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十二月のこと
住む世界の違う人
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その後、カザネたちはブライアンの運転でミシェルの家に到着した。ハンナはハロウィンの時と同様、父親に送られて来ることになっている。
「ハンナはまだ来てないみたいだね。表で待っている?」
カザネの質問にブライアンは、
「こんな寒空の下、外で待っていたら凍えるぞ。お嬢ちゃん」
ハンナには『先に入っている』と連絡して、カザネたちだけで入場した。ブライアンたちが入場するとすぐに、
「いらっしゃい、ブライアン! 来てくれたのね!」
ミシェルが誘ったのはジムのはずだが、彼女は真っ先にブライアンに声をかけた。ブライアンの訪問に驚く様子も無いし、やはりジムを招待したのは彼を引き抜く作戦だったらしい。
ミシェルはブライアンの姿に目を輝かせると、
「流石はブライアンね! 今日見た中でいちばんセンスがいい! そのジャケットも素敵だわ!」
ブライアンと無理やり腕を組み、スタスタと家の奥へ入って行った。取り残されたジムとカザネは
「ああ、ミシェル……。「お招きありがとう」と「メリークリスマス」くらいは言いたかったのに……」
「お、落ち着いたら、また声をかけたらいいよ」
がっくりと肩を落とすジムを慰めたカザネは、ミシェルたちに続いてリビングに入った。
アンダーソン邸は外観も豪華だが、中も広々としてデザインも近代的だ。庶民的なカザネからすれば、まるで同級生の家らしくなく
(ミシェルって本当にセレブなんだな!)
と密かに圧倒された。リビングにはカザネたちより先に来たゲストたちが、ドリンクを片手に談笑したり、ご馳走に舌鼓を打ったり、音楽に合わせて体を揺らしたりと、思い思いに過ごしている。もともとカップルなのか、この場で仲良くなったのか、身を寄せ合って踊るばかりか、キスまでする男女も居る。
そんな光景を目の当たりにしたカザネは
(ああ、これがアメリカ……!)
マクガン家では感じられなかった大人なムードに1人で照れた。陰キャのカザネとジムは、リア充たちとの交流を早々に諦めて
「ハンナが来るまで暇だね。せっかくだし、ご飯でも食べてようか?」
「そうだね。お腹も空いているしね」
せっかくおめかして来たのに、社交そっちのけで料理とスイーツを食べ出すカザネとジムを、ブライアンは遠目に眺めてアイツららしいと微笑んだ。本当は自分もあの平和な群れに入りたかったが、ミシェルの機嫌を損ねたら、カザネとジムに火の粉がかかるかもしれない。
特にカザネはミシェルに敵視されているので、また目の敵にされないように、大人しく拘束されていた。
カザネたちが会場に到着してから、30分ほど経った頃。
「遅れてゴメンなさい。メイクに手間取っちゃって」
ようやく現れたハンナは
「えっ!? 君、ハンナなのかい!?」
ジムが思わず大声を出すほど、今夜の彼女は別人だった。まずカザネと違って、コンタクトを使って完全に眼鏡をオフした。チリチリだった黒髪は、昼間のうちに美容院でジュリアのような緩く波打つロングヘアに変わった。服はブライアンの指示どおり、あえてボディラインと胸元を見せてセクシーに着こなしている。グラマラスな体型と華やかなメイクが相まって、ゴージャスな雰囲気だった。
しかしいざ口を開くと、
「ど、どうして、そんなに驚くの? もしかして、やっぱり変だった?」
中身はちゃんと、いつものハンナのようでオロオロした。ようやく目の前の黒人美女がハンナだと理解したジムとカザネは
「そんなことない! すごく綺麗だよ、ハンナ! 見違えたよ!」
「えっ? ほ、本当?」
ジムの絶賛に続いて、カザネもとびきりの笑顔で
「うん、本当に綺麗! がんばった成果が出たね! 大変身だよ、ハンナ!」
「へ、変じゃないの? 良かった」
2人に褒められたハンナは、ホッと胸を撫でおろした。ジムがずっとキラキラした目でハンナを見つめているのに気付いたカザネは
「ねぇ、2人とも。せっかくオシャレしたんだし、ちょっと踊って来たら?」
「えっ? でも僕たちダンスなんて」
カザネの提案に、ジムは戸惑ったが、
「手を繋いで音楽に合わせて体を揺らすだけでも楽しいと思う! やってみなよ! きっといい思い出になるよ!」
やや強引にダンスを勧めると、意図を理解したハンナが、
「そ、そうね。せっかくだし、ジムが良ければ……お、踊ってみない?」
「は、ハンナがいいなら」
2人はぎこちなく手を取ると、音楽に乗って不器用に体を揺らした。ジムもハンナも照れ臭そうだが、とても楽しそうだ。
(やったよ、ブライアン! 大成功だよ!)
