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第4話・育成開始から3か月
エバーシュタインの乱、再び
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前回。エバーシュタインさんは
『風丸が私のもとを去ったのは、相楽さんに洗脳されているからよ!』
と由羽ちゃんにあらぬ疑いをかけた。
しかし当の風丸に
『俺がマスターちゃんについたのは、洗脳じゃなくてアンタの性格がクソだからだよ(意訳)』
と否定されたうえに、全員の前で神様による美貌補正を暴かれて撤退した。
私ならほとぼりが冷めるまで、誰とも顔を合わせたくないところだ。
ところがエバーシュタインさんは、それから3日も経たないうちに再び私たちを呼び出した。
ただ今回、呼ばれたのは私とユエルだけで、星月さんたちは呼ばれていないようだった。
城の大広間には他に私を心配して来てくれた由羽ちゃんと、彼女の忍である風丸。それとエバーシュタインさんの騎士であるアルゼリオが居るだけだ。
なぜエバーシュタインさんが因縁のある由羽ちゃん&風丸主従ではなく、私とユエルを呼び出したかと言うと
「……今度は私にユエルをくれって言うの?」
エバーシュタインさんと私のやり取りを聞いていた由羽ちゃんは
「なんでエバーシュタインさんは、次から次に無茶を言い出すんでしょうか?」
由羽ちゃんにヒソヒソ問われた風丸は
「多分、俺が抜けたせいでアルゼリオの旦那の負担が増えたんだろ。アルゼリオの旦那は攻撃力はあるけど、守備はからっきしだからな。マトモにやっていたらダメージを食らいすぎる」
同じく声を潜めて由羽ちゃんに説明すると
「でも金髪ちゃんのところには、ユエルやカイゼルの旦那のような回復魔法の使い手は居ない。そのせいで拠点に帰るまでは、アイテムで回復しなきゃいけない。でも回復アイテムを買うと、金髪ちゃんの大事なお小遣いが減っちまう。だからタダで回復してくれるヤツが欲しいんだろ? 金髪ちゃんはマスターちゃんと違って、強欲金食い虫だからね」
「そこっ! 聞こえてますわよ!」
エバーシュタインさんがどうやら、パーティーのための戦闘資金を私的に流用しているのには気づいていた。城から支給された普段着や装備品しか着ていない私や由羽ちゃんと違って、彼女は見るたびに違う服やアクセサリーを身に付けていたから。
また城で出される食事は質素なので、外食もしていたはずだ。私と由羽ちゃんは朝だけ城の食事をいただき、昼と夜は体力増進のための手料理を作る。材料は基本、由羽ちゃんの畑で取れる野菜と、牧場の老夫婦から分けてもらう卵や肉やミルクを使い、足りない分だけ街で買っていた。
手料理については食べさせてあげると騎士の能力値がアップするので、レシピは独占せずに他の導き手たちにも公開していた。私たちの目的はあくまで魔王の再封印なので、全員が強くなれたほうが望ましいからだ。エバーシュタインさんと星月さんはレシピの共有について、その場ではお礼を言っていたが、厨房を使っている様子は無かった。
騎士たちのために、どれくらいの労働ができるかは個人差がある。私と由羽ちゃんの働きが普通かと問われれば、ダンジョンから帰還してクタクタの体で、更なる労働に挑むために
『推しのために命を削るこの感覚! 堪りませんね!』
『たぎるねぇ』
とエナドリ感覚でポーションをキメながらのデスマーチなので、こちらが非人道的なプレイをしていると言えなくもない。私と由羽ちゃんが自発的に限界を極めるのは勝手だが、人様にまで「もっと命削れ」とは強要できない。
時間とお金の使い方に関しても、主従間で了解が取れているなら、よそのやり方に口を出すまいとスルーしていたが
「あなたがユエルを欲しがる理由は分かったけど、あなたの個人的な贅沢のために、この子の大事な時間を奪わせるわけにはいかないよ」
「私がお金目当てだと言うのは風丸の勝手な推測ですわ。私はあくまで全体の利益のために、そろそろ戦力をまとめるべきだと言っているだけです」
確かに私はもともとユエルを独占するつもりは無かった。彼が騎士として十分な経験を積んだら、後は他のパーティーに入ったほうがいいとすら考えていた。けれど正論を言っているようで、本当は自分本位のエバーシュタインさんの指揮下にユエルを送るのは嫌だ。
しかし私が反論するより先に
「戦力をまとめるべきだとして、どうして僕の主があなたに権利を譲らなければいけないんですか? あくまで全体のために戦力をまとめるべきだと言うなら、そちらがアルゼリオさんを手放してもいいはずです」
礼儀正しいユエルには珍しく攻撃的な発言。主人である私から権利を奪おうとするエバーシュタインさんが許せなかったのだろう。
気持ちはありがたいけど、私のためにケンカしなくてもいいのにと思った矢先。
「こちらの提案ではありますが、優先されるべきは強者の意向でしょう? 不忠な風丸と違って、アルゼリオは私に絶対の忠誠を誓ってくれていますの。他のマスターのもとでは戦いたくないそうですから、アルゼリオの力を借りたければ、ユエル君に譲っていただかなければ」
