いた。生まれたての小鹿のように足を震わせるカザネに、ブライアンは一気に素に戻り、
「じゃあ、もう眼鏡をかけろ! ダサく行け!」
ブライアンのお許しが出たので
「ああ、やっぱり眼鏡があると落ち着く」
視界がクリアになったカザネは、段差の恐怖から解放されてホッとした。けれど、すぐにブライアンを見て
「なんだ? 目を丸くして」
首を傾げるブライアンに、ちょっと照れた様子で
「あっ、いや……ブライアンの格好、決まっているなって。流石はブライアンだね」
学校では他のクラスメイト同様ラフな格好をしているが、今夜はジャケットで大人っぽく決めていた。モデル顔負けのブライアンが洗練された格好をすると、雑誌から抜け出たようだった。
ブライアンはカザネの反応に気を良くして
「へぇ? 急に意識しちゃったかな? 俺が男だって」
軽くカザネに迫ったものの、
「ぶ、ブライアン! 変な空気を出さないで! 僕のほうが照れてしまう!」
傍で見ていたジムのほうが、キャアキャアと恥じらった。ブライアンはジムの反応にげんなりしながら
「本当に初心な子どもたちだね。まぁいいや。ハンナを待たせちゃ気の毒だし、俺たちも行くか」
前回のセントラルパーク行きはジープだったが、今回は黒塗りのシックな車だった。夜なのに車体が艶々と光り、車に詳しくないカザネでも一目で高級車であることが分かった。
「今日はいつもと違う車なんだね?」
「お嬢ちゃんのファッションに合わせたんだよ。今日のお嬢ちゃんをエスコートするのに、ジープじゃ無骨すぎるだろ?」
流石に自分の車ではなく、父親の車を借りて来たのだった。ブライアンの言葉に、カザネは雷に打たれたように目を見開いて
「ジム、これが本物のオシャレさんだよ! 本物のオシャレさんは服や靴だけじゃなくて、車までTPOに応じて使い分けるんだ!」
大発見に興奮するカザネに、ジムも真剣な顔で頷きながら
「うちなんてどこに出かけるにもサンドベージュのセダンなのに、やっぱりブライアンはただものじゃないね……!」
「お前らどこに感心してんだ……」
よそ行きの格好をさせたところで、しまりが無いのは治らないなとブライアンは呆れた。
「いらっしゃい、ブライアン。今日はよろしく」
にこやかなジムとは対照的に、彼の格好を見たブライアンは頭を抱えて
「おい、ジム。いくらパーティーでも、同級生だけのカジュアルな集まりに黒のタキシードはないだろ」
ブライアンの指摘に、ジムは目を丸くして
「えっ? 何か変? プロムはタキシードだと聞いていたから、ミシェルのパーティーもそうだと思ったんだけど」
確かにプロムでは男子はタキシードを着る。しかしクラスメイトが主催する若者だけのクリスマスパーティーに正装は行き過ぎだ。「授賞式かよ」と揶揄されそうな恰好だったが、
「いや、いいや。お前のファッションなんて誰も気にしないからなんでも同じだ。今からお前のクローゼットを引っ繰り返したところでろくな服が無いだろうし、それで行けよ」
「ええっ!?」
ブライアンは無慈悲にジムを見捨てると、
「それでアイツは?」
「ぶ、ブライアン……」
おずおずとした呼びかけに、ブライアンは階段の上を見た。そこには例のワンピースを着たカザネが、恥ずかしそうに立っていた。今日のカザネは服装だけでなく、ブライアンの指示で眼鏡を外し、おばさんに軽くメイクしてもらっていた。素肌が綺麗なのでポイントメイクだけだが、目元がパッチリして頬や唇が色づき、ずいぶん可愛らしく見える。
またカザネのワンピースを見たおばさんが、
「この恰好なら絶対にアレが似合うわ!」
と趣味で作っていたブルーローズの髪飾りを髪につけてくれた。
カザネのはじめての女の子らしい姿に、ブライアンは時を忘れたように見入った。映画なら恋に落ちそうなシーンだったが、カザネは自ら空気を壊すように
「やっぱり眼鏡が無いとダメだぁぁ。何も見えないよぉぉ」
階段の手すりに縋りついて、えぐえぐと泣いた。生まれたての小鹿のように足を震わせるカザネに、ブライアンは一気に素に戻り、
「じゃあ、もう眼鏡をかけろ! ダサく行け!」
ブライアンのお許しが出たので
「ああ、やっぱり眼鏡があると落ち着く」
視界がクリアになったカザネは、段差の恐怖から解放されてホッとした。けれど、すぐにブライアンを見て
「なんだ? 目を丸くして」
首を傾げるブライアンに、ちょっと照れた様子で
「あっ、いや……ブライアンの格好、決まっているなって。流石はブライアンだね」
学校では他のクラスメイト同様ラフな格好をしているが、今夜はジャケットで大人っぽく決めていた。モデル顔負けのブライアンが洗練された格好をすると、雑誌から抜け出たようだった。
ブライアンはカザネの反応に気を良くして
「へぇ? 急に意識しちゃったかな? 俺が男だって」
軽くカザネに迫ったものの、
「ぶ、ブライアン! 変な空気を出さないで! 僕のほうが照れてしまう!」
傍で見ていたジムのほうが、キャアキャアと恥じらった。ブライアンはジムの反応にげんなりしながら
「本当に初心な子どもたちだね。まぁいいや。ハンナを待たせちゃ気の毒だし、俺たちも行くか」
前回のセントラルパーク行きはジープだったが、今回は黒塗りのシックな車だった。夜なのに車体が艶々と光り、車に詳しくないカザネでも一目で高級車であることが分かった。
「今日はいつもと違う車なんだね?」
「お嬢ちゃんのファッションに合わせたんだよ。今日のお嬢ちゃんをエスコートするのに、ジープじゃ無骨すぎるだろ?」
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「ジム、これが本物のオシャレさんだよ! 本物のオシャレさんは服や靴だけじゃなくて、車までTPOに応じて使い分けるんだ!」
大発見に興奮するカザネに、ジムも真剣な顔で頷きながら
「うちなんてどこに出かけるにもサンドベージュのセダンなのに、やっぱりブライアンはただものじゃないね……!」
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