ブライアンのお気に入り

知見夜空

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十二月のこと

決別

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 ブライアンの考えに納得したカザネは、その場に留まることにしたが、

「ねぇ、もういいでしょ。ブライアン。揉めごとも収まったんだし、戻って来てよ。あなたが居なきゃつまらないわ」

 騒ぎが治まったのを見計らってミシェルが声をかけた。ブライアンが行けば、カザネはまた1人になる。しかしこれだけたくさんの人目があるところで、ブライアンに「行かないで」とは言えなかった。

 ブライアンとミシェルは、この学園のキングとクイーンだ。名もない生徒の1人でしかない自分には、引き留める権利が無いとカザネは思った。

 ブライアンの手が離れるのを、カザネは無言で待った。けれどブライアンがカザネの腕を放すことはなく

「悪いけど、俺はもともとここに来るつもりはなかったんだ。パーティーに来たからには主催者を喜ばせるのが義務だと言うなら、俺は今すぐコイツと帰るよ」

 予想外の台詞に、カザネは思わずブライアンを見上げた。信じられないのはミシェルも同じで

「どうしていつもその子を構うの? ちょっとオシャレをしたからって美人になったわけでもないのに。そんな子と居たら、あなたの株が下がるだけなのに」

 ミシェルの言わんとすることが、ブライアンには理解できた。ブライアンも以前は誰と付き合えば得をするか、どう振る舞えば上等に見えるかを基準に動いていたから。

 しかし今は

「コイツの良さが分からないヤツとは、どうせ俺も気が合わないよ。そんなヤツラに評価されたって意味が無い」

 ブライアンは今までの自分と決別するように

「だからお前も、もう俺に構うな。今までずっと曖昧にして来たけど、俺はお前が好きじゃない。どれだけアプローチされたって、お前に振り向くことはない」

 キッパリとミシェルに一線を引いた。

 ブライアンが自分に気が無いことを、ミシェルは薄々気づいていた。しかし以前のブライアンは、ミシェルと同様に自分を上等に見せるために、人気のある異性を利用していた。その迷いがミシェルに、結局は自分を選ぶだろうという期待を持たせていた。

 でも今ブライアンはハッキリと、ミシェルとは別の価値基準を選んだ。学園のキングとクイーンとして同じ世界の住人だったはずが、自分とは異なるルールで生きる別世界の人になってしまった。自分には決して、手の届かない人に。

 単に好きじゃないと言われた以上に、今のブライアンにとって自分は無価値なのだと思い知らされたミシェルは、傷ついた顔をした。傍にいたカザネにも、ミシェルの胸が軋む音が聞こえるようで

「ブ、ブライアン……」

 流石にキツイんじゃないかと、オロオロしながら彼の名を呼んだ。ただ傷つけない拒絶など無いことは、カザネにも分かっているので「もっとこうすれば良かったのに」なんて気の利いた代案は浮かばなかった。

 ブライアンは「行くぞ」と硬い声音でカザネに退出を促した。立ち去る2人の背中に、ミシェルの嗚咽が聞こえて来る。カザネが振り向くと、彼女は友人に支えられながら泣いていた。本気でブライアンが好きだったのだと、カザネは胸を痛めた。でもブライアンの手を振り払えない自分に、彼女にかけられる言葉は無いと、そのままリビングを出た。
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