ユエルが生意気だと感じたのか、毒のある言い方をする彼女に
『風丸が私のもとを去ったのは、相楽さんに洗脳されているからよ!』
と由羽ちゃんにあらぬ疑いをかけた。
しかし当の風丸に
『俺がマスターちゃんについたのは、洗脳じゃなくてアンタの性格がクソだからだよ(意訳)』
と否定されたうえに、全員の前で神様による美貌補正を暴かれて撤退した。
私ならほとぼりが冷めるまで、誰とも顔を合わせたくないところだ。
ところがエバーシュタインさんは、それから3日も経たないうちに再び私たちを呼び出した。
ただ今回、呼ばれたのは私とユエルだけで、星月さんたちは呼ばれていないようだった。
城の大広間には他に私を心配して来てくれた由羽ちゃんと、彼女の忍である風丸。それとエバーシュタインさんの騎士であるアルゼリオが居るだけだ。
なぜエバーシュタインさんが因縁のある由羽ちゃん&風丸主従ではなく、私とユエルを呼び出したかと言うと
「……今度は私にユエルをくれって言うの?」
エバーシュタインさんと私のやり取りを聞いていた由羽ちゃんは
「なんでエバーシュタインさんは、次から次に無茶を言い出すんでしょうか?」
由羽ちゃんにヒソヒソ問われた風丸は
「多分、俺が抜けたせいでアルゼリオの旦那の負担が増えたんだろ。アルゼリオの旦那は攻撃力はあるけど、守備はからっきしだからな。マトモにやっていたらダメージを食らいすぎる」
同じく声を潜めて由羽ちゃんに説明すると
「でも金髪ちゃんのところには、ユエルやカイゼルの旦那のような回復魔法の使い手は居ない。そのせいで拠点に帰るまでは、アイテムで回復しなきゃいけない。でも回復アイテムを買うと、金髪ちゃんの大事なお小遣いが減っちまう。だからタダで回復してくれるヤツが欲しいんだろ? 金髪ちゃんはマスターちゃんと違って、強欲金食い虫だからね」
「そこっ! 聞こえてますわよ!」
エバーシュタインさんがどうやら、パーティーのための戦闘資金を私的に流用しているのには気づいていた。城から支給された普段着や装備品しか着ていない私や由羽ちゃんと違って、彼女は見るたびに違う服やアクセサリーを身に付けていたから。
また城で出される食事は質素なので、外食もしていたはずだ。私と由羽ちゃんは朝だけ城の食事をいただき、昼と夜は体力増進のための手料理を作る。材料は基本、由羽ちゃんの畑で取れる野菜と、牧場の老夫婦から分けてもらう卵や肉やミルクを使い、足りない分だけ街で買っていた。
手料理については食べさせてあげると騎士の能力値がアップするので、レシピは独占せずに他の導き手たちにも公開していた。私たちの目的はあくまで魔王の再封印なので、全員が強くなれたほうが望ましいからだ。エバーシュタインさんと星月さんはレシピの共有について、その場ではお礼を言っていたが、厨房を使っている様子は無かった。
騎士たちのために、どれくらいの労働ができるかは個人差がある。私と由羽ちゃんの働きが普通かと問われれば、ダンジョンから帰還してクタクタの体で、更なる労働に挑むために
『推しのために命を削るこの感覚! 堪りませんね!』
『たぎるねぇ』
とエナドリ感覚でポーションをキメながらのデスマーチなので、こちらが非人道的なプレイをしていると言えなくもない。私と由羽ちゃんが自発的に限界を極めるのは勝手だが、人様にまで「もっと命削れ」とは強要できない。
時間とお金の使い方に関しても、主従間で了解が取れているなら、よそのやり方に口を出すまいとスルーしていたが
「あなたがユエルを欲しがる理由は分かったけど、あなたの個人的な贅沢のために、この子の大事な時間を奪わせるわけにはいかないよ」
「私がお金目当てだと言うのは風丸の勝手な推測ですわ。私はあくまで全体の利益のために、そろそろ戦力をまとめるべきだと言っているだけです」
確かに私はもともとユエルを独占するつもりは無かった。彼が騎士として十分な経験を積んだら、後は他のパーティーに入ったほうがいいとすら考えていた。けれど正論を言っているようで、本当は自分本位のエバーシュタインさんの指揮下にユエルを送るのは嫌だ。
しかし私が反論するより先に
「戦力をまとめるべきだとして、どうして僕の主があなたに権利を譲らなければいけないんですか? あくまで全体のために戦力をまとめるべきだと言うなら、そちらがアルゼリオさんを手放してもいいはずです」
礼儀正しいユエルには珍しく攻撃的な発言。主人である私から権利を奪おうとするエバーシュタインさんが許せなかったのだろう。
気持ちはありがたいけど、私のためにケンカしなくてもいいのにと思った矢先。
「こちらの提案ではありますが、優先されるべきは強者の意向でしょう? 不忠な風丸と違って、アルゼリオは私に絶対の忠誠を誓ってくれていますの。他のマスターのもとでは戦いたくないそうですから、アルゼリオの力を借りたければ、ユエル君に譲っていただかなければ」
ユエルが生意気だと感じたのか、毒のある言い方をする彼女に
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