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第六話・私が思っていたライバルとちがう
破局の芽は念入りに摘む
新学期と同時に現れたライバルは、私が対処するまでもなく早々に自滅した。
でも私は卯坂さんを侮っていたらしい。考えてみれば彼女は、中学の頃から誠慈君を想い続けているのだ。あの程度の塩対応で心が折れるくらいなら、とうの昔に諦めている。
そんな卯坂さんは今。
ちょうど前回と同じ、私のはるか前方を歩く誠慈君の背中をめがけて、学校の廊下を軽やかに駆けて行った。それも今回は私を抜き去る瞬間、こちらを振り返ってニヤリと笑うオマケ付き。
卯坂さんは私を彼女だと認識している。そのうえで誠慈君に抱き着こうとしている。これは私に対する明らかな宣戦布告だった。
しかし体の反応は思考ほど速くない。卯坂さんを引き止めるには、すでに距離が開きすぎている。矢や鉄砲じゃあるまいし、背後から迫り来る後輩女子を誠慈君に「避けてぇ!」と叫ぶのもなんかアレだ。
卯坂さんの動きを阻止することも、誠慈君に警告することもできない。背後からいきなり抱き着かれて、避けられる人なんて居ない。
誠慈君は何も悪くない。どうしようもない出来事。
でも嫌だ。
1秒後には卯坂さんが誠慈君の背中に抱き着く。触らないでと反射的に思った瞬間。
普通に歩いているように見えた誠慈君が、最小限の動きで卯坂さんのバックアタックをかわした。予想外すぎる動きに、ハグを仕掛けた卯坂さんと目撃者の私は「!?」と時が止まった。
突然仕掛けられた背後からのハグをノールックで回避するのは、現代を生きる高校生として普通のスキルなのかな?
ぼっちゆえに普通が分からず、審議に入る私をよそに
「なんですか、その動き!? 後ろに目でもついているんですか!?」
シンプルにツッコむ卯坂さんに、誠慈君は彼女の動きを警戒しながら
「前に卯坂に抱き着かれたのを俺の彼女が見ていて、嫌な思いをしたんだって。だから二度と彼女を悲しませないように、友だちに頼んで特訓したんだ。背後からの突然の攻撃にも対応できるように」
真顔で言い切る誠慈君に、卯坂さんはややたじろいで
「は、背後からの突然の攻撃って。ただのスキンシップじゃないですか」
「恋人の居る人間へのスキンシップは、相手の恋愛関係を破壊しかねない立派な攻撃だよ……」
私よりも破局を恐れている誠慈君は、静かな怒気を滲ませて言った。好きな人からの徹底的な拒絶に、卯坂さんは「うぅっ」と怯みつつ
「そんなに彼女が大事ですか!? ぶっちゃけ私のほうが、先輩の彼女より100倍は可愛いのに!」
追い詰められた彼女は「ワッ!」と逆ギレした。しかし卯坂さんは本当に眩しいくらいの美少女なので、私よりも100倍可愛いは全く過言では無かった。けれど納得する私をよそに、誠慈君は聞き捨てならないとばかりに
「萌乃は卯坂の100億倍可愛いよ!」
「億!?」
完全に私推しの 審査員による理不尽な判定に、卯坂さんはショックで涙目になると
「せ、先輩の馬鹿ッ! 溺愛モンスターッ!」
謎の捨て台詞を残して、ダッと廊下を走り去った。私は卯坂さんを見送っていた誠慈君の背中に
「誠慈君」
声をかけると、彼は「わっ!?」と驚いて
「萌乃、今の見ていたの?」
私はコクンと頷きながら
「最近、誠慈君が教室で友だちによく小突かれていたの、このためだったの?」
思い返せば、卯坂さんとのことがあってから、なぜか誠慈君は友だちに後ろからよく小突かれるようになった。
イジメでは無いようだけど、何をしているんだろうと疑問だった。でもどうやらあれが背後からの突然の攻撃に対応するための特訓だったらしい。
誠慈君も私の推測を「うん……」と認めて
「萌乃が嫌がっているのに、相手が勝手にして来るんだから仕方ないで済ませたくないなって。二度と抱き着かれないように特訓したんだ」
普通なら相手に理解を求めるところ、少年漫画のような修行をしてまで対処してくれた誠慈君は
「でも後輩相手にムキになりすぎかな? 呆れた?」
バツが悪そうに問う彼に、私はふるふると首を振って
「嬉しかった。ハグを避けてくれたのも。100億倍可愛いって言ってくれたのも」
最初は誠慈君の超人的な回避能力を見て「昔、軍にでも居た?」とただ圧倒されてしまったが、言葉だけじゃなく行いで私だけと示してくれて、とても嬉しい。
だから私は
「あとね」
誠慈君に向かって内緒話のポーズを取ると
「うん?」
低身長の私に合わせて少し身を屈めた彼の頬にチュッとキスして
「いつも大事にしてくれて、ありがとう」