カザネはもう1人の仕掛け人であるブライアンの姿を探した。ブライアンは暖炉の傍で、ミシェルに腕を取られたまま1軍グループと談笑していた。まるで映画のワンシーンのように洗練された人々。特にブライアンとミシェルは、まさにキングとクイーンと言う感じで完璧な一対に見えた。
その光景を見たカザネは、直感的にブライアンと自分では住む世界が違うと感じた。ちょっと前のカザネなら、その違いを本当に絵になる人たちだな。素敵だなぁと、呑気に見惚れただろう。それなのに何故か今は、ブライアンが遠くに行ってしまったようで寂しかった。
「ハンナはまだ来てないみたいだね。表で待っている?」
カザネの質問にブライアンは、
「こんな寒空の下、外で待っていたら凍えるぞ。お嬢ちゃん」
ハンナには『先に入っている』と連絡して、カザネたちだけで入場した。ブライアンたちが入場するとすぐに、
「いらっしゃい、ブライアン! 来てくれたのね!」
ミシェルが誘ったのはジムのはずだが、彼女は真っ先にブライアンに声をかけた。ブライアンの訪問に驚く様子も無いし、やはりジムを招待したのは彼を引き抜く作戦だったらしい。
ミシェルはブライアンの姿に目を輝かせると、
「流石はブライアンね! 今日見た中でいちばんセンスがいい! そのジャケットも素敵だわ!」
ブライアンと無理やり腕を組み、スタスタと家の奥へ入って行った。取り残されたジムとカザネは
「ああ、ミシェル……。「お招きありがとう」と「メリークリスマス」くらいは言いたかったのに……」
「お、落ち着いたら、また声をかけたらいいよ」
がっくりと肩を落とすジムを慰めたカザネは、ミシェルたちに続いてリビングに入った。
アンダーソン邸は外観も豪華だが、中も広々としてデザインも近代的だ。庶民的なカザネからすれば、まるで同級生の家らしくなく
(ミシェルって本当にセレブなんだな!)
と密かに圧倒された。リビングにはカザネたちより先に来たゲストたちが、ドリンクを片手に談笑したり、ご馳走に舌鼓を打ったり、音楽に合わせて体を揺らしたりと、思い思いに過ごしている。もともとカップルなのか、この場で仲良くなったのか、身を寄せ合って踊るばかりか、キスまでする男女も居る。
そんな光景を目の当たりにしたカザネは
(ああ、これがアメリカ……!)
マクガン家では感じられなかった大人なムードに1人で照れた。陰キャのカザネとジムは、リア充たちとの交流を早々に諦めて
「ハンナが来るまで暇だね。せっかくだし、ご飯でも食べてようか?」
「そうだね。お腹も空いているしね」
せっかくおめかして来たのに、社交そっちのけで料理とスイーツを食べ出すカザネとジムを、ブライアンは遠目に眺めてアイツららしいと微笑んだ。本当は自分もあの平和な群れに入りたかったが、ミシェルの機嫌を損ねたら、カザネとジムに火の粉がかかるかもしれない。
特にカザネはミシェルに敵視されているので、また目の敵にされないように、大人しく拘束されていた。
カザネたちが会場に到着してから、30分ほど経った頃。
「遅れてゴメンなさい。メイクに手間取っちゃって」
ようやく現れたハンナは
「えっ!? 君、ハンナなのかい!?」
ジムが思わず大声を出すほど、今夜の彼女は別人だった。まずカザネと違って、コンタクトを使って完全に眼鏡をオフした。チリチリだった黒髪は、昼間のうちに美容院でジュリアのような緩く波打つロングヘアに変わった。服はブライアンの指示どおり、あえてボディラインと胸元を見せてセクシーに着こなしている。グラマラスな体型と華やかなメイクが相まって、ゴージャスな雰囲気だった。
しかしいざ口を開くと、
「ど、どうして、そんなに驚くの? もしかして、やっぱり変だった?」
中身はちゃんと、いつものハンナのようでオロオロした。ようやく目の前の黒人美女がハンナだと理解したジムとカザネは
「そんなことない! すごく綺麗だよ、ハンナ! 見違えたよ!」
「えっ? ほ、本当?」
ジムの絶賛に続いて、カザネもとびきりの笑顔で
「うん、本当に綺麗! がんばった成果が出たね! 大変身だよ、ハンナ!」
「へ、変じゃないの? 良かった」
2人に褒められたハンナは、ホッと胸を撫でおろした。ジムがずっとキラキラした目でハンナを見つめているのに気付いたカザネは
「ねぇ、2人とも。せっかくオシャレしたんだし、ちょっと踊って来たら?」
「えっ? でも僕たちダンスなんて」
カザネの提案に、ジムは戸惑ったが、
「手を繋いで音楽に合わせて体を揺らすだけでも楽しいと思う! やってみなよ! きっといい思い出になるよ!」
やや強引にダンスを勧めると、意図を理解したハンナが、
「そ、そうね。せっかくだし、ジムが良ければ……お、踊ってみない?」
「は、ハンナがいいなら」
2人はぎこちなく手を取ると、音楽に乗って不器用に体を揺らした。ジムもハンナも照れ臭そうだが、とても楽しそうだ。
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カザネはもう1人の仕掛け人であるブライアンの姿を探した。ブライアンは暖炉の傍で、ミシェルに腕を取られたまま1軍グループと談笑していた。まるで映画のワンシーンのように洗練された人々。特にブライアンとミシェルは、まさにキングとクイーンと言う感じで完璧な一対に見えた。
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