笑顔で彼の手を取り「大好き」と告げると、誠慈君はボッと赤くなりつつ
「お、俺も」
一生懸命に同意を返すと「いちばん好き」と、はにかみながら身を寄せた。
でも私は卯坂さんを侮っていたらしい。考えてみれば彼女は、中学の頃から誠慈君を想い続けているのだ。あの程度の塩対応で心が折れるくらいなら、とうの昔に諦めている。
そんな卯坂さんは今。
ちょうど前回と同じ、私のはるか前方を歩く誠慈君の背中をめがけて、学校の廊下を軽やかに駆けて行った。それも今回は私を抜き去る瞬間、こちらを振り返ってニヤリと笑うオマケ付き。
卯坂さんは私を彼女だと認識している。そのうえで誠慈君に抱き着こうとしている。これは私に対する明らかな宣戦布告だった。
しかし体の反応は思考ほど速くない。卯坂さんを引き止めるには、すでに距離が開きすぎている。矢や鉄砲じゃあるまいし、背後から迫り来る後輩女子を誠慈君に「避けてぇ!」と叫ぶのもなんかアレだ。
卯坂さんの動きを阻止することも、誠慈君に警告することもできない。背後からいきなり抱き着かれて、避けられる人なんて居ない。
誠慈君は何も悪くない。どうしようもない出来事。
でも嫌だ。
1秒後には卯坂さんが誠慈君の背中に抱き着く。触らないでと反射的に思った瞬間。
普通に歩いているように見えた誠慈君が、最小限の動きで卯坂さんのバックアタックをかわした。予想外すぎる動きに、ハグを仕掛けた卯坂さんと目撃者の私は「!?」と時が止まった。
突然仕掛けられた背後からのハグをノールックで回避するのは、現代を生きる高校生として普通のスキルなのかな?
ぼっちゆえに普通が分からず、審議に入る私をよそに
「なんですか、その動き!? 後ろに目でもついているんですか!?」
シンプルにツッコむ卯坂さんに、誠慈君は彼女の動きを警戒しながら
「前に卯坂に抱き着かれたのを俺の彼女が見ていて、嫌な思いをしたんだって。だから二度と彼女を悲しませないように、友だちに頼んで特訓したんだ。背後からの突然の攻撃にも対応できるように」
真顔で言い切る誠慈君に、卯坂さんはややたじろいで
「は、背後からの突然の攻撃って。ただのスキンシップじゃないですか」
「恋人の居る人間へのスキンシップは、相手の恋愛関係を破壊しかねない立派な攻撃だよ……」
私よりも破局を恐れている誠慈君は、静かな怒気を滲ませて言った。好きな人からの徹底的な拒絶に、卯坂さんは「うぅっ」と怯みつつ
「そんなに彼女が大事ですか!? ぶっちゃけ私のほうが、先輩の彼女より100倍は可愛いのに!」
追い詰められた彼女は「ワッ!」と逆ギレした。しかし卯坂さんは本当に眩しいくらいの美少女なので、私よりも100倍可愛いは全く過言では無かった。けれど納得する私をよそに、誠慈君は聞き捨てならないとばかりに
「萌乃は卯坂の100億倍可愛いよ!」
「億!?」
完全に私推しの 審査員による理不尽な判定に、卯坂さんはショックで涙目になると
「せ、先輩の馬鹿ッ! 溺愛モンスターッ!」
謎の捨て台詞を残して、ダッと廊下を走り去った。私は卯坂さんを見送っていた誠慈君の背中に
「誠慈君」
声をかけると、彼は「わっ!?」と驚いて
「萌乃、今の見ていたの?」
私はコクンと頷きながら
「最近、誠慈君が教室で友だちによく小突かれていたの、このためだったの?」
思い返せば、卯坂さんとのことがあってから、なぜか誠慈君は友だちに後ろからよく小突かれるようになった。
イジメでは無いようだけど、何をしているんだろうと疑問だった。でもどうやらあれが背後からの突然の攻撃に対応するための特訓だったらしい。
誠慈君も私の推測を「うん……」と認めて
「萌乃が嫌がっているのに、相手が勝手にして来るんだから仕方ないで済ませたくないなって。二度と抱き着かれないように特訓したんだ」
普通なら相手に理解を求めるところ、少年漫画のような修行をしてまで対処してくれた誠慈君は
「でも後輩相手にムキになりすぎかな? 呆れた?」
バツが悪そうに問う彼に、私はふるふると首を振って
「嬉しかった。ハグを避けてくれたのも。100億倍可愛いって言ってくれたのも」
最初は誠慈君の超人的な回避能力を見て「昔、軍にでも居た?」とただ圧倒されてしまったが、言葉だけじゃなく行いで私だけと示してくれて、とても嬉しい。
だから私は
「あとね」
誠慈君に向かって内緒話のポーズを取ると
「うん?」
低身長の私に合わせて少し身を屈めた彼の頬にチュッとキスして
「いつも大事にしてくれて、ありがとう」
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